2008年02月29日(金) |
大阪地裁所長が襲われた事件で、実質的に無罪 |
日経(H20.2.29)社会面で、大阪地裁所長が襲われた事件で、非行に問われた少年に対し、大阪家裁は、保護処分の取り消しを決定したと報じていた。
実質的には無罪判決である。
少年事件に対する捜査は、地元の不良グループに狙いを定めるなど見込み捜査が多く、ずさんな感じがする。
2008年02月28日(木) |
パウエルの二重契約問題 |
日経(H20.2.28)スポーツ面で、パウエルの二重契約問題について報じていた。
この問題で不思議なのは、二重契約した本人であるパウエルの責任が問われていないことである。 (もっとも、パウエルは二重契約したことを否定しているが、その言い分が通るとは思えない。)
民法上、二重契約した場合、それぞれの契約は有効である。
ただ、いずれか一方は契約が履行されないことになるから、その場合には二重契約した相手方に損害賠償できる。
それゆえ、パウエルは損害賠償責任を負うことになるのだが・・。
2008年02月27日(水) |
プリンスホテルの主張は無理がある |
日経(H20.2.20)社会面で、グランドプリンスホテル新高輪が、日教組の教研全国集会の会場使用を拒否した問題で、親会社の西武ホールディングス社長が記者会見をしたという記事が載っていた。
会見では、顧問弁護士が「日教組側がどれほど混乱を招くか説明を事前に十分にしなかったという民法上の説明義務違反がある」と述べたそうである。
しかし、会場使用を申し込む側としては、団体名と使用目的を告げれば十分であろう。
不明の点があれば契約締結の際に日教組側に聞けばいいのであり、日教組側に「どれほど混乱を招くか」まで積極的に説明する義務はない。
東京高裁も、そのような説明義務を認めなかったからこそ、会場使用を命じたはずである。
プリンスホテルの主張は法律上ずいぶん無理があり、記者会見でわざわざ言うことではないように思う。
2008年02月26日(火) |
勾留停止を認めた被告が病院から逃亡 |
日経(H20.2.26)社会面で、東京高裁が勾留停止を認めた被告が、入院先の病院から逃亡したと報じていた。
この被告は、覚せい剤を密輸した罪で1審判決では無期懲役となり、控訴中であった。
年齢が69歳なので、無期懲役が確定すると二度と社会には復帰できない。
それゆえ逃亡する動機は十分あった。
それでも勾留の停止を認めたのであるから、相当の重病だったのだろう。
しかし、逃げてしまった以上、勾留停止を認めた裁判所は非難を受けるだろうが、勾留停止を求めた弁護人も立場がないだろうなと同情してしまう。
2008年02月25日(月) |
三浦容疑者を逮捕−時効制度はなぜあるのか− |
日経(H20.2.25)社会面トップで、ロサンゼルスで1981年に起きた銃撃事件で逮捕された三浦容疑者について、ロサンゼルスに移送する手続きに入ったと報じていた。
逮捕されたのは、新たな証拠が発見されたことと、アメリカでは殺人罪には時効がないからということのようである。
日本の法律になじんだ者としては、「時効がない」というのは不思議な感じがするが、時効制度は論理必然ではなく、政策的なものに過ぎない。
時効制度がなぜあるのかについては諸説あるが、多数説は次の点を時効制度の趣旨として挙げている。
1 長期にわたって起訴されない状況が続いたという事実状態を尊重するため
2 証拠の散逸によって生じる誤判のおそれを防止するため
しかし、「起訴されない状況が続いたという事実状態の尊重」という理由については、なぜ「起訴されない事実状態」を尊重しなければならないのかという疑問がある。
また、「証拠の散逸によって生じる誤判のおそれの防止」については、証拠が十分にある場合にまで刑罰を免れさせる必要はないのではないかという疑問がある。
むしろ、時効制度の実際上の理由としては、捜査機関側の負担軽減ということが大きいのではないだろうか。
しかし、捜査機関負担の軽減というのは訴追側の都合である。
他方、被害者側の感情は、時の経過によっても癒えるものではないだろう。
そうであるならば、重大事件については、時効をなくすか、例えば50年という長期間とするかなどを検討してもよいのではないだろうか。
2008年02月22日(金) |
ライブドア元社長の堀江被告の控訴審が始まる |
