ぴよの映画めった斬りコーナー
ぴよが見た新作映画・ビデオ・DVDを個人的趣味でぶった斬るコーナー
ぴよと意見が合わないからっていじめないでぇ〜ん!(^_^;)
【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2004年01月31日(土) ゼブラーマン

監督:三池崇史
出演:哀川 翔
    渡部篤郎
    鈴木京香、他
オススメ度:☆☆☆−


【あらすじ】
2001年横浜市八千代区。この地で小学校教師を勤めるの市川新市は、生徒にはバカにされ、家庭に帰っても家族中から小バカにされるダメ男。唯一の趣味は、子供時代の昭和53年に低視聴率の為7話で打ち切られたヒーロー番組「ゼブラーマン」のコスチューム作りだった。家の中でコスチュームを着て遊んでいるだけでは満足出来なくなった市川は、こっそりコスプレ姿で夜の街に出るようになったのだが、何故か怪しいヤツらと出くわし、何故か必ず乱闘するハメに・・・
ところが市川は全く気付いてなかったのだが、この怪しい奴らは地球侵略を目論む宇宙人が人間に寄生していたのだ!


【感想】
Vシネマの帝王・哀川翔の記念すべき主演100本目の作品。
主演100本目の作品メガホンは、是非タイム誌の「21世紀、最も活躍が期待される映画監督10人」にも選ばれた三池崇史監督に!というラブコールに監督も快諾、更に脚本は日本1忙しい売れっ子脚本家の宮藤官九郎氏に!というオファーも快諾され、夢のプロジェクトが始動と相成った訳ですわ。

哀川翔と言えば任侠系のストイックな役柄がイメージなのに、何故か主演100本目の記念映画がコスプレヒーロー物。
今まで数多く出演して来てすっかりイメージの定着した「ストイックでカッコいい漢(おとこ)」を、100本記念にして根底から覆すような「まるでダメ男」キャラで勝負して来たというのには驚きました!
ある意味、100本目だから誰の記憶にも残るようなインパクトの強いキャラを打ち出したかったという意図もあったのか?

それにしても、何故コスプレヒーロー?(^_^;)

哀川翔は自分の役者人生の大事な節目になる作品がコレで、後悔はないのだろうか?
しかもキャストもエラい豪華だったりするし・・・
防衛庁特殊機密部の調査員役は渡部篤郎、宇宙人が憑依した人間役(しかもチョイ役)には柄本明、他にもゲスト出演でウンナンの内村クンやら教頭先生役に大林漣等、超豪華出演陣を布陣。

でもぴよが1番驚いたのは鈴木京香だね。
彼女がこの役を何故引き受けたのか今もって謎ですわよ。彼女の女優人生のステイタスやらキャラクターを根底から破壊し尽くすようなアホなコスプレ衣装・・・ファンの皆さんが見たら嬉しくて涙するのかか悲しくて涙するのか(苦笑)

結構笑えちゃうんだけどね(ここはさすがクドカンのすっ飛んだ脚本の技術?)
正直言って、「この映画、金出して劇場に見に行った甲斐があった?」と聞かれると首を傾げたくなるよーな作品なのさ。
(ぴよは試写会で見に行ったからタダで見てるんだけどさ。笑)
要するに、もし劇場公開して金払って映画見に行ったとしたら、果たして満足出来たんだろうか?という疑問。

確かに面白いんだよ。劇中の笑いのツボもしっかり観客を巻き込んで磐石だしさ、ここまでおバカなネタを、大真面目に大物俳優陣が演じちゃってるっていう妙も楽しめるしさ。
でも、この映画が1800円という金額に見合うか?と聞かれると「Yes」とは言えない・・・という、微妙な笑いなんだよな。

シリアスキャラにおバカをやって頂くというコンセプトはよく判るんだけど、何か中途半端な感がぬぐえないと言うか。

ただね、「ゼブラーマン」のキャラクターは魅力的ですわ。
よく練られてるし、劇中に出て来る「ゼブラーマン」の主題歌は、ヒーロー物主題歌の大家・水木一郎氏に歌わせちゃって、本当にこんなヒーロー物番組があったのかなぁ?と思わせる程の、細かい作りなんだよね。

何がダメなの?と聞かれると困るんだけど、余りに安っぽ過ぎて、映画のネタで笑ってるんだか、余りの「とほほ感」で苦笑してるんだか、自分でも訳わかんなくなっちゃってさ・・・

少なくとも、劇場公開映画としてこれでいいのか?と考えたくなるよーな微妙な作品なんだよね(苦笑)








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2004年01月30日(金) バレット モンク

監督:ポール・ハンター
出演:チョウ・ユンファ
    ショーン・ウイリアム・スコット
    ジェイミー・キング、他
オススメ度:☆☆☆−


【あらすじ】
ニューヨークでとあるチベット僧が何者かに追われていた。彼の持っている巻物が狙われていたのだ。その巻物は「世界を天国にも地獄にも変える」強大なパワーを持ち、それを読んだ者は世界を制する事が出来るからだ。
その僧は60年前に3つの予言を成就した事によって巻物の守護者となったのだ。守護者は巻物によって不老不死の力を与えられ、60年間巻物を守り続ける事になる。彼は守護者の後継者を探していたのだが・・・


【感想】
香港トップスター、チョウ・ユンファの最新主演作。監督はポール・ハンター(今作が初メガホンだそーだ)の名前がクレジットされていますが、製作に名を連ねるジョン・ウーの名前の方が馴染みがいいでしょう。
要するに、ジョン・ウーフィルムって考えてもいいかもしんないっすね・・・ただし、白い鳩も教会も出ませんが(笑)

この新人監督さん、ナイキのCMやマライア・キャリーやジェニファー・ロペスのミュージックビデオの撮影等を手掛ける映像クリエイターだそーで、なかなか映像は手が込んでてアクションの見栄えも良く、カメラワークもスタイリッシュ。
映画冒頭のチベットでの修行シーンなんて、ちょっぴりジョン・ウーちっくな感じもしたけどネ。

話は巻物を敵から守る事と、次の守護者を探す事の2本のネタを絡めて見せて行くんですが、展開に破綻している部分もなく、設定もそれ程不自然な点もなく、いい意味でも悪い意味でも「可もなく不可もなく」といった感じで。
それなりにちゃんと楽しめるし、アクションも流行のワイヤーアクションやCGをふんだんに使ってるし、ヘリコプター飛ばして派手な銃撃戦シーンもあり、ビルの屋上で「落ちるぅ〜!」系のハラハラシーンもあり・・・まあ、既存のアクション映画に使われそうなパターンはカーチェイス以外は一通りやっとけ!みたいな。

悪くないんだけど・・・予算が少なかったのか?それとも予算の割り振りが悪かったのか?
悪玉の本拠地がねー、何だろうなぁ〜これは。(^_^;)
映画見ながら「仮面ライダーとかキカイダーの悪玉の秘密基地みてーだな、こりゃ」って思ったんだけどさ。
「脳味噌のデータを取り込むマシン」みたいなモノがあるんだけど(この設定もオモチャちっくだよな)、これがどーにもこーにもお粗末なマシンで、しかも何故かこれを使う時に水がドドーッと流れる(意味はわからん)
んもー!すげー安っぽいぞー!なんだこりゃー!

後さ、後継者がちと弱過ぎないかなあ・・・
自分はチベットで凄まじい修行してたくせに、映画館でカンフー映画見ながらアクションの真似事してたよーな男に、ちょこっと悟りが開けたかな?程度の状態で巻物渡しちゃって大丈夫なんかいな?と、ぴよが不安になっちゃいますが。

基本的に「アクションフェチ」を自認するぴよとしては、ワイヤーやCG使ったアクションはあまり評価高くないです。
ただ見せ方はこなれてる感じがしましたから、見てて不快になるよーな作りではなかったですね。

まあ・・・そこそこ楽しめる、毒にも薬にもならない(要するにあっちゅー間に忘れそうな)フツーのアクション映画ですわ。






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2004年01月29日(木) ニューオーリンズ・トライアル

監督:ゲイリー・フレダー
出演:ジョン・キューザック
    ジーン・ハックマン
    ダスティン・ホフマン、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
ニューオーリンズの証券会社にこの会社をリストラされた男が銃を持って乱射、11人の尊い命が奪われた。それから2年後、全米が注目する訴訟が幕を開けようとしていた。銃乱射事件の被害者遺族が原告、そして被告は銃器メーカー。
もしこの訴訟で負ければ、全米で同様の訴訟が沸き起こり巨額の賠償金を支払うハメになるとあって、銃器メーカーはあらゆる手段で陪審員の評決を勝ち取って来た、伝説の凄腕陪審コンサルタントを雇ったのだが・・・


【感想】
『ザ・ファーム/法律事務所』『評決のとき』『依頼人』『ペリカン文書』などで有名な法廷ドラマ系に俄然強いジョン・グリシャムのベストセラー小説『陪審評決』が元ネタになっている一作。
普段だと「○○の映画化」という書き方をしますが、この作品の場合は決して原作の映画化ではなく、原作ではタバコ会社を相手取って訴訟を起こすという設定になっているんだけど、映画では銃器メーカーを相手に訴訟を起こすという事に変えられているので、あくまでも原作は「元ネタ」扱いという訳です。

