呆れるほど忙しくなる仕事はあまりに度が過ぎるので笑いが出てきた。 どうしたらよいのか分からなくなったので「今日は帰りましょう」。 さくり、と帰る。
下北で待ち合わせをして少し物を食べることにした。 アイスコーヒーとクラッカーだけでは体が持ちません。
歩きなれた道なのに迷った。 迷ったのでCDショップを通り抜けることにする。 と、これは買おうと思っていたCD。 つい手が出る。 これも。 と手が出る。
たまにはいいか、と2枚手に取った。 CDショップを通り抜けたらトンネルもくぐり抜けた気がした。
お気に入りのお店での食事は楽しかった。はず。 買ってきたCDには目当ての曲の他にもう2曲、スキな曲が入っていた。 また少し嬉しくなった。 朝まで聴き続ける。 けれど。
何かが気になっているままの朝。
土曜の夜、男山を頂いた後で、フェティッシュバーへ足を延ばした。 ヒールの高い今年のサンダルは少しふらつき気味のアタシを それでも間違いなく「ソコ」へと運ぶ。 赤い灯りの幾つかを通り過ぎていつものドアを開け、 いつもの顔を見たら肩の力が抜けた気がした。 けれど。
何かが気になっているままの夜。
何も変わってはいない。 何も変わりはしない。 そのまま時間だけが過ぎていく。 そのまま年月だけが過ぎていく。
止めたいのに。 止まらないのに。
空が明るくなる前に店を出る。 月が。 まだ出ていた。
廃屋と一緒に携帯のカメラで写真に撮った月に地球の影は無かった。
15分だけ眠った。
要は眠れないというだけのこと。 そのまま朝を迎え、いつが夜だったのか分からないまま カレンダーの日付だけが過ぎていく。時とともに。
置き忘れたことを覚えていない。 置き忘れていることすら覚えていない。
当然、意識はここには失い。 果てるまで歩くので前屈みになる回路。思考回路。 くるりくるりゆるりくるり・・・。
ぐらり
赤いハイヒールを履いていた彼女はあの頃歩いていたあの街の どこに今はいるのだろう。 見上げるビルは妙なドーム型で、怪しく白光に光る。
空に星
午前中に新しい調査のインストラクションをセッティングした。 頭から抜け落ちる事柄の一つ二つ髪の毛の一本二本。 意識はあります。 けれど神経は眠っているのです。 調査票が真っ赤になるほど書き込むアレもコレも。
アイスコーヒーを啜る。
何故なのだか。夏でも。冬でも。 それはアイスコーヒーでなければ「ならない」のです。
気が付けばとうにお昼休みの時間で、残り15分。
また。
15分だけ休むつもりが午後のインストラクションの準備にかかる。 休ませることすらできないアタシの神経が尖ってゆく。
「食べましたか?」 「忘れました。」 「食べないんですか?」 「そんなヒマはありません。」
地方とフェニックスで繋いでテレビのモニター越しに指示を出す。 調査票に書き込んだ赤い文字が躍る、揺れる、乱れる。
また。
意識は足元にある。 拾い上げるのが億劫なのでデスクの下に蹴り隠す。
何も伝えない 何も伝わらない 何も伝えられない 何も伝えようとは思わない のでアタシはアタシ。 彼とアタシ。 これがアイ。 私達のアイ。 伝わるアイ。 通じるアイ。
これがアタシ これはアタシ
キミとは違うアタシ カレとも違うアタシ
ダレとも違うアタシ
2003年05月15日(木) |
落ちてゆく狂ってゆく |
夜中。 というより明け方に近い頃。 寝付けなかったので起きた。
冷蔵庫を物色する。 目的なんかない。 冷蔵庫内の照明が少し部屋を明るくする。
プリンを食べた。
次に、流しの下を開けてカップラーメンを取り出す。 食べる気もないのに。 食欲などないのに。 夜中に湯を沸かす。
「牛乳を飲むと寝つきが良くなる。」 けれどホットミルクだったような。 面倒くさいので冷蔵庫から取り出した冷たいのをそのままグラスに注ぐ。
つもりだったのが、隣に用意してあったカップラーメンに注いでしまう。
少し笑った。気がした。
沸いたお湯を入れ、それでもカップラーメンの意味を持たせようとする。
待つ間。 考える間。 どこかで声がする。 アタシの声がする。 頭の中を駆け巡り、やがて胸を切り裂いて出てくる。 けれどそれはカップラーメンの出来上がるのを待つ間だけのことではなく。 常に渦巻いている。
その言葉。
アタシヲコロシテ。
2003年05月06日(火) |
リングは何も縛りつけない |
GW明けの出社はいつもより早く。 目が覚めたら1時間も早かったのでリズムが狂っている。 そのまま出社するのも癪だったので、ちんたらと支度をした。
30分潰した。 どこへ行ったのか、何をしていたのか。 気がついたらいつもの街がアタシを吸い込んでいた。 頭の中では違うことを考えている。
何だったんだろうあれは。 ほんの一時の幻の。 夢の中の戯言の。
伝わらないので握り潰す。
バスの停留所で時刻表を携帯のカメラに撮り込んだ。
流れる景色。 仕事なんかしていない。 仕事なんかしていなかった。 私はここにいない。 私はここにいなかった。
アタシハダレ。
時計の針が狂ったように回る。 前に。 後に。 意識はついて行かない、ついて行けない。 ついて行けないので。 ついて来させないので。
