2006年07月31日(月) |
パロマの瞬間湯沸かし器中毒事故で、弁護士らが電話相談 |
日経(H18.7.31)社会面に、パロマの瞬間湯沸かし器の中毒事故を受けて、弁護士らが全国5か所で電話相談を実施したと報じていた。
湯沸かし器の利用者は、どこに相談したらいいのか分からない状況だろうから、このような素早い対応は評価できるし、その早さには感心させられる。
日経(H18.7.28)1面下の「春秋」で、会社の外部の人に対し、自分の上司をどう呼ぶかについて、7割は呼び捨てにするが、学校の先生や医師では、身内でも「○○先生」と呼ぶのが多数であると書いていた。
先生や医師だけでなく、弁護士も同じ傾向がある。
せいぜい、「○○先生」ではなく「○○弁護士」というぐらいで、呼び捨てするのは少数派である。
これは、「○○先生」というひとかたまりで、一つの固有名詞という感覚があるためだろう。
「『先生』と言われるほどバカでなし」という言葉もあるぐらいだから、「先生」がえらいとは考えていないと思うのだが・・(えらそうな「先生」も中にはいるが)。
2006年07月27日(木) |
フラッシュメモリーの発明の対価は8700万円 |
日経(H18.7.27)夕刊で、フラッシュメモリーの発明をした元東芝社員が、東芝に対価の一部として約11億円の支払いを求めた訴訟で、東芝が和解金8700万円を支払う和解が成立したと報じていた。
発明の偉大さに比較して、金額が少ないなあという印象である。
11億円の支払いを求めながら、8700万円で和解に応じたということは、裁判所の強い和解勧告があったのだろう。
職務発明の対価について、裁判所は、一つの基準を作ろうという意識が強いようである。
それ自体は悪くないが、その額はせいぜい1億円前後という意識があるのではないか(青色発光ダイオードは6億円であったが、一審判決は200億円であった)。
しかし、フラッシュメモリーが素晴らしい発明であることは間違いない(元東芝社員は、この発明により東芝は200億円もの利益を得ていると主張している)。
それなのに、その発明の対価が1億円を切るというのでは、発明に対する夢がなくなってしまうのではないか。
新興IT企業の中で何十億円というファイナンス話が飛び交っているときに、裁判所のスケールの小ささを感じてしまう。
2006年07月26日(水) |
弥生の顧客情報が流出 |
日経(H18.7.26)社会面に、ライブドア子会社である弥生のソフトを使用している顧客情報16万件が流出したという記事が載っていた。
私の事務所も弥生会計を使っているから、流出した顧客情報に入っている可能性が高い。
しかし、情報の流出は、以前ほどは騒がれなくなったようである。
ほとんどの場合、情報が流出しても実際上の損害は生じないからだろう。
2006年07月25日(火) |
電話機の訪問販売会社に業務停止命令 |
日経(H18.7.25)夕刊で、個人事業主らを狙って「黒電話は使えなくなります」などとうその勧誘をして高額な電話機のリース契約を結ばせていた業者に対し、経済産業省が、特定商取引法違反で業務停止命令を出したと報じていた。
電話機リースの訪問販売については、最近トラブルが多い。
先日も、解散寸前の会社が、必要もないのに高額の電話機を購入させられた件の相談を受けた。
すぐに内容証明郵便を送り、代金全額の返還を要求した。
相手の会社は最初はごちゃごちゃ言っていたが、こちらが強硬に「元に戻して代金を返せ」と要求したところ、原状回復工事をしてお金も全額返してきた(このケースではリースを組んでいなかった)。
負い目があったからだろう。
2006年07月24日(月) |
弁護過誤訴訟のすすめ? |
日経(H18.7.24)5面に、「弁護士過誤訴訟のすすめ」というインタビュー記事が載っていた。
内容は、医療過誤は責任を問われるのに、弁護過誤のために裁判で負けても責任を問われないのはおかしいというものである。
確かに、医者の技量に差があるのと同様、弁護士にも技量の差はあるとは思う。
それゆえ、弁護士の争い方がまずくて裁判で負けることもあるかもしれない。
私の経験でも、相手方弁護士の争い方がまずくて、その結果、有利な条件で和解できたこともある。
しかし、世間が思っているほど、弁護士の腕によって結論が変わるケースは多くはないと思う。
