ぴよの映画めった斬りコーナー
ぴよが見た新作映画・ビデオ・DVDを個人的趣味でぶった斬るコーナー
ぴよと意見が合わないからっていじめないでぇ〜ん!(^_^;)
【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2007年03月28日(水) ブラッド・ダイヤモンド

監督:エドワード・ズウィック
出演:レオナルド・ディカプリオ
    ジェニファー・コネリー
    ジャイモン・フンスー、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
1999年、内戦中のアフリカ・シエラレオネ。反政府ゲリラ「RUF」は村を襲っては体力のある男を連行し、ダイヤモンドを採掘させては密輸する事で資金源にしていた。ここで拉致されて採掘していた愚直な漁師ソロモンは、巨大なピンクダイヤを見つけて密かに隠した。その情報を聞きつけたダイヤ密売人のダニーは、たまたま知り合った「ブラッド・ダイヤモンド」ネタを追う女性ジャーナリスト・マディーを巻き込み、ソロモンからダイヤの在り処を聞き出そうとするのだが・・・


【感想】
本年度アカデミー賞に5部門ノミネートされて話題になっているディカプリオの新作。

さて。日本人の多くの方は「紛争ダイヤモンド(ブラッド・ダイヤモンド)」の存在をご存じないでしょう。
ぴよはたまたまですが、紛争ダイヤの存在についてはかつて知って気に掛けていた事があるんです。職種は一般企業によくある何でもない仕事ですが、ぴよが勤めている会社が宝飾業界だったので・・・

この映画のエピソード自体は完全なフィクションでしょうけど、この映画の舞台背景は全て事実に則っています。
1990年代、アフリカの小国シエラレオネでは内戦が激化し、反政府ゲリラRUFが正義の名の下に村落を襲っては体力のある男を拉致ってはダイヤ採掘をさせたり、子供を拉致っては洗脳して兵士に仕立て上げたり、政府側に投票させないように見せしめに市民の手足を切断するという凶行の限りを尽くしました。

そして映画でも描かれていますが、採掘したダイヤはRUFの資金源として密売人を介して隣国に持ち込まれ、そこからイスラエルのテルアビブやボンベイ(映画中ではインドと言ってましたが、多分インドのボンベイだと思います)、そして映画中は出てこなかったもののベルギーのアントワープに持ち込まれて流通しているハズです。アントワープは割と知られていませんがダイヤ流通の西欧の拠点なんです。
更に最も恐ろしい事は、この「紛争ダイヤ流通ルート」は2007年の今現在も確実に存在するという事なんです。

・・・と、いきなり何やら難しい事を書いてしまいましたが(苦笑)
要するに本作は「紛争ダイヤモンド」の闇をかなり細部に渡って取材し、そして実に正確に再現しているんです。
映画中、目を覆いたくなるような残忍極まりない殺戮シーンが度々登場しますが、これらのシーンは決して誇張ではないだろうと思います。アフリカの各国で本作に似たり寄ったりの状況がある(かつてあった)んだろうと思います。

そういう意味で、本作は是非多くの人に見てもらいたい題材を取り上げている。
「アフリカの内紛の話なんて、日本に関係ないじゃん」なんて言わないで欲しい。アナタの指やアナタの彼女や奥様の指でキラキラと輝くそのダイヤの指輪・・・それはもしかしたら「紛争ダイヤモンド」かもしれないんですよ!?

映画自体と関係ない話?をダラダラと書きましたが、ぴよが「ちょっと残念だな」と思ったのが正にこの部分。
タイトルが「ブラッド・ダイヤモンド」なのに、肝心の「紛争ダイヤ」についての脅威に関してのアピールが薄い。映画を見ていて自分の今持っているダイヤが「私の持ってるこのダイヤも、もしかしたら紛争ダイヤなの?私ってアフリカの内戦の片棒担いでたの?」という危機感を感じさせる程のインパクトがない。

