今日の日経を題材に法律問題をコメント

2005年02月28日(月) 遺言の書き方

 日経(H17.2.28)1面のコラムで、持っていた財産で、阪神大震災で失った集会場の再建をしたいと思っていた1人住まいの老人と、離れて住む4人の子どもたちとのすれ違いについて書いていた。


 結局、その人は遺言しなかったため、すべての財産を家族が相続したようである。

 その人の本意がどこにあったのかは不明であるが、自分の意思を大切にしたいのであれば、遺言をすべきであった。


 遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言などがある。

 このうち、財産がある人は、公証人という専門家がチェックする公正証書遺言が望ましい。

 しかし、特に財産はなく、自分の気持ちを家族に知っておいて欲しいと思うような場合には、自筆証書遺言でよいであろう。

 ただ、自筆証書遺言の場合には、本文も含めてすべて自筆で書く必要がある。

 ワープロで書いた場合は遺言が無効になるので注意すべきである。



2005年02月25日(金) 法律事務所は個人の名前を連ねたところが多い

 日経(H17.2.25)1面トップで、法律事務所が陣容を増強していると報じていた。

 その記事に、10大法律事務所の名前と弁護士数が載っていたが、その中の半数以上は、「長島・大野・常松法律事務所」などと個人の名前を連ねている。


 電話の応対のときに言いにくいだろうなあといつも思ってしまう。



2005年02月24日(木) ニッポン放送が新株予約権を発行

 日経(H17.2.24)1面トップで、ニッポン放送が新株予約権を発行してフジテレビの子会社になると報じていた。


 判例では、支配権の維持が主要な目的とする新株発行は許されないとされている。

 他方、たとえ支配権維持があったしても、資金調達の必要性があればよいとされている。


 ニッポン放送の場合は、資金調達の必要性よりも、フジテレビの子会社となり、フジグループに残ることによって企業価値が高めるということが主目的である。


 そのような理由でも新株発行ができるのか、それとも資金調達が主目的でなければならないのかということが一つの争点となるだろう。


 私は、ニッポン放送の場合は、フジグループに残ることによって企業価値が高めるということには一定の合理性があると思う。

 したがって、たとえ資金調達の必要性が主目的でなくても、ニッポン放送の新株予約権の発行は認められるのではないだろうか。



2005年02月23日(水) 正競争防止法を改正

 日経(H17.2.23)7面に、不正競争防止法を改正して、退職者による秘密漏洩に対し刑事罰を科すことになるという記事が載っていた。


 営業上の秘密の保護と、「これまでの経験を生かして働きたい」という退職者の職業選択の自由との調和が難しく、改正案では、予め転職先企業に営業秘密を漏らすことを前提にして転職した場合に限定している。

 営業秘密の保護として不十分であるが、一歩前進といえると思う。


 従来、不正競争防止法はあまり重要な法律ではなかった。

 しかし、度重なる改正により、他の法律の規制ではカバーできない事項について不正競争防止法によって規制されるようになってきており、よく使われる重要な法律となってきている。



2005年02月22日(火) 敵対的買収を防衛するために、会社法を改正する方針

 日経(H17.2.22)1面に、敵対的買収を防衛するために、会社法を改正する方針と報じていた。

 その中に、取締役の解任について、改正案では定款に明記すれば、その要件を引き上げて解任決議をしにくくすることができるようにする案があった。


 しかし、そうすると取締役の立場は強大になりすぎるのではないだろうか。


 敵対的買収の防衛対策をするあまり、本来の制度を歪めることになりかねないのではないかと思う。



2005年02月21日(月) ニッポン放送の株取得問題について

 日経(H17.2.21)1面に、ニッポン放送の株の39.95%をライブドアが取得したと報じていた。


 この問題では政治家まで口を出し始めているが、ほとんどの批判は感情的なレベルに過ぎないように思われる。


 ライブドアの堀江社長の言っていることは、それほど的はずれではない(むしろ、批判している方が的はずれなことが多い。)。


 堀江社長は、株主が会社の所有者であるということを強調し、ニッポン放送に対し、筆頭株主に対し挨拶に来てしかるべきであると言っていた。


 株主が会社の実質的所有者であるというのは間違いではない。


 ただ、問題は、堀江社長は、ライブドアの株主には顔を向けていないということである。

 ライブドアの会社規模からして、800億円もの社債を発行することは極めてハイリスクであろう。

 そのようなハイリスクな経営をしていいのだろうか。株主に対し、どのように説明するのであろうか。

 現に、ライブドアの株価は下落している。


 株主こそが会社の所有者であるといいながら、自分の会社の株主に対してはほとんど配慮していないのではないだろうか(たとえ自分がライブドアの大株主であったとしても、その余の株主の利益を配慮しなくていいということにはならないだろう)。

