2005年02月28日(月) |
ディズニーシー・クエスト3 |
――かくして3人は魔宮に辿り着いた。 途中を端折った感は拭えないが、 今月の日記が今日で終わりなので仕方ない。
そんなわけで、ラスボス!出て来い! お前は完全に包囲されている!
ラスボス「…よくぞここだとわかったな。さすが夫婦」
いらんこと言わない! さあ、ディズニーシーを返… ていうかむしろその前に、その色やめろ!
ラスボス「だめ?」
ラスボスがピンクはまずいだろ。
ラスボス「ならばこれでどうだ?」
見にくいよ。
ラスボス「これは?」
なんだそれ。センスないなーお前。
ラスボス「何だと!?じゃ何色ならいいんだ!」
いいか、仮にもラスボスたるものは、 世界を暗黒で支配しようとするのが筋なんだ。 しかるになんだ、そのピンクは! あんたにはラスボスの心がわからないのか。 わかるというなら、示してみろ、その色を!!
ラスボス「わかった!黒だな?!」
おっ いなくなったぞ。
ミッキー「ホントだ…消えましたね」 運転手「…ということは…」
――勇者の悪知恵により、とりあえず世界に平和が戻った!
ラスボス「え?!ちょっと待て!まだ戦ってないのに!」
運転手「…。仕事に戻るか…」 ミッキー「あ、じゃ僕バイトなんでこれで」
おつかれさん!すまんね君たち!
ラスボス「こんなくだらんオチってあるか――!!」
(2005年4月28日の日記に続く)
2005年02月27日(日) |
ディズニーシー・クエスト2 |
ぱーらーらーらー るったった――♪
一夜明けた。 これから我々…私とミッキーと運転手さんは、 ろくでなしの創世神から、 ディズニーシーを取り戻さねばならない。
っつったって… どうすりゃいいんだよー
運転手「まずマッピングから始めよう」 ミッキー「地理なら任せてください」
お…おおう?!
運転手「どうした勇者?」
なっ…ちょ…待て、なんだその適応能力の高さは!? さ、さては君たちは――
運転手「それでラスボスの場所としては…」 ミッキー「インディ・ジョーンズ・クリスタルスカルの魔宮かと」
って人の話聞いてないですね。 新展開で乗り切ろうと思ったのに。
運転手「理由は」 ミッキー「一番悪役っぽい名前だからです」
おい?ちょっと…これ、やるの?
運転手「ここからだと、うん、この道だな。 このミステリアスアイランドというのは?」 ミッキー「謎の天才科学者ネモ船長の秘密基地です」 運転手「SF…危険だな。なんでもアリだからな」
勝手に進行しないで! うわあんこのエキストラ強すぎる!!
ミッキー「遠回りですが、アラビアンコーストを通りましょう」 運転手「『アラジン』か。そうしよう」
主人公は私だぞ!!これは私の日記なんだ!!
ミッキー「勇者、依存はないですね?」
はい。
…うううわああ了承しちまったいこれでは某RPGの
ミッキー「では、この銅の剣を装備してください」
銅の剣…そのお約束な名前はやはり
運転手「薬草は俺が持とう」
でた。薬草。8Gで買える回復アイテム。
ミッキー「何してるんですか、早く行きますよ!」
ここに私がいる意味がわからない…
2005年02月26日(土) |
ディズニーシー・クエスト |
ぱ―― ぱ―― ぱーぱーぱーぱー る―― るーるらるーらららーらーら――
突如流れるBGM。なんか嫌な予感がしてきたぞ。
――かくして、勇者は帰ってきた。
流れるテロップ。
この展開はやばい! みんな!決してドアを開けるんじゃないぞ!
運転手「お、おかしいな。確かにここがディズニーシーなんだが」
ミッキー「僕も早く帰らないとクビになる…」
創世神「ミッキーが喋った!」
ほ、ほら!いつの間にか会話もRPGちっくになってきている! 運転手さん!Uターンです!
運転手「あ、あれ…エンストかな。動かないぞ」
そんな! ますますマズイぞ!4人パーティというのがさらにヤバイ!
――ディズニーシーの平和を取り戻す為、 仲間とともに立ち上がったのだ。
聞きたくない聞きたくないオレは家に帰る! せっかくの週末をこんなことに費やしたくないんだ!
――そして今、伝説はよみがえる!
よみがえらない!
創世神「ふふふふふ、そして私の元へ辿り着いてみろ!」
やっぱりお前の仕業か――!!
やれやれ、神様業はもうこりごりです。 大体、本物の神様がディズニーシーなんか行くからいかんのだ。
「まあ機嫌を直せ、妻。はいおみやげのミッキー」
?!
ちょっと待て!!いいから待て!!
「新鮮獲れたてだ」
げ、げ、現物捕獲してきちゃマズイだろ!! うわああすみませんディズニーシー あああこんな縄でぐるぐる巻きにしちゃって。 今すぐ返して来い!!
「キャッチアンドリリースだな?」
そういうことでいいから頼むから早く返してきて!!
