今日の日経を題材に法律問題をコメント

2005年01月31日(月) 中村七之助が釈放

 日経(H17.1.31)社会面に、中村七之助(中村勘九郎の次男)が公務執行妨害で逮捕されたと報じていた。


 少なくとも10日間は勾留され、公務執行妨害ではなく、暴行罪に切り替えて略式起訴で罰金刑となって釈放されるか、10日程度で起訴して、保釈で出てくるかのいずれかと思っていた。


 ところが、夜のニュースで、釈放され、謝罪会見を行ったと報じていた。


 一般の人に比べて処分が甘いのではないかと思う。



2005年01月28日(金) 偽札の造り方を書くと、犯罪の幇助となる?

 日経(H17.1.28)社会面に、偽札が大量に出回った事件で、警察は、偽札の造り方を記載したサイト関係者の捜査を検討していると報じていた。

 
 まさか、警察は、偽札の造り方を記載したことが犯罪の幇助となると思っているのではないだろう。


 昨年、ファイル交換ソフトのWinnyの作成が幇助になるかが問題になった。

 偽札の造り方を記載したことはそれ以上に犯罪に遠いと思う。



2005年01月27日(木) 最高裁が国籍制限は合憲との判断

 日経(H17.1.27)1面に、東京都が管理職について外国人の受験を拒否したことについて、最高裁は、国籍制限は合憲との初判断を示したと報じていた。

 最高裁の判断は、憲法は、外国人が公務員になることを保障しているわけでなく、外国人を採用するかどうかは地方自治体の裁量に委ねられているというものであった。


 最高裁らしい判断であり、初判断とはいえ目新しさはない。


 驚いたのは、2人の裁判官が違憲判断をしたということである。

 最高裁の意識も変わってきたのかなあと思った。



2005年01月26日(水) 最高裁が、ストックオプションは給与所得であるとの判断

 日経(H17.1.26)1面で、最高裁が、ストックオプションは給与所得であるとする初の判断を示したと報じていた。


 確かに、ストックオプションが給与所得であるということは結論としては正しいかもしれない。


 しかし、問題は、ある時期まで税務署はストックオプションを一時所得して指導していたことである。

 そのため、ストックオプションは一時所得として申告すればよい考えて、ストックオプションを選択した人もいたはずである。

 それが遡って給与所得ということになると、課税に対する予測ができない。


 これは、課税に対する予測可能性を確保するために、遡って課税してはならないという租税法律主義の趣旨に反するといえる。

 最高裁は、この点を問題にすべきではなかったかと思う。



2005年01月25日(火) 銀行の防犯カメラの位置について

 日経(H17.1.25)1面に、全銀協は、激増する偽造カードに対応するために、ICカードの導入や、被害者対策として、ビデオテープの保管期間の延長を決めたという記事が載っていた。


 このビデオテープで思うのであるが、銀行の防犯カメラは、だいたいが上からしか捉えていないため、犯人の頭しか写ってないことが多い。


 正面から撮られているということになると、犯罪者もATMでお金をおろすことは相当躊躇すると思う。


 上から撮っているのは、フライバシーに配慮しているのかもしれない。

 しかし、防犯カメラを設置している以上、正面からでなく頭上から撮るというような末梢的なことでプライバシーに配慮しても無意味であろう。



2005年01月24日(月) 相続税回避のため?

 日経(H17.1.24)社会面に、コクド株について、堤会長の実弟が、「コクド株の大半は堤家の財産である」「相続税の支払いを回避するために、コクド株を法人や他人名義で所有していた」と主張しているという記事が載っていた。


「相続税の支払いを回避するため」と堂々といえるものだと感心する。


 この会社がいかに滅茶苦茶な会社であるかということが分かった。



2005年01月21日(金) 社外取締役は万能ではない

 日経(H17.1.21)17面に、「開示不信 米国の挑戦」というコラムで、P&G社の社外取締役に、元メキシコ大統領、元グッチ最高責任者、元GM会長がなっているとのことである。

