2007年01月29日(月) |
世界最速のインディアン |
監督:ロジャー・ドナルドソン 出演:アンソニー・ホプキンス ダイアン・ラッド ポール・ロドリゲス、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 ニュージーランド南部の田舎町インバカーギルに住むバート・マンローは、40年以上も前に買ったバイク「インディアン」をコツコツと改造し、ひたすら「速く走る事」に人生を捧げて来た。彼の夢は世界最速を目指すライダーの聖地、アメリカ・ユタ州ボンヌヴィルで世界記録に挑戦する事。年金暮らしで渡航費すらままならないバートだが、60歳を過ぎて体にガタの来た彼は夢が諦めずに一念発起、自宅を抵当に入れて単身アメリカを目指すのだが・・・
【感想】 1967年に68歳で1000cc以下のクラスで世界最速の記録を作った(しかもその記録は今も破られていない)、実在する伝説のライダー「バート・マンロー」の心温まるサクセスストーリーを映画化。 これを、バート氏が存命中に本人と出会って彼に感銘を受けたロジャー・ドナルドソン監督が、当時は駆け出しの若手監督で映画化が出来ずにずーっとネタを暖め続け、「13デイズ」「リクルート」等を手掛けて名を馳せた事で、バート氏と出会って34年の歳月を経てようやく映画化に漕ぎ着けた・・・という、「大器晩成スペシャル祭り映画」
実在する人物の映画化だと、どれくらい事実に即しているかが勝負になるケースが多いのですが、多分本作のエピソードはもちろん事実もあるだろうけど、印象としてかなり「演出先行」になっているだろうと思います。 通常なら「有り得ない歪曲演出にはヘドが出る」と吐き散らすトコロですが、本作にはそういうストレスが全くない。
何故なら、本作には悪人が1人も出て来ない。 誰かを貶める事で主人公を「いいヤツ」に仕立て上げるのは簡単だけど、この映画に登場する全てのキャラが、誰が見ても心が温かくなるような気持ちのいいヤツらに彩られている。 最初は「なんじゃ、コイツら」と思わせるキャラも、主人公と絡む事で最終的に誰も彼もが「ステキなヤツら」になる。
監督がそれだけ「バート・マンロー」という人物に惚れ込んだのだ、という気持ちがひしひしと観客に伝わるんですよ。 「バート・マンロー」という人物が、飄々とした、カラリと明るく、一途で一生懸命で、真っ直ぐで愛嬌があって、彼と1度でも接した人なら彼を愛さずにはいられない、憎み切れないステキなオヤジ・・・そんな風に描かれていた。
ぴよはこういう映画が大好き♪ 監督の思いの深さが真っ直ぐ伝わってくる話。愛し尊敬する人を描くのに、そこに悪人はいらない。 誰もが優しい気持ちになれて、誰もがその人を愛さずにはいられない。本人の努力が報われて誰もが幸せになれる話。 そこに悪意はない。そこにあるのは善意と優しい気持ちと応援したくなるような努力と、そして溢れる愛。
だから、この映画中に登場するエピソードの中でいくつが事実でいくつが捏造か?なんて関係ない。 「バート・マンロー」という人物に、観客がどれだけ惚れ込めるか、どれだけ監督の思い入れが伝わるか、だけが必要。 そして本作は、その両方が観客に伝わる秀作だったと思います。 更にキャスティングも実に良かった。サー・アンソニー・ホプキンスは何故か気難しいシリアスな役柄が多いけど、本作のような老境に入って頑張る「愛すべきオヤジ」というキャラがここまで似合うとは嬉しい誤算でした。
正直言って、地味で一般ウケしない手合いの作品だろうと思います。 美男美女が登場する訳でもなく、アクションもなければ金の掛かった作りでもない。 それでも本作が訴える力に何の衰えもありません。これは「見た人勝ち」ですよ!是非時間作って見てやって下さい!
|