2003年12月26日(金) |
和歌山カレー事件、民事裁判の判決 |
日経(H15.12.26付)社会面で、和歌山カレー事件の民事裁判で、損害賠償を認めたと報じていた。
あまりに小さな記事であり、事件の風化を感じさせるものがあった。
この事件を徹底的に争うとすると、被告側の弁護費用は標準では481万5000円になる。
そんなお金は林被告にはないだろうし、すでに資産はなく、敗訴しても同じことだろうという判断から、林被告も本気で争わなかったのであろう。
昨日の日経(H15.12.24付)夕刊で、強制執行妨害罪に問われた弁護士の安田弁護士に対し、東京地裁は、無罪(求刑懲役2年)を言い渡したと報じていた。
この事件で、検察官のやり方はひどいと思う。
経理担当者の証言が重要な証拠となっているのだが、その経理担当者は数億円の横領をしていたのである。
そんな者の言うことが信用できるはずがない。
結局、安田弁護士に対する報復的な起訴といわざるを得ず、検察に対する信頼を失うだけであろう(私はオウム事件弁護団の応援団ではないが)。
2003年12月24日(水) |
裁判を受ける権利と、適正な医療を受ける権利 |
日経(H15.12.24付)7面に、アメリカの19州で、医療訴訟の乱発に耐え切れず、若い医師が州外に逃げ出したり、廃業したりしていると報じていた。
また、リスクの高い医療行為を拒否する事態にもなっているそうである。
これでは、確かに裁判を受ける権利は保障されているが、適正な医療を受ける権利は保障されていないことになる。
なにごとも行き過ぎは問題であると思う。
日経(H15.12.22付)13面で、育児休業法改正に先行して、企業が育児休業制度の拡充をしているという記事が載っていた。
育児休業法では、育児休業の申し出を拒めないと定めている。
しかし、私の事務所は、事務員は2人しかいない小さな事務所である。
かりに、出産ということになると、別の事務員を雇うことになる。
とすると、一年後に職場に復帰しようとしても戻る場所はない。
幸いにしてそのような事態にはなっていないが、私の事務所では法令を遵守することができないということになる。
2003年12月19日(金) |
強盗致死傷は懲役7年以上 |
日経(H15.12.19付)社会面で刑法が改正され、有期懲役刑の上限が引き上げられるなど厳罰化が図られると報じていた。
一方、別の新聞であるが、強盗致死傷については、現在懲役7年以上を引き下げる見込みと書いていた。
強盗致傷というのは、ナイフを持って押し込み強盗をして傷を負わせるケースだけではない。
スーパーでパンを万引きして、警備員に見つかったので、逃げるために平手で殴り、かすり傷を負った場合も、強盗致傷罪である。
そんなケースでも、求刑は懲役7年となる。
先日、国選弁護事件で、そのような事件があり、懲役7年という求刑を聴いて、傍聴席の人が、思わず「えっ!」と言った。
判決はどんなに軽くても懲役3年6月である。
あまりに刑の均衡にかけるものであり、早急に是正して欲しいと思う。
2003年12月18日(木) |
中国珠海市の集団買春事件で終身刑 |
日経(H15.12.18付)社会面で、中国珠海市のホテルで集団買春をしたとされる事件で終身刑の判決がなされたと報じていた。
日本では、売春は、斡旋で懲役2年以下、管理売春でも懲役10年以下であるから、国の違いとはいえ、恐ろしい。
あっせんをホテル側に頼んだ疑いで日本人(会社の幹部社員)3人も、を国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際指名手配されている。
引き渡されることはないにしても、生きた心地がしないだろう。
2003年12月17日(水) |
日米で、特許侵害について判断が分かれた |
日経(H15.12.17付)社会面に、特許訴訟の模擬裁判を、日本の裁判方式と、アメリカの裁判方式(陪審制)とで行ったところ、結論が分かれたという記事が載っていた。
裁判の内容は、採決用注射器に仕込む、血液凝固を防ぐ物質を少量にする技術について、原告は、物質を凍結させて注射器に入れるが、被告は、注射器内に液体を入れて凍結させるものであり、それが特許侵害にあたるかというものである。
日本方式では、凍結させて注射器に入れるか、注射器に入れて凍結させるかという順番が特許の本質部分であるとし、技術が異なるから特許侵害はないと判断した。
これに対し、アメリカ方式(陪審制)では、順番の違いで何が異なるか分からなかったとして、特許侵害を認めた。
この模擬裁判は東京地裁と早稲田大学共催で、現役の裁判官が参加している本格的なものである。
その中で結論が分かれたのだから、興味深い。
このように結論が分かれた背景には次のような価値観の違いがあるように思う。
特許を広く認めると、ライバル会社などが技術改良して競争する余地はなくなる。
それは技術の進歩を妨げるだろう。
このケースでいえば、物質を凍結させて注射器に入れる技術に対し、注射器の中で凍結させた方が技術的に簡単で優れているかもしれない。
それを単なる物まねと見るか、技術の進歩と見るか。
そういった価値観の違いが、前述の模擬裁判の結論の違いとして現れたように思う。
日経(H15.12.16付)社会面トップで、武富士前会長が起訴されたと報じていた。
