今日の日経を題材に法律問題をコメント

2004年07月30日(金) 聞いたことのない節税商品には手を出さないことである

 日経(H16.7.30)社会面に、銀行の「外国税額控除」制度を利用したビジネスに対し、国税局が34億円の追徴課税したが、大阪高裁が課税処分を取り消したと報じていた。


 裁判所の判断は「制度を利用してコストを引き下げただけである」ということのようである。

 つまり、現行の制度を利用して節税しただけであるということである。


 そもそも、税務署は、現行制度範囲内と思える行為でも、「課税回避のため制度を悪用した」と認定して課税処分することがある。

 これでは安心して経済活動はできない。

 制度を改正して節税できないようにするのであれば理解できるが、いきなり課税することは問題であろう。


 以前、金融機関が外国での航空機リース契約を使った節税商品を売り出し、それについて法律相談を受けたことがあった。

 しかし、その節税の仕組みを依頼者に聞いてもまったく理解しておらず、ただ金融機関の名前だけを信用していた。


 そこで、私は「自分で理解できない商品は止めた方がいいです」とアドバイスして、その商品を買うのを止めてもらった。


 結局、その商品は国税局が「租税回避のためである」として課税処分としたため、争いになっている。


 聞いたことのない節税商品には、それがたとえ大手金融機関の扱うものであっても手を出さないことであると思う。



2004年07月29日(木) 法律にアルファベットを使ってはダメ?

 昨日の日経夕刊(H16.7.28)7面に、有限会社制度の廃止に関する話題が載っていた。

 そのコラムによれば、有限会社制度に代わり、新たに「日本版LLC」ができるそうであるが、「日本の法律だから英語はだめ」ということで、「LLC」という呼称ではなく、「合同会社」「共同会社」などと呼ぶ案があるらしい。

 そのコラムは、「LLC」でいいではないかと結んでいた。


 私も、法律にアルファベットを使ってもいいではないかと思う。


 最近つくられる法律は、無理にアルファベットを避けようとして、意味不明で、解説書を読まなければ理解できない条文が多く、むしろ問題であると思う。



2004年07月28日(水) 東京地裁が、住友信託の言い分が認め交渉中止命令

 日経(H16.7.28)1面トップで、東京地裁が、住友信託銀行の言い分を認めて、UFJに対し、三菱信託銀行との交渉の中止命令を出したと報じていた。


 新聞は、「基本合意書に法的拘束力が認められた」と相変わらずピントの外れた書き方をしていたが。


 当事者が独占交渉権について合意した以上、それに法的拘束力があるのは当然である。

 したがって、独占交渉という合意に反して三菱信託銀行と合併交渉した場合は、合意違反として損害賠償の問題になる。


 問題は、仮処分において交渉禁止が認められるかである。


 基本合意書では、合併までは義務付けていないはずである。

 合併を義務付けることはできない以上、独占交渉の合意に違反したとしても、住友信託としては、損害賠償請求するしかない。


 すなわち、三菱信託との交渉を禁じても、UFJが合併に応じない以上、住友信託としてはいかんともし難いのである。


 それゆえ、住友信託は、正式の裁判で損害賠償請求すればいいのであって、仮処分で交渉禁止を認めても意味はないということになる。

 法律要件としていえば「保全の必要性に欠ける」ということである。


 私は、東京地裁が交渉禁止まで認めるとは思わなかったし、仮処分を認めた東京地裁の判断はいかがなものかと思う。



2004年07月27日(火) 凶悪犯罪に対する重罰化もやむを得ない

 日経(H16.7.27付)1面に、「凶悪犯罪を重罰化」という見出しで、法制審議会が有期刑の上限を20年から30年に引き上げるなどの刑法改正案をまとめたと報じていた。