「そうかミッキーはワシントン条約にひっかかるのか。 知らなかった。勉強になったぞ。へいタクシー!」
本当にへいタクシーって言った人初めて見たよ。
「妻も来るか?」
…あんたがディズニーシーをどのように楽しんだのか、 とてもいやかなり非常に気になるのだが、 責任の一端を担う私としては、恐ろしくて見るに見られないよ。
「よし、なら乗れ!」
人の話聞いてた?
かくして私と創世神とミッキーの三人は、 タクシーに乗ってディズニーシーへ向かう。
そして、ひよ子は言った。
『心配せんでよか』
…えっ? 福岡弁?なんでひよ子が福岡弁?
『本家ひよ子ですたい。』
――解説しよう!! “ひよ子”はもともと吉野堂製造の福岡銘菓。 しかし吉野堂が埼玉に工場を建ててしまったため、 福岡本舗を知らない人々が “ひよ子”=東京銘菓であると勘違いしてしまったのだ!
な、な、なんですと?!
『つまりこの勝負、東西引き分けち言わななりもはんな』
ひよ子!! そうか、君、西日本なんだよね。
『…もうやめちゃれちゃ、東京ひよ子』
『ま、待ってください、本家ひよ子! 私はただ世界にひよ子の輪を広めようと…』
『なしてそげんせないかんと?』
『それは…』
『そげんせんでもよかろーもん。 銘菓はちかっぱいあるごたーばってん、皆うまかろーが』
『…本家ひよ子』
本家ひよ子!! かっこいい…かっこいいけど、何言ってるか全然わからないよ!!
『さあ、もう行かないかんったい。 あんたを好いとー人が、東京で待っとろーが。 うまかーて言うてくれっ人んためにがんばりーよ』
『目が覚めました!!』
――かくして東京ひよ子はたぶん東京へ帰り… たぶん世界に平和が戻ったのでした。あーめでたかめでたか。
ああ。なんてことだ。 世界がひよ子の魔の手に落ちてしまった。
創生神!あんたもいつの間にか実況やってるし! なんとかするんじゃなかったのか!
「妻、お前ひとりに苦労はかけない」
もう十分かかってるから!ていうか妻言うな!
「東京銘菓になってもお互い元気でがんばろう」
嫌だ!! オレはひよ子なんかになりたくない! 東京タワーの置物と一緒に並べられるなんてまっぴらだ! 細切れの試食品にされてひやかし客に食われるのも嫌だー!!
しかしそのオレの肩を、後ろから叩く者がいる。
振り返れば奴がいる。 振り返ればこんがりきつね色のひよ子が――!!
2005年02月22日(火) |
実況!銘菓の東西対決3 |
さあ出ました夢の対決! 東京“ひよ子”VS 京都“八つ橋”!!
先制攻撃は“ひよ子”! 『どうも日本の中心です』攻撃!
これを“八つ橋”受け流す! 『野暮なこと言わはって嫌やわあ』カウンターだ!
“ひよ子”それをキャッチ! 『日本の政治と経済を預かってます』攻撃!
さすがの“八つ橋”かわしざまに、 『まあ旦那はん、ぶぶづけでもどないどすかー』!
どうする“ひよ子”?いやその手には乗らないぞ! 『大体京都タワーって俺らのパクリじゃないか』!
痛いとこ突かれた“八つ橋”! 『あんなもん観光名所にもならしまへん。旦さんと違うて』!
“ひよ子”!けっこうダメージを受けているぞ! 『確かに観光名所を作った感満載だが…それでも日本一だ』!
追い討ちをかける“八つ橋”! 『修学旅行生の数を見なはれ。歴史は古うおますさかい』!
“ひよ子”かわしざまに攻撃! 『そして商業主義の観光地は妙な土産物ばかり売る』!
“八つ橋”に大ダメージ! 『と、東京タワーの置物よりましどす』!
“ひよ子”うっかり素で受けた! 『ああ…あれはまったく何も役に立たないな』
“八つ橋”この隙に話題を変えるぞ! 『嫌やわあ、京都の東だから東京て言わはるんやろ?』
“ひよ子”、永田町節で開き直る! 『東京都。そっちは京都。東の分俺らが多い!』
おっと“八つ橋”切り返せない! 『き…京都府どす』
隙ありと見て“ひよ子”、一気に勝負をかける! 『そうだな。大阪と同じ【府】だな』
クリティカルヒット!!“八つ橋”、立ち上がれない! 『お…大阪…あんなん知りまへん』
言った瞬間!! 『なんでやねーん!!』 大阪“福板”!瀕死ながらもつっこまずにいられなかった!!
『う…』
味方にハリセンで叩かれた“八つ橋”!! オイシイと受け止めるほどプライドは低くないぞ!!
『…一緒にしないでおくれやす』
まともにダメージ!!落ちた――!!
勝者・“ひよ子”!!
銘菓の東西対決は東軍に軍配が上がった――!!