貸金業規制法では、役員が禁錮以上の刑を犯した場合は、消費者金融業者は登録を取り消され、新規の貸付ができなくなる。
そういえば、ワールドファイナンスの役員が禁錮以上の刑であったことが判明し、登録を取り消されたと思う。
そのため、ワールドファイナンスは、新規貸付はできず回収業務だけ行っている(ビルの上に立っている「ワールドファイナンス」と書いたカンバンの広告料は払えているのだろうか)。
仮に武富士が登録を取り消されると、従業員も多数いるから、社会問題になるかもしれない(それを回避するために、会長を辞任したということであるが)。
ちなみに、武富士が登録を取り消され、事実上倒産しても、借りた人の債務がゼロになるわけではない。
2003年12月12日(金) |
ストーカー規制法は合憲 |
日経(H15.12.12付)社会面に、ストーカー規制法が合憲という最高裁の初判断がなされたと報じていた。
これは、被告人が最高裁に上告し、その中でストーカー規制法が違憲であると主張したため、それに答えたものである。
もっとも、弁護人は、ストーカー規制法が違憲だと本気で考えているわけではない(と思う)。
しかし、上告理由は憲法違反と判例違反に限られているから、こじつけでも違憲であると主張せざるを得ないのである。
重要判例として学生や司法試験受験生が一生懸命勉強する最高裁判例の中には、こういったこじつけの違憲主張に対し答えたものが結構多い。
2003年12月11日(木) |
裁判官のうち、6人が再任不適当 |
日経(H15.12.11付)社会面に、最高裁諮問委が、裁判官の再任について6人が不適当と答申したと報じていた。
最高裁諮問委は今年の5月に設置されたもので、法曹三者と有識者で構成している。
諮問委がどのような資料を基に判断したのか気になるが、最近は、政治思想が問題になることは少ないようである。
おそらく能力の問題であろうと思う。
使い物ならなくて、単独の法廷を任せるわけに行かず、合議法廷(裁判官が3人いる)しかできないという裁判官もいると聞く。 (そういえば、未成年者に淫行した裁判官は、すべて合議法廷である高裁の裁判官だった)
ところで、弁護士から裁判官に任官を希望した人については、12人のうち5人が任官不適当とされたそうである。
不適当となった率は異常に高く、恥ずかしいことである。
弁護士から任官する際には弁護士会の推薦が必要であるが、弁護士会はもう少しきちんと審査して欲しいと思う。
2003年12月10日(水) |
放置自転車対策として、鉄道各社に課税 |
日経(H15.12.10付)社会面に、豊島区が、放置自転車対策の負担を鉄道各社に求めるため、課税する条例を制定したと報じていた。
なんだか取れるところから取ろうという発想であり、東京都の大手銀行に対する外形標準課税を思い出させる。
税収は2億1000万円を見込んでいるとのことである。
仮に、豊島区の定めた税率で他の23区や、郊外の各自治体までが課税を始めると、鉄道会社では負担しきれない額になるだろう。
東京都の大手銀行に対する外形標準課税で、二審では課税することは違法ではないが、税率が違法であるとされた。
鉄道各社に対する課税でも、税率が問題になる可能性はあると思う。
2003年12月09日(火) |
防犯費用も万引き犯に請求できる? |
日経(H15.12.9付)社会面で、書店組合が、万引き犯に対し、防犯費用を加算した損害賠償を求める方針という記事が載っていた。
書店組合によると、「弁護士とも相談、防犯費用についても損害賠償請求が可能と判断した}そうである。
果たして、そうだろうか。
損害賠償請求できるのは、その行為によって生じた損害である。
不法行為以前に支出した費用は、「その行為によって生じた損害」とはいえないだろう。
書店組合の言い分は無理があるように思う。
2003年12月08日(月) |
「告訴」は、刑事事件で使う用語である |
日経(H15.12.8付)25面の「ゼミナール 税務行政を点検」という連載コラムで、税務訴訟の勝訴率は上昇傾向にあると書いていた。
確かに、その記事によれば、勝訴率は2000年度が6.1%に対し、2002年度は11.6%と高くなっている。
それでも10%程度しか勝てないのかと思うと、税務訴訟には消極的になってしまう。
ところで、このコラムの中で、「税務訴訟は国を相手取った行政訴訟であり、告訴するには相当の覚悟がいる」と書いていた。
しかし、「告訴」とは、刑事事件において、検察官や司法警察員に対し犯人の処罰を求めるこという。
したがって、ここでは「告訴」ではなく、「提訴」または「訴訟」と書くべきである。
どうでもいい間違いかもしれないが、新聞で堂々と書かれると気になってしまう。
2003年12月05日(金) |
法律事件を安易に「代理人」に頼まないほうがいい |
日経(H15.12.5付)スポーツ面で、プロ野球選手会は、代理人としてアメリカ大リーグのエージェントも認める方針と報じていた。
この記事を読んでいて、エージェントを代理人とすることは、弁護士法に違反しないのだろうかと気になった。 弁護士法72条は、弁護士以外の者が報酬を得る目的で代理人となることを禁じているからである。
