日経(H16.1.30付)3面で、「跳ね上がる発明対価」という見出で、昨日の日立特許訴訟で1億6000万円の対価を認めた判決の影響について書いていた。
1億6000万円もの対価が得られるとなると、今後は、理科系志望者が増え、将来の夢として「研究所で働いて、多額の発明の対価を得たい」という子どもが出てくるかもしれない。
先の記事によると、近時特許訴訟が相次いでおり、企業に危機感があるそうだが、今後も訴訟は多発すると思われる。
結局、アメリカのように個別契約を結び、成果に対して多額の報酬を決めるしかないかもしれない。
そして、希望すれば、年俸は高いが成果に対する報酬は低いという契約も可能にするとか。
そのほうが、かえって企業のリスクも低くなるのではないだろうか。
そんなことを考えていたら、ネットニュースで、「青色発光ダイオードの特許訴訟で、東京地裁が、発明者の中村氏の対価として200億円の支払いを日亜化学工業に命じた。」と報じていた。
200億円という金額にびっくりした。
2004年01月29日(木) |
元自民党衆議院議員が、イラク派遣差止の訴訟を提起 |
日経(H16.1.28付)社会面で、郵政大臣も務めた元自民党衆議院議員が、国に対し、イラク派遣は違憲・違法であるとして差し止めを求める訴訟を提起したという記事が載っていた。
元自民党議員がこのような訴訟を提起したのには驚いた。
憲法9条の文言を素直に読む限りは、イラク派遣は違憲と考えるしかない。 (だから、イラク派遣を止めるべきなのか、逆に、憲法を改正すべきなのかは政治的見解の分かれるところであるが。)
しかし、裁判所は例によって判断を避けると思う。
記事によれば、差止請求する根拠として、平和的生存権の侵害を主張しているようである。
しかし、裁判所は、平和的生存権は抽象的権利であり、差し止めの法的根拠にはなりえないという理由で、憲法判断せずに請求を棄却するだろう。
2004年01月28日(水) |
販売業者と法改正のいたちごっこはこれからも続く |
日経(H16.1.28付)1面で、悪質セールスの規制を強化するという記事が載っていた。
高齢者や若者の被害が急増しているからである。
記事によれば、クーリングオフは現在では契約してから8日間であるが、これを制度を正しく認識してから8日間はクーリングオフができるようにするそうである。
「制度を正しく認識してから」というのは分かりにくいが、要するに、クーリングオフできることが分かってから8日間ということなのだろう。
しかし、このように法改正しても、販売業者は、契約する際に、「制度は認識できました」「クーリングオフできることは分かりました」という書類を予め用意し、それに署名捺印させると思う。
それによって、契約のときから制度を正しく認識していたから、クーリングオフは契約から8日間しかできないというわけである。
結局、販売業者と法改正のいたちごっこであり、それはこれからも続くのだろう。
2004年01月27日(火) |
東京高裁で、担当検察官の証人尋問がなされる |
日経(H16.1.27付)社会面で、業際事件(贈収賄事件)について、東京高裁で取り調べ担当検察官の証人尋問がなされたと報じていた。
被告人の主張によると、「検事が、捜査に協力すれば執行猶予がつくと約束して、過去の贈賄事件の量刑一覧表をみせた」ということのようである。
証人尋問では、出廷した検事が、量刑一覧表を見せたことは認めたが、「執行猶予がつくとは約束していない」と証言したそうである。
高裁の刑事事件で、証人尋問がなされることはめったにない。
一審で十分な証拠調べがなされているはずである、というのが主な理由である。
そのため、高裁では20分程度で審理が終わるのがほとんどである。
したがって、取調べ検事を証人尋問するということは異例のことである。
高裁の裁判官は、検事の取調べの仕方に問題があると思ったのだろう。
しかも、実際、検事が被疑者に量刑一覧表をみせていることにびっくりした。
そんなものは弁護士でさえ見ることができないからである。
この捜査検事の取り調べ方はかなり問題があると思う。
2004年01月26日(月) |
商標権の審査に外部の有識者から意見を聞く |
日経(H16.1.26付)3面で、商標権の審査に外部の有識者から意見を聞く制度を導入すると報じていた。
有識者の名前として、国立国語研究所所長、歌人、大手企業の元社長の名前が挙がっており、懇談会は年数回開かれ、当否を聴くそうである。
外部の意見を聴くことが悪いわけではない。 しかし、スピードが要求される時代に、年数回程度の懇親会で意味があるのだろうか。