既に「タバコ会社訴訟」ネタの映画がありますし(インサイダー)、昨年「ボーリング・フォー・コロンバイン」が大ウケしたのも追い風になって、観客によりアピール度が高いであろう・・・という思惑が働いたのかな?と。

この映画は、既存にありがちな「原告vs被告」の丁々発止のやりとりを見せて楽しませるタイプじゃなくて、「陪審員制度」という法廷制度を逆手に取って、陪審員にある時は生活の保障をしてやったり、ある時は脅迫まがいの事をして陪審の評決を有利に働かせるという職業「陪審コンサルタント」の実態と、それを更に逆手に取って陪審コンサルタントを脅迫するという「陪審員サスペンス」仕立てになっている。

日本の法廷には陪審員制度が導入されていないので(その動きはあるようですが)、正直言って陪審員のしくみもよく判っていませんし当然馴染みも薄いので、陪審員が選ばれるしくみも「ほぉ〜・・・そーなってるんすかぁ」って感じだし、陪審コンサルタントという職業があるという事すらぴよは知らなかったんですけどね。

この「陪審コンサルタント」ってーのがスゴイんですわ。
ここはCIA本部か!?と思わせるよーな秘密基地に(秘密基地かよ。笑)、ストーカーまがいの事をして収集した陪審員のありとあらゆるデータを網羅し、ずらりと並んだPCでデータ処理と収集、そして弁護士には骨伝導超小型マイクを付けさせて、モニターで法廷の展開を管理するという徹底ぶり。

もし実際にアメリカでは「陪審コンサルタント」なる職業の人が、このよーな設備で陪審員や弁護士を操っているとしたら・・・そりゃー金のない一般ピープルが大企業を相手取って訴訟を起こしても勝てるわきゃーありませんや!

こういう日本では馴染みのない「陪審員制度」を悪用?した、裏のカラクリを見せてもらうには非常に役立つ映画なんですけど、この映画の失敗は「原作の設定を変えてしまった」という事が1番大きいのではないかと。
タバコ会社が相手の訴訟なら、どっちに転んでもおかしくない(と思うのは喫煙者のぴよだけか?苦笑)展開になるハズなのに、これが被告を銃器メーカーにしてしまうと結果が見えちゃって、サスペンス部分の興味が少々薄れてしまう。

まあそれにしても、出演してる役者は芸達者揃い&配役はドンピシャリにハマってますから楽しませてもらえます。
ジーン・ハックマン久し振りにスクリーンで見たけど、歳取って金の亡者らしいいい顔付きになったよなぁ〜!(こらこら)
んでもって、市民の正義の味方弁護士がダスティン・ホフマンってのも、ハマり過ぎてて怖いくらいだったわよ。偶然だけど昨日ダスティン・ホフマンが悪役を演じている映画を見たけど、やっぱり彼は「正義の味方顔」なんだよね。
あの泣きそうな垂れ目が、何とも言えない微妙な微笑みをくれるラストシーンなんて、「ほらぁ〜!やっぱダスティン・ホフマンはこーじゃなくっちゃダメよねぇ〜♪」って、妙に納得しちゃったしさ(笑)

ただね、
これは英語が堪能な方が(もっと言えばアメリカ人が)見なければ面白くない作品だと思うんですよ。
陪審員制度の弱点、そして陪審コンサルタントの脅威・・・これらの「法廷の盲点」を突いた丁々発止を楽しめるのは、その制度が息付いた国に生まれて育った国民だからだと思うんだよね。

エラそーな事書きましたが・・・
要するにぴよにはコ難しくてちょっと入り込みにくい内容だったな、って事なんですが(笑)







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2004年01月28日(水) コンフィデンス

監督:ジェームズ・フォーリー
出演:エドワード・バーンズ
    ダスティン・ホフマン
    レイチェル・ワイズ、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
天才詐欺師・ジェイクと仲間達は、今回も鮮やかな手口でとある男を罠にハメて15万ドルをせしめた。ところがこれが間違いの元、その男の金は暗黒街の大物「キング」の金だったのだ。仲間の1人を殺されてうろたえるジェイク達だったが、キングと交渉の末にマフィアの資金浄化銀行から金を騙し取って山分けしようという話になった。
騙し取る金額は500万ドル―お目付け役にキングの手下と、町でスカウトした美貌の女スリ・リリーを加えて、計画は順調に進みだしたかのように思えたのだが、執拗にジェイクを追うFBI捜査官・ビュターンの登場で計画に綻びが出始める・・・


【感想】
ジェームズ・フォーリー監督・最新作・・・って、今公式HPで調べたんだけど、ぴよは彼の監督作品をどうやら1つも見た事がないらしいと判明。そりゃ〜聞き覚えがない訳だ。(笑)
でも出演してる役者はスゴい。主人公・ジェイクはエドワード・バーンズ、キング役は重鎮ダスティン・ホフマン、お色気ムンムンの女スリをレイチェル・ワイズ、そして執念のFBI捜査官・ビュターンを演じるのはアンディ・ガルシア@エッチな顔のナイスガイという豪華な顔ぶれ!

話は天才詐欺師・ジェイクが何者かに殺されるシーンから入り、殺されたジェイクの天の声で、どうして自分がこんな事になってしまったのか?・・・というのを回想して見せて行くという形式。
詐欺師を題材にした映画というと、ぴよは去年の秋に見た「マッチスティックメン(2003.10.1の感想参照)」をまず思い出してしまいますが、あの作品に比べるとこちらの方がグッと獲物が大きく、手口も巧妙な感じがします。

巧妙な手口だと思ったのは映画冒頭のキングの金をせしめる所までね。
肝心の500万ドルを頂こうというプランは余りに杜撰だし(でもこれは映画中でも仲間に総ツッコミされてる。笑)、人選も行き当たりばったりで「こんな素人をメンバーに加えていいんかいな」と、少々不安になるんですけど・・・

この映画は見誤っては行けないポイントが2つあると思うんすよ。

まず1つ目は、彼らの詐欺る手口自体を楽しむモノではない、という事。
最初から「こういう手順で金を取りましょう」とネタが明かされているので、これを今更楽しむヤツはいないだろうけど、それにしても肝心の500万ドルを詐欺るプランがショボ過ぎるんだよね。でもここの部分は目をつぶって、このくだりはむしろメインキャラの人間模様を見る事を楽しむシーンだと思うんだ。

そして2つ目。これが肝心。
この映画は「誰をハメようとしているのか?」というのがキモではないという事。
言っちゃ何だが、ジェイク達の狙いはこの手の映画を見慣れてる人ならかなり早い段階で見えてるハズ。
映画を見終わって「私、あの人がハメられるのは判ってたわ♪」なんて得意げに語るのはご法度です(笑)

ぴよがこの映画のキモはここだな!と思ったのは(以下、かなりネタバレの可能性大ですので注意して下さい)
誰がハメられていたのかという事じゃなくて、誰がグルだったのか、という事だと思ったんだけど
あのクライマックスシーン(ネタの種明かしのシーンね)には、思わず笑っちゃったもん!
「ナルホドね、この展開なら全部辻褄は合うしキレイにまとまるわー!」って。

たとえぴよが白抜きにした部分まで見透かしていた人でも、見てて楽しくなかったですか?結構楽しめましたよね?
映画を見ている間、ずっと劇中のキャラクターをハメているように見せていて、実はこの映画は見ている観客をハメようとしていたんだ・・・という、かなり手の込んだ作りになっていたと思うんですよ。

ここまで褒めちぎっているのに、オススメ度が低くないですか?とツッコミを入れたい方、それには理由があるんすよ。

ダスティン・ホフマンの「キング」・・・彼の顔もキャラクターも、暗黒街の大物にはまるで見えません!
それからやっぱり500万ドルをせしめようとするプランの杜撰さ・・・加えてうまく行くハズがないと誰もが思えるプランにも関わらずとんとん拍子に進んでしまう展開、これは余りに強引過ぎると言わざるを得ないでしょう。

そんな小さな綻びくらい、見逃してやればいいじゃないかと言われればおっしゃるとーりですが、
これが作品をB級臭くしてしまう要因になってしまうとぴよは思うし・・・それが作品にとって最も大切な事だと思うんだ。







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2004年01月27日(火) ドラッグストア・ガール

監督:本木克英
出演:田中麗奈
    柄本 明
    三宅裕司、他
オススメ度:☆☆☆☆


【あらすじ】
薬科大学に通いラクロス部で頑張る大学3年の大林恵子。ある日同棲中の彼氏の浮気を知って、ショックの余り電車に飛び乗り見知らぬ東京郊外の駅に降り立った――寂れた商店街で一際輝くネオンに吸い寄せられて行った先には翌日にOPENを控えた大型ドラッグストアがあり、勢いでそこのバイトが決まってしまった。一方大型ドラッグストアの開店に戦々恐々の地元商店主のオヤジ達は、地元の坊主と謎の浮浪者らを誘い、商売敵を襲撃しようと企んでいたのだが、恵子を見た途端に彼女の虜になってしまった。何とか恵子と仲良くなりたいオヤジ達はラクロスを始めるのだが・・・


【感想】
「釣りバカ日誌」シリーズの監督を手掛けるなど、一貫してコメディを撮り続ける本木克英監督の最新作は、笑顔がキュートな田中麗奈ちゃんを主演に据え、脚本は破竹の勢いの売れっ子脚本家・宮藤官九郎という豪華なメンバー。

田中麗奈ちゃんだけが一際輝く存在で、彼女の周りを取り囲むのは一癖も二癖もあるベテランおやじ俳優陣。
このアンバランスな取り合わせが実に絶妙で、とにかく映画冒頭から笑って笑って笑い転げる!
コメディには初挑戦だという麗奈ちゃんですが、おやじチームとのコントラストも見事にハマり、彼女自身もすっかり役になり切って、真面目なんだかすっとぼけてんだか訳のわからない魅力的なキャラクターを作ってます。

この映画は麗奈ちゃんが主役という事になってますが、実際はおやじ達の話ですね。
このおやじ達の会話が、とにかく楽しくて楽しくて仕方ない。イマドキの若者言葉の発音に一々言い直したり、とぼけた間のツッコミが入ったり、大真面目に下らない計画を相談し合う姿に笑えないヤツは絶対にいない!
特にぴよのお気に入りキャラは、常にインディアンスタイルのホームレス・ジェロニモ(ネーミングセンスも冴えてる!)
彼のキャラクターを思い付いたクドカンは天才だよ!スゴ過ぎるキャラクター!!