本作にはタイトルネタ以外にも、今現在も20万人以上いると言われる「少年兵」の悲劇、それに絡む親子の絆ネタ、そして主人公のダイヤ密売人とジャーナリストの淡い恋、更には主人公が「悪玉なのに実は正義感のあるいいヤツ」という、よくあるエセ・ヒューマンネタも盛り込んでいて、観客を飽きさせないようにふんだんに工夫がされていたと思います。

でも個人的には「盛り込み過ぎなんじゃないの?」という感じはしなくもない。
余りに重たいネタなので、ヒューマン風味のちょっとウルッと来るいい話にしよう♪という意図がミエミエで、実際に起こっている悲劇や問題から微妙に目を背けてしまっている感が無きにしも非ず、といった感じか。
もっともっと内戦の悲劇やこのタイトルの「ブラッド・ダイヤモンド(紛争ダイヤ)」について掘り下げて欲しかった。

しかし、是非多くの人に見て欲しい。
ぴよはたまたま本作のネタについてちょっと知識があったので「描き足りない」と感じましたが、少なくとも本作のネタを知らない方(が大多数だろうと思います)には、この映画で提示されている全ての問題について、是非とも積極的に知って欲しいし考えて欲しいと切望しますね。社会派作品としてはツメが甘いと思うものの、本作はかなりの秀作です!







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2007年03月22日(木) 大帝の剣

監督:堤幸彦
出演:阿部寛
    長谷川京子
    宮藤官九郎、他
オススメ度:☆☆−


【あらすじ】
徳川三代将軍家光の時代。地球外金属「オリハルコン」で出来た三種の神器の1つ「大帝の剣」を持つ男・万源九郎は、残り2つのオリハルコンを求めて旅を続けていた。道中で豊臣の血を引く美しい姫「舞」と彼女を守る忍者「佐助」を助けた源九郎は、一緒に旅する事になる。ところが舞の体にオリハルコンを求めて地球にやって来た宇宙人「ラン」が寄生。更にランを追い掛けて地球に来た宿敵「ダクシャ」、謎の美剣士「牡丹」らが次々と源九郎達の前に現れる。


【感想】
夢枕獏原作の同名タイトルSF伝奇時代劇小説の映画化。
これを「トリック・劇場版」等を手掛ける堤監督がメガホンを取ったという事で、予告編を見た段階で「ほほーう。堤監督+阿部ちゃんと言ったらトリックコンビじゃないか!」しかもこの予告編のしょっぱい作りの映像・・・これは久々に大笑い出来る王道おバカ映画かもしんないぞ♪と、ちょっぴり期待値が上がりますよー!

おバカ映画大好きなんだけどなぁ・・・ごめんなさい。ぴよは全然ツボに入りませんでした(涙)

そもそも「本作は一体どういった層をターゲットにしているんだろう?」と思ったんですよ。
言っちゃアレですが、完全大人向けにしては作りも展開も稚拙ですし、子供向けにしては難し過ぎるような。大人も子供も両方楽しめる話かと言われると・・・どちらの層にも中途半端(苦笑)
映像も結構グロい殺戮シーンや血しぶきが登場しますしね。その割りに昨今暴力表現にやたら厳しい映倫審査がPG-12指定もされていない模様。こちらも何か微妙に中途半端な評価をされている?

映画の作りとしては完全に「ハチャメチャなおバカ映画」なんだけど、本来の話自体は結構シリアス路線。
思いっきりシャレで作ってるバカ映画にしてはクリーチャーの着ぐるみやCGは微妙に金掛けてる感じ。バカ映画には金を掛けてはいけないという訳ではありませんが、どう言えばいいんだろう・・・とにかく「中途半端」「突き抜けてない」

本気で笑ったのは敵チーム「土蜘蛛衆」の一人で「手妻の藤次」を演じた大倉孝二サンだけだったなぁ。
映画の随所に「お笑いポイント」があるんだけど、話の筋で笑わせるのではなく、キャラの仕草と様子で笑わせるという手法一本槍で(もしかしたら話の展開でも笑わせるつもりだったかもしれないが、ぴよは全く笑えなかった)、確かに仕草や様子にはププッと笑えるんですが、微妙に金が掛かってて微妙に安っぽい中途半端な・・・しかも結構グロい映像に被せると、何か面白くないんですよね。うーん。コレはもう好みの問題でしかないと思いますが。