 このような厳罰化に対しては、必ず「厳罰化よっては犯罪は減らない」として、反対の論陣が張られる(反対するのは大体が弁護士会であるが)。


 私も、厳罰化によっては犯罪は減少しないと思う。

 凶悪犯罪は刑が緩いから行われるのではなく、他の原因によるところが多いからである。


 しかし、寛大な刑に対しては、世間の応報感情が許さないようである。

 
 このような応報感情は「目には目を」という思想に基づくものであり、民主主義社会にはそぐわないという意見もある。

 しかし、それは建前の議論であって、日本では応報感情が強く、そういった本音の部分の感情を無視することはできないように思う。


 そうであれば、私は、凶悪犯罪への厳罰化もやむを得ないのではないかと思っている。



2004年07月26日(月) 奈良県が落書き防止条例の罰金額を引き上げる

 日経(H16.7.26付)社会面に、いっこうに減らない落書き対策として、奈良県が条例による罰金を全国最高額の10万円に引き上げたという記事が載っていた。


 他の自治体でも、消してもすぐ落書きされるといういたちごっこが続いているそうである。


 本来、落書きによって、その物が本来の目的を達することができなくなった場合は器物損壊罪が成立し、懲役3年以下または30万円以下の罰金若しくは科料となる。

 したがって、あえて条例で罰金を引き上げる必要はないようにも思われる。


 しかし、器物損壊罪は、落書きによってその物が本来の目的を達することができなくならないと成立しないのに対し、落書き禁止条例では、落書きしただけで犯罪が成立することになっていると思われる。

 その意味では、落書き防止条例の必要性はあるのだろう。


 しかし、落書き防止のために罰金を10万円に引き上げても、あまり効果はないのではないだろうか。


 むしろ、問題は、落書きに対して警察が積極的に動かないことである。

 先日も、落書き被害にあった人に相談されて、警察に行ったが、被害届を出して終わりという感じであった。


 落書き犯は現行犯でないと検挙することが難しく、捜査しにくいという事情も理解できないではないが・・。




2004年07月23日(金) パルコが顧客情報を消去して、リスク管理

 日経(H16.7.23付)12面に、パルコが、顧客情報の一部を消去したという記事が載っていた。


 削除したのはメルマガに登録した人の氏名と住所である。

 メールアドレス、性別、生年月日は残すそうで、「性別や生年月日があれば十分」とのことである。


 来年4月から個人情報保護法が施行されるが、パルコの採った措置はリスク管理として参考になると思う。


 使い道も明確でないまま、「とにかくデータを持っておく」という考えでは、情報流出のリスクが高まっている中で、非常の危険である。

 今後は、情報を持たない勇気も必要であろうと思う。



2004年07月22日(木) 和解で何割認められれば「実質勝訴」といえるか

 日経(H16.7.22付)社会面で、ヤオハンが粉飾決算によって、同社の転換社債を購入した人たちが損害を受けたとして損害賠償請求をした訴訟で、旧経営陣らが約1億円を支払うことで和解が成立したと報じていた。


 その記事で、原告側弁護士が「和解金額は損害額の6割にあたり、実質勝訴といえる」とコメントしたと書いていた。


 このような訴訟では証拠が十分ないことが多く、勝訴の明確な見込みはなかったと思われるから、6割でも「実質的勝訴」というコメントをしたのだろう。


 ただ、一般論として言えば、和解で請求額の6割が認められても、「実質勝訴」とは言わないだろう。


 決まりがあるわけではないが、感覚的には、請求額の8割程度の和解であれば、実質勝訴したと思う。


 というのは、今後裁判を継続する負担、勝訴判決となっても控訴されるリスク、強制執行の負担などを考えると、2割減額しても、和解を成立させた方がメリットがあると思うからである。


 もっとも、依頼者は100%自分が正しいと思っているから、「なぜ2割も譲歩しないといけないのか」と不満を持つことは多い。


 ということで、弁護士としては、和解で請求の8割が認められるのなら実質勝訴と思うのだが、2割減額させられた依頼者は不満を募らせ、板ばさみにたたされることがある。



2004年07月21日(水) ベル24の増資に対し、CSKが差し止め請求

 日経(H16.7.21付)13面に、ベルシステム24が、日興系投資会社に第三者割当増資を実施するについて、筆頭株主であるCSKが猛反発して、増資差し止めの仮処分を申請したと報じていた。


 第三者割当増資が「著しく不公正な方法で新株発行し、これによって株主が不利益を被る恐れがある」場合は新株発行差止請求が認められる。


 実際、既存株主が増資差し止めの仮処分を申し立てることは比較的よくある。

 増資によって既存株主の地位が低下するし、増資に背景には、会社の経営権争いが絡んでいることが多いからである。 


 本件でも、ベルシステムの代表取締役は、「多額の資金をCSKに依頼しても厳しいと勝手に想像した」と意味不明なコメントをしており、経営権争いがあったと想像される。


 しかし、差止請求が認められるかどうかの判断に当たっては、増資の必要性があるかどうかが最も重視される。


 記事によれば、増資で得た資金でソフトバンク系のコールセンターを買収して、ソフトバンクグループと包括提携するとのことである。

 とすると、事業拡大のための資金調達として、増資は必要であったと思われる。


 会社の体力、状況も考慮する必要があるが、かかる事業拡大は一般的には合理性があると思われるから、新株発行差止めは認められないのではないだろうか。



2004年07月20日(火) 空港で指紋照合することはプライバシー侵害になる?

