今日の日経を題材に法律問題をコメント

2003年03月31日(月) 刑務所の収容者数が定員を7%も超えた

 日経(H15.3.31付)社会面に、刑務所、拘置所の収容者数が定員を7%も超え、悪化していると報じていた。

 6人の定員に、9人も10人も収容することもあるというから、ストレスが溜まってしまうだろう。


 原因の一つは、仮釈放をあまり認めないことにある。

 仮釈放をあまり認めないのは、かつて仮釈放された受刑者が再び凶悪犯罪を犯したことがあり、批判されたためであろう。

 また、被害者の気持ちを考えると、安易に仮釈放することは許されないということは理解できる。


 しかし、受刑者にとって仮釈放は希望の星でなのだから、もう少し認めてもいいのではないかと思う。



2003年03月26日(水) 迷惑メールに対し賠償命令

 日経(H15.3.25付)社会面に、迷惑メールに対し賠償命令という記事が載っていた。


 携帯電話に大量のメールを送信したことにより、NTTドコモが損害を被ったとして、業者に損害賠償請求したことに対し、裁判所がそれを認めたというものである。


 損害賠償を認めことは分かるが、ただ損害額の算定の仕方が気にかかる。


 裁判所は、あて先不明のメールを送ったために受信できず、ドコモに入るべき収入が入らなかったことが損害であると認定した。


 しかし、これでは、大量のメールを送って加入者が迷惑を受けたことが問題なのではなくて、あて先不明のメールを送ったためにドコモが儲けそこなったことが問題ということになってしまう。



 その点はともかく、ドコモは、訴訟で勝っても、現実に損害額を回収することは困難であろう。


 このような業者は資産がないからである。

 あるいは、すでに会社がなくなってしまっているかもしれない。

 
 したがって、このような裁判は、ドコモとしては迷惑メールを放置していないという姿勢をアピールすることぐらいの意味しかないのである。



2003年03月25日(火) 日経新聞元部長が、懲戒解雇されたことに対し、地位保全処分を求める

 日経(H15.3.25付)社会面の片スミに、日経新聞の元部長が、日経新聞を懲戒解雇されたことに対し、裁判所に対し、地位保全処分を求めたと報じていた。


 この元部長は、日経の子会社の不正疑惑、日経社長の愛人疑惑について、社員にメールで流したことを理由に懲戒解雇された。


 事実関係はよく分からないが、単に私怨だけでそのようなメールを流すことはあり得ないのではないかと思う。



 その点はともかく、記事にある「地位保全の仮処分」とは、仮の地位を求める保全処分のことである。


 これは、緊急性がある場合に、本裁判によって確定するまでの暫定的な措置として判断するものである。


 暫定的なものだから、証拠の証明力が少々弱くてもよく、また、時間をかけたら意味がないから、迅速な判断がなされる。


 もっとも、従来は、地位保全の仮処分の場合、なかなか裁判所の結論が出なかったが、最近は比較的早く判断をしているようである。


 どのような判断がなされるかは不明であるが、社内の規律を乱したのであれば、訓告などの処分をすればいいのであった、懲戒解雇すべき事案だろうかという気はする。


 いずれにせよ、早期に裁判所の結論が示されると思う。



2003年03月24日(月) 日興ソロモンの処分は遅すぎる

 日経(H15.3.24付)社説に、「日興ソロモン不正の教訓」と題して、不正取引排除のための制度改革が急がれると論じていた。


 日興ソロモンの不正とは、同社が取引終了間際に過剰な買い注文を入れて、株をつり上げたことが、証券取引法で禁止する作為的相場形成にあたると認定されたものである。


 問題は、それが行われたのが昨年の7月であり、それから9か月経ってようやく処分された点である。


 現在の証券監視委の陣容が不十分ということが原因なのだろうが、それにしてもあまりにも処分が遅い。

 不正な取引があれば、それに対し迅速に対応しなければ、市場からの信頼は得られないと思う。



2003年03月20日(木) 取引会社によって損害を受けても、相手の会社の取締役は原則として責任を負わない

 日経(H15.3.20付)社会面に、丸荘証券の元会長らに対し、丸荘証券が証券業界のルールに反して損害を与えたのは、取締役としての監督責任を怠ったからであるとして、10億円の賠償を命令ずる判決をしたと報じていた。