それに妙に設定が入り組んでいるせいで、おバカ映画のクセに話の筋を追っちゃうじゃないですか。
だからバカ映画だと百も承知しているのに、つい「ランも牡丹もオリハルコン目当てだったんじゃねーのかよ?あんた達これでいいのかよ?」って思わず内容に真面目にツッコミ入れたくなっちゃうんですよ。
こういう部分が自分の中で「中途半端だなぁ」「突き抜けてないなぁ」とノレなかった理由かもしれません。

これ、原作もおバカSF時代物ファンタジーなんですかね?
原作を読んでいないから何とも言えないけど、もしかしたら原作は「本気のSF時代物ファンタジー」なんじゃないか?
話の筋自体はきっと原作に則っているんでしょう。だとすると本来はこういう作りのバカ映画にしないで、思い切ってうんと金掛けて本気のシリアス路線で作って・・・なのに結果として単なるバカ映画になっちゃった!という作風の方が個人的には好みだったかも。本作に似た系統で最近映画化された物で言うと「どろろ」辺りの作りですか。

いや、世間では本気で作ったのに観客に脱力される映画は「超駄作」と呼ばれるんですがね(苦笑)
個人的に「本気でシリアスに頑張れば頑張る程痛いバカ映画」ってのが好きなだけなんだろうと思いますよ。
そんな訳で、世間一般的に「おバカ映画を見て笑い飛ばしたい」という方にはウケるのかもしれません。

・・・どーにもいけませんな。ぴよの感想まで中途半端なモノになってしまいました(涙)








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2007年03月21日(水) ナイト ミュージアム

監督:ショーン・レヴィ
出演:ベン・スティラー
    ロビン・ウィリアムズ
    カーラ・グギーノ、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
NYに住むラリーは職に就いても長続きしない。離婚した妻は株のトレーダーとして成功している男と再婚し、最愛の息子ニッキーは妻に引き取られてすっかり妻の新しいパートナーに懐いている。何とか息子との絆を取り戻す為に職安に行ったラリーは、自然史博物館の夜警の職を得た。ところが仕事をしてみてラリーは仰天!何と展示物の恐竜の骨や動物の剥製、蝋人形やミニチュア達が夜中に動き出したのだ。


【感想】
ベン・スティラー主演の新作コメディ。
「コメディ」と一言で言うよりも、「ファミリー向け娯楽コメディ」と言った趣か?正に春休み公開にうってつけの一作。
ベン・スティラーは日本では余り馴染みのない俳優さん?かもしれませんが、ぴよは大好きな役者さんです。

上のあらすじにも書きましたが、予告編を見た人なら話の大筋は判っているハズ。
でも予告編の作りだと、黄金の石版が何か重要な意味を持っているような雰囲気?石版の謎を探るインディ・ジョーンズ系の冒険活劇コメディかな?と想像していたのですが・・・まあ、確かに黄金の石版は意味のあるモノなんですが、それ自体が映画の重要な柱になる訳ではありませんでした。

あくまでも話は「ろくでなしのパパが奮闘して、息子の信頼を勝ち得るだけの人物に成長する」というヒューマン。それをお涙頂戴ホームドラマにしないで、あくまでも博物館の中で大活躍するというコメディの中で上手に見せる。
コメディとしての展開はありきたりかも?と思うのですが、こういうタイプのヒューマン物って珍しいかもしれません。

博物館内の展示物達のキャラもそれぞれ個性的で、しかもいくつかのキャラは重要な役割を持たせている。
例えばルーズベルト大統領はこの博物館のナビゲーターのような役割。恐竜君はマスコットキャラ。小憎らしい猿はラリーの強力なライバルだし、アッティラ大王チームは一見単なる乱暴者だけど、実はトラウマを持っていてラリーの人間性を魅力的に観客にアピールさせる重要な役割を担っていたと思う。

それにしても・・・予告編には全く見せず、全然出演している事を知らなかったオーウェン・ウィルソンが登場した時には思わず笑っちゃいましたね!
ベンとオーウェンって本当に仲がいいんだなぁ。この2人はペアじゃないと出演しないって決めてるの?(笑)