役所だから、このような懇親会を開くと準備万端の体制を整えるだろう。
その労力だけでもバカにならない。
そんなことに力を割くぐらいなら、審査のスピードを上げることに力を割いたほうがいいと思うのたが。
日経(H16.1.23付)3面で、電話加入権について記事が載っていた。
その記事の中で、電話加入権料はNTTが本来返還する義務はないが、政治的に、一部返還する案が浮上する可能性があると報じていた。
しかし、そのような一部返還は法律上に可能なのだろうか。
電話加入権の法的性格について判例を調べてみたが、適切な判例は見つからなかった。
ただ、おそらく次のような解釈になるだろう。
電話加入権は、債権として売買され、また質権設定もされているが、もともとはたんに電話を使用することができる権利(契約上の地位)にすぎない。
電話加入する際に7万2000円を支払うが、それは社債のように払った金が戻ってくるわけではない。そのような契約にはなっていない。
ただ、電話加入権がかつては7万2000円前後で売買されていたから、それを資産として計上することに合理性があっただけである。
このような電話加入権の法的性格に鑑みると、NTTが「電話加入権料」を返還する法的義務はない。
そして、返還義務がないのに、NTTが「加入権料」を返還するとなると、これは株主代表訴訟の格好の対象となるだろう。
個人的には、一部でも返ってきたらうれしいが、それはやるべきではないと思う。
2004年01月22日(木) |
日本テレビ・元プロデューサーの視聴率買収問題 |
日経(H16.1.22付)夕刊面で、日本テレビのプロデューサーが視聴率を買収しよとした問題で、ビデオリサーチ社がプロデューサーに対し、信用を傷つけられたとして、9000万円の損害賠償を提訴したと報じていた。
「あれっ」と思ったのは、日本テレビを訴えていないことである。
プロデューサーに9000万円もの支払能力はないから、このような事件では、使用者の日本テレビも合わせて訴えるのが普通である。
もっとも、この事件はプロデューサーの個人的行為のようであり、日本テレビが使用者責任を負うかは微妙である。
しかし、日本テレビが視聴率を上げるよう強く指導していたという事情があれば、日本テレビも責任を負う可能性はあるし、訴訟費用は変わらないのだから、通常は使用者も訴える。
にもかかわらずビデオリサーチ社が日本テレビを訴えなかったのは、取引先だからであろう。
日本では、このように取引先であることを考慮して、訴えを躊躇することは多い。
しかし、それは事案の真相をあやふやにすることになると思う。
日経(H16.1.21付)社会面で、「弁護士報酬の『相場』を公開」という見出しで、日弁連が事例別の弁護士費用の相場を小冊子にしたという記事が載っていた。
それによれば、交通事故で1000万円の損害賠償を全額回収した場合、着手金として50万円とる弁護士が31%、1000万円を回収できた場合に報酬金として100万円とる弁護士が51%となっている。
とすると、着手金と報酬金の合計で150万円をとる弁護士は結構いると思われる。
交通事故に関していえば、弁護士が介入することで保険金が上がることはよくあるから、弁護士に依頼するメリットはかなりある。
しかし、交通事故ではほとんど保険に入っているし、支払は保険会社であるから、「裁判に勝ったが回収できない」という恐れはない。
それなのに、弁護士費用の総額が150万円というのは何だか高い気がするのだが・・。
2004年01月20日(火) |
家庭裁判所の役割は今後大きくなる |
日経(H16.1.20付)社会面で、児童虐待の再発防止のため、家庭裁判所の関与を高めるように法改正がなされるという記事があった。
家庭裁判所の裁判官は、なんとなく出世コースから外れたイメージがある(実際外れているのだが)。
司法修習では、裁判所、検察庁、法律事務所で合計一年半(現在はもう少し短い)の実務修習を行ったが、家庭裁判所での実務修習はわずか二週間であった。
ここからも家庭裁判所の置かれている地位がわかるような気がする。
しかし、今年(H16)4月からは離婚訴訟は家庭裁判所に一本化されるなど、家庭裁判所が取り扱う事件は多くなってきている。
家庭裁判所では調査官といって、少年事件で少年の環境調査や、家事事件で家庭調査などを担当する人がいて、通常の裁判ではできない調査が可能である。
したがって、今後は家庭裁判所をもっと活用すべきであるし、その役割は徐々に大きくなってくると思う。
2004年01月19日(月) |
向井さんの代理出産のコメントについて、訂正します |