取引先が倒産すると、取締役から回収できないかとよく相談される。

しかし、取引によって損害を受けたとしても、それは相手会社の行為によるものだから、取締役は責任を負わないのが原則である。


 もちろん、商法266条の3には取締役の第三者に対する責任を認める規定があり、これによって取締役の責任が認められたケースはある。


 しかし、取締役の責任が認められるためには、任務懈怠に重大な過失があること、任務懈怠と損害とに因果関係があることが必要である。

 この立証はなかなか難しいのである。


 記事になっていた丸荘証券の会長は取締役の責任が認められている。

 しかし、実は会長を含め旧経営陣は 業務上横領の容疑で逮捕されているのである。

 このような場合は、捜査によってある程度事実関係が明らかになっているから、立証が容易だったのだろう(あるいは欠席裁判だったのかもしれない)。


 ということで、取引先が倒産したからといって、当然に取締役から回収できると思ってはいけないのである。



2003年03月19日(水) パートは、いつ解雇してもよいわけではない

 日経(H15.3.19付)社会面で、厚生労働省の労政審議会が、パートの公正処遇するための指針に盛り込むよう提言したと報じていた。

 
 このような指針を盛り込むよう提言するのは、パートに対しては公正な処遇がなされていないからであろう。

 実際、パートは、いつ解雇してもよいと勘違いしている経営者もいる。


 そもそも、正社員とパートの主要な違いは、パートは正社員より労働時間が短い点にある。

 しかし、最近はパートも基幹業務につくようになり、労働時間もフルタイムのパートもある。

 他方、正社員の方も終身雇用制が崩れてきたから、両者の違いはあいまいになってきている。


 そうであるのに、パートだからどのような処遇をしてもよいと勘違いをしていると、無用なトラブルを招くことになる。


 したがって、経営者としては、パートも労働者であることをはっきりと認識したうえで、パートと正社員との区別の基準を明確にし、パートのための就業規則を作っておくことなどが重要である。