 しかし、そんな重要な人物たちが、この会社にだけ時間を割くことができるのだろうか。

 結局は、事務方の用意した資料に基づき判断するしかできないのではないだろうか。


 社外取締役は、会社経営において万能な存在ではないと思う。



2005年01月20日(木) ゴルフ場でキャッシュカードをスキミング

日経(H17.1.21)社会面に、ゴルフ場でキャッシュカードが「スキミング」により偽造されていた事件で、ゴルフ場支配人を窃盗容疑などで逮捕したと報じていた。

グループはゴルフ場の貴重品ロッカーのマスターキーを使い、暗証番号を入手しており、このマスターキーは支配人が提供したとのことである。


貴重品のロッカーとキャッシュカードの暗証番号とが同じことが多いことに着目した犯罪であるが、よく考えつくものと驚く。


 被害者の方にはとんだ災難だが、おそらくゴルフ場経営会社の使用者責任が問題になり、被害額は全額返還されるのではないだろうか。



2005年01月19日(水) 住基カードの不正取得が後を絶たず

 日経(H17.1.19)社会面で、住基カードを不正取得して、借金したり、不法滞在を免れる手段としたりする例があとを絶たないと報じていた。


 住基カードを取得すれば、住民票の交付をうけるのが便利になるほか、インターネット上の確定申告も可能となるようである。

 しかし、そんなことが絶対必要なことなのだろうか。


 インターネットの黎明期のころ、ネットを通じて様々な住民サービスが受けられれば便利になるだろうなと思った。


 しかし、カード一枚で何でも出来るということは、それだけ不正使用された場合の危険性も大きくなるということである。


 そもそも、インターネット社会になってありがたいと思うようになったことは、情報が容易に取得できるようになったことである。

 したがって、行政機関が本来やるべきことは、危険性の高い住基ネットの整備にお金を掛けるよりも、住民に適切な情報を開示することに力を注いで欲しいと思う。



2005年01月18日(火) NHK番組改変問題について

 日経(H17.1.18)社会面に、NHK番組改変問題で、担当デスクが、第三者機関の設置を求めたという記事が載っていた。


 この問題では、NHKの番組担当デスクが、政治的圧力によって番組内容が改変されたと訴え、それを朝日新聞が報道したことに対し、NHKや、圧力をかけたとされる政治家は、圧力をかけた事実はないと否定している。


 両者の言い分はまったく違っている。


 ただ、朝日新聞は担当デスクの言い分を鵜呑みにするだけでなく、政治家やその周辺にも取材した上で報道しているようである。

 とすると、たとえ政治家が圧力をかけたということが事実でなかったとしても、相当な資料に基づきそれを真実と思ったのであるから、記事が名誉毀損に問われることはないだろう、



2005年01月17日(月) 性犯罪者の矯正教育について

 日経(H17.1.17)社会面に、性犯罪受刑者に矯正教育を義務づける方針と報じていた。

 
 これまでも性犯罪者に対する矯正教育は行っていたようであるが、参加が任意だったため、性犯罪受刑者のうち4%程度しか参加していなかったそうである。


 性犯罪者に対して矯正教育を義務づけることはよいことである。

 ただ、性犯罪者に対する矯正教育は苦労するのではないかと思う。


 何回か性犯罪者の弁護人になったことがあるが、被害者の痛みが分かってないのではないかと思うことが多かった。

 それは、男だから分からないという問題ではなく、本人が持っている本質的資質に根ざしているように思われた。


 そんなことを言い始めると、「性犯罪者に対する矯正教育は無意味である」「性犯罪者は隔離せよ」という議論に結びつきかねないし、それはそれで問題である。


 ただ、性犯罪者に対する矯正教育は非常に難しい面があるような気がする。



2005年01月13日(木) 情報セキュリティーは横並び意識でよいのでは

 日経(H17.1.13)33面のIT関連会社の全面広告の中で、「情報セキュリティーはどこもで対策をとればいいのか見えにくい」と書いていた。

 
 確かに、侵入する側の技術の進歩があるから、どこまでセキュリティー対策をとってもきりがない感じである。


 その場合は、費用対効果で考えるしかない。

 そのような見地からいうと、他と同じ程度にセキュリティー対策を取っておくという横並び意識でよいのではないかと思う。


 万が一、情報が漏洩した場合、世間と同じ程度のセキュリティー対策をしていれば過失を問われづらいし、世間の非難も厳しいものではないと思われるからである(もちろん、それ以上の対策が必要ないという趣旨ではないが)。