 日経(H16.7.20付)1面に、政府は、テロ防止のため空港で指紋照合して本人確認することを検討していると報じていた。


 このように指紋照合システムを導入した場合、プライバシー侵害にならないかという問題が生じる。

 実際、記事の中で、「アメリカではすでに始まっているが、日本では反発も根強い」と書いていた。


 それゆえ、入国に際し指紋照合する必要性とともに、その許容性が検討されなければならない。


 指紋照合する必要性としては、テロ対策が挙げられているが、それ以外に、急増する外国人犯罪の防止が挙げられよう。


 日本で犯罪を起こし、裁判で執行猶予や実刑を受けた後、本国に帰国しても、名前を変えて再び日本に入ってくる外国人が後を絶たないからである(むしろ、政府の本音は外国人犯罪の防止にあるのではないか)。


 そのような現実を考えると、外国人が入国するときに、指紋照合して本人確認する必要性は高い。


 問題は許容性である。


 そもそも、すでに日本で居住している外国人に比べて、これから入国しようとする外国人に対し一定の権利の制約を課すことは許される余地は高いといえる。


 そして、採取した指紋を他の目的に使ってはならないことは当然であるが、それを第三者機関が監視するなどのシステムが必要であろう。

 

 そのような制度が整えば、これから入国しようとする外国人の指紋照合したとしても、プライバシー侵害とまではいえず、認められるのではないだろうか。



2004年07月16日(金) 住友信託銀行が、交渉差し止めの仮処分を申請する方針

 日経ではなく、朝日ネットニュース(H16.7.16付)で、UFJと三菱東京の経営統合に関して、住友信託銀行は、交渉差し止めの仮処分を東京地裁に申請する方針を固めたと報じていた。


 報道によると、UFJと住友信託銀行との合併基本合意書には、双方が独占交渉権を持つことを明記していたそうである。


 そうすると、三菱東京と合併交渉したことは基本合意書違反になることは間違いない。


 しかし、仮処分の内容は、「交渉してはいけない」というものであり、「住友信託銀行と合併せよ」というものではない。

 もちろん、そのような合併を義務づける仮処分が認められるはずもない。


 とすると、万が一、住友信託銀行の言い分が認められたとしても、三菱東京との交渉が禁止されるだけであるから、合併がまったくの白紙になるだけのことである。


 紛争があるときに司法によって決着を図ることはいいことだと思う。


 しかし、この件については、住友信託銀行が法的措置を取ることが、意味のあることとは思えないのだが・・。



2004年07月15日(木) UFJと三菱東京の経営統合に対し、住友信託銀行が法的措置を取るとのコメント

 日経(H16.7.15付)1面に、UFJと三菱東京の経営統合に関して、UFJ信託銀行と合併することになっていた住友信託銀行が、「法定拘束力のある基本合意を締結済みであり、合併撤回には応じられにない。法的措置も辞さない」とコメントを発表したと報じていた。


 大手金融機関同士の合併問題で、法的措置も辞さないということは極めて異例であるが、果たしてそのようなことは可能であろうか。


 合併する場合、いきなり合併契約を締結することはなく、その前に合併のための基本協定書を交わすのが通常である。


 その合併基本協定書では、合併のための大筋は決めるが、合併を義務づける内容までは盛り込まれていない。

 それゆえ、UFJ信託銀行が合併を白紙撤回しても、住友信託銀行がそれを阻止して、合併を義務づけることはできないということになる。


 もちろん、住友信託銀行のいうように、合併の基本合意書も約束である以上、法的意味はある。

 
 したがって、UFJ信託銀行が合併の約束をしているのに、それに反したとして、損害賠償請求することは可能かも知れない。


 しかし、その場合に請求が認められる額は、合併を前提にして準備活動したことについての損害額であり(「信頼利益」といわれている)、通常の損害賠償額(「履行利益」といわれている)に比べればはるかに低い額しか認められないとされている。