ラリーが前任の老警備員達からもらったマニュアルを猿に取られて破かれてしまい、「歴史を勉強すれば対処法も判る」とアドバイスを受けて徹夜で歴史の勉強をする→翌日の仕事の時には対策グッズを持参、という流れは面白かった。
コメディとしても楽しいし、ファミリー層には我が子に「歴史を知る大切さ・楽しさ」をアピール出来るし、翌日の夜のラリーの対処編を見る事で、余り歴史が得意でない大人にも判り易くフォローしてくれるという親切設計になってたと思う。

まあ、内容がどーのこーの論ずるタイプの作品じゃないですわね。
笑ってハラハラドキドキして、最後はハッピーな気分になれば万事オッケー♪子供と一緒に見ても親も退屈しないどころか大いに楽しめて、老若男女どの世代でも満足出来る娯楽作品になってました。
ご家族で見るも良し、デートムービーにするも良し、一人で見ても楽しいし、お友達と大笑いして見るのもいい♪

アメリカ自然史博物館は実在する施設ですが、ぴよは以前NYに行った時にメトロポリタンにしか行きませんでした。
もしもう1つ美術館・博物館系に行ったとしてもMOMAかグッゲンハイムを選んでいただろう。少なくとも自然史博物館は選択肢にありませんでしたね・・・今思うと惜しい事したか?(^-^;
てな訳で、この映画を見ると「今度NYに行ったら自然史博物館は絶対に行こう!」と誰もが思いますヨ(笑)







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2007年03月19日(月) 善き人のためのソナタ

監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ
    マルティナ・ゲデック
    セバスチャン・コッホ、他
オススメ度:☆☆☆☆


【あらすじ】
1984年東ドイツベルリン。国家保安省(シュタージ)のヴィースラー大尉はガチガチの社会主義信望者。反体制者の監視と尋問に掛けて定評のある彼は、劇作家ドライマンと彼と同棲している恋人の女優クリスタを監視して反体制の証拠を掴めとの命令を下され、ドライマンの自宅に盗聴器を仕掛けて四六時中監視する事になった。ところがドライマン達の生活に触れる内に、次第にヴィースラーは自分の信じてきた体制に疑問を持つようになり、密かに報告書を捏造するようになる。


【感想】
今年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品。
過去ヒトラーやナチスを取り上げた作品は多く作られている。東西冷戦下の市民生活を描いた作品もない訳ではない。しかし旧東ドイツで国民を監視し反体制者をあぶり出していた「シュタージ」という存在を取り上げて題材にしている作品は、もしかしたらこの作品が初めてなのかもしれません。

主人公のヴィースラーは身も心もどっぷり社会主義に捧げていて、石頭で融通も利かなきゃシャレも通じない、本当に取り付く島もないという言葉がぴったりのイケ好かないオッサン。
映画冒頭、彼が「反体制者に対する尋問方法と相手のウソの見破り方」の講義をしているシーンが出てきますが、あまりに冷酷無比で情け容赦ない、およそ人間らしさのない様を見て、一気にこのオッサンが大嫌いになった!←をい

で、お約束通りこのオッサンが芸術家カップルを盗聴している内に、すっかりこのカップルにハマってしまう訳です(笑)

勿体無いなぁと思ったのは、今まで何度も監視任務はして来たであろうハズのヴィースラーが、何故今回に限り彼らに傾倒し、自分の身の危険を犯してまでも助けようと思ったのか・・・この部分の表現がアッサリし過ぎていたように思う。
もっとドラマティックに作ったって良かったんじゃないだろうかと思うんですがね。控えめな態度というのは世間では概ね好感が持たれるものですが、時と場合によりますよ(^-^;

これはぴよが勝手に「こういう事に違いない!」と解釈した事ですが・・・
ドライマンは盗聴され始めた頃は決して「反体制側」ではなかったと思う。友人には確かに思いっきり反体制思考のヤツもいるし、反体制ではないものの国のお偉方にうまく取り入れられずに仕事を取り上げられてしまった友人もいる。それでもドライマンの様子は「社会主義に多少懐疑的ではあっても国を愛している」というスタンスのように見えた。