2005年02月21日(月) |
実況!銘菓の東西対決2 |
ハプニングが起きております!! 富山“月世界”、福井“羽二重餅”、石川“柴舟”!! 北陸3県まとまって、西チームに寝返った――!!
「もともとどっちつかずのところにいますからね」
三方向から“うなぎパイ”に殺到! なんと、これを撃破してしまいました。 四国4県も“長崎カステラ”も、呆気に取られています。
「しかしこの展開は、岐阜“大垣せんべい”には辛いところです。 どちらに義理を果たしたものか、これは迷ってますね…」
富山と愛知の真ん中にいますからね。 …あ、やはり、戦わずして離脱するようです。慎ましいですね。
さあこれで東がいなくなった! リーダー“ひよ子”、出るか? いや、出ない! “ひよ子”、動きません! 代わりに出たのは“青柳ういろう”と“萩の月”!!
「勝負に出ましたね。 しかし東の秘密兵器は、まだ出てませんよ」
“八つ橋”も動きません!! 西チーム、ここで手負いの四国を離脱させます。 北陸も一度後ろに下がらせて、 岡山“きびだんご”、広島“もみじまんじゅう”を投下!!
これで、実質2対2と考えていいんですかね。
「いや“羽二重餅”の存在を忘れてはいけません。 北陸は根性ありますよ」
先手は“青柳ういろう”!“きびだんご”に攻撃! “もみじまんじゅう”、割って入ります! それから“萩の月”がおっとりとやってきました!
譲れぬデッドヒート! 最初に脱落したのは、やはり“きびだんご”!
「“きびだんご”以外、みんな地方都市ですからね。 よく戦いました」
そして“萩の月”が脱落!!
「残ったのは“青柳ういろう”と“もみじまんじゅう”、互角ですね」
しかしここで東の秘密兵器、神奈川“鳩サブレー”が参戦!! 控えの北陸3県、あわてて出てきて食い止める!
「東チーム、うまい采配です。」
しかし長野の“栗かの子”は出てこようとしませんね。
「岐阜と同じ心情なのでしょう」
ぽ――!!“鳩サブレー”、吼えた――!
「吼えたというより啼いた感じですが」
“月世界”と“柴舟”を振り払う! そして残った“羽二重餅”を…振り切った――!
「これは出るしかありませんね」
“八つ橋”――を遮って、のこのこ出てきた、大阪“福板”! そして瞬殺!!
「さすがにウケを狙ってきますね」
そこで気がそれた“青柳ういろう”! “もみじまんじゅう”のクリティカルを食らって吹っ飛んだ!!
「派手好きですからね」
そして“もみじまんじゅう”、 ダメージは大きいながらも、“鳩サブレー”に向かっていく。 こいつはおれが引き受けるから、と。
「ということはつまり――」
出るしかありません。
東の“ひよ子”!! 西の“八つ橋”!!
満を持して、直接対決!!
2005年02月20日(日) |
実況!銘菓の東西対決1 |
かくして始まりましたこの戦いは、 『O−1おみやげグランプリ2005』!!
実況は私と、解説の創生神でお送りいたします。
どうですかね創生神さん。 ここは京都駅、なんといっても“八つ橋”のホームですから。
「ええ、立ち上がりは早いでしょうね。 しかし“ひよ子”も侮れません。なにせ東京ですから」
東京ですもんね。
「それに銘菓なるものはしばし、 アウェイに有利な展開になることも多いですから。」
ピ――。試合が始まります。
先手を取ったはさすがの“八つ橋”! 猛然と“ひよ子”に攻撃…するかと思いきや、 なんと“東京ばな奈”にいきましたね!?
「敵の数を減らしておきたいところです」
そのへんで“うなぎパイ”が大阪“あんプリン”を追っかけ回してますが?!
「ほっといていいでしょう。勝負は見えてます」
さすが“八つ橋”!強い! 分身技“期間限定いちご風味”も炸裂!!
「マイナーメーカーでも攻撃力はありますよ。 “八つ橋”のネームバリューは、 商品名ではなくもはや品名の域ですからね」
あっ後ろで“あんプリン”が脱落しましたよ!
「当然ですね」
“うなぎパイ”はさらに“とちの実せんべい”を叩きに行ってます。
「さすがは名古屋。堅実なところをついてきますね」
東のリーダー“ひよ子”、攻撃には加わらず、 愛知“青柳ういろう”宮城“萩の月”を従えて、クールに高みの見物です! 一方で西のリーダー“八つ橋”! “東京ばな奈”を追い詰めて… おおっとここで広島“もみじまんじゅう”に交代!
「それが“八つ橋”のプライドなんです。決して手は汚さない!」
手負いの“東京ばな奈”ひとたまりもない! “もみじまんじゅう”と“博多通りもん”につぶされて、脱落だ!!
「やわらかいですからね。 しかし今のはいいコンビプレイでした」
後ろでは“うなぎパイ”が愛媛“坊ちゃん団子”に喧嘩を売ってます。
「そのスタミナには驚嘆ですね。」
待て待て待て――い! “博多通りもん”が“坊ちゃん団子”を助けに行きました!!