他にも暗い過去を持つ薬剤師役の余貴美子、その余りにキワモノなキャラクター振りに、映画かかなり進むまで誰が演じてるのか気付かなかったよ!更に柄本明が演じる鍋島(薬局経営)の息子で、恵子の大学の先輩役が荒川良々ってのはどーなのよ!?ここまでキワモノの配役は卑怯だってば!(^_^;)

話はおやじ達と女子大生の交流に寂れた郊外の町おこしを絡め、実に澱みなくいいテンポで進んで行くんだけど、映画の途中で突然この爆笑ムードが一気に色を変える部分があって、それがぴよには少々不満だった。

以下、ネタバレに付き(オチには関係ありませんが展開上重要かもしれない)ドラッグする方は心して下さい。
ラクロスの試合中に、メインキャラのおやじの1人が心臓発作(脳溢血なのか?)でこの世を去る。
正直言ってこれはやり過ぎだったんじゃないだろうか?
映画を見ていて、それまでどのシーンでも大笑いしていた観客が「え・・・?」と、一様に怪訝な顔になりましたもの。
あそこまでしなくても、例えば【心臓発作を起こし、一命を取り留めたものの入院を余儀なくされた】程度のソフトな展開でも充分だったんじゃないだろーか?

後、アメリカからやって来たチームとの親善試合(果し合いだな、アレは)のシーンも少々ダレた。
もう少しあのシーンはタイトでも、全然映画の面白味を損ねるモノではなかったと思う。


と、ちょっと辛口批評しましたが、この映画はかなり面白いです!
特に中高年の方には大ウケ間違いなしだと思う!勿論若い人が見ても絶対に笑えますよ♪
ただ・・・この映画を中高年のオジサマがどれくらい見てくれるんだろう?(^_^;)

たとえオジサマが見ても楽しめる映画を作っても(それも本当に面白いのに)、田中麗奈ちゃんもロクに知らないオジサマ達にうまくアピールする方法がなければ、目に触れる事無く葬り去られてしまう。

それが1番勿体無いと思うのだ。世のオジサマ達よ、たまには映画館に足を運びましょうよ!






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2004年01月26日(月) シティ・オブ・ゴッド

監督:フェルナンド・メイレレス
出演:公式HPに出演者のクレジットなし
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
ブラジル・リオデジャネイロ郊外に「神の町(シティ・オブ・ゴッド)」と呼ばれるファヴェーラ(スラム街)がある。
1960年代〜80年代初頭にかけて、この町を牛耳って来た3代に渡る少年ギャング達の歴史と軌跡を、初代少年ギャングの1人マヘクの弟・ブスカベの視点を通し描き出すサバイバル・オデッセイ。


【感想】
パウロ・リンス氏の同名小説の映画化。リオ出身の氏は、実際11歳からファヴェーラ(大都市の貧民街・スラム)に移住し、自分の目でシティ・オブ・ゴッドを見て来た生き証人。今現在も故郷のファヴェーラに住んでいるんだそーだ。

話は、カメラマンを夢見るこの町では至極真っ当な少年・ブスカベ君の独白形式で進んで行く。
ブスカベ君が目にしたシティ・オブ・ゴッドの変遷を、60年代から80年代までそれぞれの時代を牛耳って来た少年達にスポットを当てて、彼らの様子と彼らに絡んだ少年達と、そして「神の町」の様子を時代毎に見せている。

すんごいリアルで、すんごい迫力で、すんごい荒廃して、すんごい殺伐とした話なのに、それを感じさせないと言うか。
映画の作りが非常に手が込んでて・・・例えば画面の色合い1つ取っても非常に作りこまれた映像ですし、カメラワークもBGMのチョイスもスタイリッシュでオシャレなんだよね。まるでラテン音楽のビデオクリップを見てるみたいな軽妙さと言うのか。
変な言い方だけど、相当殺伐としてるハズなのに「オシャレでカッコいい」って思えちゃう。

映画に出演してる少年達が実に活き活きとしてて・・・このボク達、全てスラム街でオーディションしてかき集めた素人お子様達ばかりなんだそーだが、どいつもこいつも全然演技臭さがなくて、「これが素人の演技なのか?これって実は台本がなくて、そのままの生活を撮らせてくれって言われて見せてくれてるん?」と思える程のリアルな様子でした。

それこそオムツ取れたと思ったらもう拳銃握ってマリファナ吸ってる、みたいな状態で。(笑)
ちょっと気に入らなかったら殺しちゃうし、ちょっとお金欲しかったら強盗しちゃうし、日本だったらいくら少年犯罪が進んでもさすがにここまでは行かないだろう・・・って感じしますけど、日本の少年犯罪を犯すよーなヤツらと根本的に違うのは「目」かな、と思ったのよね。

神の町に住む少年達の「目」が、キラキラしててすっごくキレイなんだ。
マリファナ売りさばいて、人なんかジャンジャン殺しまくっておいて「目がキレイ」もクソもないって言われるとそーなんだけど、何かとてつもない「生きる力」を感じさせるのよ。
彼らの殺し合いに「ほとばしるエネルギー」と「貪欲なまでの生命力」を感じさせるのよ。

貧困にあえぎ、都市から見放された掃き溜めのような町で育った彼らの「生きる」という事への飽くなき執念と、大金を手にしてこの町の頭を取るんだ!という貪欲なまでの欲望が、あのキラキラした目に繋がるんだとしたら・・・
今の日本の子供に、「生きる力」は既に蒸発してなくなっているんじゃないだろうか、とすら思ってしまいましたよ。

正直言うと、もっと泥臭い作りにしてもよかったんじゃないかと思う。
今も尚、ファベーラではこの映画程ヒドくないにしろ、似たり寄ったりの状況が続いてるらしいですから・・・ここまでオシャレな作りだと、見た側も軽〜く受け止めちゃうんだよね。(^_^;)

この映画が事実を元にしているのではなく、単なるフィクションだったらこのままでもよかったんですけど。





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2004年01月22日(木) 赤い月

監督:降旗康男
出演:常盤貴子
    伊勢谷友介
    香川照之、他
オススメ度:☆☆☆−


【あらすじ】
1945年8月、ソ連軍の満州侵攻が始まった――その10年前。森田波子は夫と共に満州・牡丹江に渡り、「森田酒造」を満州有数の造り酒屋に育て上げ、栄華を極めていた。3人の子を持ちながらもかつての恋人・大杉との再会に胸ときめかせ、関東軍秘密情報機関の諜報員・氷室に密かに想いを寄せる奔放な女だった。
ところが長男出兵に加え夫の留守中、ソ連軍が満州に攻め込み森田酒造は崩壊。波子は2人の子供を抱え軍用列車にもぐりこむと、夫の行く先である哈爾浜へ向かったのだが・・・


【感想】
なかにし礼氏の同名小説の映画化。
作品は氏の幼少時代と氏のご母堂が歩んだ激動の時代を表現した、私小説的なモノなのだそーだ。

まず、非常に手の込んだ映像に目を奪われる。
あの時代の満州をリアルに表現する為(さもあの時代に撮影されたかのような錯覚に陥らせようという演出か?)、わざとフィルムが劣化したかのように微妙に色のトーンを落として抜いてある。
随所にモノクロ映像も差込みながら、劣化したかのような色合いの中に際出させたいモノの色だけを鮮やかに見せるという趣向を凝らしていて、なかなか面白いと思った。
それは波子の真っ赤なドレスだったり、木立の緑だったり、燦然と輝くヒマワリ畑だったり・・・

また、SARSの影響で撮影が延びてしまい、本来なら昨年5月で廃止される予定だった蒸気機関車を、中国政府に掛け合って9月まで運営延長してもらって撮影されたという事で、汽車のシーンは非常に迫力があった。
壮大な中国大陸。燃えるような夕日が照らし出す枯木立。美しい時代絵巻には、ぴよ高評価です♪

彼女の「生きる」という事に執着するスタンスは理解出来るし、共感も覚えます。
「お上の為に命を捨てる事は美徳だ」と誰もが口にする時代、我が子の出征の際に「どうして我が子を戦地にやるのに万歳なんて出来るか!」と、当たり前の事(でも誰も口に出来ない事)を堂々と叫ぶ波子。
生きていればこその人生だ!と、一貫したスタンスで恥も外聞も捨てて生に執着する生き様。
今の時代なら誰もがそう思っても、この時代にこのスタンスで生きた女性というのはスゴかったと思う。

