2006年10月31日(火) |
サンキュー・スモーキング |
監督:ジェイソン・ライトマン 出演:アーロン・エッカード キャメロン・ブライト ウィリアム・H・メイシー、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 タバコ研究アカデミーの主任広報マンのニック・ネイラーの仕事、それは世間からバッシングされるタバコを擁護し、尚且つ愛煙家を増やしてタバコ業界を守る事。その巧みな話術から「情報操作の王」と呼ばれて世間から忌み嫌われるニックだが、一人息子だけは父親を尊敬している。告訴されないように賄賂を渡したり、嫌煙政治家をやり込めたり、ハリウッド映画で愛煙キャンペーンを張ったりと忙しいニックだが、思わぬ落とし穴が彼を待ち受けていたのだ。
【感想】 クリストファー・バックリー氏著の「ニコチン・ウォーズ」を映画化。 監督は「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマン監督の息子で、本作が長編映画初メガホンとなった新進気鋭のジェイソン・ライトマン氏。出演している役者もかなりのビッグネームが名を連ねてます。
本作はタバコ業界の広報マンの様子をコメディタッチに描いていますが、タバコが主役の映画ではなくて、広報マンが嫌煙家達を正に「煙に巻く」様子を皮肉たっぷりに見せる「情報操作」を題材にしたコメディです。 世の中「情報化社会」ではなく「情報操作社会」だというのは誰もが認識してるけど、その情報操作の巧みさでは群を抜くアメリカ社会をここまで皮肉ってくれる映画というのは本当に見てて痛快です。
話はニックの仕事振りと平行して、離婚した妻が引き取った一人息子との交流も見せて行き、父親が息子に語る事がイコール観客に訴えたいモノという、ちょっとシャレた見せ方になっていました。 だからなのか?ニックが巧みな論点のすり替えをしたり詭弁を弄して相手を論破するというシーンもあるものの、その部分自体には余り力が入ってなかったような気がします。突っ込みまくりの白熱した議論シーンがもう少し多ければもっと面白いのになぁ〜と思ったんだけど、でも構成はなかなか巧みで見てて飽きませんでした。
ロビイストの仕事振りを見せているだけあって、セリフの一言一言が皮肉めいていながらも観客をも一瞬納得させるような理論的に聞こえる言い回し(でもやっぱりただの詭弁でしかないんだよね)になっているのがシャレてます。 ぴよは「モッズ」の会合シーンが特に好きでしたね。タバコ業界のニックとアルコール業界、銃業界のそれぞれの敏腕広報マンが顔付き合わせてディスカッションするシーンは、ユーモラスでなんとも楽しい♪
息子の通う小学校に行って、子供達に「親が言う事すら鵜呑みにしてはいけない」「判断するのは自分自身だ」と説く辺りなんて大笑いですわ。全国のPTAの皆さんがご覧になったら噴飯モノでしょう。(^-^; まあコレはPTAを敵に回したいんじゃなくて、要は「数多ある情報ソースの中でどれが本物なのかを養う目を自分で身につけなければいけない」「自分で判断して自分で選択する重要性(情報に流されてはいけない)」についてシャレで訴えている訳ですが、少なくとも親子で鑑賞して楽しむ類の映画ではないのは確かです(苦笑)
でも本作の父子の様子は微笑ましくて良かったですよ。 少なくともニックは我が子に対しては誠実な父親でありたいと思い、事実息子からの質問には自分の心の内の正直な部分をぶつけているし、そんな父親を見て息子も全幅の信頼と尊敬を父親に向けている。 クライマックスの「アナタの息子が18歳になったらタバコを与えてやりますか?」という質問に対する答えは、ニックが今まで自分が真摯に息子と向き合って語り合ってきた自信、我が息子なら正しく情報を取捨選択する目を持っているハズだという信頼関係の裏付けのように思えました。
粋でユーモラスで皮肉たっぷりで、親子関係に心がちょっぴり和む・・・そんな秀作コメディでしたヨ。
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