だからこそ、社会主義に裏切られて絶望して自殺してしまった友人を思い、遂に国を見限ったんだろう。
そしてヴィースラーもまた、ドライマンの様子を四六時中監視している中で、ドライマンが迷ったり苦悩する様子を聞くにつけ徐々に自分もシンクロして懐疑的になっていったのではないか?と思った訳です。
きっと今まで監視して来た容疑者は、最初っからバリバリの反体制活動家達ばかりだったんだろう。お互い歩み寄る部分がなければ、人というのは最初っから完全拒絶してしまうものです。

ヴィースラーを演じたウルリッヒ・ミューエ氏の演技は秀逸でしたね。
映画冒頭のシーンなんてビー玉みたいな魂の入ってない目なのに、ドライマンが尊敬する友人を喪って、失意の中でピアノを演奏する姿に涙するヴィースラーの表情と言ったら!一気に大好きになっちゃったよーう♪←をいこら(^-^;

当時のシュタージの様子や国の高官達の卑劣な行為を赤裸々に表現するのは、さぞかし大変な事だったろうと思う。
ベルリンの壁が崩壊して20年、まだ旧東ドイツ時代の当事者達の多くは生きている。そういう人達から取材をして本当のトコロを聞きだすのは並大抵の努力ではなかっただろうと思われますね。
多少手ぬるい?と思われる部分もありましたが、ここまで再現出来ていれば充分でしょう。

かなり地味で淡々と表現されている。映画の展開もトリッキーな部分はほとんどない、王道系ヒューマン。
でも何のヒネリもない王道系だからこそ感動出来る、本作はそんな作品だったと思います。
映画ラスト、ヴィースラーのあの清々しい表情には心の底からシビれました!本当に素晴らしい作品です!必見!!







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2007年03月17日(土) ラストキング・オブ・スコットランド

監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー
    ジェームズ・マカヴォイ
    ケリー・ワシントン、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
スコットランド人青年ニコラス・ギャリガンは医学校を卒業した後、若者らしい冒険心と完璧な父親から逃れたい一心で、地球儀を回してたまたま指差した国・ウガンダの貧村の診療所へやって来た。彼がウガンダに着いた1971年、オボテ政権が軍事クーデターによって倒れ、アミン将軍が新大統領に就任した。たまたま怪我をしたアミンの手当てをした事がきっかけで、アミンに気に入られたニコラスはそのままアミンの主治医となり、いつしかアミンの片腕のように扱われるようになる。


【感想】
アミン役のフォレスト・ウィテカー氏が今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞した作品。
予告編を見た段階で「すげーアミンに雰囲気似てる!」と思ったものですが、確かにフォレスト・ウィテカーの演技は鬼気迫るものがありましたね。素晴らしい演技を見せてくれました。

かつてウガンダという国が独裁者アミンによって滅茶苦茶になっていた・・・というのは知っていましたが、実際のアミンの人となりや何故あれほどの大量殺戮が起こったのかという歴史の背景等についてはほとんど何も知らない状態でした。
ってか、アフリカという地域は何か問題を抱えている国が多いですね。内戦、西欧の植民地化による黒人差別、独裁者による自国民の殺戮・・・実際今もウガンダは決して治安のいい国ではありませんし。

本作ではアミンに気に入られて彼の主治医兼ご意見番となったスコットランド人青年医師ニコラスの視点で、この時代のウガンダという国とアミンという人物を描いて行きます。

ニコラスが初めは新しい大統領アミンを羨望のまなざしで見つめていたという設定を抜きにしても、クーデター直後に国民の前で演説をするアミン大統領は確かにカリスマがあって人をグイグイと惹き付ける魅力に溢れている。
貧しい家庭に育ったアミンが権力を手に入れ、初めはきっと崇高な志もあったのだろうけど金と権力にすがる内に人が信じられなくなり、自分がクーデターで今の地位を築いた事を考えると「今度は自分が誰かにやられる立場」になったのだと反対勢力を恐れるようになり、そして遂には世界中を震撼させるような大量虐殺者となる・・・