が。(←ホントにこのパターン、飽きたよネ。苦笑)

「波子」という女が、ぴよには「ただの好色」にしか見えなかった。(いきなりコレだ)

だって、ダンナにお膳立てしてもらって昔の男とチチクリ合って(こらこら)
更に若い美男子見つけて色めき立っちゃって、挙句自分の男でもないのにソイツの恋人(ソ連人)に勝手に嫉妬して「あのソ連人、スパイでっせ!」と密告文を送り付け(そのソ連人の処刑を恋仲の男がするというオチまで付く)

ダンナが死んだと聞かされて間もないのに、かつて仲を引き裂いてやった美男子君(彼は恋人を処刑した事がきっかけでアヘン中毒になっちゃってた。あーあ)を引き取って、子供そっちのけでセックスに興じ(苦笑)
エッチしてる所を子供に見られて、子供が落胆して自殺しようとしたら「生きるためには愛し合う人が必要なのよ!」とウソぶく大胆不敵さと言ったら・・・

ラストで伊勢谷クン演じる氷室に「アナタの帰りを待つわ♪これからはそれが私の生きる道よ♪」と、潤んだ目で語る波子を見て思わず「アホか。お前どーせ日本に戻る引揚げ船の中で次の男くわえ込むやろ」と思っちまったぴよですが(爆)

大体からして、常盤貴子ちゃんが波子を演じるのにはムリがあったよーな気がすんだよね。
波子には大学卒業した息子がいるんですぜ?一体波子はいつ第一子を産んだんだ?ヤンママか?(爆)
まあ・・年相応に枯れたおばはんだと、伊勢谷クンとロマンスに興じるのにムリがあるって事なのかもしんないけど。
常盤貴子ちゃんはとっても可愛いと思うけど、波子を演じるには若過ぎたような気がするね。

それにしても、伊勢谷クン、カッコいい!
今まで特に興味なかったんだけど、この映画の伊勢谷クンめちゃめちゃカッコ良かった♪

最後に・・・この映画のタイトル「赤い月」の意味が今1つ判らなかった。
「赤い月」という言葉にどういうメッセージが込められているのか、映画では表現し切れてない感じする。
赤い月って、「中国」っていう意味?

中国の国旗って赤に月と星だし・・・そ、それだけな訳ないよねぇ?(^_^;)






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2004年01月21日(水) 嗤(わら)う伊右衛門

監督:蜷川幸雄
出演:唐沢寿明
    小 雪
    香川照之、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
生まれてから1度も笑った事のない貧乏浪人・伊右衛門は、名家「民谷家」の婿入りの話を持ちかけられてこの家の1人娘・岩と夫婦になった。岩は数年前に患った悪い病のせいで顔の右に醜い痕が残っていた。最初の内はお互いの誠意が伝わらず口論の絶えない2人だったが、次第に打ち解けて仲睦まじい夫婦になる。
ところが伊右衛門の上司でかつて岩を執拗に求めていた伊東喜兵衛は、2人の様子が面白くない。伊東は岩に嘘を吹き込み、2人を別れさせた後に伊右衛門に自分の愛人をあてがったのだ。


【感想】
京極夏彦氏の同名小説の映画化。古典的名作「四谷怪談」を、京極氏独自の斬新な視点で究極の愛の物語に造作したもの。氏の作品は結構好きで何冊か読んでるんだけど、この作品は未読です。噂では京極氏にしてはこの作品はボリュームが少ないそーなので、機会があったら是非原作も読んでみたいっすね。

無表情で寡黙な男・伊右衛門を、表情豊かで多彩な表現が魅力の唐沢寿明氏がチャレンジしている。
彼の魅力はその豊かな表現力にあるとぴよは常々思っていたので、このキャスティングはどうだろうなぁ〜と思ってたんだけど、何が何が!この難しい役ドコロを非常に上手に料理しています。

この作品は出演している役者が非常に芸達者が多く、ぴよ大好き♪椎名桔平さんは実に憎たらしい男を見事に演じ、映画を見ていて思わず「誰でもない、このぴよ様がぶっ殺してやろーか」と思った程。(をい)
特にぴよが評価したいのが、伊東喜平衛に妹を手篭めにされた事を恨んでいる男・直助を演じた池内博之クン。
彼は多少青臭いものの、なかなかいい演技をする役者さんだなぁと常々思ってたけど、この作品ではその青臭さも感じさせず、彼の鬼気迫る迫真の演技には惜しげない拍手を送りたいですネ♪

1番演技力に首を傾げたくなる「小雪ちゃん」ですが・・・これが、なかなかいいんですわ!
ラスト・サムライの時よりも断然いい。ラスト・サムライの時はトム・クルーズと共演という事で緊張して演技が硬かったのか、それとも逆にトムと共演した事で度胸と自信が付いたのか、今作品の小雪ちゃんは実に良かった!

舞台演出に長けた蜷川監督の、独特のこだわりを随所に感じさせるセットと演出は必見。
伊東喜平衛の屋敷のセットには特にそれを強く感じましたね。部屋のど真ん中に堂々とそびえる色鮮やかな紅葉、伊東の冷酷さを際立たせる抑え気味の色調の衣装、そして無機質で冷ややかな感じを持たせる石が敷き詰められた庭。
後、伊右衛門と蚊帳の組み合わせ方が、1つ距離を置きながらも内に秘めた情熱を思わせて絶妙だった。

少し残念に思うのは、伊右衛門とお岩夫婦が深い絆で結ばれていくくだりが、少し物足りなかったよーな気が?
お岩が伊右衛門を慕っているというのはよく判ったけど、伊右衛門がこれ程までにお岩に惚れていたとは、あの喧嘩のシーン等を見る限りでは到底思えなかったんだけど。(後の展開ではそれを充分表現出来ていたとは思うけど)

京極氏の作品は「幻想的」という言葉でくくったらそれまでですが、文章を読んだだけでも軽い吐き気をもよおす程のエグい表現が多々あって(無茶苦茶言ってますぅ?)、これを映像化したらどーなるんぢゃい!と少々心配でしたが、そこは蜷川監督の業師たるトコロ♪かなりリアルでエグいシーンもありますが、たぶん原作よりも随分ソフトに、そして美しく表現していたんじゃないかと思いますわ。

役者の人選もいいし、舞台効果(蜷川監督だけについこういう表現になっちゃうね)も申し分ない。
話もなかなかスマートにまとまっていて「良い出来の作品」と言っていいでしょう。






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2004年01月20日(火) サロメ

監督:カルロス・サウラ
出演:アイーダ・ゴメス
    ペレ・アルキュリエ
    パコ・モラ、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
伝説のフラメンコ・ダンサー、アイーダ・ゴメスはオスカー・ワイルドの傑作「サロメ」を、フラメンコとバレエを融合させた新しい創作舞台として蘇らせようとしていた。その舞台を演出し、更に映画を撮るために、カルロス監督は音楽監督や衣装担当者、更に出演するダンサー達と綿密な打ち合わせを何度も交わし、1つ1つ「サロメ」のイメージが生まれて行く・・・


【感想】
「フラメンコを語らせたら彼の右に出る者はいない」と言わしめた、スペインが生んだ巨匠カルロス・サウラ監督と、元スペイン国立バレエ団芸術監督にして伝説のフラメンコ・ダンサー、アイーダ・ゴメス。
天才2人がタッグを組み、舞台と映画を融合させて虚々実々の摩訶不思議な世界を作り出した一作。

元々は、アイーダ・ゴメスからフラメンコとバレエを融合させた新作舞台『サロメ』の演出を依頼されたカルロス・サウラ監督から、「どーせならこの舞台の創造過程をドキュメンタリータッチの映画にしたい」という提案があり、結果的に舞台「サロメ」と映画「サロメ」が同時進行で誕生したんだそーだ。

だから劇中劇としてだけにこの舞台が作られたとしたら何という贅沢なんだろう・・・つーか勿体無い!と思っていたら、ちゃんと新作舞台として「サロメ」は実在するのですわ。
2004年2.27(金)〜3.10(水)まで東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで公演があります。
・・・ええなぁ〜!東京の人は。この映画見たら絶対に生・舞台も見たくなりますよ!!

映画前半、舞台「サロメ」を作り上げる為にゴメス監督は綿密な打ち合わせを様々なスタッフ、ダンサー達とする。
ダンサー達は肉体を酷使し、極限まで絞り込んだ美しい肢体を躍動させ、そしてこの新しい舞台に命を吹き込む為に、正に血の滲むようなレッスンを繰り返し繰り返し続ける・・・

と、思って見てたら、このシーンはフィクションらしいと公式HPを見て判った。愕然!!
いや・・・全くのフィクションって訳でもないんでしょうけどね。少なくともこの映画中にドキュメンタリーで撮影されているよーに見せかけているシーン(監督さんが色んな人達と打ち合わせしているシーン)、この映画中に出て来る監督さんはカルロス・サウラ監督ご本人ではなく、役者さんが監督役を演じているんだそーですよ。
してやられたわー!てっきりサウラ監督だとばっかり思って見てたのにぃーっ!!