「『島』同士、ほっとけないでしょう。」
2対1、これで互角といったところ。 しかしそれを見て東チームの石川“柴舟”と静岡“伊豆乃踊子”、 “うなぎパイ”の加勢につきます。2対3です。 ちょっと遅れて“名古屋コーチンプリン”。これで2対4ですか。
「集団戦になってきましたね。 東チームも、ここで“うなぎパイ”を失うわけにはいかない」
多勢に無勢、“坊ちゃん団子”をかばって、 なんとここで“博多通りもん”が脱落!さすがは九州男児です。
だがひとり残された“坊ちゃん団子”、 “柴舟”と“伊豆乃踊子”に退路を断たれ、今まさに風前の灯。 そして“うなぎパイ”がとどめを刺そうとしたとき――
横から飛び出したのは徳島“小男鹿”、香川“木守”、高知“梅不し”! 微力ながらも力を合わせ、東チームに立ち向かう!
「四国の団結力ですね」
その心意気に、ついに西の秘密兵器“長崎カステラ”が動いた!!
「早い。まだ出すべきではない。 四国を見捨てるに忍びなかったのでしょう。 本来ならば“もみじまんじゅう”と組ませたかったところです」
そして“長崎カステラ”、やはり強い!でかい! まず手始めに“伊豆乃踊子”を、 “名古屋コーチンプリン”を、一瞬にして沈めました!
「さあ、こうなると“うなぎパイ”が黙っていませんよ。 中堅同士の一騎打ち、おもしろくなってきました」
“長崎カステラ”の攻撃!! “うなぎパイ”、“柴舟”を盾に防御!!
「あ、“柴舟”まだいたんですね。 けっこう硬いし、形も盾にぴったりです」
しかし“うなぎパイ”のその行為に、東チームの北陸勢、 富山“月世界”、福井“羽二重餅”からブーイング! これは仲間割れか?!
「せんべいは割れやすいですからね。 しかし“羽二重餅”を失うのは東にはけっこう痛手ですよ」
ここでCMを挟んでお送りします。
京都駅に到着。 よかった、ここはまだ人間が二足歩行している。
…あれ?何しに来たんだっけ。
東京銘菓が日本を襲って…変な夢を見たな。 まさかそんな馬鹿なこと、あるわけないじゃないか。
ラジオをつければ、ほーらいつもの歌番組が…
――この時間は、予定を変更して臨時ニュースをお伝えします。 東京銘菓ひよ子は、勢力を拡大しつつ、滋賀県まで来ています。 鳥さんつながりで名古屋コーチンプリンも参戦の模様。 あと1時間で近畿地方に上陸します。
歌番組がだね…
――新しい情報が入りました。 東京ばな奈も勢力を拡大しながら西日本へ向かっているとのこと。 気象庁では銘菓警報を発令しております。
やっぱ現実か。悪夢じゃないんだ。 にも関わらず、なぜかばかばかしい。実にばかばかしい。
しかしここは京都。 最強銘菓“八つ橋”があるではないか!! 来るなら来い、“ひよ子”!
ん? 君は…おおっ!広島の“もみじまんじゅう”! 加勢に来てくれたのか!千の味方を得た気分だ。
で、そっちは…? 大阪のあんプリン…? 知らん。君、新しいやつだろう。 ま、名古屋コーチンプリンくらいになら勝てるかもしれない。
かくして今…銘菓の東西対決が行われようとしていた。
〈続〉
2005年02月18日(金) |
東京銘菓ひよ子の逆襲 |
な、なぜ“ひよ子”がアナウンサーをしている?! 実にうまそうだが、なぜ日本語を喋っている?!
「わかったか、妻。 既に東京は“ひよ子”の手に落ちた。」
ちょ…ちょっと待って。
「もはや中部北陸も時間の問題。名古屋で迎え撃つぞ」
待って!だから何がどうなってるの?
「心ない者の願い事によって、 人間と“ひよ子”の立場が逆転したのだ! 現に今東京駅には、東京銘菓にんげんが売られている!」
誰だそんな変な願い事した奴は?!
「急ぐぞ!京都大阪まで制圧されてはもう巻き返せない」
わ、わかった。
かくして創生神と私はバスに飛び乗り、 3時間かけて出雲空港から名古屋空港にたどり着く。
…しかし遅かった。
既に街はひよ子で溢れていて、 こんがりきつね色に炙られた丸々としたひよ子が、 高島屋を我が物顔で闊歩している。 背丈は私とそうかわらないが、とにかくあの図体。迫力だ。
「まさかこんなにもひよ子が拡大するとは――!」
うーん、シリアスにも関わらず、緊迫感のない状況だ。
「のん気なことを言っている場合か! やむを得ん、私は一度 神界に戻り、願い事のキャンセルを試みる」
ぜひお願いします。
「妻、お前はひよ子から身を隠しつつ、新幹線で京都に向かえ。 西日本でひよ子に対抗できる銘菓を探すのだ!!」
かくして運命は突然私の肩にのせられた。 ものすごい重責感と高まる緊張。 にもかかわらず、どこか緊迫感がないのはなぜだ?!