 要するに、「株主が会社の所有者である」ということを自分の都合のよいときだけ使っているように思われるのである。



2005年02月17日(木) 情報漏えいを完全に防止することは困難である

 日経(H17.2.17)1面をはじめ、広告欄には個人情報保護法関連の本の広告があちこちに載っていた。

 今年4月1日からの施行を控え、各企業は対策におおわらわであり、私もよく相談を受ける。


 しかし、中小企業では個人情報管理のシステムにあまり費用をかけることはできない。

 しかも、どれだけ高度なセキュリティーシステムを構築しても、担当者がその気になれば情報漏えいを防ぐことは難しいのである。


 中小企業でも、個人情報保護規定を作成し、また担当者に誓約書を書かせておく程度のことはしていると思う。

 しかしそれ以外に、例えば、担当者の両親と身元保証契約をしておくという極めて古典的手法によって規制することも考えた方がよいのではないかと思う。



2005年02月16日(水) 情報セキュリティーの最良の方策は、情報を持たないことである。

 日経(H17.2.16)13面に、日立が、通常のパソコンを全廃し、ハードディスクを内蔵しないセキュリティーパソコンを持ち歩くシステムを外販するという記事が載っていた。

 これにより社内に書類を集約し、紛失リスクをなくすということである。


 このシステムが売れるかどうかは分からないが、情報を持ち出さないという発想は的を得ていると思う。


 情報の漏えいを防止する最良の方策は、情報を持たないことである。

 このことを企業はもっと認識すべきであると思う。



2005年02月15日(火) ライブドアのニッポン放送の買収事件

 日経(H17.2.15)11面に、ライブドアのニッポン放送の買収事件について解説記事が載っていた。

 その記事の中で、フジテレビがニッポン放送の株式を25%以上持てば、ニッポン放送はフジテレビに対する議決権が行使できなくなる。

 その結果、ライブドアがニッポン放送の株を買い占めても、フジテレビにまで影響力を及ぼすことができなくなるという趣旨のことを書いていた。


 これは、商法241条3項で規定されているものである。

 なぜそのような規定があるかというと、会社間で株式を持ち合うと、資本が空洞化したり、経営がもたれ合うという弊害がある。

 そこで、議決権を認めないことにより、間接的に株式持ち合いの弊害を防止しようとしたものである。


 この規定は昭和56年に新設された。

 しかし、このような規定が新設されたにもかかわらず株式の持ち合いは続いた。


 結局、株式の持ち合いは解消は、株式を持つリスクが認識されるようになってから始まった。

 議決権制限の規定は、持ち合い解消にはあまり効果がなかったようである。


 ところが、この議決権の制限の規定が、ライブドアのニッポン放送買収という思わぬ場面で話題になったのである。

 立法担当者もおもわずびっくりというところである。



2005年02月10日(木) 通販にクーリングオフはない

 日経(H17.2.10)35面に、携帯電話での通販が伸びているという記事が載っていた。

 その記事の中で、「通販にはクーリングオフがないので衝動買いに注意」と書いていた。


 まさにそのとおりである。

 通販では、業者の強引な販売というものがなく、じっくりと考えて買えるのだから、クーリングオフを認める理由がないからである。


 通販で返品を認めているサイトも多いが、それは通販業者のサービスに過ぎない。


 通販で衝動買いをする人は、返品ができるかどうか確認してから買った方がいいのでは。



2005年02月09日(水) イタリアでは裁判官が法廷スト

 日経(H17.2.9)9面に、イタリアで、司法権限を弱めようとする法案に対し、裁判官が法廷ストで抗議という記事が載っていた。


 裁判官がストライキするというのにはびっくりした。


 日本では、裁判所法で、裁判官が積極的政治活動をすることを禁じているからである。


 国や歴史的背景が異なると、考え方も違うものである。



2005年02月08日(火) ブラックバスの再放流禁止条例は適法か

日経(H17.2.8)社会面に、琵琶湖でブラックバスなどの再放流禁止を定めた条例について、大津地裁が、合理性があり適法と判断して、つり愛好家の訴えを棄却したと報じていた。