そんな悲しくも恐ろしい独裁者の心の動きを時にアミンに同調し、時にアミンに反発しながらも見入ってしまう、そんな風に描かれていれば素晴らしいのになぁ〜と思ったんですが、何か微妙にピントがズレてるような気がしましたネ。
・・・何か今日の感想、すごく回りくどくて嫌味ったらしい書き方してるなぁ<自分(苦笑)

どうもね、ニコラスがぴよには肌に合わなかったですね。
血気盛んな若者で、完璧な父親の元で「こうあるべき」と育てられて鬱積するものがあったのはよく判る。その反動で自分の居場所を探すのに「医療後進国で人助け出来て、尊敬もされちゃう?ちょっと俺ってカッコいい?」的なノリでウガンダにやって来たのも理解出来る。正直言って「黒人は白人の俺より下よネ」な臭いプンプンだけどそれも判る。
新大統領に気に入られて大統領専用車に乗って「俺ってこの国の要人ってヤツぅ?」と舞い上がる気持ちも判る。

それにしてもニコラスよ。お前はバカっぽ過ぎるぞ(涙)
余りにやる事為す事思慮が浅過ぎてリアリティがない。一緒にボランティアやってる同僚医師の嫁さんをタラし込む程度ならまだ許されても、いくらなんでもアミンの嫁に手を出すのはリアリティがなさ過ぎ。
実際のアミン政権下の出来事について何も知らない状態で鑑賞したので「ニコラスのモデルが実際にいたの?」とずーっと悶々としていたのですが、どうやらニコラスは映画オリジナルキャラのようですね。

納得しました。ニコラスいらないです。←をい

ニコラスの愚行を延々見せるくらいなら、もっとアミンの心の動きを掘り下げて見せて欲しかった。
確かにラストの脱出劇にはハラハラさせられたし、シメとしてはよく出来ていたと思いますが、映画全体の流れとして結局何が言いたいのかよく判らない作りになっちゃってる気がするんですよね。
アミンという独裁者の心の内を見せたかったのか?アミンに独裁された国民の困惑を見せたかったのか?ただこういう歴史があったという事をサラリと娯楽映画として楽しませて見せたかっただけなのか?

少なくとも本作はアミンという人物の掘り下げも出来ていないし、彼の犯した恐ろしい独裁政治部分も描き込みが薄くて観客に伝わり難い。それもこれもニコラスという語り部のキャラクターの作りに問題があったんじゃないかと思うんですよ。

ただし、アフリカの国々が抱える多くの問題、そして実際に起こってしまった恐ろしい出来事、これらはなかなか欧米にも日本にも伝わる機会が少ないのが現実。
例え娯楽映画であっても、この映画の内容とこの映画が見せてくれた歴史背景は知らなければいけない事でしょう。
映画としては正直「イマイチか?」と思ったけど、見て損はない・・・いや、見て知るべき内容ですよ。







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2007年03月12日(月) デジャヴ

監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン
    ポーラ・パットン
    ヴァル・キルマー、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
2006年2月28日、海兵隊員とその家族を乗せたフェリーが爆発炎上する事件が発生。ATFの敏腕捜査官ダグが捜査に乗り出してテロ事件だと確定された。更に事件現場近くで発見された女性の焼死死体が、爆発前に発見されたものだったにも関わらず、何か感じる所のあった彼はこのテロ事件との関連性を疑い捜査を進める事にした。死体の女性「クレア」の部屋を捜索したダグは、そこである物を目にする・・・


【監督】
ブラッカイマー製作&トニー・スコット監督コンビの最新作。
毎回荒唐無稽のハチャメチャ展開&やたら金の掛かったド派手なアクション系シーンでファンの心を鷲掴みにし続けるブラッカイマーフィルムですが、予告編を見た時に「おぉ♪デンゼルの新作ぅ♪」となかなか期待値を上げてくれる作品です。

そんな訳で、
やっぱり荒唐無稽でド派手な爆発炎上&カーチェイスシーンが楽しい作品。←またしても結論攻撃(苦笑)