実際のレッスンシーンも撮影されているんだろうけど、その中に挿入されている様々な細かいシーンは、この映画用に別で撮り直ししているって事らしいんだけど・・・何が現実で何が虚構の世界なのか、今もって判らないですよ。

ドキュメンタリーに見せて、実はドキュメンタリーではない。
でも「サロメ」の舞台は存在し、踊り手達は確かにそこに息づいている。
どこまでが台本のないリアルな話で、どこからが計算された演出なのか?
虚と実が入り混じり、溶け合い、そして映画の世界に、舞台の中に、観客はいつの間にか入り込んでいる。

映画後半は、実際の新作舞台「サロメ」の様子を、映画用に演出とカット割りしてそのまま見せてくれるんだけど・・・実際の舞台を見に行ったら全然違う作りの作品になってるかもしんないよね。(笑)

とにかくその舞台シーンを見るまでに、観客はたっぷりと監督やダンサー、この舞台に携わった人達の、この舞台に対する思い入れや情熱をレクチャーされている訳ですわ。見ていて面白くないハズがありません。
サロメの燃えたぎるヨハネへの愛憎。聖者ヨハネの神秘的で凛とした出で立ち。ヘデロ王の苦悩――言葉を一つも交わさなくとも、その研ぎ澄まされた美しい肉体を躍動させる事によって、能弁に激しく官能的に見る者を魅了してくれる。

あ〜・・・実際の舞台もやっぱり見てみたくなるよぉ〜!






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2004年01月19日(月) ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

監督:トーマス・ヤーン
出演:ティル・シュヴァイガー
    ヤン・ヨーゼフ・リーファース
    モーリッツ・ブライプトロイ、他
オススメ度:☆☆☆☆


【あらすじ】
脳腫瘍のマーティンと骨髄腫のルディ。共に末期で余命幾許もないと医師に宣告され、末期病棟の同室に入院して来た。病室に隠してあったテキーラを見つけて2人で飲んでいる内に「天国ではみんな海の話をするのだ。海を見た事のないヤツは仲間外れになってしまう」という話題になった。ところがルディは海を見た事がなかったのだ―
死ぬ前に海を見に行こうと病院の駐車場から車を盗んで「人生最後の冒険」に出かけたマーティンとルディ、ところがこの車はギャングの所有車で、トランクには大金が入っていたのだ。


【感想】
1997年ドイツ作品。日本での公開は1999年だった模様?公式HPを見る限り名古屋では公開していなかったようです。
タイトルの「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア -Knockin'n on Heaven's Door-」はロックの神様ボブ・デュランが1973年に発表した同名タイトルの楽曲から取っているようです。もちろん映画のラストを飾るナンバーはこの曲。
ただしボブ本人の声ではなく、ドイツの人気バンド「SELIG(ゼーリッヒ)」がカバーしているそうです。

話は末期ガン患者2人によるロードムービー系+アクション&ギャグの、最終的にはヒューマンに落ち着くといったトコロか・・・って書くと何やらごちゃごちゃして奇妙な感じがしますが。

これがかなり面白いです!

まず主役の2人、マーティンとルディのでこぼこコンビが非常に息が合っている。
マッチョで粗暴なマーティンと、線が細くナーバスなルディ。お互い決して相容れない、本来なら絶対に仲良くなれそうにもない2人が、死を目前にして破れかぶれの旅に出る事によって、次第に奇妙な連帯感と友情を交わす。
ここの辺りの空気感が絶妙で、見ている観客も映画が進むにつれて2人に妙な愛着が湧いて来るから不思議です。

脇役のマヌケなギャング2人組のキャラクターも気が利いているし、マーティンとルディの旅に絡む全てのキャラクターが、実に活き活きとしていて彼らの「最後の冒険」をより引き立ててくれている。

ギャングと丁々発止したり、警察に囲まれて殺伐とするハズのシーン・・・ハラハラさせられてもどんな窮地に立たされてもコイツらだったら大丈夫♪みたいな妙な安心感とほのぼの感が漂い、観客を裏切らないマヌケな逃げっぷりも何だかスタイリッシュでカッコいい♪

映画全編を通してハリウッド映画の影響を色濃く受けていますが、この作品はそれを恥かしいなんて思っていない。むしろハリウッド映画のいい部分はじゃんじゃんパクってやれ!という前向きな姿勢でどんどん取り入れているのが非常に好感が持てます。
どうも最近「ハリウッド映画を礼賛するよーなヤツは映画を判ってない」的風潮を感じますが、この監督さんはインタビューで堂々と「アメリカ映画大好き!かっぱらえるものは全部かっぱらってやるんだ♪」と宣言しちゃってます。
監督さんの柔軟な姿勢が、この映画を非常に楽しいモノに出来た理由の一つになっているだろうと思う。
本国でもこの点は評価が高く、この映画によって今まで「格調高く芸術性は高いが面白味に今1つ欠ける」というイメージが先行していたドイツ映画に、「娯楽」という新しい流れが作られたと言われているそーだ。

散々楽しませてくれて、最後はやっぱりホロリと来てしまう。
マーティンとルディのでこぼこコンビ、2人のシルエットが切なく、甘く、そして見る者をひたひたと癒す・・・

生命は海から生まれ、そして海に帰る――そんな言葉を癒された心で実感出来る秀作。






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2004年01月18日(日) 青いパパイヤの香り

監督:トラン・アン・ユン
出演:リュ・マン・サン
    トラン・ヌー・イェン・ケー
    ヴォン・ホア・ホイ、他
オススメ度:☆+


【あらすじ】
1951年サイゴン。まだ平和なこの街で生地屋を営む一家に奉公人としてやって来た10歳のムイは、この家で料理や家事全般を1から仕込まれて真面目に働いていた。奉公先は放蕩者の主人、細々と商売をして生計を支える奥さん、3人の息子、そして嫁に辛く当たる主人の母がいる一家だったが、生きていればムイと同じ年になるハズの娘・トーの死がこの一家に暗い影を落としていた。長男が連れて来た友人クェンに密かな憧れを抱くムイ。
それから10年後、長男が結婚した事で暇を出されたムイは、子供の頃から憧れていたクェンの家に奉公に行くのだが・・・


【感想】
憧れの国・ベトナム。ベトナムの映画って見た事なかったなぁ〜と思って借りてみました。ちなみにDVD化されてません。それどころかネットで調べたらこのビデオすら絶盤になってました(苦笑)
今作品はカンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞し、更にアカデミー賞外国語映画賞にノミネートまでされています。ちなみに製作年は1993年だからもう11年も前の映画なのさ。つーか、そんな大そうな賞まで取ったのに絶盤なのかよ(^_^;)

ベトナムの映画だー♪と思って見てたんだけど、実際に撮影されているのはフランスで、ベトナムでは一切ロケはしていないそうです。サイゴンの町並みも全てパリ郊外の、しかも建物の中でセット組んで撮影されてるそーです・・・なぁんだ。
監督さんも出演者も全てベトナム系フランス人。ベトナム戦争時にフランスに亡命したベトナム人が沢山いたそうで、そんな人達によって古き良きベトナムを再現した映画、と考えればいいのでしょう。

てな訳で、見ててさっぱりとんちんかんです。(爆)
ベトナム人が作ったベトナムの映画と言うよりも、西欧人が見た「良きベトナム」のイメージというのが先行してます。
建物や小道具が、一家の生活水準からかけ離れた妙にゴージャスでコ洒落たモノだったり、金持ちの家はALL西欧式の豪奢な調度品にズラズラとアジアン陶磁器や仏像の頭が並べてあったり、一体全体ここは何処の国なんだ!?と首を傾げたくなるよーなおうちなんですが・・・イメージとしては「キレイなベトナム」なので悪くはないんですけどね(苦笑)

それより何より、話がまるで訳わかんなかった!(痛い!痛過ぎる!!)

たぶんこの映画は主人公・ムイの半生を見せている映画なんだろう?と思うんだけど、色んなネタがバラバラに提示されて、しかもどのネタもまとまらずに放り出されたまんまになって終わってるってのはどーなんだい?

ムイの奉公先の奥さんは、亡くした一人娘をムイに重ね合わせて可愛がるという設定ですが、それも中途半端ですし。
一人娘を亡くしたのは自分の放蕩のせいだと心に傷を持ってるハズの主人は、有り金持って愛人宅に失踪。挙句帰って来たと思ったらコロリとお亡くなりになるというオマケ付きで、一体全体アンタは何考えてたんだい?とツッコミどころ満載。
動物(虫)虐待が趣味の次男と屁コキ虫の3男って・・・なんなんだYO!この家族はYO!!(爆)

また、ベトナムの雰囲気を出したかった?のか、意味不明なBGMのチョイス。
西欧人が想像するアジア〜ンな音楽はコレなのでしょうか・・・本来なら心華やぐシーンや官能的(であろう)シーンで、何故かおどろおどろしい「本当にあった怖い話」で使われそうな音楽がドロ〜ンと流れて来る(苦笑)

映画全般通して絵も暗過ぎて、これで後ろに稲川淳二が顎下から懐中電灯照らして立ってたら、間違いなく別のジャンルの映画だと勘違いする事間違いなし!の恐怖映像状態になってるんですけどー!!

