2009年03月27日(金) |
リリィ、はちみつ色の秘密 |
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド 出演:ダコタ・ファニング ジェニファー・ハドソン クヒーン・ラティファ、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 1960年代、黒人差別を失くす「公民権法」が制定されたばかりのアメリカ南部。母親を幼い頃に自分のせいで亡くしている事がトラウマになっている14歳のリリィは「自分は誰からも愛される資格がない」と思い悩んでいた。粗暴な父に心無い事を言われたリリィは母親の愛を確かめるべく、白人に虐待されていた家政婦の黒人女性と2人で逃げるように「母親の痕跡」を求めて旅に出た。あるヒントを得て黒人女性「オーガスト」が経営する養蜂農場を訪ねたリリィだったが・・・
【感想】 アメリカ人作家、スー・モンク・キッド氏著の大ヒット同名タイトル小説(邦題)を映画化。 タイトルだけを見て「うっわー。なんじゃこりゃ。児童小説か?かったるそうだなぁ〜」と思ったんだけど(こら)、キャストを調べたらムダに豪華過ぎるので「キャスト見るだけでも価値アリ?」と妙に興味が沸いて鑑賞。
上記のキャストだけでも「ひえぇぇぇ」って感じなんですが、他にも「養蜂家三姉妹」の1人をアリシア・キーズ、そして主人公リリィの父親(粗暴なブルーワーカー系)をポール・ベタニーが演じています。 ポール・ベタニー、最近見てないなーと思ったら・・・実は今回リリィのパパを見て「どっかで見た顔だな?」と思っていたんだけど誰だったかどうしても判らず、ラストのスタッフテロップ見て「え!ポール・ベタニー!?ウソッ・・・てか、言われて見ればそうかも(ひえー)」という感じ。正直最後の最後までポール・ベタニーだとは気付かなかった(^-^;
簡単に言っちゃうと「少女の成長物語を黒人差別問題を絡めながら見せる」という感じ。 こんな書き方するとすごくつまんなそうで申し訳ないんだけど・・・いやぁ。本作なかなかの良作だと思いますよ♪
舞台は1960年代の公民権法制定直後のアメリカ南部。法律では「白人も黒人も平等。黒人にも選挙権を持たせます」という事にはなったものの、末端の市民感情としてはまだまだ「黒人は蔑むもの」というのが定着している。 リリィの家政婦・ロザリンに対する口振りもなんとなーく横柄な感じがするし(これは使用人だからと割り切るべき?)、ロザリンの方も最初の頃は卑屈になってやたらリリィに突っ掛かる。
そんな中、リリィとロザリンの「共にワケありな2人」が半ば逃げるように家を飛び出して、リリィの母親の手掛かりがありそうなある南部の街にやって来る訳ですが、当時では数少なかったであろう「成功した女性黒人実業家」の家に転がり込んで、リリィもロザリンもそれぞれが今まではと微妙〜に違う立場で生活するようになる事で、少しずつ各々が抱えていた心の問題が解消していく、といった感じ。 リリィにとっては「愛すること・愛されること」、ロザリンにとっては「黒人として胸を張って社会で生きて行くこと」
この、リリィの成長物語とロザリン含む周囲の黒人のみなさんの差別問題ネタの絡ませ方が実に上手い。 どちらも浮かず、どちらも中途半端にならず、どちらも過度に主張し過ぎず、そして両方のネタが上手く絡んでいる。
リリィとロザリンを保護する「養蜂家三姉妹」がそれぞれ全く違う・でもありがちなタイプを網羅してるのも面白い。長女のオーガストは見た目通りの大らかなおっかさんタイプ、次女のジューンはプライドの高い進歩的な女性(ややツンデレ)、そして三女のメイは純粋で心優しい人柄ではあるものの、トラウマ持ちで涙脆い「病んでる系」 それぞれ違ったタイプの黒人女性と交流する事で、リリィもまた癒され・悩み・葛藤するというのも上手い作り。
黒人差別をする下卑た白人中年男性の(女性ではなく必ず男性という所には何か意図を感じるけど)描き方も上手く、観客に自然にこの主人公達に感情移入させるように仕向けられているし、リリィの父親の心の事情までもきっちり描き込んだ上で誰もが涙せずにはいられない王道ヒューマンオチに持って行く手腕は素晴らしい!の一言に尽きますね。
でも少し腑に落ちないなーと思ったのは ←ココまで絶賛して今更吠えるのかよ(^-^; リリィは母親の若い頃にウリ二つだったらしいのですが、だったらオーガストは最初にリリィが尋ねて来た段階で、既に彼女が何故この家にやって来たのかという意図は充分に判っていただろうと思う訳ですよ。 どうして彼女は何も言わなかったんだろう?いや言わなくてもいい、せめてオーガストが何を思っていたのか?という心情をどこかで描いてくれていたらもっと感動出来たかもしれないのになーと。そこがちょっと残念な感じがしましたね。
まあ、重箱の隅を突くような無粋な事を書いてしまいましたが、本作は地味ながらなかなかの良作です。 最近では涙腺がドコにあるのか判らなくなるくらい映画を観ても泣けなくなってしまったぴよですが(苦笑)、本作を見て久し振りに自然に涙が溢れて来ましたよ。どうぞお暇があったら見てやって下さい!
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