というのは、争っている事実は過去という変えようのない事実であるから、争い方によって結論が大きく異なるはずがない(事実を捏造したり、証拠を偽造したりすれば別であるが)。
裁判官も真実を発見しようとする意識が強いから、弁護士の争い方にあまり影響されない側面がある。
また、裁判では、相手方の主張を見て、何度も考える機会があるから、ミスを修正することも可能だからである。
もっとも、控訴期限などの定められた期間をうっかり忘れて過ぎてしまったりするなどの弁護過誤はよく起こっている。
この種のミスは言い訳できない。
しかも、油断すると誰でも起す可能性があるミスなので、こちらの方が怖い。
2006年07月21日(金) |
ストックオプション 過少申告加算税まで課税するのは酷である |
日経(H18.7.21)社会面に、ストックオプションの課税上の扱いに関する訴訟で、「最高裁が、過少申告加算税の課税を認めた2審判決を見直しか」という記事が載っていた。
現在では、最高裁判決によって、ストックオプションは給与所得であるとされているが、かつて税務署は一時所得として申告することを認めていた。
その後、税務署は、ストックオプションは給与所得であるという見解を取るようになり、おまけに、一時所得として申告した人に対し、過少申告加算税を課税したのである。
しかし、これはひどい話である。
税務署は一時所得として申告することを認めていたのに、後で給与所得であると変更すること自体、租税法律主義に反するのではないかという疑問がある(最高裁は、変更を認めたが)。
そのうえ過少申告加算税まで取るのでは、納税者にとっては踏んだりけったりである。
過少申告加算税の課税を認めた2審判決に対する最高裁の見直しは当然であると思う。
2006年07月20日(木) |
犯罪報道と裁判員制度 |
日経でなく、朝日(H18.7.19)14面,15面で、秋田男児殺害事件の過熱した取材についての検証記事が載っていた。
その中で、この事件では、被疑者が破産したことなどの生活状況が詳細に報道されたが、今後裁判員制度が始まると、このような裁判員に予断を与えかねない報道のあり方が問題になってくるという指摘があった。
私は、報道の自由の重要性に鑑みると、裁判員制度が始まるからという理由で報道が自主規制すべきではないし、その必要性はないと思う。
ただ、犯罪事件では、報道されるかなりの部分が警察から得た情報であり、そのような情報は正確性が検証されていない。
それゆえ、裁判員に対しては、報道によって得た情報から遮断するための方策は必要になってくると思う。
2006年07月19日(水) |
日本航空の増資について |
日経(H18.7.19)4面に、日本航空が、株主総会の直後に大型増資を発表した問題で、日本証券業協会会長が、「事前に株主に説明することができたのに、十分な説明がなされていない」と批判したと報じていた。
増資は原則として取締役会の決議事項なので(但し、公開会社と非公開会社では規定の仕方が若干違う。)、事前に株主に説明しなかったとしても違法ではない。
しかし、増資は株主の利益に重大な影響を与えるのであるから、株主にはできるだけ理解を得る努力をすべきであろう。
とくに、今回の日本航空の増資については、再建プランの中で増資がどのように位置づけられているかが不明であるという疑問が呈されており、その当否が日経の社説に論じられたほどである。
それゆえ、株主からの追及を避けるために、説明を避けたというのであれば、なおさら問題である。
2006年07月18日(火) |
パロマ製瞬間湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故 |
日経(H18.7.18)社会面で、パロマが販売した瞬間湯沸かし器で一酸化炭素中毒事故が相次いだ問題の続報をしていた。
この瞬間湯沸かし器は、パロマではない修理業者が安全装置を改造した結果、事故につながったものである。
そのため、パロマ側は、自社製品に問題はないと記者会見で言っているようである。
しかし、果たしてそうだろうか。
瞬間湯沸かし器の安全装置が働かないと死亡事故につながる恐れが高いのであるから、安全装置を容易に改造できないようにすべきである。
ところが、安全装置を外す改造作業は極めて容易であったようである。