何かが完全に間違ってる・・・が、逆にツッコミながら見てると案外楽しめちゃうから映画って判らないんだな(をい)







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2004年01月17日(土) ハリウッド的殺人事件

監督:ロン・シェルトン
出演:ハリソン・フォード
    ジョシュ・ハートネット
    レナ・オリン、他
オススメ度:☆☆−


【あらすじ】
ショービズの都・ハリウッドで今日もハリウッドらしい殺人事件が発生。超満員のライブ会場で、人気ラップ・バンドのメンバー全員が射殺されたのだ。事件を担当するのは新米刑事のK.C.コールデンとベテラン刑事ジョー・ギャヴィランのコンビ。副業にヨガのインストラクターをしながら実は俳優志望のK.Cと、長年の仕事の重圧と2度の離婚の心労に耐えかねて、今や夢中になれるのは副業の不動産業くらいになってしまったジョー。事件の真相に果たして迫れるのか!?


【感想】
最もハリウッドらしい名優の1人ハリソン・フォードと、近年ハリウッドでめきめき頭角を現し始め、これから正に旬を迎える(であろう)ジョシュ・ハートネットという、新旧ハリウッドセレブの夢の共演。

予告編見た時から「かなり微妙〜な感じだよなぁ」とは思ってたんだよね。
大体タイトルからしてB級臭がプンプンするぢゃないですか。このタイトル、ハリソン・フォード+ジョシュ・ハートネットのクレジットがなかったらたぶん全国一斉ロードショーにはならなかった類ですわよ。(^_^;)

でね、
正直申し上げて、この作品に対する感想を書くのは、かなり映画関係者に失礼になってしまうかと思います。
それと言うのも・・・アタクシ、余りに映画序盤から退屈で退屈で仕方なくて


半分くらい寝ちゃいました!(苦笑)


言い訳させてもらうとね、(って誰も言い訳なんて聞きたかぁ〜ないだろうけど)
この日、風邪引いてて鼻ズルだったんですよ・・・だから映画見る前にたっぷり飯食って、更に鼻炎薬もダメ押しに飲んでおいたんだよね。これがいけなかったのかねぇ。

でも、今まで完徹明けで一睡もしないでそのまま夜映画見た事もあったけど、映画見てて眠たくなるなんて本当になかったんだよなぁ。実際、朝から鼻炎薬は飲んでたけど、この映画の前に見た「ジョゼと虎と魚達(昨日感想UPしてあるヤツですわ)」見てた時は、全く眠たくなんてならなかったし。

要するに、それくらいこの映画の展開が緩くて退屈で凡庸だったんではないか、と。(←結局言い訳ですけどね。えぇ)

映画全部をきちんと見てないので何とも言えないんだけど、少なくともジョシュ・ハートネット演じる若手新米刑事K.C.がハリウッド俳優を夢見て転職を考えているという設定は、まるで必要性を感じなかったよーな気がするんだな。
もっと言えばヨガのインストラクターである必要もないよーな気がする。難癖つけられて(冤罪的内部告発ってヤツか)取り調べを受けてる時に、ヨガのポーズを取り続けて誤魔化しているシーン以外に利用されてなかったよーな感じするし。

ハリソン・フォードのキャラクターの肉付けの方が丁寧だったね。
彼の場合は副業の不動産業に夢中だというのが映画の展開中で割と効果的に使われていて、シリアスであるべき役ドコロを、うまくコミカルに落としてあったような感じは受けましたから。

ハリウッド番付で言ったら当然だけどハリソン・フォードの方がジョシュより格上ですから、仕方ないと言ったらそれまでかもしれませんが、ジョシュの扱い方をもうちょっと考えて欲しかったような気がするのよね。
K.C.は女子にモテモテ君という設定だったハズなのに、ジョシュのラブ・ロマンスシーンは、少なくともぴよが起きて見ている間にはありませんでした(すんごいモテモテシーンがあったなら教えて下さい)
モテモテ君にはロクなラブ・ロマンスがないのに、何故かバツ2でくたびれたオヤジ役のハリソン・フォードには濃厚なラブシーン付きって・・・そりゃ、あまりにジョシュが可哀相だろ。(笑)

アクションも(ぴよが見ていた範囲では)特筆すべき点はないし、オチも磐石って言えば磐石だけど、特に驚くモノもなければスッキリするという程の爽快感もなく・・・

寝ちまったぴよがやっぱり悪いんですかねぇ?(涙)








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2004年01月16日(金) ジョゼと虎と魚たち

監督:犬童一心
出演:妻夫木聡
    池脇千鶴
    新屋英子、他
オススメ度:☆☆☆☆+


【あらすじ】
恒夫は雀荘でアルバイトをしながら1人暮らしをしている大学生。バイト先の雀荘で最近ちょっとした話題になっているのが、早朝乳母車を押しながら歩いているあるばあさんの事だ。客達は「あのばあさんはヤクザの運び屋で、乳母車の中には大金かヤクが入っている」等と口々に勝手な事を言っている。
ある朝恒夫は噂のばあさんと乳母車に遭遇。何と乳母車の中には足の不自由なばあさんの孫が載っていたのだ。自らをサガンの小説の登場人物の名前「ジョゼ」と名乗る少女の不思議な性格に、興味惹かれる恒夫だったが・・・


【感想】
田辺聖子氏の同名小説の映画化。田辺氏の小説って学生時代にすこーし読んだ程度でほとんど知りません。源氏物語を判り易く小説にしている人?くらいの知識(こんなの知識でも何でもありませんわね。苦笑)

イマドキのどこにでもいる大学生・恒夫を、妻夫木クンが好演。
彼の活躍は目覚しいものがありますが(ぴよも彼の出演映画は何本か見ている)、正直言って特に「こ、コイツはすんげー演技がウマい!」と関心する程のモノを感じた事は今までなかったですネ。
「ちょっと可愛い顔してるけど、どこにでもいそーなフツーの兄ちゃんぢゃん」ってのがぴよの今までの印象なんですが、今作品に限って言えば、この「フツーの兄ちゃん」な妻夫木クンだからこそピタリとハマっていたというトコロでしょう。

何より、この映画はヒロイン・ジョゼを演じた池脇千鶴ちゃんのキャラクター勝ちでしょう!
彼女の事もほとんど知りませんが(ジブリの失敗作品「猫の恩返し」の主人公の声をやった事くらいしか知らん)、彼女が作り出すキャラクターの雰囲気が実に良かった。

足が不自由でばあさんから「お前は壊れとるから」と、その存在すら隠される少女。
ばあさんと2人きりの生活のせいか、ばあさんそっくりのアケスケでぶっきらぼうな口調。
ばあさんがゴミ置き場から拾って来る本が唯一の友達。
――自分の体を判っているから1人でも生きていけると虚勢を張っていても、実は誰かに依存したい、誰かに支えて欲しいと心が叫ぶ、ジョゼの切ないまでの思いを、池脇千鶴ちゃんが見事に体当たりの演技で色鮮やかに見せてくれている。

小さなエピソードを繋いで、徐々に恒夫がジョゼに心動かして行く。ここの辺りすごく自然だし、恒夫がジョゼに段々惹かれて行くのを見ながら観客もやっぱりジョゼの魅力の虜になって行くんですわ。

この一つ一つのエピソードも何とも気が利いている。特にぴよがお気に入りなのはジョゼの子供時代―施設で出会った淋しい少年と親子関係を勝手に作り上げるくだり。ジョゼが勝手に息子呼ばわりする青年・幸治を若手俳優の新井浩文が演じているんだけど、彼のキャラもまた秀逸だったなぁ〜♪

ヒロインが身障者だからと言って、決してお涙頂戴な「身障者との麗しい恋愛」という作りにしていない。
多少の同情と多少の興味から入って、彼女の魅力を1つずつ見つけ、お互いを求め合う・・・ごく普通の青年がごく普通に恋をして、そしてごく普通に恋愛の壁にぶち当たる。その恋愛の壁は彼女が身障者だったからではないと思う。ただ彼女が余りに純粋過ぎたから。

恒夫の背中には、ジョゼの純粋な心は余りに荷が重過ぎたのだろう。
「車椅子を買おうよ」と提案する恒夫に「アンタが背負ってくれればそれでいい」と語り、恒夫の背中に寄り添うジョゼ。
それを聞いた恒夫の暗い目が全てを物語っているようで切なかった。

原作とどれくらいトーンが違うのか判らないけど、映画としてこの作品はパーフェクトに仕上がっていると思う。
切なくて儚い、若過ぎた青年時代の恋愛を瑞々しく表現した一作。オススメです!







