2005年06月30日(木) |
悪質リフォーム クレジット会社の責任は重い |
日経(H17.6.30付)社会面で、高齢者に不要な住宅リフォーム契約を結ばせた悪質リフォーム会社の元社員が逮捕されたという記事が載っていた。
被害額は少なくとも数十億円になるそうである。
問題は、そのリフォーム代金について、ほとんどクレジット契約が締結されていることである。
各地の消費生活センターには被害相談が数百人もあるそうだから、クレジット会社にも苦情は相当あったはずである。
それにもかかわらず、このような悪質リフォーム会社と加盟店契約を続けていたクレジット会社の責任こそ問われるべきではないかと思う。
2005年06月29日(水) |
コクドの株主総会は召集手続きが違法? |
日経(H17.6.29付)1面で、コクド株について、東京高裁は、創業一族に株式の所有権があることを認定したと報じていた。
重要なことは、その決定の中で、「真実の株主に招集通知を出しておらず、総会を開いた場合、軽微でない問題が生じる」と述べていることである。
つまり、召集手続きが法律に違反しているため、そのまま株主総会を開いた場合、総会決議が取消しになる可能性があるということである。
記事の中で、コクド広報室の話として「当社は、猶二氏を株主とは判断しておらず、株主総会は予定どおり開催する」と述べている。
「おいおい、本当に総会開催を強行していいの」と思った。
せめて、顧問弁護士と十分打ち合わせた上でコメントを出すべきではなかっただろうか。
日経(H17.6.28付)社会面に、うつぶせ寝させといた乳児が死亡した事件で、東京高裁において保育所側が過失を認める和解が成立したという記事が載っていた。
この事件では、乳児はうつぶせ寝であったが、窒息死ではなく、死因は特定されていない。 いわゆる乳幼児突然死症候群である。
私が修習生のときに、乳幼児突然死症候群で亡くなった乳児の遺体解剖に立ち会ったことがある。
両親は激しいショックを受けていると聞いたが、子どもを持つ親の1人として、そのショックは理解できる。
記事によれば、裁判所は、「うつぶせ寝にして長時間目を離したことが保育所の過失である」と判断したようである。
しかし、死因が特定できていないのであるから、過失と死亡との間に因果関係があるとまではいえないはずである。
そうすると、判決になると、両親の訴えは認められなかったと思う。
和解には、このような場合に、保育園側に一定程度の責任を認めさせて、妥当な解決をはかることができるという意義がある(この事件でも、6000万円の請求に対し、和解金額は3000万円であったようだ)。
和解には、本来判決できちんと認定されるべき事実や、認められるべき権利があいまいにされてしまうという問題はあるが、本件についていえば、妥当な解決であったと思う。
2005年06月27日(月) |
明日、和歌山カレー事件の控訴審判決 |
日経(H17.6.27付)社会面で、和歌山県の毒カレー事件で、林被告の控訴審判決が明日あり、「供述の信用性が焦点である」と報じていた。
確かに、直接的には、供述の信用性が焦点になっているのかもしれない。
しかし、刑事裁判だけでなく、民事裁判でも、裁判官は、当事者の供述は、自分に不利でない限り、あまり信用しない。
裁判官は、もっぱら、その供述を裏付ける客観的証拠があるかどうかをみているのである。
その意味では、和歌山カレー事件の焦点は客観的証拠の有無ということになると思う。
2005年06月24日(金) |
アメリカのカード情報の不正利用 損害の最終的負担者は誰? |
日経(H17.6.24付)4面に、アメリカのカード情報の不正利用で、被害額がすでに日本だけで1億2000万円を超したと報じていた。
それだけの利得を犯罪者は得ているわけである。
カード情報は、情報処理会社から漏れたようであり、一次的責任は情報処理会社にあると思われる。
ただ、顧客は、情報処理会社とは契約関係にないから、被害を受けた顧客はカード会社に責任を問う可能性が高い。
今後、誰が賠償責任を負うことになるのかということが問題になると思う。
2005年06月23日(木) |
禁煙被害による損害賠償請求 |
日経(H17.6.23付)社会面に、元喫煙者が、たばこ被害を受けたという理由で、国や日本たばこに損害賠償をした訴訟で、東京高裁は控訴を棄却したと報じていた。
記事によれば、「たばこの販売、製造が違法とはいえない」とした一審判決を支持したとのことである。
確かに、タバコの販売が違法ということになると、酒の販売も違法ということになりかねない。
したがって、販売や製造が違法であるとはいえないだろう。
私があえて法律構成するならば、ガンになる危険性が高いのに、それを表示しなかったという「表示上の瑕疵」を主張して製造物責任を追及するということが考えられる。
それが認められるかどうかは別にして、タバコの害に関する甘い注意書きに対する、ひとつの問題提起になったのではないだろうか。
もっとも、実際の訴訟でもそのような主張をしているのかも知れないが・・。
2005年06月22日(水) |
株主代表訴訟を制限することは妥当か |