そこで条文を調べてみると、弁護士72条は、弁護士以外の者が「法律事件に関して」報酬を得る目的で代理等をすることができないと定めていた。
プロ野球選手の年俸交渉は「法律事件」ではから、弁護士でなくても代理人として交渉することは可能なようである。
ただ、世間には、弁護士でないのに代理人交渉をする人は多い(その典型例は、ヤクザであるが)。
しかし、事件が複雑になり手に負えなくなってくると手を引いてしまい、依頼者が困って弁護士に相談に来ることがよくある。
また、先日相談を受けた件では、保険金に詳しいと称して、交通事故の被害者の代理人として加害者に治療費等の請求交渉をしていたところ(無保険車であったため、加害者との直接交渉になったようである)、加害者からお金を受け取っていたのに、それを報告せず、ちょろまかしていたことが発覚した例があった。
法律問題の交渉については、弁護士に任した方が結局は安くなると思う。
2003年12月04日(木) |
有料サイトを使って、法外な請求をされている方に |
日経(H15.12.4付)社会面に、東武鉄道の個人情報が流出している可能性があると報じていた。
東武鉄道に登録されている会員に対し、使った覚えのないインターネットの有料サイトからの請求書が送られてきたそうである。
最近は、使った覚えのないのにこのような請求を受けるという相談をよく受ける。
そんなものは放っておけばいいのであるが、中には、ツーショットダイヤルを使ったところ、何十万円という法外な請求を受けたと相談に来る人もいる。
この場合は、実際に使った覚えがあるから、不安は大きい。
このような場合、弁護士から電話して不当請求であることを告げると、応対だけは「うちは違法業者じゃない」「訴えるのなら訴えてみろ」などと威勢がいいが、それっきりであり、それ以上請求されることはない。
有料サイトやツーショットダイヤルなどを使った覚えがあって、法外な金額を請求されて怯えている人は、早く弁護士会に相談に行ったほうがいいと思う。
日経(H15.12.3付)1面に、武富士の社長が逮捕されたと報じていた。
武富士は、株価時価総額が東証一部の中で50番以内、みずほ、UFJという大手銀行グループの時価総額を上回り、経団連のメンバーでもある大企業である。
それゆえ、武富士社長の逮捕というのはトヨタや松下電器の社長が逮捕されたのと同じようなものであり、本来であれば衝撃的な事実である。
ところが、意外に驚きがないのは、この企業が以前から暴力団との付き合いが噂されたりして、胡散臭い企業と見られていたからであろう。
逮捕された事件は、武富士に批判的な記事を書いていたジャーナリストの電話を盗聴したものである。
その後も武富士は、同社に批判的な弁護士たちを叩こうとして、いろいろと画策したことがある。
自分に批判的な人たちに対し、手段を選ばすつぶしにかかる体質は変わらないようである。
2003年12月02日(火) |
検察官は、ほとんど特別な調査活動をしない |
日経(H15.12.2付)社会面に、検察庁の調査活動費について、一部流用された疑いが強いと裁判所が指摘したと報じていた。
調査活動費は、本来、検察官の調査活動のための予算であろう。
ところが、検察官が調査活動することはほとんどない。
東京地検特捜部などはよく報道されるから、検察庁は特別な調査しているように思える。
しかし、検察官の主な仕事は、警察が被疑者や被害者を取り調べた調書を元にして、起訴するかどうかという見地から、再度、被疑者などを取り調べ、検察官調書を作ることである。
したがって、検察官の仕事のほとんどは、検察庁において、被疑者を取り調べることである(公判に出頭するという仕事も重要であるが)。
そのような仕事に調査活動費が必要なはずがない。
したがって、調査活動費のほとんどが、交際費など別の費用として使われていたと思う。
2003年12月01日(月) |
離婚では、悩まずに法的手続きを進めた方がいい場合が多い |
日経(H15.12.1付)1面に、「年金を問う」というコラムがあり、その中で、別居した妻が「夫の厚生年金の一部を受け取る権利さえあれば」と嘆いていることを書いていた。
その夫には2700万円の退職金と月30万円の年金があるのに、生活費を送ってこないそうである。
しかし、その妻はそれほど嘆く必要はない。
まず、現在は夫婦なのだから、夫に対し婚姻費用分担請求ができる。
つまり、生活費をよこせといえるわけである。
夫からすれば、「勝手に出て行ったのに、何で生活費を払わないといけないのだ」と思うかもしれないが、その理屈は通らないのである。
また、離婚すれば、年金相当額の半分を夫から得ることができる。
年金支給が未確定の場合は請求できないであろうが、すでに年金支給が確定している分については財産分与の対象となるとされている。
つまり、国から年金を受け取ることは現在の制度では出来ないが、夫から、財産分与として受け取る権利はあるわけである。
また、退職金もその半分は取得できる。
したがって、この主婦は、7年間も我慢せずに、さっさと婚姻費用分担請求と、離婚訴訟を提起したほうがよかったのである。
離婚では、あまり思い悩まず、法的手続を進めた方がいいケースは多いのである。
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