 それによって、無用な紛争を防止することができよう。



2003年03月18日(火) 「倔里設林」は、「グリセリン」と読む

 日経(H15.3.18付)社会面の広告欄に、商標権の指定商品の書き換え制度のお知らせが載っていた。


 商標は商品の区分ごとに登録される。

 ところが、時代とともに分類の仕方を何度か改正しているため、何種類もの分類の仕方が並存することになった。

 それを現行の分類に統一することにしたものである。


 そのお知らせの中で明治32年の法律の分類に「倔里設林」という分類があった。


 こんな分類があったかなあと思う以前に、そもそも読み方が分からなかった。


 現行分類では「グリセリン」となっている。

なるほど、「倔里設林」は、「グリセリン」と読むわけである。


 これはあまりに古い例だが、商標制度はよく改正される(最近は、他の法律もたびたび改正されるが)。

 そのため、改正前の古い本を持っていて、改正を知らずにアドバイスをすると大変なことになる。


 実際、商標権侵害の相談をされて、間違ったアドバイスをしそうになったことがある。



 だから、常に改正後の新しい本を買い、ほとんど使っていないのに古い本は捨てなければならない。

 
 もったいないけど、仕方ない。



2003年03月14日(金) 裁判官の再任が一人拒否された

日経ではなく、朝日ニュースネット(H15.3.14付)であるが、裁判官の再任が一人拒否されたと報じていた。

裁判官は10年が任期であるが、再任拒否はほとんどない。


その人が再任されなかった理由は不明であるが、私も再任拒否されて辞めて欲しいと思う裁判官にあたることはときどきある。

 
 もっとも、えらそうな裁判官の場合は、我慢すれば済むから、辞めてもらうおうとまでは思わない。


 一番困るのは、勝つべき裁判に負けたり、逆に、負けても仕方ない裁判に勝ってしまうときである。

 勝つべき裁判を負けると控訴しなければならないし、本来負ける裁判を勝ってしまうと、相手方から控訴される。

 いずれにしても困るのである。


 依頼者に「あの裁判官は変わっているから」と言っても、なんだかいい訳じみてみっともない。


 私の知っている裁判官で、ぼぉーとしていて、ときどき話す法律論もとんちんかんなことを言う人がいたが、結論だけは間違わなかった。


 弁護士としては、ぼぉーとしていても、結論を間違わない裁判官のほうがありがたいのである。



2003年03月13日(木) なんでも株主代表訴訟のせいにせず、自分で判断せよ

 日経(H15.3.13付)5面に、企業が、みずほ銀行の増資に応じるかどうかで苦しい決断を迫られたという記事が載っていた。


 その記事の中で、新日鉄は、「株主代表訴訟のリスクを恐れて、みずほ銀行に対し、増資後の業績見通しの明示を求めた」と報じていた。

 この記事を読んで呆れた。


 新日鉄では100億円もの増資を引き受ける。

 増資を引き受けて、みずほ銀行の株が下落したら、新日鉄自体の業績が悪化するのである。

 したがって、増資を引き受ける前に、みずほ銀行の業績見通しを求めるのは当然ではないか。

 それは株主代表訴訟とは関係ないことである。


 なんでも株主代表訴訟のせいにする傾向があり、企業は、自分で考えるという努力を怠っているのではないか。



2003年03月12日(水) 小林亜星が、服部克久に勝訴

日経(H15.3.12付)社会面に、小林亜星が作曲家服部克久に対し、「自作の曲を真似された」として損害賠償を請求した訴訟で、小林亜星の勝訴が確定したという記事が載っていた。

 小林亜星の言い分は、服部克久の作曲した「記念樹」が、小林亜星が作曲した「どこまでも行こう」に似ているということであり、それを裁判所が認めたわけである。


 私は「どこまでも行こう」は知っているが、「記念樹」は知らないので、似ているかどうかは何ともいえない。

 ただ、「似ている」「似ていない」といっても、人によって感じ方はずいぶん違う。

 この裁判でも、一審では「似ていない」とされているから、著作権侵害といっても、かなり微妙である。


 もっとも、この裁判では服部克久は二次的著作物の権利を持つと認定されている。

 判決文を読んでいないので、その意味は正確には不明であるが、おそらく、服部克久の曲が、あたかも原曲(「どこまでも行こう」)を編曲したのと同視され、その創作性が認められたのであろう。



 以前、「セーラームーン」の主題歌と、倍賞千恵子が歌っていた「さらならはダンスの後に」が似ていると聞いたので、比べてみたことがある。

 結果は、「似ている」どころではなく、「そっくり」であった。


 しかし、「セーラームーン」の主題歌はテンポもよく、当時の子供たちに大人気であった。

 つまり、人の曲をパクリながらも、子供たちの記憶にいつまでも残る曲をつくったのである(その子たちが大人になったときにセーラームーンの曲を聴いて、「懐かしい!」と思うことは間違いない。)。