日経(H17.6.22)19面の「『会社法』どう変わる」というコラムで、経団連が、株主代表訴訟を制限する案を求めたことに対し、国会で修正され、現行の枠組みに近い形になりそうであるとの記事が載っていた。
経団連が求めたの案の中には、求める損害賠償額よりも、会社が負担する弁護士費用のほうが高いなど、会社に過大な費用負担が生じる場合には、株主代表訴訟を起せないという規定があったそうである。
しかし、これはひどい提案である。
当該取締役は会社に損害を生じさせる行為をしたのである。
そうであるならば、そのような取締役の違法行為を防止する意味から、実際の損害額よりも会社の負担する費用が高くなることがあったとしても、株主代表訴訟は認めるべきであろう。
もちろん、経団連が心配するような事案はあり得る。
例えば、損害額が1万円程度しかないのに株主代表訴訟を提起されたような場合である。
しかし、そのような場合には、会社に対する嫌がらせ目的の代表訴訟であるとして、裁判所が訴えを退けることが可能であるから、会社に過度な負担が生じる恐れはないであろう。
経団連は、会社利益を代表するとはいえ、公益的立場もあるのだから、公正かつ適正な提案をすべきではないかと思う。
2005年06月21日(火) |
裁判員制度は、裁判員に負担になると思う |
日経(H17.6.21)社会面に、裁判員制度の導入に当たり、東京地裁で模擬裁判が開かれたと報じていた。
その模擬裁判では、午前中に法廷が開かれ、午後からは裁判員の評議が行われたが、結論は出なかったそうである。
実際の裁判で結論が出なかった場合には、直ちに多数決で結論を出す場合もあるだろうが、別の日に再度評議を行うこともあり得るだろう。
別の日に再度評議するということになると、裁判員にはかなりの負担になると思う。
そのようなことを考えると、裁判員制度がきちんと根付くのか心配である。
日経(H17.6.20)1面に、萩国際大学が定員割れで、大学初の民亊再生申請と報じていた。
この大学は、定員300人に対し、昨年の入学者は22人、今年は42人だったそうである。
少子化時代を迎えて、今後、入学希望者が増えていくとは到底思えない。
民亊再生は、「再生」することが目的である。
しかし、これでは「再生」は不可能ではないだろうか。
日経(H17.6.17)11面に、自動車にもシックハウス対策が広がっているという記事が載っていた。
シックハウス症候群とは、家を新築したときなど、入居者がめまいや頭痛などを起す健康障害をいう。
原因は、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物と言われており、そのため、揮発性有機化合物を使っていた自動車でも対策が必要ということになのだろう。
シックハウス症候群による健康被害については、マンション業者などの売主に損害賠償請求などを求めた裁判が全国各地で提起されている。
ただ、少し古い判例では、「本件建物建築当時の平成5年ころ、シックハウス症候群の発症を予見することはできなかった」として、マンション販売業者に過失責任を認めていない。
しかし、シックハウスという言葉も定着した現在、同じような結論になるとは思われない。
2005年06月16日(木) |
懲役刑と罰金刑のどちらが重い? |
日経(H17.6.16)夕刊に、わいせつ漫画を出版した出版社社長に対し、東京高裁は、「漫画と実写物ではわいせつ性に差がある」として、一審判決の「懲役1年、執行猶予3年」を破棄して、罰金150万円を言い渡したと報じていた。
刑法の規定では、罰金刑よりも懲役刑の方が重いことになっている。
被告人は懲役刑から罰金刑になったのだから、法律上は減軽されたといえる。
しかし、懲役刑であっても、執行猶予の場合には刑務所に行く必要がない。 お金を払う必要もない。
それに比べると、罰金刑として150万円を支払うのでは、被告人としては、かえって重くなったと考えるかもしれない。
2005年06月15日(水) |
矢沢栄吉に似た絵の無断使用についての判決 |
日経(H17.6.15)社会面に、矢沢栄吉が、パチンコ機の画面に自分と似た人物の絵を無断で使用したとして訴えていた訴訟の記事が載っていた。
記事によれば、東京地裁は、「ある程度矢沢さんを想起させる絵だが、本人と識別できるほどは似ていない」と判断したそうである。
なんだか、似ているのかどうかよく分からない判決である。
矢沢栄吉は、「控訴したら別の判決が出るかもしれない」とコメントしたそうであるが、確かにこの判決文のニュアンスでは、裁判官が変われば別の結論が出たかもしれない。
2005年06月14日(火) |
ネット規制と表現の自由との関係 |
日経(H17.6.14付)2面で、政府は、ネット情報の規制を検討しているという記事が載っていた。
ネットに爆弾製造法などが掲載されても、それを規制することはできない。
そのため、何らかの規制が必要であるという議論が出てきている。
しかし、表現行為に対する過度の規制は、表現活動を萎縮させることになりかねない。
ネットにおける規制と表現の自由をどのように考えるかはインターネットの黎明期にかなり議論された。
現在、ネットが誰でも使える道具となったことから、再度、ネットの規制と表現の自由との関係が議論されるようになってきたように思われる。