そうであれば、改造しやすい製品を作ったこと自体が欠陥であるといえるであろう。
それだけでなく、一酸化炭素中毒事故が相次ぎ、それを認識しながら放置していたとなると、業務上過失致死傷罪として刑事事件になる可能性も高い(古い事故は時効になっているかもしれないが)。
パロマの経営陣は、自社に責任はないと言っているようであるが、事態の重大性について認識が甘いのではないだろうか。
2006年07月14日(金) |
裁判官出身の最高裁判事 |
日経(H18.7.14)社会面で、外出できない知的障害者が、「郵便での投票を認めないのは選挙権を保障した憲法に違反する」として国に対し損害賠償を求めた事件で、最高裁は、「国会が立法措置を怠ったとはいえない」として請求を棄却したと報じてた。
ただ、泉判事の補足意見があり、「郵便などによる。投票を講じていない公職選挙法は違憲状態である」としている。
泉判事は裁判官出身である。
裁判官出身の最高裁判事は、立法裁量を広く認め、司法判断を差し控える傾向があるが、この判事はそのようなこともなく、司法の本来の役割に忠実な印象を受ける。
2006年07月13日(木) |
離婚時の年金分割制度 |
日経でなく、朝日ネットニュース(H18.7.13)で、厚生労働省が、来年4月に導入される離婚時の年金分割制度の省令案をまとめたと報じていた。
離婚時の年金分割制度について、世間の関心は高いようであり、弁護士も相談されることが多い。
そのため、日弁連では8月に「離婚時における厚生年金の分割と財産分与」と題して特別研修が開かれることになっているが、すぐに定員一杯になってしまった。
施行日が近づくに連れ、ますます関心は高まるものと思われる。
2006年07月12日(水) |
東京地裁 格安DVDの販売認める |
日経(H18.7.12)社会面で、映画「ローマの休日」など激安DVDの販売差し止め仮処分申し立てで、東京地裁は、同作品の著作権は切れていると判断したと報じていた。
この決定にはびっくりした。
識者のコメントは、「東京地裁の決定は説得力がある」というものであるが、果たしてそうだろうか。
立法者意思は、53年公開の映画の著作権の保護期間を延長する趣旨であったからであり、そのような立法者意思を軽視することはできないからである。
ただ、そもそも映画の著作権保護期間を50年から70年に延長することが妥当かという問題はある。
50年もあれば、投下資本は十分回収できると思われるからである。
2006年07月11日(火) |
罰金刑にも執行猶予が付く |
日経(H18.7.11)社会面で、社会保険庁の職員が政党のビラを配布したとして国家公務員法違反に問われた事件で、東京地裁の判決に対し、検察庁が控訴したと報じていた。
この事件で東京地裁は罰金10万円、執行猶予3年の判決を言い渡しており、検察庁はそれを不服としたものである。
罰金刑に執行猶予が付けられることには違和感があるかもしれない(以前、司法試験の択一試験で、「罰金刑に執行猶予が付けられるか否か」という問題が出た記憶がある。)
執行猶予制度は、もともと短期自由刑の弊害を避けようとするものである。
そうすると、自由刑でない罰金刑に執行猶予を付すことは制度趣旨に反しているようにもみえる。
しかし、執行猶予制度には、取り消しの可能性を警告することによって被告人の再犯防止を図るという趣旨もある。
そのような見地から、法律は、罰金刑にも執行猶予を付けることを認めているといわれている。
そうはいっても、罰金刑が取り消されても、お金を払えばいいわけだから、威嚇効果は少ないと思う。
そのせいか、罰金刑に執行猶予が付されることは多くはない。
今日は新聞休刊日であるが、昨日の日経(H18.7.9)社会面で、奈良放火殺人事件で逮捕された長男に、「寛大な処分を求める」嘆願書が1500通寄せられていると報じていた。
しかし、一般的にいって、被害者以外が書いた嘆願書に対する裁判所の扱いは冷淡である。
証拠として提出することを認めないことも多い。
被告人を直接知らない人まで嘆願書に署名していることも多く、そのような場合には証拠価値がないという考え方なのだろう。
そのため、弁護人としては、なんとか嘆願書を裁判に生かそうと努力する。
ただ、被害者以外が書いた嘆願書の証拠価値が高くないことは否めない。