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2004年01月15日(木) ラブストーリー

監督:クァク・ジョエン
出演:ソン・イェジン
    チョ・スンウ
    チョ・インソン、他
オススメ度:☆☆+


【あらすじ】
恋に悩む女子大生・ジヘは、ある日古ぼけた小箱を見つけた。そこには母が時折読み返しては涙していた、35年前の母の切ない恋の逢瀬を綴った書簡と日記が入っていた。若かりし頃、母は父ではなく父の友人と恋をしていたのだ――
身分違いや時代の波に翻弄され、結局叶わなかった母の初恋。だがその母の悲しい初恋の痕跡が、親友の恋人へ秘めた恋心を抱くジヘに、一つの奇跡を呼び起こす事になるのだった・・・


【感想】
一昨年「猟奇的な彼女(2003.1.24の感想を参照)」で爆発的ヒットを飛ばしたクァク・ジョエン監督の最新作。
「猟奇的〜」は、ぴよの中でもウルトラスーパーお気に入りの一作。DVDを買おうか今もまだ悩んでるんだけどぉ〜(笑)

さて、本作の話に戻しましょう。
主演のソン・イェジンちゃんは、この映画で第40回韓国アカデミー賞新人女優賞を受賞。更に日本でも今超話題のドラマ「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督によるTVドラマ・四季シリーズ「夏の香り」のヒロインにも抜擢されて、今韓国で1番ホットな女優さんになっているそーです。

他にも脇を固める俳優陣は、今韓国で話題のモデル出身の若手新人や人気実力若手俳優をふんだんに起用、これで韓国国内で何の反応もなければウソでしょー!状態の、正に鳴り物入りの一作と言っていいでしょう。
実際、初登場は4位だったものの、その後口コミでジワジワと人気を集め、最終的には並居る大作を押しのけて8週連続トップ10入りを果たし、200万人の観客を動員した大ヒットになったそーです。


が。 (←またこのパターンかよ)

ぴよにはどーもイケてなかったですわー(^_^;)


まず、上映時間が長過ぎる。
この作品、2時間9分もあるんですよ。恋愛モノで2時間越えって相当長いとぴよは思う。
必要のないエピソード、またはここまで細かく見せなくてもいいでしょー的エピソードが多過ぎる。

そして主要キャラクターに魅力がない。
「魅力がない」と言い切ってしまうのもどうかと思うけど、どうしても「猟奇的な彼女」と見比べてしまうんですよ。これはあの映画が好きだった人なら致し方のない事だと思うの。

この映画は、あくまでも現代の恋に悩む女子大生・ジヘの視点で描かれているものの、映画の核になるのは彼女の母親の初恋の話なのだ。母親の若かりし頃の恋の様子がどれだけ色鮮やかで、母親の娘時代がどれだけ愛すべきキャラクターだったか・・そしてその娘であるジヘのキャラクターが、どれだけその母親に肉薄しているかで、この映画の魅力は決定付けられると言っても過言ではないと思う。
ところが、この母親の娘時代と言い、娘のジヘと言い、まるで魅力を感じさせないのだ。

映画中、かなり笑わせてもらえるエピソードがいくつも登場するんだけど、それがヒロインのキャラの肉付けとして使われていないんだよね。これが1番痛かった。
笑えるポイントは全てヒロインの周りの出来事で、ヒロインはあくまでも楚々としてゆるぎがない。周囲からのアプローチに応えるしか脳のない恋愛ヒロインなんて、30年前の昼メロで既に使い尽くされて飽きちゃってますよぅ!ってな感じです。
(今日も吠えまくりか?苦笑)

先の展開もミエミエで新鮮味はないし、やたらに出演者達を泣かせて観客に共感させようとする「お涙頂戴」な作りも、すっかりこの手のネタにはスレ切ったぴよにはまるで通用しないんだYO!(をいをい)

ただ、決して悪くはない脚本だとは思う。
本筋の展開だけを考えると、決してそれ程酷評する作品ではないんですよ。
「猟奇的な彼女」がウケたのを意識し過ぎたのか?話の展開にまるで絡まない「ただ笑えるだけ」のエピソードを入れ込み過ぎたのが、逆にこの映画のトーンから浮いてしまったんじゃないかと思う。
ここは大胆に、思いっきりベタベタでウェットな恋愛映画にしちゃっても、この作品の色なら充分イケたと思うんだけど。

要するに「バランスが悪い」って事なんだよなぁ・・・でも、コレって結構大事な事だと思うのよネ。(^_^;)






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2004年01月14日(水) イン アメリカ 三つの小さな願いごと

監督:ジム・シェリダン
出演:サマンサ・モートン
    バディ・コンシダイン
    ジャイモン・フンスー、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
アイルランドからNYに移り住んだサリヴァン一家。役者志望のジョニーと妻のサラ、そして愛らしい2人の娘。貧乏な一家はマンハッタンの騒音に満ちたアパートに落ち着いたが、夫婦にはなかなか癒されずに超えられない辛い過去があった。それは2歳の時に階段から落ちて脳腫瘍でなくした息子・フランキーの死。
上の娘クリスティは今は亡き弟・フランキーの言葉を思い出す――「願いごとには願っていいことといけないことがある。そして、願えるのは三つだけ」――


【感想】
「マイ・レフトフット」「父の祈りを」等で知られる名匠ジム・シェリダンの新作。今作もアカデミー賞ノミネート確実との呼び声高い一作ですが・・・公開5日目にして劇場には10人観客がいませんでした。いいのか?こんなんで。(^_^;)

シェリダン監督自身がアイルランドからアメリカに移住している身で、しかも実の弟・フランキー(劇中にも名前を使用)を故国で脳腫瘍で亡くしている。移住後でのアメリカでの驚き、とまどい、新鮮な感動、そして身近な家族との辛い別れ・・・これらの実体験を元に、実の娘達(ナオミ&カーステン・シェリダン)と共に共同で脚本を書いている。

実体験に基いているだけあって、劇中のサリヴァン一家の様子がかなりリアルだったと思う。
アイルランドとアメリカ。双方英語を母国語とする国であるものの、生活習慣や宗教行事等に色々な違いがあるようです。これらの習慣の違いは日本人のぴよには馴染みがないので「ふーん。そーなのかぁ〜」くらいの気持ちで見てましたが、そういう小さな習慣の違いも移民して来た側にとっては新鮮な驚きだっただろうし、戸惑う事も多々あっただろう事はこの映画を見れば容易に想像が付きます。

2人の娘達も実にチャーミング♪
特に妹のアリエルを演じたエマ・ボルジャーちゃんの笑顔には、思わずこっちもにんまりしちゃう愛らしさ♪

また、一家に多大な影響を与える孤高のアーティスト・マテオの存在感は一際際立っていた。
妻のサラに横恋慕していると勘違いしたジョニーが「妻に恋したんだろう!?」と詰め寄った時に、「そうじゃない。君を愛しているんだ。君の美しい妻、君の愛らしい娘達、そして生ける者全てを愛しているんだ!」と慟哭するくだり、マテオの真摯な目には、ぴよも思わずジーンとしちゃったわ・・・

ただ、ちょっと説明不足過ぎる感は否めない。
まずどういう経緯でこのサリヴァン一家はアイルランドを後にしてNYに移住する事になったのか。
映画冒頭、娘のアリエルが「パパが失業したから」と語るくだりがあるが、役者志望のジョニーがアイルランドでどういう生活をしていたのか、何を生業にしていたのかの説明はない。

更に不幸にして亡くした息子・フランキーと家族の絆部分(特に両親の思い入れ)の説明が少し薄い感じがする。
息子の死因がトラウマになっているなら、もうすこし生前の息子とのエピソード等を差し入れて、観客に対して息子の存在の重要性をアピールするような演出にしても良かったような気もする。

全体的に淡々とエピソードを繋いでいる。
しかしながら1つ1つのエピソードはそれぞれ地味で穏やかでありながら、観客に静かに語りかけるように優しく家族の再生を見せて行く。
おませな姉・クリスティの3つの願い事は、どれも家族の希望と再生を予感させてくれる、ステキな願い事だった。
うまい脚本だと思うし、監督自身のこの作品に対する思い入れの深さを充分感じさせてくれる作りだったと思う。

秀作ながら、何かもう1つ足りない気持ちがするのはぴよだけでしょうか・・・





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2004年01月13日(火) アザー・ファイナル -THE OTHER FINAL-

監督:ヨハン・クレイマー
出演:ディニッシュ・チェトリ
    オットリー・ラボーデ
    パサン・ツェリン、他
オススメ度:☆☆☆☆


【あらすじ】
2002年6月30日、世界中が横浜国際総合競技場で熱狂の声を上げた――FIFAワールドカップサッカー決勝戦。正にその決勝戦の当日、アジアの小国ブータンで「もう1つの決勝戦」が行われていたのを知っている人は多いだろう。FIFA公式ランキング203ヶ国中、202位のブータンvs203位のモントセラトが戦う「世界一の最下位決定戦」だ。


【感想】
ぴよはとりたてて熱狂的なサッカーファンという訳ではありませんが、先の日韓同時開催のワールドカップはそりゃー盛り上がりましたよね。サッカー選手の名前なんてベッカムと中田くらいしか知らないよーなヤツ、サッカーのルールもロクに知らないヤツも、あの期間中はみんな「にわかサッカーおたく」になってTVにクギ付けになりましたね。

さて、
このワールドサッカーの決勝戦の当日にブータンで「世界最下位決定戦」が行われていた事くらいは、ぴよもTVニュースで見た記憶があります。
「世界最下位を決めるなんて面白いよね」ってんで、結構マスコミでも取り上げられましたが、ワールドカップが終わってしまえばそんな話題もうたかたの夢。みんなの興味は薄れ、その後を語る者は誰もいなかったと思う。

この映画は、あの「最下位決定戦」を追って、ブータンとモントセラトという2つの国のサッカー事情や国の事情、サッカーが彼ら小国の人達にもたらした物、そしてサッカーの意義、ワールドカップの意義までを問うドキュメンタリー作品。

ブータンはその国土のほとんどが高山という過酷な状況だし、モントセラトはカリブ海に浮かぶ小さな島で、火山活動により国土のほとんどが火山灰に覆われて大被害を被り、サッカースタジアムも潰れてしまったという気の毒な国だ。
そんな不遇な土地に住む彼らだが、サッカーに対する情熱は世界ランキング上位に名を連ねる大国と何ら遜色はない。