 条例を定めた滋賀県の言い分は、ブラックバスは在来魚を捕食するなど琵琶湖の生態系に悪影響を与えており、駆除の必要があるという立場である。


 これに対し、つり愛好家は、再放流の禁止は、釣った魚をむやみに殺したくないという願いを無視するものであると主張している。


 どちらの言い分ももっとものようであり、結局は価値観の違いではないかと思う。


 裁判は、合議制の事件でもたった3人という少数で判断する。

 しかし、このような価値観の違いに係わる争いは大勢の議論の中で解決すべきものであり、裁判には向いていないのではないだろうか。



2005年02月07日(月) ヤミ金問題で、巨額のお金が暴力団に還流される

 日経(H17.2.7)社会面で、ヤミ金融事件で、裁判所が、被告人が利得した43億円の追徴を認めず、このお金が暴力団に還流する恐れがあるという記事が載っていた。


 裁判所が追徴を認めなかったのは、そのお金を国が追徴してしまうと、被害者の損害賠償請求ができなくなり、被害回復が不可能になるからである。


 しかし、実際に被害者が被告人に対し損害賠償請求しているケースは少なく、現在でも1億6000万円ととどまっているそうである。


 記事では、損害賠償請求していない理由として、「被害者が提訴しないのは、報復恐れているからである」と書いていた。


 しかし、「報復を恐れている」というのは間違いである。


 ヤミ金の被害者は、あちこちから借りており、誰に借りたかもきちんと把握していない人が多い。

 また、貸す側は「あけぼのファイナンス」などと適当に名前をつけているから、それが五菱会関係なのかどうかは正確には分からない。

 しかも、個々の被害金額はせいぜい数十万円であり、弁護士に頼んで手間暇かけて被害を回復しようとはなかなか思わないだろう。


 このような理由から、損害賠償請求を提訴することはあまり考えられないと思われる。

 そのため、記事にあるように、巨額の金が暴力団に還流する可能性は高いだろう。


 追徴を認めなかった裁判所の考えは、理念としては正しいが、現実的な判断ではないと思う。



2005年02月04日(金) 今後も硬貨の偽造は続く?

 日経(H17.2.4)社会面で、偽造500円硬貨が見つかったという記事が載ってた。


 その偽造硬貨には、ニッケル、亜鉛など同じ金属が使われているそうである。

 そうすると、製造コストを考えると採算が合うのかという疑問が沸く。


 しかも、自販機で使うとなると、大変な手間である。

 少し前に、韓国の硬貨と日本の旧500円硬貨が似ていたことから、韓国の硬貨が自販機に使われたことがあったが、実行犯はそれほど儲からなかったと思う。


 しかし、偽500円硬貨を海外の製造コストの安いところで造れば、コストは合うかもしれない。

 しかも、製造した連中は、それを自分たちが使うのではなく、第三者に製造コスト以上で売却すれば、確実に儲けることができるし、自分が使用しないのであるからリスクも少なくなる。


 したがって、このような偽造硬貨は、一見コストが合わないようであるが、今後も造られる可能性が高いかも知れない。



2005年02月03日(木) 再び゜一太郎」製造・販売禁止について

 日経(H17.2.3)2面社説に、「ソフト戦略問う『一太郎』判決」という見出しで、東京地裁が、特許侵害を理由に、ワープロソフト「一太郎」の製造・販売の禁止を命じたことについて論評していた。


社説では、

「問題となったペルプ機能同様の機能は他のソフトでも使われている」
「特許侵害といっても、すでに松下では使っていない技術である」
「アメリカでは、裁判所は使いやすさや技術の向上を重視している」
「先人の技術を改良して機能を高めていくことは消費者にとっても利益になる」
「日本にも90年代まで多くのソフト会社があったが、最近は外国勢に押されている」

などと書いていた。


 「ソフト戦略を問う」と大げさな見出しを付けているが、要するに、「『一太郎』の製造販売を禁止すると、日本で唯一勝負できるソフトまで外国勢に負けてしまうから、裁判所はもう少し考えて欲しい」ということのようである。


 しかし、社説にしては情緒的過ぎではないだろうか。


 この問題は特許を侵害しているかに尽きる。

 もちろん、そこには技術改良を認めることによる利益と、特許権者の保護との調和が問題になる。

 しかし、「一太郎」だからといってとくに特許権者の権利がないがしろにされていいはずがない。


 社説なのだから、もう少し論理的な展開をしてはどうかと思った次第である。




2005年02月02日(水) 東京地裁が、「一太郎」の製造・販売の禁止を命じる

 日経(H17.2.2)1面で、東京地裁は、ジャストシステム社が松下電器の特許を侵害しているという理由で、ワープロソフト「一太郎」の製造・販売の禁止を命じたと報じていた。


 特許を侵害しているという東京地裁の判断が正当かどうかは、事実関係が不明なので何とも言えない。


 ただ、記事によれば、松下電器からの警告を、ジャストシステムは一切無視したとのことである。その後も、ジャストシステムは、極めて強硬な対応だったようである。


 しかし、松下電器の言い分が認められて「一太郎」の販売の禁止が確定すると、ジャストシステムはやっていけないだろう。


 そのような高いリスクを考えると、ジャスシステムは、どこかでライセンス契約を結んで和解すべきではなかったかと思う。

 おそらく高裁で和解になるだろうが、ライセンス料はずいぶん高いものになるだろう。



2005年02月01日(火) LECが、またお騒がせ。

 日経ではなく、朝日ネットニュース(H17.2.1)で、司法試験予備校のLECのパンフレットについて、不当表示の疑いで公正取引委員会の調査を受けていると報じていた。

 パンフレットに記載している過去の合格者数には単発の模擬試験受験者も含んでいるのに、司法試験講座の受講生だけで合格したかのような書き方をしていたそうである。


 この予備校は、よく問題を起こしている。

 古くは、独立して別の予備校を開いた人気講師と裁判沙汰にまでなったり、ソフトを社内で違法コピーして業務用に使っていたとして訴えられたりしている。

 最近でも、地元自治体の同意を得ないで大学の通信教育の課程を開設しようとしてもめている。


 お騒がせなところである。

 この予備校は、受講したことがあるだけでなく、働いたこともあるので、余計気になってしまう。


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