日経でなく、朝日ネットニュース(H20.2.22)で、ライブドア元社長の堀江被告の控訴審が22日、東京高裁で始まると報じていた。
その記事の中で、「弁護側は控訴審で(1)一審判決は公判前整理手続きで争点となっていないことから実刑判決を導いており、法令違反だ(2)堀江元社長には会計の知識が全くなく、違法性の認識はない、などとして改めて無罪を主張する方針。」と書いていた。
このうち、「会計の知識が全くなく、違法性の認識はないとして無罪主張する方針」という部分は、弁護側の話を聞いた記者のまとめ方が誤っていると思われる。
「法の不知は許されない」という格言があるくらいで、会計の知識が全くなくて違法でないと思っていても、事実の認識があれば無罪にはならないというのが判例の立場である(反対説もあるが)。
それゆえ、弁護側の方針として、違法性の認識がなかったことを理由に無罪を主張することはあまり考えられない。
違法性の認識がなかったことは、せいぜい刑の減軽理由として主張する程度ではないだろうか。
2008年02月21日(木) |
「法は家庭に入らず」 |
日経(H20.2.22)社会面で、裁判所から選任された未成年後見人でもある祖母が、孫の貯金を着服した事件で、「配偶者、直系血族の間などでの財産犯罪は刑を免除する」との刑法の特例が適用されるかどうかが争われた裁判で、最高裁は、「未成年後見人には刑法の特例は適用されず、祖母であっても処罰される」との判断を示したと報じていた。
刑法では、親族間における窃盗罪などについて、「法は家庭に入らず」との考えの下、刑が免除されることを規定している。
そのため、この事件でも祖母は、未成年後見人に選任されていなければ刑は免除された。
ところが、最高裁は、未成年後見人という公益上の義務を重視したのであろうと思われるが、刑は免除されないと判断したものである。
結論として妥当であると思うが、そもそも「法は家庭に入らず」という趣旨が今日でも妥当するのだろうか。
例えば親が子どものお金を盗んだときに、もちろん法が介入すべきでない事案もあるだろうが、必ず刑を免除すべきなのだろうか(現行法の規定は「必要的免除」である)。
財産犯ではないが、すでに配偶者からの暴力の防止の関する法律(DV法)が制定されており、これは法が正面から家庭に介入するものである。
そのようなことも考えると、親族間の一定の財産犯について刑を必ず免除することの妥当性を再検討すべきでないだろうか。
2008年02月20日(水) |
会社再建で、でき得る処理は限られている |
日経(H20.2.20)1面で、長銀の粉飾決算事件で刑事責任を問われた旧経営陣らの上告審で、最高裁が弁論期日を指定したことから、執行猶予付き有罪とした二審判決が見直される見通しと報じていた。
有罪判決が見直されるのだから、無罪ということになるのだろう。
旧経営陣といっても、破綻原因をつくったわけではなく、再建のなかで、その処理の仕方が問題になったものである。
その場合、破産させるのであれば簡単であるが、何とか再建しようとした場合、でき得る処理は限られている。
それゆえ、妥当な処理だったかどうかはともかく、違法とまでいうのは酷なように思われた。
すでに民事事件では、1,2審で旧経営陣に違法性がない判断しているから、最高裁の見直しにより、旧経営陣には民事責任も刑事事件もないという可能性が強まった。
2008年02月19日(火) |
インサイダー取引が発覚しても利益を返せば済む? |
日経(H20.2.19)1面で、金融庁が、インサイダー取引などにかける課徴金額を実質的に2倍以上に引き上げると報じていた。
違反者が不正に得た利益を全額没収できるようにするのが狙いとのことである。
しかし、この程度の引き上げでは、「インサイダー取引が発覚しても、利益をすべて返せばそれで済む。」ということになりかねない。
これではインサイダー取引の抑止力としては不十分であり、『制裁的』な課徴金を認めて、もっと高額な課徴金を課すべきであろう。
ところが、金融庁によれば、高額な課徴金を課すと、『制裁的』な趣旨を認めていない他の課徴金制度と整合性が取れないとのことである。
しかし、そのように硬直的に考える必要があるのだろうか。
違法行為を抑止するためにどのような制度がよいのかということから考えるべきではないだろうか。
2008年02月18日(月) |
高い手数料が見込める案件だけを手がける弁護士 |
