監督:ジュリアン・ジャロルド 出演:ジョエル・エドガートン キウェテル・イジョフォー サラ=ジェーン・ボッツ、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 優柔不断男のチャーリーは、父の急死によりイギリスの田舎町にある父が経営していた紳士靴工場を継ぐ事になった。ところが蓋を開けてみれば、大量の在庫を抱えて工場は倒産寸前状態。何とか工場を守りたいチャーリーは、ある日ドラッグクイーンのローラと出会い、ドラッグクイーン達が履きやすいキンキーブーツを作れば需要があるのでは!と思い立つ。
【感想】 イギリス発のハート・ウォーミング・コメディ。 本作は事実を元にしているそうで、この映画の主人公「チャーリー」のモデルになったのは、ロンドン郊外の田舎町ノーサンプトンにある伝統的な家内制靴工場を経営するスティーブ・ペイトマン氏だそうだ。 映画中にも靴の新作ショーにチャーリーが自らモデルとなって登場するシーンがありますが、実際にペイトマン氏も最初の頃はモデルになってくれる人が見つからず、自身がブーツを履いてショーに出演されたりしたんだそうだ。
イギリス製作のコメディの伝説的名作と言えば「フルモンティ」 その後も事実を元に映画化された「カレンダーガールズ」等も大ヒットしましたね。本作もそんな流れを丸々汲んで、保守的なイギリスの田舎町の人達がキテレツなアイディアに最初は戸惑い、反発し、葛藤し、そして次第に心を開いて最後は大成功するという、映画見なくても結末まで全部先読み出来る「安心して楽しめる予定調和」な作りになっています。
保守的な田舎の人達、心優しいと言えば聞こえがいいが「優柔不断」で今ヒトツ求心力に欠ける主人公、男である事に違和感を感じ葛藤を繰り返しながらも誇り高く生きるドラッグクイーン、田舎を嫌悪してロンドンで洗練された生活を望むキャリア志向の恋人等、とにかく登場するキャラはどいつもこいつも超ステレオタイプばかり。
ステレオタイプキャラが予想通りの展開で何のヒネリもなく話が進み、本当にそのまんま大団円。 「少しはヒネれよ」と言う人もいるかもしれませんが、ぴよはこういう話こそヒネらず素直な方が好感が持てます。 小さなネタでプッと笑わせてもらったり、しんみりしたり、コメディとヒューマンの配分が絶妙で見てて心地いい。
それからドラッグクイーン「ローラ」と仲間達のショーがオシャレでかっこいい!本作のファッションは「Vフォー・ヴェンデッタ」を手掛けたサミー・シェルドン氏が担当しているそうですが、凄くスタイリッシュで品があるんですよ。 ドラッグクイーンのショーというと「極彩色でエゲつない」ってイメージがあるんだけど(これもぴよも偏見よね)、クライマックスのショーシーンなんてめっちゃくちゃステキ!本当に劇場でスタンディング・オベーションしたくなっちゃった♪
ぷぷぷ!とほくそ笑んで、しんみりして、ハラハラして、そして心がほっこりする。 英国コメディは、抑えた笑いで優しい気持ちにさせてくれる控えめさが日本人の肌に合う。本作もそんな秀作です。
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