 それは素晴らしいことであり、「セーラームーン」の作曲家にはそれなり権利を認められるべきであろう。


 これが先の判決にいう二次的著作物の権利ということなのだろう。


人の曲をパクリながらも(意識的にパクッたかどうかは別にして)、創造的な曲を作っていく。

 芸術というのはそのようなものなのだろう。



2003年03月11日(火) 時効はなぜあるのか

 日経(H15.3.11付)社会面に、朝日新聞襲撃事件はすべて時効になったと報じていた。


 この事件の時効は15年である。

 
 時効などなくし、いつまでも犯人を追及しろという考えもあるかもしれない。


し かし、年月が経つと証拠はだんだん散逸し、捜査は困難になるし、誤判の恐れも強くなる。

 そこで、時効という一定の期間の制限を設けたといわれている。


 ただ、実際上の理由は、捜査の負担軽減であると思う。



 時効期間は罪の重さによって違う(刑訴法250条)。

 殺人は15年

 窃盗や傷害は7年

 罰金刑にあたる罪は3年である。

参考までに。




2003年03月10日(月) 日本の検察は完全な年功序列である

 今日は朝刊が休みのため、昨日の日経(H15.3.9)についてであるが、7面に、「法相の検察人事に検事が反発」という見出しの記事があった。

「えっ。そんなことあり得ないはずだが。」と思って読むと、韓国の話だった。


 韓国では、法相が年功序列を破る抜擢人事をしようとしたため、検察側が反発しているそうである。

 しかし、日本では抜擢人事はあり得ない。


 日本の検察は完全な年功序列である。

 その理由は、検察人事に政治が介入することを排するためである。

 ただ、そういった理由だけでなく、ずっと以前に検察内部で深刻な派閥争いがあり、それに懲りたのも理由であるといわれている。


 完全な年功序列のため、若くして司法試験に合格し若くして検察官になった方が有利であり、そうでない人は出世の見込みはない。


 裁判官はあまり辞めないが、検事を10年くらいでやめるケースは多い。

 もちろん、辞めるのは一人一人事情が違うのだろうが、人事がある程度読めるためというのも理由ではないかと思っている。

 要するに、出世の見込みがないと思って辞めるわけである(と想像している)。



2003年03月07日(金) 日興ソロモン証券が株価操作

 日経(H15.3.7)・1面トップに、日興ソロモン証券が株価操作したと大きく報じられていた。

 日興ソロモンの株価操作により、昨年7月、大引け間際に急騰しストップ高をつける銘柄が続出し、株式相場全体が混乱したそうである。


 株式相場全体が混乱するくらいだから、かなり目立ったのであろう。

 それでも平然とやるのだから、罪の意識はないのかもしれない。


 こんなことをしていると、証券取引に対する不信は増すばかりである。

 厳しい処分をすべきと思う。



2003年03月06日(木) 証券仲介業制度の詳細が決まる

日経(H15.3.6付)・7面に、証券取引の窓口を増やし、投資家のすそ野を広げることを狙った証券仲介業制度の詳細を決めたと報じていた。


 証券仲介業とは、証券会社の委託を受けて証券会社に取引を取り次いだりするものであり、顧客口座を持たず、証券や現金は扱わない。

 仲介業としては、例えば、税理士などが自己の顧問会社に証券取引を仲介することが想定される。る。


 ただ、「仲介業」というのは分かりにくい。

 報道によれば、顧客に損害を与えた場合は証券会社が責任を負うようであるから、仲介業者の独立性は強くない。


 それなのに、仲介業という言葉は実態に合わないと思う。


 当初の案では「仲介業」ではなく、「代理店」だったそうであるが、その方が実態に合うのではないか。



2003年03月05日(水) 前納金返還に応じる大学が増えてきた

日経(H15.3.5付)・社会面に「大学が変わる」という連載コラムが載っていた。


そのコラムの中で、合格者の前納金返還訴訟が広がり、前納金返還に応じる大学が増えてきていると書いていた。


 大阪の弁護士たちが、前納金を「ぼったくり金」とネーミングし、その返還を求めたことの成果である。


 それにしても、「ぼったくり金」という一言で、何が問題かがすべて分かるのであるから素晴らしい。


 東京の弁護士には絶対につけられないネーミングであり、感心してしまう。



2003年03月04日(火) 名目監査役はご注意

 日経(H15.3.4付)・社会面に、「北の家族」の親会社だった食品会社ケイビーが400億円の粉飾決算をしたとして、経営陣3人が証券取引法違反で逮捕されたと報じていた。


 粉飾決算とは、本当は赤字なのに黒字の決算することである。

 黒字決算だから株主に利益を配当しなければならない。

 記事によると、株主に3億8000万円も配当したそうである。


 また、黒字だから当然税金も払わなければならない。

 支払った税金も相当な額になっているだろう。


 そんなに無駄なお金を使って、結局、経営陣は逮捕されるのだから、まったく割に合わない。


 おそらく、景気が回復したら何とかなると思ったのだろうが、もう神風が吹く時代ではない。


 ところで、この事件では監査役も逮捕されている。

 名目だけの監査役の人も多いから、そういった人たちは、自分の会社が粉飾決算していないかよく注意した方がいいかもしれない。



2003年03月03日(月) リクルート事件で、江副被告にあす判決

 日経(H15.3.3付)社会面にリクルート事件で、江副被告にあす判決という記事が載っていた。


 江副被告側は、「親しい知人に株式を持ってもらい、喜びを分かち合いたいという動機だった」と主張しているそうである。


 しかし、値上がりしない株を買わされても、喜びは分かち合えないだろう。

 値上がりが確実だったからこそ、もらった人も喜ぶのである。


 したがって、明日の判決で無罪になることはあり得ない。


 江副被告としては賄賂でないと信じている以上、争うことはやむを得ないのかもしれないが、このような裁判を13年以上も続けるのは虚しい気がする。


 < 過去  INDEX  未来 >


ご意見等はこちらに
土居総合法律事務所のホームページ


My追加
-->