日経(H20.2.18)19面で、債務整理をうたい多重債務者を食い物にする「整理屋」に加担する専門家が後を絶たないという記事が載っていた。
その記事の中で、「日弁連によれば、『高い手数料の見込めそうな案件だけを手がける弁護士もいる』と指摘」と書いたうえで、続けて「債務者の利益を第一に考えないこうした弁護士が全国に100人程度いるとみる。」と書いていた。
これでは、高い手数料を見込めそうな案件だけを手がける弁護士が100人程度であるかのように読める。
しかし、100人程度いると言われているのは、整理屋と提携している弁護士であろう。
高い手数料を見込める案件だけを手がける弁護士はそれ以上にいっぱいいると思う。
おいしい事件だけ手がけることは違法ではないため、摘発のしようがないのが実情である。
2008年02月15日(金) |
東京地裁は改正租税法を1月に遡って適用することは合憲と判断 |
日経(H20.2.15)社会面で、2004年4月施行の改正租税法を1月に遡って適用することは違憲だとして、所得税還付を求めた訴訟で、東京地裁は、「遡及適用に合理的な必要性がある」として原告の請求を棄却したと報じていた。
しかし、この判決は理解できない。
経済取引では、税金を考慮しながら経済活動がなされる。
多くの節税商品が販売されるのもそのためである。
ところが、租税法を改正して、遡って適用したのでは合理的な経済活動はできないことになる。
実際、福岡地裁では、遡って適用することは違憲であるとの判断を示している。
判決理由で大門裁判長は「所得税は1―12月の期間税で、同じ年の土地売買によって所得税の取り扱いが異なると不平等が発生する」と指摘しているそうである。
しかし、そうであれば翌年の1月から改正法を適用すればいいのではないのだろうか。
2008年02月14日(木) |
許被告に懲役6年、田中被告に懲役3年の実刑判決が確定 |
日経(H20.2.14)社会面で、石橋産業から約179億円の約束手形をだまし取ったとして、詐欺罪などに問われた許永中被告や弁護士田中森一被告らの上告審で、最高裁は上告棄却の決定をしたと報じていた。
これで、許被告は懲役6年、田中被告は懲役3年とした実刑判決が確定する。
この事件について、田中被告は、『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』という自ら書いた書籍で無実を訴えていたが、それは通らなかった。
この詐欺事件はさておき、この本で読んで思ったのは、検事も上層部になると政治家と付き合うようになり、事件処理においても政治的判断をするのだなあということである。
もっとも、そのようなことは以前から言われていたことではあるが、実名を出しているので迫真性がある。
読んでいて、弁護士の感覚とはずいぶん違う気がした。
2008年02月13日(水) |
割りばし死亡事故で、東京地裁は医師の過失を認めず |
日経(H20.2.13)社会面で、4歳の男児が割りばしがのどに刺って死亡した事故で、病院の不十分な検査が死亡につながったとして、両親が病院などに損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は「診療に過失があったとはいえない」として請求を棄却したと報じていた。
ご両親はコメントで「民事裁判は、刑事裁判より過失が認められやすいと思っていた」と話したそうである。
痛ましい事故であり、両親の悲しみは察して余りある。
それゆえ、ご両親のコメントを揶揄するつもりは毛頭ないが、私としては「民事裁判は、刑事裁判より過失が認められやすい」という印象はない。
むしろ、民事裁判のほうが、刑事裁判よりも過失の認定が厳格ではないかと思うことさえある。
2008年02月08日(金) |
『認諾』とは請求を認めて争わない旨の意思表示 |
日経(H20.2.8)社会面で、客室乗務員の個人情報リストをJAL労働組合が無断で保有していた問題で、乗務員らが、日航などに計約4800万円の損害賠償を求めた訴訟で、日航側は請求を認諾し、全額を支払うことになったと報じていた。
日航は、「会社再建中の労使間の係争は避けねばならず、大所高所から認諾した。組織としてのリスト作成への関与や不当労働行為という原告の主張自体を認めたわけではない」とのコメントを出したそうである。
裁判上の和解であれば、『解決金』という名目を付けられるから、「大所高所から判断した。原告の主張を認めたわけではない」という言い訳もできる。