〈続〉
そうして一日が経ちましたが…
本物の神様がディズニーシーに行ったまま戻ってこないので、 まだ神様をやっている私です。
みんなの願いを叶えるのは、最初は楽しかったのですが、 飽きると眠くなってきました。
そこで私はリモコンボタンを「願いを叶える」押しっぱなしにし、 少しの間 昼寝をすることにしました。
そんなこんなで半日が経ったころ…
「妻!何やってる!」
本物の神様がようやく帰ってきました。 何って、あんたの代理をしてたんだよ。
「お前、さっき変な願いを叶えただろう! 今 日本中が、いや世界中がえらいことになっているぞ!」
どういうこと?
「テレビを見ればわかる!」
言われてつけたテレビに映し出される風景――
アナウンサーが、東京銘菓ひよ子だった。
〈続〉
そんなわけで、出雲大社で一日神様をやることになった私です。
いやー緊張するなードキドキするなー
あっ。一人目の参拝客だ! よ、よし。来るなら来い!願いを聞いてやろうじゃないか!
「あのー」
な、なんだ?!
「出雲ドームに行きたいんですけど」 「あーそれ、逆方向ですわー」
あ、ちがった…。売店に道聞きに来たんだ。 もう。恥ずかしい。過剰反応しちゃったよ。
「家内安全をお願いします」
ひょえっ?!願ったぞ!! あ、帰ってく!! コノヤロ、せっかくだからついでに願いやがったな。 なんてフェイントだ。叶える暇なんてないじゃないか。
お、次のが来た。今度は逃がさないぞ。
「なむあみだぶつ」
ちがう!おばーちゃんそれは違うよ!
「おじーさんの足が治りますように」
あ… そうか。うん。つらいよね。これは叶えてあげよう。 えーと、叶える場合は…このボタンか。ピッ。“叶える”送信と。
「あの水虫薬はなかなか効かんのです。どうか、どうか」
なんだ水虫か! まあいいや。とにかく、こんな感じで叶えていけばいいんだな。 リモコンになってるから使いやすいぞ。
さあどうぞ次の人ー
「ゆみこが戻って来ますように」
ん? 君は一昨日のまーくんじゃないか!わざわざ島根まで来たのか。 神様のやつ、ひどいことしたからなあ。 ちょっと考えてあげようかなあ。
「えりこともうまくやれますように」
何ッ!二股!? うらやま…もとい許せん、“両方ふられとけ!”と入力して送信。
カランカラン。
おっと次の客だ。よし注文は何だ?!
「長生きしたい」
何だ、くだらない願いしやがって! こんなもの願ってる暇があったらジョギングでもしろっ! えーと、“しらん”と送信。
カランカラン。 いらっしゃいませ。
「アナタハ、神ヲ、シンジマスカー?」
なんか変な人来たよ。今ディズニーシー行ってるよ。
カランカラン。 また客か。忙しいなあ、もう。
「たこ焼き食べたい」
知らん!買いに行け!
カランカラン。 はいどうぞ。
カランカラン。 はいはい聞いてますってば。
カランカラン。 だ――もう!うるさい!なに?!
「めっちゃいい音――」
何しに来た!!帰れ!!
〈続〉
神様がホームステイを始めて、もう5日目になる。
『思っていたのと大分違う。 私がああやって色々な神社に祭られていたとは知らなかった。 どおりで願い事が絶えないはずだ』
今は受験シーズンだから大変だよね。
『しかし不思議だ。なぜ皆、鐘を鳴らす?』
それはあんたにオレが聞きたい。 そういうシステムなんじゃないの?
『お寺もチーンってやる。あれはけっこううるさい』
あ、ほらあれだよ。玄関チャイム。 オレんちも客が来たらピンポーンって鳴って、 そしたら出て行けばいいんだから。
『私のようにいろんな支店があると、 いっぺんに鳴らされるととても困るのだ』
教会とかモスクとかお地蔵さんとかもあるしね。 あー大変だ大変だ。
『妻!お前他人事だと思って簡単に言うな!』
だってあんたの仕事じゃないか。
『たまには嫌になるときもあるのだ。 そうだ、一日だけ、お前が神様をやってみないか』
ええっ?!
『体験ということで、出雲大社だけでいい。他は臨時休業するから』
ちょ、ちょっと待て!
『いやあ、一回でいいからディズニーシーに行きたかったのだよな』
待てってば!!オレはまだやるなんて言ってないし!!
『ヨン様そっくりに化ければナンパも成功するだろうか。 いやそれともイ・ビョンホンの方が今風だろうか』
聞け!!
『とにかく妻、任せたぞ!』
聞けってば――!! 〈続〉
2005年02月14日(月) |
神様、バレンタインデーを楽しむ |
そして神社に来た。 バレンタインデーとあって、カップルがちらほら来ている。
「ゆみこ、今日もきれいだよ」 「やだー、まーくんたらー」
ええいやかましい!!うらやましい!! オレの視界でいちゃいちゃすな!!