アイ ナンカ イラナイ。
いくつか切り捨てたものを、いくつか切り捨てたいものを ゆっくりと指先で掻き混ぜる髪。
くしゃくしゃになる。
切り捨てたいものはいつか忘れることができるのかもしれない。 忘れることのできたものはいつしか新しいものと入れ代わっているのかもしれない。 けれど。
そんな先のことは。 考えたことがない。
今年買ったサンダルはヒールにリングが付いている。 カシャリ、カシャリ、と歩くたびに鎖を意識させられている。 と、背後から足元に彼の射るような視線を感じたのは アタシの繋がれている「先」が気になったからなのだろうか。
2003年05月05日(月) |
彼方の記憶を引きずり出して |
GW中は予想通り目論み通り酒だらけの日々。 けれど予想と違ったのは、目論見が外れたのは 「意識は酒と共に記憶の彼方へ状態」の極限に達したこと。
最近、アタシの好きな場所を見つけた。 少しダラダラしていてもいいかな。 少しワガママを言ってもいいかな。 少し甘えてもいいかな。どうかな。 分からないんだったらしばらく大人しくして様子見ておけばよかったんです。 のに。 なのに。 最初の呑み会でヤラカしました。 ヤラカしちゃったそうです。 ええ、当然、いつものようにいつもの如く、覚えているワケがありまっせん。 完全に呑まれましたね。酒に。 コトの次第は翌日知人から電話で知らされました。
一体何のこと? それは誰がしたこと? あー。オレか。
最初の1〜2時間ほどで意識はなくなり。 その後の会話で何を話したのか覚えていません。 日本酒から呑み始めたのですが、無くなった後、 何を呑んでいたのか覚えていません。 料理もしたらしいのですが何を作ったのか覚えていません。 そしてそこに誰がいたのかすら覚えていません。
アタシはどこで誰と一体何をしていたのでしょう?
そのまま翌日に昼帰り。 朝だと思っていたのが実は昼であった、というだけのこと。 そして昼だと思って電話していたその時は既に夕方であったというだけのこと。
ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。
家まで送ってもらう車の中で、 「今年の標語『打たない、噛まない、呑まれない』はもう破られたね」 と笑われた。 なんて意志の弱いアタシ。
そしてその日の晩はSALONにて「日本酒パーティー」。 ムリですよ。 地獄ですよ。 みんな鬼ですか。
おちょこに一杯こっきりが呑めなくてダウンする。 少し眠った。
知らない夢を見た。 もしかしたら他の人の夢だったのかもしれない。 起きてきて。 お茶を飲み始めて少し落ち着いたところでやっと食欲が出てくる。 美味しいケーキを頂いた頃には軽口を叩ける程度まで復活。
楽しく語らって、早帰りの何人かが撤収した後で ショットUNOの開始。 SALON初登場の女のコも交えてカードを捲る。
めくるめく時間がそこにあったのは確かなのだろう。 そして、いくつかの大切なものを失った。 いくつかの大切なものを得た。
それは必ず己の身に刃を向けてその存在を知らしめてくることになるだろう。
なぜなら愛も憎しみも紙一重なのだから。
2003年05月02日(金) |
これは果たして黄泉の国の |
ヒールを高くして往く。 軽く風に吹かれて往く。 いつもの角を曲がり、いつもの坂を上り、いつもの垣根を見て踏み切りを渡る。 曲がりくねった道を人とかち合いながら往く。
下北は踏切が多い。 「くるり」と回って幾つ渡ったのか。 それは夢の途中だったのか。 陽炎の音が聞こえたような。 遮断機の降りる音だったような。
瑤子を思い出した。
踵で床を踏み鳴らしていた。 ヒールで床を叩き鳴らす音が高らかだった。 手拍子の音、ギターの音、歌い上げる声。 けれど。
舞っていたのは瑤子ではなかった。
あの日。 汗ばむ陽気の中、気だるく化粧をして街へ出たのは 彼と待ち合わせる為だった。 否。そうではなく。 待ち合わせるのを口実に陽に当たる為であった。 風、心地よく。 時、和やかに。
いつものオープンカフェでトーストとアイスコーヒーを口に運びながら 休日ともつかない平日に行き交う人々を眺める。 果たして彼らは。 「眺められている」とか「観察されている」とか「見られている」とか。
その感覚を抉り出してみたい。 手元のフォークを握り締める。 突き刺したい衝動。 どこに。 だれに。
見えないよう、手首に突き立てるそれはけれどまるであの日の甘噛みのような。
漏れる吐息。 ヒールは木霊する。 ヒールは木霊を呼ぶ。 呼び合って目が合う。
隣の席のコと見詰め合った理由はワカラナイ。
Tシャツを買った。 たまには相手を変えてみるのもいいかな、などと思いながら 買ったばかりのサンダルの足に食い込む痛みを甘く受け止める。
アナタは。 そしてアナタは。 何も知らないのだろう。 吹く風のまま、流されるまま、運ばれるままに。
貴方がどうだったかなんて知らない。 けれど私は確かに愛していた。
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