しかし、日航は、和解ではなく、請求を認諾している。
『認諾』とは、「請求を認めて争わない旨の意思表示である」。
それゆえ、認諾しながら、「原告の主張自体を認めたわけではない」というのは苦しい言い分である。
2008年02月07日(木) |
「多重人格を認定し実刑判決」 |
日経(H20.2.7)社会面で、裁判所が被告人の多重人格を認定して実刑判決を言い渡したという記事が載っていた。
しかし、「多重人格を認定し実刑判決」というのは、見出しとして混乱しているだろう。
「多重人格を認定したが、実刑判決」というのならば分かるが・・。
2008年02月06日(水) |
パウエルの二重契約問題 |
日経(H20.2.6)スポーツ面で、パウエルが二重契約したといわれている問題で、パ・リーグが契約の優先権がソフトバンクにあると勧告したことに対し、「オリックスが勧告を拒否」と報じていた。
事実関係はよく分からないが、パウエルは二重契約ではないと言っているがオリックスは二重契約であると主張しているようである。
そのように事実関係に争いがある中で、パ・リークでは、「オリックスからの登録申請を受理しても、パウエルとの契約が成立しなければ意味がない」という理由で、ソフトバングに優先権を認めた。
しかし、少なくとも、裁判では、言い分が異なれば、それぞれの主張を十分聞き、それを裏付ける証拠があるかどうかを調べた上で判断する。
どうも、プロ野球の世界は、違う論理で動いているようである。
2008年02月05日(火) |
日教組の全体集会をホテル側が使用拒否 |
日経(H20.2.5)2面社説で、日教組がプリンスホテル新高輪で開く予定だった教研集会の全体集会の使用をプリンスホテルが拒否したことについて、ホテル側の対応を非難していた。
プリンスホテルが使用を拒否したため、日教組は使用を認める仮処分申立て、裁判所は日教組の言い分を認めて、会場の使用を命じている。
日教組とプリンスホテルという私人間の争いなので、裁判では、直接的には憲法は適用されず、契約解除が有効かどうかが争われたと思われる。
この件では、日教組は事前に教研集会の全体集会に使用することを伝えているから、日教組に非はない。
それゆえ、ホテル側が一方的に解除することはできないことは明らかである。
それにもかかわらず、東京地裁の判断に対しプリンスホテルは抗告までして争っている。
言い分が認められるとでも思ったのだろうか。
2008年02月04日(月) |
「前時津風親方 立件へ」 |
日経(H20.2.4)社会面で、時津風部屋の力士が死亡した事件で、死因を再鑑定したところ、死亡直後の鑑定と同様、「外傷性ショック死」と鑑定したと報じていた。
これを受けて、愛知県警は、親方や兄弟子などを逮捕して取調べをするようである。
ただ、現在のところ、親方や兄弟子らは「通常の稽古だった」と暴行を否定しているそうである。
仮に、全員が暴行を否定する供述をこのまま維持した場合には、この事件は難しくなるかもしれない。
客観的には「暴行」であっても、主観的には「通常の稽古」と思っていれば、暴行についての故意の認定が難しいからである。
捜査機関が慎重なのは、この故意の立証が難しいため、十分な証拠を集めてから取り調べるつもりだからであろう。
2008年02月01日(金) |
20年間の除斥期間を適用せず |
日経(H20.2.1)社会面で、殺人事件の時効が成立した後に自首した男に対し、遺族が損害賠償を求めていた訴訟で、東京高裁は、除斥期間の適用を認めず、4200万円の賠償を命じたと報じていた。
法律の規定では、不法行為から20年経過すると損害賠償請求ができない。
ただ、判例は、除斥期間を適用することが著しく正義に反する場合には、例外的に損害賠償請求が認められるという枠組みを作っている。
問題は、どのような場合に「著しく正義に反する」といえるかである。
一審では除斥期間を適用して殺人についての損害賠償は棄却しており、除斥期間の適用が「著しく正義に反する」とはしていない。
したがって、現時点ではいかなる場合に「著しく正義に反する」かについての判断基準は確立しているとはいえないかもしれない。
そのため、今後の判例の集積によって徐々に具体的基準が明らかになっていくのであろう。
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