難しい問題であるが、表現の自由の優越的地位という原則に立ち返って考えるべきではないかと思う。
2005年06月10日(金) |
最高裁は、ライフに対する過払い金返還請求を認めず |
日経(H17.6.10付)社会面で、利息の過払い金があった債務者が、会社更生手続中のライフを相手に、払いすぎた利息の返還を求めた事案で、最高裁は、過払い金の返還請求を認めない判断をしたという記事が載っていた。
会社更生手続では、期間内に債権届けをしなければならない。
ところが、訴えた人は、自分に過払い金があるとは思っていなかったから、期間内に債権届けすることができなかったのである。
過払い金の返還請求を認めなかった最高裁の判例に対しては、消費者問題を専門とする弁護士からは強い批判が寄せられている。
しかし、会社更生手続の法的安定性を考えると、最高裁の判断はやむを得ないと思う。
2005年06月09日(木) |
統一的な投資家保護ルールが望まれる |
日経(H17.6.9付)4面に、金融庁が、投資サービス法案に銀行や保険も対象にすると表明したという記事が載っていた。
これに対して、銀行や保険業界は反発しているそうである。
これまで、この種の規制法案は、監督庁の縦割り行政に応じて、業界ごとに規制法案が作られてきた。
しかし、業界ごとに規制法案をつくるのは監督官庁や業界の都合に過ぎず、消費者にとっては分かりにくいこと甚だしい。
消費者の使いよい投資サービス法を目指すならば、規制対象は広くして、統一的な投資家保護ルールをつくるべきであると思う。
日経ではなくサンケイスポーツ(H17.6.8付)であるが、若貴問題に関連して、二子山親方(元大関貴ノ花)の年寄名跡証書が行方不明になっていることが分かったという記事が載っていた。
年寄株(正確には「年寄名跡」)は、ほとんど有償で譲渡されている。
かつて年寄株譲渡の対価の支払いを求めて争われたことがあり、その裁判でも、年寄株に財産的価値を認められている(裁判所は、その年寄株の譲渡代金を1億7500万円と認定している)。
ただ、年寄名跡は、相撲協会で決めた資格に過ぎず、年寄名跡証書は、転々流通することが予定された有価証券ではない。
したがって、年寄名跡証書を無くしたとしても、相撲協会が認めれば再発行は可能である。
それにしても、年寄株に2億円近い価値があるとするなら(「二子山」は3億円ともいわれているが)、それだけの収入が見込めるということなのだろう。
2005年06月07日(火) |
どうでもいいことだが |
日経(H17.6.7付)1面下の広告欄に、「かしこい契約書の結び方」というタイトルの本の広告が載っていた。
でも、「契約を結ぶ」とは言うが「契約書を結ぶ」とは言わない気がするのだが。
どうでもいいことではあるが・・。
日経(H17.6.6付)19面に、ニッポン放送の社外取締役を務めていた久保利英明弁護士が、ライブドアのニッポン放送買収事件についてコメントをしていた。
そのコメントによれば、ニッポン放送には19人の取締役がいたが、そのうち社外取締役は4人に過ぎず、仮に、社外取締役が過半数いたら、新株予約権を発行するという会社の判断を裁判所は尊重したかも知れないというものであった。
しかし、企業価値は株主の判断に委ねるべきであるという裁判所の考え方からすれば、社外取締役が過半数いても結論は変わらないと思う。
先のコメントは、なんだか負け惜しみのような印象を受けた。
日経(H17.6.3付)3面に、カード被害救済法案で、原則として金融機関が全額補償することになる見込みと報じていた。
ただ、過去の被害について補償されないようである。
しかし、これまで裁判所は、キャッシュカードによる不正な引き出しについて、銀行の責任をほとんど認めなかった。
そのため、銀行の責任を問うことを諦めた人も多いと思う。
そのように諦めた人を救済するために、過去の被害についても補償すべきではないだろうか。
日経(H17.6.2)社会面に、熟年離婚が減少しているという記事が載っていた。
しかし、離婚相談を受けている実感としては、それほど減っているように思えない。
実際に熟年離婚が減っているのであれば、それはリストラなどのため、離婚しても経済的自立がしにくくなっているからではないだろうか。
とすると、景気がよくなってくると、再度、熟年離婚は増えてくるように思う。
2005年06月01日(水) |
住基ネットはプライバシーの侵害にあたらないとの判決 |
日経(H17.6.1)社会面に、名古屋地裁が、住基ネットは住民の権利が侵害しないという判決を下したという記事が載っていた。
先日判決があった金沢地裁では、住基ネットは住民のプライバシーの侵害にあたるという、名古屋地裁と逆の判断をしている。
私も、情報漏れなどの危険性を考えると、果たして住基ネットを整備する必要性があるのかという疑問がある。
しかし、住基ネットへの個人情報の提供がブライバシー侵害にあたるほどの違法性があるとは思われない。
住基ネットに関しては各地の裁判所で争われているそうであるが、おそらくほとんどの裁判所は、プライバシーの侵害にあたらないと判断するとのではないだろうか。
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