日経(H16.1.16付)社会面の、向井さんの代理出産に関する記事について、次のように書いた。
向井さんのことがマスコミで大きく報道されなければ、代理出産かどうか戸籍係は分からないから、母親として届け出たら、そのまま受け付けられていたはずである。
マスコミが騒いだばっかりに、本当の母親が、戸籍上母親になれないというのはおかしい。
これに対し、戸籍関係の方から次のようなメールをいただいた。
「戸籍係は出生証明書により出生届を受け付けるが、おそらく医師は向井さんを母親とする出生証明書は書けないと思う。
したがって、マスコミが騒ぐかどうかと関係なく、向井さんを母親とする出生届は受け付けられないのではないか。」
誠にその通りであり、先日のコメントのうち、「マスコミで報道されなければ、代理出産かどうか戸籍係は分からないから、母親として届け出たら、そのまま受け付けられていたはず」という部分を訂正する。
アメリカの出生証明書がどのような書式が知らないが、報道では、母親は代理出産した女性が記載されているそうである。
そのような出生証明書をつけて、向井さんを母親とする出生届けをした場合、たとえマスコミが騒がなくても戸籍係は受付しないだろう。
メールを送っていただいた○○○○さん、ありがとうございました。
2004年01月16日(金) |
出産した女性が母?−代理母の出産について− |
日経(H16.1.16付)社会面で、アメリカの代理母によって出産してもらった向井亜紀さんが帰国したという記事が載っていた。
記事によれば、向井さんは、戸籍上は母親として認められないようである。
しかし、このようにマスコミで大きく報道されなければ、代理出産かどうかは戸籍係は分からないから、母親として届け出たら、そのまま受け付けられていたはずである。 (この部分については、訂正する。医師が出生証明書に「母親向井さん」と書くことはないと思われ、たとえマスコミが騒がなくても、戸籍係は受け付けないだろうからである。)
後に、母親でないと主張して、DNA鑑定しても、生物学的には母親だから、母親でないという主張は認められないだろう。
本当の母親が、戸籍上母親になれないというのはやはりおかしい。
端的に、生物学的に母親であれば、戸籍上も母親と認めるべきではないだろうか。
2004年01月15日(木) |
議員定数不均衡の裁判の流れが変わってきたかもしれない |
日経(H16.1.15付)1面で、参議院選挙の議員定数不均衡及び非拘束名簿式について、最高裁が合憲と判断したと報じていた。
議員定数不均衡については、毎度のことながら、裁判官出身者は合憲、弁護士出身者は違憲ときれいに分かれている。
その中で、裁判官出身者で1人だけ(泉徳治裁判官)違憲と判断した人がいたのが注目される。
議員定数不均衡の裁判の流れが変わってきたように思う。
2004年01月14日(水) |
「18歳未満とは知らなかった」という言い訳は通らない |
日経(H16.1.14付)社会面で、テレビ愛知常務が児童買春の容疑で逮捕されたが、容疑者は「18歳未満とは知らなかった」と容疑を否認していると報じていた。
逮捕されると、このような言い訳をする容疑者は多い。
しかし、通常、容疑者は、相手が18歳未満であることはうすうす分かっている(というよりも18歳未満であるからこそ買春している)。
それゆえ、取調べで厳しく追及されると、ほとんどの場合「18歳未満であることは分かっていました」と自白する。
おそらく、このケースでも、そのようになるだろう。
2004年01月13日(火) |
成人式で演台に上がる−器物損壊罪は成立する? |
日経(H16.1.13付)社会面で、各地の成人式の様子を報じていた。
川崎では、新成人代表が、用意した挨拶文を読まずに演台に土足で上がり、「議員の紹介が長く、選挙目当ての式だ」と批判したそうである。
これに対し、市長は「演台に土足で上がるのは器物損壊罪ではないか。告発もあり得る」とカンカンとのこと。
しかし、市長や議員のあいさつは50分も続き、最後に新成人代表の挨拶となったそうである。
これでは誰のための式か分からない。
演台に土足で上がるのは行き過ぎであるが、批判する気持ちも理解できる。
それはさておき、演台に土足で上がる行為は、市長の言うように器物損壊罪にあたるのだろうか。
判例は、食器に放尿したケースで、物は壊れていないが、器物損壊罪の成立を認めている。
食器に放尿すれば、感情上、二度と使えなくなるから、それは物を壊したのと同じであるという理屈である。
この基準でいえば、土足で上がったからといって、物理的に演台として使えることはもちろん、放尿のケースと異なり、感情上、演台として二度と使えないというわけではない。