「ゆみこ、何お願いしたの?」 「まーくんとずっと一緒にいられますように」
ええいこの…
『残念だが、その願いは聞けない。』
げっ神様!!
「なによあんたたち!!」
ごめん!こいつ変だから気にしないで。ホント。
『私のせいではない。 君の友人のえりこが、昨日同じ願いをした。 えりこの方が普段の素行が良いため、そちらを採用したのだ』
頼むからお前は黙っててくれ――!!
「どういうことよっ!」 「待ってくれゆみこ、これには訳が」
痴話喧嘩勃発。
『よし』
よしじゃない!
『いや、良しなんだ。 ゆみこを好きなあきひさも別れてくれと願っているし、 えりこの母親からも孫の要望を受けていた。 3対1の多数決で、ゆみこの負けだ』
願い事って…多数決なの?
『それ以外にも、えりこは善行を施している。応募資格を満たす。』
応募資格ってあるの?!
『ちなみにお前は満たしていない』
わるかったな。どおりで叶わないはずだよ。
あ、そうだ。せっかく来たから土産にお守りを買って来る。
『…生の神様がここにいるのにか。』
生? まあ、あんたに比べればお守りなんて削り節程度だろうけどさ。
そうだ、あんたにも買ってあげるよ。はい。
『…。この場合、私はどうしたらいいんだ?』
自分をご加護してください。
『しかも交通安全など買いおって』
…ごめん、天国に車はなかったね。
『まあよい。バレンタインに妻からもらった 初めてのプレゼントというものだ。』
妻言うな!! 〈続〉
2005年02月13日(日) |
神様、科学の結晶を見にいく |
品川の高層ビル群。
『こんなもの作った覚えはないぞ』
な、人間はすごいだろう。 あの東京タワーも、人間が作ったんだ。科学の結晶だ。
『これがピラミッドか?』
全然ちがう。あんなものが東京に作れるか! 敷地だけですごい金額になる。
『敷地?』
そう、土地を自分のものにするには、お金がいるんだ。
『私のものだぞ?!』
ああ、そうだね、そうなんだけど、
『誰も賃貸料を払いに来ないのはどういうわけだ!』
どうやって払うんだよ。 みんなあんたのこと知らないんだから仕方ないだろう?
『でも願い事はする』
う、うーん…そうだった。確かにな…
『今度から死んで来たやつには延滞料金ともども払ってもらおう』
案外みみっちいな神様。 よし、神社行こう神社。あんたの支店みたいなとこだ。
『そうだな。経営者によるスーパーバイズは密に行うべきだ。』
…どこで覚えたんだそんな言葉。
〈続〉
2005年02月12日(土) |
神様、みにくいところを見にいく |
よりにもよって神様と“ミニスカしゃぶしゃぶ”に来るとは、 罰当たりもいいところである。
だが、留学というからには、いい所もわるい所も知った上で、 それを論議のテーブルに載せる。それが相互理解の、
『何してる、入るぞ』
ちょっとくらいかっこつけさせろよ!
「いらっしゃいませ〜♪」 「いらっしゃいませ〜♪二名様ご来店〜☆」
『なんだ、この娘は。妻の知り合いか。』
いいから座る!
それでな、こういう場所に来るモテない男はだな、 しゃぶしゃぶをやりながら、 お姉さんのミニスカがまくれないか、戦々恐々としているのだ。
『なぜ自分でまくらない?』
まくったら犯罪なの!
『アダムとイブは裸だったぞ』
それとこれは別なの!
『これはなかなかうまいぞ』
ならあんたが払ってくれな。 とにかくこれが、人間の男の悲しい姿なんだ。わかったか。
『人間の悲哀か。』
そう、まくりたいのにまくれないんだ。
『自分でそれを穿いてまくるのはどうだ。』
何が楽しいんだよ。 というより、そっちの方が問題がある気がするけど。
「ありがとうございました〜♪」 「またおこしくださいませ〜♪」
『さっぱりよくわからんが、 人間には、まくってはいけない運命があるのだな』
そう。 いやちょっと違うけど、そんなとこだ。
次は人間の進化を見せるべく、品川に向かう。
〈続〉
2005年02月11日(金) |
神様、山手線をめぐる |
どこへ行こうか迷ったが、 とりあえず山手線に沿ってまわることにする。
はい切符!
『妻…神たるものは神輿で移動するものだ。 それを電車に乗せようというのか』
神輿とか目立ちすぎるから!
『よろしい。これも愚昧な人間を知る為。』
かっこつけてないで…あっ
ピコーンピコーンピコーン
『神の行く手を阻むとは!何奴!!』
ちがう、ここに切符入れるの!
シャコーン
『開いた!妻、お前はモーゼの十戒を知っているのか』
うん。CMで見たよ。
ホームに出ると、満員電車が滑り込んでくる。
『こ、これがノアの箱舟だな?!いっぱいじゃないか!』
いいから乗って!
『む、むぎゅ…』
まもなく、新宿〜 新宿〜
よし降りて!
