監督:廣木隆一 出演:榮倉奈々 瑛太 柄本明、他 オススメ度:☆☆−
【あらすじ】 イベントコンパニオンの千恵は、広告代理店に勤める太郎とあるイベント会場で知り合い、デートを重ねるようになった。太郎から正式に交際を申込まれるものの躊躇する千恵だったが、結局2人は付き合い出して同棲するまでになる。ところが千恵は太郎と知り合った直後に自分が「若年性乳癌」である事が発覚したのだった。内緒で付き合い出したものの癌は悪化し、乳房切除を余儀なくされる。太郎に別れを告げ、1人闘病生活に臨もうとする千恵だったが・・・
【感想】 2007年7月にTBSで放送され大反響を巻き起こした同名タイトルドキュメンタリーを映画化。 映画化前に書籍化もされているそうでそちらも大ヒットだそうですが、ぴよは本作に関する知識はゼロで鑑賞。個人的事情ですが父親を癌で亡くしているので、この手のドキュメンタリーは正直言うと苦手な部類です。
大々的に報道されているので、本作の主人公「千恵と太郎」が実在する人物で、千恵さんが生きる事を切望しながらも24歳という若さでお亡くなりになっているという事実も周知の事だろうと思います。 映画中にも千恵さんご自身が信念を持ってドキュメンタリーに出演する事を望まれたというくだりが出て来るので、それが書籍化、更には映画化されて千恵さんのご遺志が広く世間に伝わるのは、彼女には望外の喜びなのかもしれません。
ところで本作の作り、コレでは千恵さんが望んだ事がきちんと伝わっているんでしょうか?首を捻りたくなります。 映画中の千恵は「若年性乳癌についてネット等で調べてもほとんど情報がない。だから世間に広くこの病気について知って欲しいし同じ苦しみを持つ女性達に勇気を与えたい」というような事を語っています。 素晴らしい志だと思うのですが、残念ながら映画では「若年性乳癌」についての知識見聞を広めるという効果、乳癌に対する知識啓蒙に役立っているとはお世辞にも言えず、ただただ「若手人気役者を使ったお涙頂戴ドラマ」な作りになっているのが残念で仕方がない。
本当に千恵さんのご遺志を伝えるという目的ならば、映画では千恵さんが乳癌になって何を思ったか、特に若年性乳癌という比較的レアなケースに見舞われた自分が、その病気についてどう調べ、どう向き合い、そして自分の命を削ってまでもドキュメンタリーに出演して世の女性達に知って欲しいと願うまでに至ったのか・・・ここの部分にスポットを当てて描いて欲しかったなーと思う訳です。
少なくとも本作の作りでは、映画を見終わった後に「私も乳癌検診の予約を入れよう!自分で調べられる事は調べてみよう」と思い立って実行に移すという10代・20代の女性はかなり少ないんじゃなかろうかと。 ぴよなんて既に進んで(と言うか絶対に)乳癌検診をしなければいけない年齢なのに、それでも本作を見ても全くそういう切迫した気持ちにはなれませんでしたから(^-^;
映画の内容というか話の流れについてはどうこう口出し出来ませんわね。だって事実なんですから。 多少の演出は勿論あるでしょうけど、事実を捻じ曲げている訳ではないでしょう。個人的には病室で太郎と千恵のお父さんが向かい合ってケーキを食べていて、千恵のお父さんがむせび泣きながら太郎に「ありがとう」を言うシーンにはジーンと来ましたね。柄本明さん、アンタは上手い!
それから当然ですが千恵がいよいよ天に召される〜死後に太郎が千恵のビデオメッセージを見るくだり辺りは周囲はすすり泣きの嵐になりますよ・・・ごめんなさい。ぴよは余り泣けなかった。 自分の身内の死を乗り越えているので、この手の「お涙頂戴」に耐性が出来てるのかも。
本作を見て、若年性乳癌に関して興味を持たなかったとしても、命の大切さ・生きているという事の素晴らしさを、少しでも若い世代の人達が感じられる事が出来たなら、それはそれで千恵さんの遺志が多少は伝わったという事になるでしょう。 ですが多くの若い世代には、本作の作りでは「ありがちな泣ける映画」という域を出ないのでは?と危惧します。 正直、「本作は実話の映画化です」と聞かされているにも関わらず、ぴよは「まるで絵空事のようだ」と感じてしまった。
天国の千恵さんは、本作を見て喜んでくれているのだろうか・・・謹んでご冥福をお祈りします。
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