したがって、器物損壊罪は成立しないだろう。
他方、伊東市では、酒に酔った新成人が壇上の垂れ幕を引きずり降ろし、これに対し、市長は「告訴を含め強い態度で臨みたい」と述べたそうである。
テレビのニュースで見ると、垂れ幕を引きちぎっていたから、こちらは、文句なしに器物損壊罪が成立するだろう。
2004年01月09日(金) |
中華航空機訴訟で、原告が控訴 |
日経(H16.1.9付)社会面で、中華航空機訴訟で、原告が全員控訴したという記事が載っていた。
記事によると、控訴した理由は、中華航空が控訴する可能性があるので、自ら控訴しておいて、主導権に握っておこうということのようである。
しかし、原告の控訴期間が過ぎたとしても、被告(中華航空)が控訴した場合は、付帯控訴といって、控訴することができる。
もっとも、通常の控訴と異なり、付帯控訴の場合は、控訴人が控訴を取り下げれば、付帯控訴も当然に取り下げることになるので、立場は少々不安定である。
ただ、控訴すると(付帯控訴でない場合)、高額の印紙代が必要となる。
それを考えると、果たして控訴する必要があったのかなあと思った。
具体的状況が分からないので、見当違いの感想かも知れないが・・。
2004年01月08日(木) |
商品先物取引業者の東京ゼネラルが不正行為 |
日経(H16.1.8付)3面に、商品先物取引業者の東京ゼネラルが不正行為で業者免許を取り消されたことにより、市場の信頼が揺らいでいるという記事が載っていた。
東京ゼネラルは大手の商品先物取引業者である。
その大手でさえ不正行為をしていたのであるから、他の業者は推して知るベしである。
そもそも、先物取引は、本来は相場変動リスクを回避するためであり、当該商品の取引業者のためにある市場である。
しかも、少しの投資額で何倍もの取引が可能なため、極めてハイリスクな商品である。
したがって、現行の制度を前提にする限り、個人は絶対に手を出すべきでないと思う。
2004年01月07日(水) |
『弁護士』が地獄に堕ちた? |
日経(H16.1.7付)の週刊新潮の広告で、「かくて『弁護士』は地獄に堕ちた」という見出しが載っていた。
ただならぬ見出しだったので、買って読んでみると、離婚訴訟の依頼者と関係を持ってしまった2人の弁護士の記事であった。
先日も、辻元・元議員と仲良く買い物している弁護士が写真に撮られていたが、事件の係属中に依頼者と特別の関係になることは問題である。
適正な事件処理ができるとは思えないからである。
もっとも、正直言って、週刊誌で「地獄に堕ちた」という見出しまで付けて書き立てることだろうかという疑問はあるが、襟は正さなければならないと思う。
2004年01月06日(火) |
おいしい話はころがっていない |
日経(H16.1.6付)社会面で、学生が、マルチ商法の標的になっていると報じていた。
手口は、ブランド品を身につけた「カリスマ学生」が登場して、「勝利者になろう」と呼びかけて商品を買わせ、金のない人には消費者ローンで借りさせるというものである。
しかし、消費者ローンの年利は30%近い。
すると、ローンで借りてまでこのようなビジネスをする場合、年30%以上の収益を上げないと儲からないことになる。
デフレの世の中で年30%以上の収益を上げることは大変なことであり、そんなおいしい話が身近にころがっているはずがない(可能性0というわけではないが)。
冷静になって考えれば分かると思うのだが・・。
2004年01月05日(月) |
電話作戦摘発により、議員の資格まで失わせるのはやりすぎではないか |
日経(H16.1.5付)2面に、投票依頼の電話作戦をした運動員が公職選挙法違反で逮捕されたことに対し、民主党の菅代表が「電話作戦の摘発は、法の趣旨の拡大解釈である」と語ったと報じていた。
この事件は、電話作戦をした運動員に払う報酬が規定より多かったことが問題になったものであり、連座制の適用により、当選した議員の議員資格を失うことになりそうである。
確かに、規定より多く報酬を払ったのだから違法行為ではある。 しかし、選挙で選ばれた議員の資格を失わせるほど違法性が高いのだろうか。
最近の警察・検察庁には、「人に厳しく、自分に甘く」という姿勢が強く感じられる(もともとそのような体質はあったが)。
もっとも、電話作戦というのは、勝手に人の家に電話をかけてくるのだから迷惑な作戦である。
なぜ、このような電話作戦が許されて、インターネットでの選挙活動が許されないのか不思議である。
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