2006年07月07日(金) |
弁護士は依頼者の利益のために活動すべき |
日経(H18.7.7)最終面(文化面)の「交遊抄」というコラムで、参議議員が弁護士業務をしていたころのことについて書いていた。
その議員が、登山で急死した大学生の父親の代理人となり、大学に対して損害賠償を求めた事件の第一回口頭弁論期日の終了直後、大学側の代理人弁護士(現在 日弁連会長)が、原告側の席に近寄ってきて、深々と頭を下げたそうである。
そして、垣根を越えた礼節に深く感動したという趣旨であった。
しかし、私であれば、民事事件の第一回口頭弁論期日で相手方に頭を下げないだろう(刑事事件で、被害者に頭を下げることはよくある。)。
もちろん、息子を突然失った父親のやり切れない思いは理解できる。
しかし、弁護士は依頼者の代理人である。
相手方に頭を下げていると、「どっちを向いて仕事をしているのだ」と思われ、依頼者との信頼関係を失くしかねない。
いろんな意見があると思うが、私としては、弁護士は、相手方の気持ちを内心では忖度しつつも、できるだけ依頼者の利益のために活動すべきであり、また、依頼者の誤解を生むような行動は慎むべきであると考えている。
日経(H18.7.6)社会面に、ごみ焼却炉入札談合事件で、横浜市は控訴を断念したという記事が載っていた。
この事件で、横浜地裁は、横浜市が談合した会社に損害賠償請求しないことが違法であると判断した。
そのため、横浜市が控訴するかどうかが問題になっていたが、控訴を断念することにより、横浜市の違法性を認めたわけである。
一般的に、行政は、裁判で確定するまで自己の間違いを認めない傾向があるように思われる。
その意味で、横浜市が誤りを認め、控訴を断念したということは評価したい。
2006年07月05日(水) |
集中審理の功罪に付いて |
日経(H18.7.5)社会面で、広島女児殺害事件で、被告人に無期懲役の判決が言い渡されたと報じていた。
この被告人は、ペルーで性的犯罪の経歴があったようであり、その事実が証拠として提出されれば死刑判決になった可能性がある。
ところが、初公判から5日連続で審理するという集中審理を行ったために、検察官が、ペルーでの犯歴を証拠提出する時間的余裕がなかったと一部の新聞が報じていた。
集中審理は拙速となり、被告人の防御が不十分になる可能性があるという批判はよくなされる。
しかし、この裁判は、集中審理が、検察官の立証を不十分なものにさせる場合があることを示したといえる。
その意味で、集中審理の功罪について考えされられる事件である。
2006年07月04日(火) |
営業日報は百害あって一利なし? |
日経(H18.7.4)2面広告欄の「御社の営業がダメな理由」という本で「営業日報は百害あって一利なし」という見出しがあった。
確かに、営業日報を書いたからといって営業成績が上げるわけでないだろう。
しかし、営業日報が「百害あって一利なし」というのは言い過ぎではないだろうか。
「営業成績がよくないので、その社員を解雇したい」という相談を受けることがある。
しかし、通常は、営業成績が悪いというだけで直ちに解雇はできない。
ところが、営業成績が悪い人の中には、うその営業日報を書いて取り繕っている人がおいる。
そこで、そのような虚偽の営業日報を作成していたことが分かれば、解雇の正当事由は認められやすいことになる。
また、会社同士の紛争で、相手方の会社に訪れて説明したかなど、担当者の行動が問題になることがある。
そのような場合には営業日報は重要な証拠となる。
それゆえ、営業日報が「百害あって一利なし」とまではいえない。
日経(H18.7.3)社会面に、薬害C型肝炎訴訟で、勝訴した9人を含め、13人全員が大阪地裁の判決を不服として控訴するという記事が載っていた。
この判決の内容を詳細に知らないが、「勝訴した9人」というのが、仮に全面的に勝訴しているのであれば、控訴は認められず、控訴却下となる。
主張が認められたのだから、それ以上、訴訟をする必要性(「控訴の利益」という)がないためである。
ただ、原告団によれば、控訴の目的は、「全員で戦う意思表示を示すため」とのことであり、それは一つの考え方であると思う。
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