いや、根本的にぴよはこういう作品って大好きなんです。
スリリングで展開がポンポンと進んでテンポが良く、映像も派手派手で楽しめて更に役者も豪華。
「パールハーバー」「アルマゲドン」の2作で「ダメだ。ぴよはブラッカイマーは絶対に肌に合わないんだ」とずーっと思っていたのですが、冷静に考えるとこの2作品以外の作品は、どれもこれも結構好きだったりするんです。
世間では賛否両論(いや、むしろ酷評の嵐?)だった「ナショナル・トレジャー」なんてかなり好きだしネ・・・今後はブラッカイマー信者を名乗っちゃおうかしら?(^-^;

脱線しましたが本作。
映画冒頭からブラッカイマーの真骨頂とも言える、超ド派手な爆発炎上シーンで掴みはOK!
デンゼルの登場で観客が一瞬引き締まり、彼の視界が何か不穏な印象を常に与え続けて、タイトルの「デジャヴ」がいつどういう風に絡んで来るの?と期待させる演出はなかなかお上手です。

で、いよいよキーマン(キーウーマンか)のクレアの死体が発見されてからの展開がまた奇想天外で息が抜けない。
ここでまたしてもブラッカイマーの真骨頂「荒唐無稽な設定を大真面目に見せて、客のド肝を抜いて楽しませる」という、いかにも彼らしい「恐ろしく金の掛かった超A級映像で楽しませる超B級ネタ」にグイグイと引きずり込まれて、気を抜くヒマなんぞ一瞬たりともありません!
またデンゼルの演技がいいんだなぁ〜!クレアの映像を見つめるデンゼルの表情ったらどーよ?上手過ぎるわよ!

そんな訳で、中盤までは荒唐無稽ながらもかなりハラハラドキドキしながら楽しめるのですが・・・
後半のクライマックス以降が余りにも陳腐過ぎて「そりゃーねーだろー!」とツッコミどころ満載です。

タイムパラドックスネタというのは、基本的に「未来は変わらない(変えられない)」というのが大前提で、観客の多くもその点は了承した上で見ているものだと思います。
本作でもダグが必死に未来を変えようとメモを過去に転送してみたりするのですが、結局は未来(現在)は変えられないというのが映画中盤までの「作品設定と観客の間で交わされたルール」だった。
そのルールを提示しておきながらこのラストは頂けないでしょう。どんなに悲劇でもやはりルールは守って欲しかった。

上にちょっと書きましたが、本作は明らかにタイトルの「デジャヴ(既視感)」ネタではなく「タイムパラドックス」ネタです。
タイムパラドックスを扱うと、必ずどこかに齟齬が出るのは致し方ない。でも齟齬が出るのは承知の上で、映画の中だけに通用するルールや設定を設けて観客を納得させるというのが「タイムパラドックスネタを扱う最低限のルール」なんじゃないかと思う訳です。ルールなきタイムパラドックスネタはコメディにすらならないと思うんです。

本作はその禁を破って「映画中盤までに見せたルールをひっくり返す」という荒業をやってしまった。
正直ガックリしちゃったんだが・・・でもそれでも案外この作品は好きだったりする。
小技が効いててテンポも良く、映像的にも楽しめる「金の掛かったB級娯楽映画」としては秀逸だな、と思ったんす。

結局ぴよは何だかんだ悪態付いても「ブラッカイマー信者」なんでしょうね。
そんなぴよのような偏差値の低い御仁には、ツッコミまくりながらも楽しめる一作だと思いますヨ!(^-^;






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2007年03月05日(月) パパにさよならできるまで

監督:ペニー・パナヨトプル
出演:ヨルゴス・カラヤニス
    イオアンナ・ツィリグーリ
    ステリオス・マイナス、他
オススメ度:☆☆+


【あらすじ】
1969年6月。世界中がアポロ11号の月面着陸を間近に控え沸き返っていた。10歳のイリアス少年もその1人。行商で長く家を開ける父親だけど、帰って来ると必ずベッドにチョコレートのお土産が置いてある。母親は父が家にいない事が不満のようだが、イリアスはパパが大好きだった。ところが行商に出かけた父親が交通事故で亡くなってしまう。イリアスは父の死を受け入れる事が出来ずに、痴呆の祖母に宛て父に成り代わって手紙を書き続けるのだが・・・