 以上のように、住友信託銀行が法的措置を取ることは可能であるにしても、UFJ信託銀行に合併を義務づけることはできない。

 また、合併合意違反として、損害賠償請求が認められるとしても、その額は比較的僅かなものになると思われる。



2004年07月14日(水) マイクロソフトが公正取引委員会から排除勧告

 日経(H16.7.14付)1面で、マイクロソフトが公正取引委員会から排除勧告を受けたと報じていた。


 排除勧告の内容は、マイクロソフトが、パソコンメーカーと基本ソフトの使用許諾契約を締結する際、特許権侵害で訴えられないような条項を結んだのが不公正取引にあたるというものである。


 これに対し、マイクロソフトは、不満があれば事前に別の契約形態を選ぶことができたのであるから、不当ではないと反論している。


 しかし、その反論は無理ではないだろうか。

 なぜなら、現状では基本ソフトについてはマイクロソフトと使用許諾契約を締結せざるを得ず、パソコンメーカーに選択の余地はないからである。


 契約条項の内容自体が分からないので何とも言えないが、記事を前提にする限りは、この件についてはマイクロソフトの言い分は通らないように思う。



2004年07月13日(火) 受動喫煙で初の賠償命令

 日経(H16.7.13付)1面に受動喫煙で初の賠償命令という記事が載っていた。


 賠償金額は5万円ということで、裁判所として腰が引けている気がする。


 ただ、現在では分煙が当然となってきていることから、分煙をしていないところでは訴訟を起こされる可能性はある。

 したがって、今後このような訴訟は増えるだろうと思う。



2004年07月12日(月) イギリスの法律事務所が、日本の大手法律事務所を吸収し

 日経(H16.7.12付)1面で、イギリスの法律事務所が、国内6位の大手法律事務所を吸収したと報じていた。


 一面に載るようなニュースなのかなあとも思ったが、司法においてもグローバル化が進んでいることの象徴的出来事という意味でニュース価値があるのだろう。

 おもしろいのは、吸収される法律事務所にいた半数以上の弁護士が、イギリスの法律事務所に移籍せず、他の国内法律事務所に移籍することである。


 外国の法律事務所だといつ撤退するかも分からないという不安があったのだろうか。


 吸収する側は世界で上位5位に入るというから、大きい法律事務所である。

 そこで、新たなステップアップと図ろうという弁護士と、比較的安定を求める弁護士がいたということであり、この辺の事情はどこの世界でも同じようである。



2004年07月09日(金) 医療訴訟の審理期間が短くなる

 日経(H16.7.9付)社会面で、医療訴訟の平均審理期間がこれまで2年4月だったのが1年5か月と1年近く短くなってきているという記事が載っていた。


 従来、医療訴訟は時間がかかっていた。


 しかし、裁判の長期化は患者側にも医師側にも負担が大きい。


 それだけでなく、私がお世話になった弁護士は、医療訴訟は長期化するのでしんどいという理由で(年配だったので)、依頼を断って、他の弁護士を紹介していた。


 したがって、迅速な裁判は弁護士にもメリットがあるのであり、より一層迅速化に努めるべきと思う。



2004年07月08日(木) 警視庁長官銃撃事件でオオム真理教の幹部らが逮捕

 日経(H16.7.8付)社会面に、警視庁長官銃撃事件に関しオオム真理教の幹部らが逮捕された事件の続報が載っていた。

 記事によれば、スプリング8による解析で、小杉容疑者のコートに付着していた微量の金属成分が、長官銃撃の銃弾の成分と矛盾しないことが分かったことが決め手になったとのことでる。