2005年01月12日(水) 高裁の裁判官が変な人の場合は最悪である

 日経(H17.1.12)社説、3面などで、青色LED訴訟について、東京高裁で発明の対価を6億円とする和解が成立したことについて報じていた。

 中村教授は、「和解に応じたのは、高裁は事実審としては最終審であり、高裁の判断でほとんど決まってしまうから」という趣旨のコメントしている。

 まことにその通りであり、高裁の裁判官の意向には逆らえず、和解勧告があれば応じざるを得ないのが実情である。


 それだけに、高裁の裁判官が変な人であれば最悪である。



2005年01月11日(火) 検察庁が法廷で視覚に訴える工夫。

 日経(H17.1.11)社会面に、裁判員制度の導入をにらみ、検察庁が、法廷でスクリーンに図表を映し、裁判官などに対し視覚に訴える工夫をしているという記事が載っていた。


 それ自体は悪いことではない。

 しかし、一つの事件に十分な時間をかけることができる検察官に比べ、割くことができる時間が圧倒的に少ない弁護士にとって、裁判員に訴える力に差が生じることは否めない。


 本格的否認事件では、弁護士が十分準備できるように、国選弁護費用を大幅に高くするなどの工夫をすべきではないかと思う。

 ただ、国選弁護費用を高くすることには、世間は批判的とは思うが・・。



2005年01月07日(金) 性犯罪者の住所を公表することについて

 日経(H17.1.7)社会面に、警察庁長官が、性犯罪者が服役した後の住所を警察が把握するシステムが必要と述べたと報じていた。


 性犯罪者の再犯率の高さを考えると、性犯罪者が出所後にどこに住んでいるかを警察が把握しておく必要性はあると思う。


 警察が出所後の住所まで把握することに対して批判的な見解もあるが、住所を公表しない限りとくに問題は生じないのではないだろうか(ちなみに、公安事件では、警察は、元新左翼の活動家などの住所をいつまでも追っかけて把握しているようである。)。


 もっとも、警察庁長官も言っているように、性犯罪者の所在情報を住民に公表してよいかは別問題である。


 公表すれば、その人が社会復帰することはまず不可能になる。

 行き場がなくなり、再び犯罪に可能性が逆に高まるかもしれない。


 また、そのような性犯罪が近くに住んでいると、怖くて子どもを外で遊ばせられず、オウムと同じような排斥運動が起きるのは間違いない。

 あるいは、性犯罪者が住む町ということになると、不動産価格も下落してしまいかねず、住民の中には公表することを迷惑に思う人も出てくるだろう。


 このように、住所の公表まですることによる混乱は大きい。

 したがって、公表により性犯罪が減少するという明確なデータがない限り、性犯罪者の住所を公表するということは行き過ぎではないだろうか。



2005年01月06日(木) 死亡の前後が不明なときは相続が生じない

 日経(H17.1.6)9面の週刊新潮の広告に、スマトラ沖地震で「夫と妻のどちらが先に死亡したかで大問題になる死亡保険金」という内容の記事があった。

 確かに、死亡の前後が不明なときは、民法では同時に死亡したとみなすと規定しており、この場合、死亡した人の相互では相続が生じないことになる。

 したがって、死亡の前後が不明なのか、死亡の前後が分かっているのかで誰が相続人になるかが変わってくる可能性がある。


 しかし、それはこれまでも飛行機事故などにおいて生じていた問題である。

 いまさら週刊誌で「夫と妻のどちらが先に死亡したかで大問題になる死亡保険金」と大騒ぎする内容ではないと思うのだが。



2005年01月05日(水) 成年後見制度の普及のために

 日経(H17.1.5)夕刊に、成年後見制度の普及のために、都区市町村が後押しするという記事が載っていた。


 痴呆症の人や知的障害者などの権利を守るために成年後見制度の必要性は高い。

 しかし、後見人の適任者がいないこと、鑑定手数料などの申し立て費用が高いことがネックになって、成年後見制度はなかなか普及しない。

 鑑定手数料についていえば、東京家裁では鑑定費用が10万円である。

 これでは、成年後見の必要性がよほど高くないと成年後見の申し立てをしようとは思わないであろう。


 これまで診断している医師が鑑定する場合には、改めて診断する必要性は少ないのだから、診断書程度の費用で鑑定ができないものかと思うのだが。


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