【感想】
2002年ギリシャ−ドイツ共同制作の作品。ギリシャの映画って余り見た事がありません。もしかして初めてかも?
本作の主人公イリアスを演じた撮影当時9歳だったヨルゴス・カラヤニス君が、第55回ロカルノ国際映画祭において史上最年少で主演男優賞を受賞した事で話題になったそうです。
ロカルノ国際映画祭ですかぁ〜・・・すいません。この映画祭の存在を知りませんでした。(^-^;

そんな訳で本作ですが、
いわゆるベタベタなヒューマンというジャンルなんですが、思ったよりも「泣かせ」な作りではありません。
ってか、全く泣けない。ヒューマン物を見てもウルッとも涙が出てこないのはいつもの事なので「まーたぴよだけが泣いてない冷血人間ってオチかぁ?」と思って周囲を見渡してみましたが、館内で泣いている人は少なくともぴよが視認した限りでは誰もいなかったので、本当に「泣けないヒューマンドラマ」だったんだろうと思います(苦笑)

正直言うと、中盤ダレダレで飽きちゃった。←またこーいう事を書くと後のフォローが大変だぞー(^-^;

まずイリアス少年が10歳という設定だと知って(映画を見てから公式サイトを調べて知った)驚きましたね。
映画を見てる段階ではいいとこ小学1年程度だろうと思ってたのに・・・冷静に考えて、10歳にもなる少年がいくら呆れる程夢見がちだったとしても「父親の死」を全く受け入れないというのは合点が行かない。

そのクセ、屁理屈だけは一人前と言うか。言い訳を言わせたら天下一品の頭の回転の速さだし、痴呆の祖母に宛てた手紙や学校で出された宿題の作文の文章等は、とても10歳の子供が書いた内容だとは思えないくらいの素晴らしい文章構成と表現力を発揮してくれます。
・・・要するに「父親の死を受け入れられない純粋で幼い少年」という一面と「巧みな文章能力や言語能力を持った知能指数の高そうな少年」という一面にギャップが有り過ぎて、同一人物のキャラとして違和感があるんですよね。

だから父親の死後、クライマックスに到るまで延々と続くエピソードが「父親の死を受け入れられない可哀想な少年」には見えずに「往生際の悪い、こしゃまっくれてヒネたガキの抵抗」にしか見えない(苦笑)
勿論イリアス少年は本気で父親が生きていて、自分との約束を守って帰って来るとは思ってはいないだろう。
父親の死を百も承知で、それでも尚受け入れ難くて抵抗を続ける少年の不憫で一途な様子を見せたいなら、イリアス君がもう少しだけおバカで純情そうなキャラの方が観客の涙を誘えたんじゃないか?と思ったんですが。

そんな訳で余り内容には入り込めなかったぴよですが、内容に入り込めない分、映画の中に登場するギリシャ料理だったり映画中に流れる音楽には随分気が惹かれましたネ。
ギリシャ料理って全くの門外漢(正直食べた事ないかも?)なのですが、映画を見た限りではイタリア料理とトルコ料理の中間のような料理が登場していて「ナルホド。確かにギリシャはイタリアとトルコの間にある国だなぁ」と感心してみたり、映画中に歌詞付で曲が2曲&エンドロールで1曲歌が流れるのですが、それが日本の70年代フォークソングやムード歌謡に非常にメロディーが似ていて「案外ギリシャ人と日本人って好みや感性が似てるのかも?」と思ってみたり。

映画の内容自体にはコレと言って特筆するものはありませんでしたが、その他の部分で楽しませてもらいましたね。
決して悪い話じゃないんですが・・・日本人とギリシャ人は感性が似てるかもしれない?(←ぴよの勝手に持論)なので、もしかしたらこの映画がガッツリとツボに入る方もいるかもしれませんよ?(笑)








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