『この世の終わりかと思ったぞ!!』
終わらせるのあんたでしょ。 そして、せっかくなので歌舞伎町に連れて行く。
『妻! お前の部屋の雑誌にあったやつだな!』
だ――!!いらんこと言わんでいいっ!
“ぴんくはうす・ミニスカしゃぶしゃぶ”
よし… ここで神様に、人間のみにくいところを見せよう。
『見にくいのか?』
うあっ!!微妙に誤解されるようなこと言うな!!
〈続〉
2005年02月10日(木) |
神様、地球にホームステイする |
そんなわけで、今私の家には、神様がいます。
『夜は暗いから寝る。昼は明るいから起きる。 どうだ、うまく作ったものだろう?』
ああ、はいはい。
『なんだこれは?』
ご飯とたくわんと味噌汁。
『ああそうか、これを胃袋に入れて、消化して動くんだった。 そうだった。なにせ結構前に作ったからな』
あの、オレ、すごく不安なんだけど。
『なぜだ?ちゃんとお前と同じ人間の男に化けたつもりだが』
あのさ、服着てくれる?
『え? こんなの私が作ったときはなかったぞ!』
服!
『わかったよ、着ればいいんだな、着れば』
Tシャツとジーパン姿の神様。 こんな姿を神棚に飾っても、ちっともありがたみがない。
いい? とにかく、黙って歩いてくれよ。黙って。
『会話はコミュニケーションの基本だ。』
ダメ! それから、間違ってもオレのこと妻とか呼ばないように!
『真実は闇を照らす光だ。』
そんなことはいいの!
『愛が芽生えると人は臆病になるのだ。』
そんな話してないだろ! って、そんなの、どこで覚えたんだよ。
『キリストが“地球ガイドブック”を書いているんだ』
いい? 教科書どおりにならないのが、オレたち人間なの。 だから、その知識とりあえず忘れよう。な?
『わかったわかった、早く外に行こう』
実に不安だが、私は神様を繁華街に連れ出すことにした。
そして目を開けた。 しなびたこんにゃくをわかめであえたような顔がそこにあった。
『…妻よ、こんにゃくは言い過ぎだ』
やかましい。てめえの仕業なんだろう、このあほ深層水!!
『創生神!3年越しに同じボケをやるんじゃない!』
それはこっちの台詞だ。ようやく忘れていたところだったのに。 今回のことは全部お前の仕業だな?!
『ちなみに私が誰だかわからない読者は、 2002年2月22日からの「ママになる!」シリーズを参照! 恐怖の大王の父であり、なぜかこの男の夫であり、 世界を支配する偉大な力の持ち主。畏れ敬え』
言わんでいい。思い出したくない。
『妻ちょっと老けたか?』
妻言うな!オレは今も認めてないからな!
『やれやれ私のいったいどこが不満なのか。 タバコをやめさせようと小芝居までうったのに』
やはりお前か!! ていうか小芝居で世界をいじるな!
『いいか妻、愚かな人間にはまだわからぬかもしれんが、 タバコは体に害なのだぞ。』
うん。
『お前初詣で何と言った?』
長生きしたい。
『それだ。 そのみみっちい願いを叶えようとしてやったのだ! 感謝こそされ罵倒される覚えはない。』
う、うーん…。それは認めるけど、 だからってヒゲモゴモゴフィーバーはやり過ぎなんだよ! 大体、タバコが体に悪いことくらい、みんな知ってるよ。
『何?』
タバコも吸いたいけど長生きもしたいから、 神様にお願いするんじゃないか。
『そ、そんな自分勝手な理屈があるか!』
自分勝手じゃない、人間は奥が深いんだ。
『…深いのか。』
深いぞ。
『そうか。言われてみれば、私は人間というものをよく知らない。 これはもう少し調べてみる必要があるな。 妻の星だし、次男のキリストを留学させた星でもあるし。』
キリストって…あの?
『よし、私も行くぞ。』
は?
『人間となって地球にホームステイする。妻、案内してくれ!』
えええええ――?!
2005年02月08日(火) |
タバコを買いに行ったら、タベコしかなかった。続々々 |
なんなんだ。 決意した途端にタベコは姿を消し、パペモコなるものが売られている!
よろしい。そう来るか。
ならば、今度はパペモコと呼ぼうではないか。 オレはいったん車に戻り、そう決意してから、もう一度コンビニへ。
パペモコを買いに行ったら、ポカスカタンしかなかった。
ほう。やはりか。
もう一度車に戻り、決意する。 今度はポカスカタンと呼ぼうではないか。 そしてまたコンビニへ。
ポカスカタンを買いに行ったら、ヒゲモゴモゴフィーバーしかなかった。
これで要因ははっきりした。 つまり、オレが「これを買いに行こう」と決意するのが、ポイントらしい。
ポケットからヒゲモゴモゴフィーバーを取り出し、火をつける。
慣れてしまえばどうってことなかった。
そして、こんなことができる犯人は、一人しかいない。 オレはそいつに会うために、そのへんの崖から身を投じた。
〈続〉
2005年02月06日(日) |
タバコを買いに行ったら、タベコしかなかった。続々 |
タバコがタベコになってから、今日で三日目だ。
念のため病院に行くが、アホである以外に特に異常はないという。 体もいつも通り快調である。
いったい世界に、何が起きたというんだ。 もしくはいったいオレの身に、何が起きたというんだ。 だいたいこの日記ぺーじ、ギャグではなかったか。 読者だってさっさとオチを求めているに決まっているのに。
はっ…!!