 スプリング8については和歌山毒物カレー事件でも鑑定して成果を挙げている。


 このような最新技術を活用することはすばらしいことであり、それ自体を非難するつもりはまったくない。

 ただ、その危険性についても指摘しておきたい。

 というのは、このようなスプリング8による解析結果は、裁判でも証拠として提出されるだろうが、弁護側では解析結果の正確性について検証のしようがない。


 もしこれが科学上の発見であれば、第三者によって同じ条件で追試験がなされ、同じ結果が生じない限り、その発見は認められない。

 ところが、刑事事件ではその解析結果を弁護側が追試験することは不可能である。


 科学鑑定については従前からこのような問題はあったが、最新技術がますます大規模になってきており、弁護側で反証のしようがない事例が増えてきているように思う。

 最新技術を捜査に活用することは当然であるが、そこにおける問題点も念頭に置いておくべきであると思うのである。



2004年07月07日(水) 内職商法にご注意

 日経(H16.7.7付)社会面に、宛名書きの内職商法で報酬を支払わなかった業者に対し、静岡地裁は損壊賠償を命じたと報じていた。


 この業者はシールに宛名書きをする内職を発注していたのであるが、保証金として30万円を支払わせていたそうである。

 しかし、宛名書きの仕事なんか今どきそんなにあるのだろうか。

 タックシールに印刷しているのがほとんどであり、それで「失礼な」と思う人はほとんどいない。


 そんな内職に30万円も支払わなければ仕事をくれないというのは、最初から眉唾であり、落ち着いて考えれば分かることだと思う。


 内職商法というのは昔からあり、よくトラブルになっているから、注意すべきであろう(それでも騙されるのが人間の悲しい性なのだが)。



2004年07月06日(火) タイ人中学生、在留許可の方向に

 日経(H16.7.5付)夕刊に、タイ人中学生の処遇で、法務大臣が入管当局に再検討を指示し、在留が認められることになったという記事が載っていた。


 タイで両親と死別し、日本で祖母らと暮らしている中学1年生について、これまで入国管理局は在留許可を認めず、いったん出国して再入国申請をするよう説明していた。

 しかし、いったん出国した場合、再入国が認められる保障はない(似たような事件を担当したことがあり、そのとき入管の担当者が言っていた。)。


 行政訴訟も起こしたそうであるが、次々と在留を認める判断をしていた裁判官が転勤になったから、裁判所で言い分が認められるかどうかは分からない状況であった。


 この件で、在留を認めるよう指示した法務大臣の処置は当然であるが、問題は、在留許可の基準がはっきりせず、入国管理局の裁量の範囲が非常に広いことである。

 
 もはや行政担当者の胸先三寸で判断される時代ではなく、今後は、判断基準をある程度明確に示し、予測可能性を与えることが重要であると思う。



2004年07月05日(月) エリート裁判官の書く判決が変わってきた?

 日経(H16.7.5付)19面の「人脈追跡」というコラム記事で、一票の格差で違憲の意見を書いた最高裁の判事、東京都の外形標準課税を違法とした東京地裁の裁判長など、最近話題になる判決を探ると、調査官経験者などのエリート裁判官が目立つと書いていた。


 エリート裁判官というのは、よく言えばバランス感覚に優れているといえるが、言い換えれば、現状維持的な判決を書きがちである。


 そのエリート裁判官の書く判決が変わってきた理由について、記事では、司法改革によって、裁判官が潮目の変化を敏感に感じ取った結果だと述べていた。


 裁判官というのは世の中の動きに非常に敏感であるから、新聞の指摘は意外とあたっているかも知れない。



2004年07月02日(金) 三菱自工の元社長を業務上過失致傷で起訴

 日経(H16.7.2付)1面で、横浜地検は、三菱自工の元社長を部品の欠陥を放置したとして業務上過失致傷で起訴したと報じていた。


 これまで製品の欠陥などで人が亡くなった場合、業務上過失致死罪を問われるのは、せいぜい工場長とか担当役員レベルであった。

 社長にまで事故の細かい内容まで報告されるケースは少なく、過失を問えないことが多いからである。


 実際、三菱自工の社長は、クラッチ部品の欠陥を具体的には知らなかったらしい。

 しかし、横浜地検は部下に重要不具合の情報を精査するよう指示しなかったことに過失があるとしているようである。


 今後は、会社のトップに厳しい義務を課されることになりかねない。


 もはや、トップは部下に任せ切りにできない時代になってきたと言えるかもしれない。



2004年07月01日(木) カネボウについて、産業再生機構が債権放棄を要請

 日経(H16.7.1付)5面に、産業再生機構の社長が、カネボウ再建に関して、「債権者の合意がなければ法的整理しかない」と述べたと報じていた。


 再生機構は、債権者に対し一律23.5%の債権放棄を要請しており、破産すれば弁済率は40%台程度であることも明らかにしている。

 したがって、再生機構の社長が言っていることは、「債権放棄に応じなさい。そうでなければ破産になるし、その場合は40%くらいしか弁済されないですよ。」と債権者を脅しているわけである。


 このような脅しは、法的手続きを使わずに再生を図るときや、民亊再生で債権者の同意を得るときに使う手法であり、決して珍しいことではないし、不当とも言えない。 


 ただ、債権者の立場からすれば、なぜ金を借りた側から債権放棄をしろと脅され、それに応じなければならないのかと思うだろう。


 貸した側の「自己責任」ということになるかも知れないが、債権者としては割り切れない気持ちではないかと思う。


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