まさか。
まさかてめえ…
パソコンの打ち間違いを、ストーリーで修正しようとしたな?! そしてネタにつまっているな?!
ああ、なんてことだ。 そんなくだらない事情でオレはタバコのない世界に来ているのか。
オレは二度と、タバコとは出会えない。
今ここにある箱は、タベコなのだ。 同じような顔をしているが、決してタバコではないのだ。
オレはタバコを諦めて、タベコに火をつける。 深く吸い込み、息をつく。 味は同じだが、心持ち不味い気がする。
そしてオレはタベコをくゆらし、タベコを吸う人の群れを見つめる。
こうなったらもう、仕方ないではないか。 簡単だ。 オレも、これをタベコと呼べばいい。 そのうち慣れるだろう。たいした問題じゃない。
マルボロを一箱吸い終わる。
オレはコンビニの前に車を止め、
タベコを買いに行ったら、パペモコしかなかった。
〈続〉
2005年02月05日(土) |
タバコを買いに行ったら、タベコしかなかった。続 |
一夜あけた。 タバコがタベコになろうとも、世界はさしたる問題はなく続いている。
幸い今日は土曜日だ。
友人さえも信じられぬ今、 オレは一人で、この謎に立ち向かおうとしていた。
車を飛ばす。
隣町。まだ安心はできない。 そうだ、いっそ高速に乗って隣の県へ行こう。
途中に見えるパーキングエリア。
そうだ。ここは公共交通機関。 ひょっとしたらタバコがまだ残っているかもしれない。
安い期待はすぐに打ち砕かれた。
やはり並ぶはタベコの自動販売機。 タベコを吸う人が喫煙所の周りに集まっている。
「あなたが気づけば、タベコも変わる」
緑のシールがその駄目押し。
タベコの煙でいぶされて、うす汚れている。 とても最近貼られたものとは思えなかった。
どういうことなのか。
疲れて座ったオレのポケットから、タバコが落ちた。
「タベコ、落ちましたよ」
親切に拾ってくれたおばあさんにも、 その名を呼ぶことに躊躇はなかった。
こんな短期間で、 こんな多くの人を洗脳することが、はたして可能なのか…?
…いや。
できる。
そう、
一人だけを洗脳するなら、可能だ。
つまり、オレを。
まさか。
馬鹿な。
しかし論理的に考えれば、その可能性しか――
そんなはずがあるか。
オレが、いつ、人に恨みをかうようなこと、 いっぱいしてるけど、こんな、訳のわからない、 洗脳をするような奴らと、関わったことなんてないぞ!
脳が息切れを起こしている。 考えすぎて何も考えられないという状況にオレは初めて陥った。
そして一番恐ろしいこと――
オレは、何を、された?
〈続〉
2005年02月04日(金) |
タバコを買いに行ったら、タベコしかなかった。 |
タバコを買いに行ったら、タベコしかなかった。
どういうことだ。
最初は、自動販売機の誤植かと思った。 ネタになると写真まで撮るくらい、オレにはまだ余裕があった。
だが、お金を入れてボタンを押して、 出てきたのもタベコだった。
マルボロライト。いつものパッケージ。 だが、タバコでは決してないのだ。
オレは心持ち青ざめた。 この自動販売機だけがおかしいのだろうか。
その足で、少し離れた酒屋に向かう。
しかし、そこにあるのも、タベコの自動販売機だった。
まさか。
いったいタバコはどこに行ったんだ? 大体、タベコってなんだ?
…落ち着け。
昨日までは確かに、オレはタバコを吸っていた。 非番で20時間ほど寝て、起きた、それだけだ。
その空白の20時間の間に、何があったというんだ。
友人に電話をかける。
「もしもし」 ああよかった、お前起きていたか。 教えてくれ、オレのいない20時間に、何が起こったんだ? 「なにが」 タバコがないんだ、どこにも。 「タバコ?」
そして友人はとんでもないことを言う。
「タバコってなんだ?」
――我が耳を疑った。
馬鹿野郎、オレがいつも吸ってるやつだろうが。 「ああ、タベコか。」 タベコ?! タベコってなんだ。 「お前がいつも吸ってるやつだろ?」 待てよ。それはタバコという名ではなかったか? 少なくとも昨日までは、タバコだったはずだぞ! 「だからタバコって何なんだよ。俺忙しいからもう切るぞ」 待て!待ってくれ!
ツ――――――
これは何かの陰謀か。 町が一夜にして洗脳されたのか。
〈続〉
|