何ら遜色がないどころか、サッカーをプレイして国際試合に出場する事、そして他の国々の人達とプレイする事の素晴らしさと本当の意義を、最も理解している人達なのかもしれない。

彼らは私達に語りかける。サッカーをプレイするという事で、言葉の通じない国の人達と、どれだけ素晴らしいコミュニケーションが取れるかという事を。スポーツマンシップにのっとってプレイする事で、お互いがお互いの国を尊重し合い、お互いがどれだけ尊敬の念を持つ事が出来るかという事を。

覚えているだろうか?
あのワールドサッカー期間中、対戦相手国を激しく罵倒し合う醜い様がTVで映し出されて辟易した事を。
勝敗だけに踊らされて、したり顔でウンチクを垂れるエセ・サッカー評論家達の得意げな顔を。

ブータンもモントセラトも、そんな醜い所からかけ離れている。
「お互いを知り、お互いを尊敬し合う事が出来る素晴らしいスポーツ、それがサッカーなのだ」という、スポーツの最も崇高な原点だけを見つめて、お互いがフェアにプレイし、そしてお互いの肩を叩きあいながら相手のプレイを褒め称えるのだ。

映画中、ずっと真っ白なサッカーボールが画面を行き来する。
この真っ白なサッカーボールには2つの意味が込められているのだそーだ。
1つは、この「最下位決定戦」はスポンサー名やメーカー名まみれのユニフォームやスタジアムといった商業的側面の強い現代サッカーとは意を異なる、非営利なプロジェクトなんだ、という意思表明。
そしてもう1つは、スポーツの本質とは勝敗やレベル、高度な道具ではなく、純粋に楽しむ事が大切なんだ、という事。

決して上手とは言い難い彼らのプレイする姿に、誰もが胸を熱くする。
試合の最後、アナウンサーが「ブータンでもモントセラトでもない。これはサッカーの勝利だ!」と語るシーンは印象的。


この映画をサッカーを愛する全ての人、サッカーをプレイする全ての人、そしてFIFAに関わる全ての人に見てもらいたい。






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2004年01月09日(金) リクルート

監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アル・パチーノ
    コリン・ファレル
    ブリジット・モイナハン、他
オススメ度:☆☆☆☆+


【あらすじ】
ジェイムズ・クレイトンはM.I.T(マサチューセッツ工科大学)主席の学生。卒業を控えたある日、ジェイムズの元へC.I.Aのベテラン教官であり腕利きリクルーターのウォルター・バーグがやって来た。彼にC.I.A入りを勧められたジェイムズは最初は取り合わなかったものの、バーグから「父の死」に関する事を仄めかされて大きく心が動く。
―不審な事故死を遂げた父がC.I.Aに何か関係していたらしいのだ。父の死の真相を知りたいジェイムズは、C.I.Aの採用試験と面接を受け、見事突破して特別訓練基地《ファーム》でトレーニングをする事になったのだが・・・


【感想】
重鎮アル・パチーノと今ノリにノッてる若手最注目株コリン・ファレルの話題の競演作。
この映画、実は昨年夏にエジプト旅行した時に機内上映してたんだけど、日本語字幕も吹替えもなくて、(せめて英語字幕があったら・・・って、あったとしても訳わかんないんだけど。苦笑)涙を飲んで見送った一作だったのねん。

コリン・ファレル君、実はぴよはそんなに興味のある俳優さんじゃーないのね。つーか、あの眉毛何とかしろよ!(笑)
・・てな訳で、なかなかウマイ若手俳優さんだなぁと思っても、ビジュアル的に触手が動かないので、彼の出演作はほとんどチェックしてるハズなのにどーにもピンと来てなかったのですわ。

この偏見を改めざるを得ないです。はい。

アル・パチーノがウマイのは今更ここに書くまでもない。ぴよも大好きな役者さんだし、今作でもその溢れるカリスマ性と存在感と空気感を醸し出して、見事なまでにC.I.Aきっての腕利きリクルーターを演じています。

そのアル・パチーノに食らい付く・・・むしろアルを凌駕する程の熱演をコリン君がやってのけている!
彼は今後どんどん成長して、必ずオスカー俳優になるでしょう。うん。ぴよが保証しますYO!
(ぴよに保証されても嬉しくも何ともないでしょうけどな。ふはははは)

話は基本的に2段階に分かれている。
第1段階はジェイムズ青年がC.I.Aに見染められて訓練を受けるまで。
そして第2段階はC.I.Aの捜査官になってから。
第2段階に突入するといよいよ話が大きく動く・・・と言うか、第2段階に入って話がバタバターッと急展開して怒涛のラストまで一気に引っ張って行く。この展開が非常にスリリングで、本当に一瞬の気も抜けないのですわ。

もちろん第1段階のC.I.A捜査官になるまでの訓練の様子も実に興味深い。
今までC.I.Aを舞台にした映画はそれこそ星の数程あったと思うけど、C.I.Aのエージェントになるまでの「新人教育」を舞台に取り上げた作品はなかったと思う。
誰もが「どんなヤツがC.I.Aのエージェントになるんだろうなぁ」と1度は考えた事があると思うけど、実際にそれをネタにしようと誰もしなかったというのが今になってみれば驚きです。

この第1段階までの展開で、後の第2段階の展開に対する布石がふんだんになされている。特にアル・パチーノ演じるバーグのセリフは、後の種明かしをより効果的に楽しませる為に観客をリードしていく、実にウマイ作りになっていると思う。

黒幕云々のオチネタ・・・ここの部分は、ミステリーやサスペンスが好きな人なら途中で察しが付くでしょう。
察しが付くから面白くないのか?・・・いえいえ、決してそんな事はありませんヨ♪
そこに辿り着くまでのプロセス、出演者達の心理戦を見ている内に、観客達の心理すら嘲笑うかのように翻弄していく素晴らしい脚本になっていたと思う。
役者の演技もその脚本を裏切らない真に迫るモノがあった。

サスペンス好きを充分に楽しませてくれる、久々に大当たり映画に出会いましたわ♪






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2004年01月08日(木) 解夏 -げげ-

監督:磯村一路
出演:大沢たかお
    石田ゆり子
    富司純子、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
東京での教師生活、恋人の陽子を捨て、故郷・長崎に戻って来た隆之。彼は「ベーチェット病」という難病になり、いつか失明する運命にあったのだ。母親に自分の病気の事がなかなか告げられない隆之は悶々とし、失明の恐怖に日々苦悩する。
そこへ陽子が東京からやって来た。「私は隆之の目になりたい」とすがる陽子だったが・・・


【感想】
さだまさし氏原作の同名小説の映画化。前作「精霊流し」もそうですが、さだ氏の故郷・長崎を舞台に人間模様を綴る「ご当地映画」の王道です。ご当地映画とあって、長崎中の美しい風景を探し回ったんであろう・・・他地方の人が思い描く「長崎」のイメージを大切にした景色がこれでもか!と、ふんだんにスクリーンに出て来る。
この映画を見て、次回の旅行先を長崎に決める人も多いでしょう。・・・長崎観光協会は大喜びだネ♪(笑)

この映画を見る上でキーワードになるのはもちろんタイトルにもなっている「解夏(げげ)」という言葉。
映画中でもこの言葉の意味についての説明がありますが、「解夏」とは仏教用語。インドの修行僧が雨季明けから夏の間托鉢等をしながら修行行脚をするのだそうですが、修行を始める日を「結夏(けつげ)」と言い、そして修行を終える日を「解夏」と呼ぶのだそーだ。

映画中、寺の住職に「あなたはこれから失明していく恐怖に恐れ、苦悩していくでしょう。しかし失明した日に、自分がいつ失明するのかという恐怖から解放されるのです」と説かれるくだりがあるんだけど、これはなるほどな・・・と思った。

難病になり、故郷・長崎に戻って苦悩の業を背負った日を「結夏」、悩み、悲しみ、苦しみ、悶え、そして失明する事によってそれらから解放される日を「解夏」に当てはめて映画は進行する。

難病に苦悩し、恋人の幸せの為に別れようと決心する主人公。愛するが故、隆之の病を共に背負い生きる事を望む恋人。主人公を優しく支える家族と故郷の友人達の暖かい愛・・・どれもこれも王道過ぎる王道、ど真ん中ストライクのベッタベタなネタですが、これはキャスト勝ちだと言っていいでしょうな。

正直言ってちょっと展開がぬるい感じがしたんだけど、これはもう主人公・隆之を演じた大沢たかおクンの演技1人勝ちと言わざるを得ないでしょう。大沢クンはこの手の役がハマり過ぎです♪
亡き父が眠る高台の墓地に1人でやって来て慟哭するシーンには、さすがの冷酷・ぴよも「くうぅ〜!」となっちゃったさ。
また音楽がうまい具合にシーンに被るんだよなぁ・・・映画音楽を担当しているのは、さだ氏の音楽プロデューサーでもある渡辺俊幸氏ですが、実に映画を効果的に盛り上げる役割を果たしていると思う。
脚本のゆるい部分を音楽と役者の演技でカバーするという、正に夫唱婦随のいいコントラストしてますわ(をい)

失明する、というのは闇の世界に入る事ではないのだそーだ。
闇という「光」を失うのだそーだ。
光あってこその闇・・・失明した人の視界はまるで白い靄の中に立っているような状態なんだそーです。

自分の視力がもし失われるとしたら、最後に見たいモノは何だろう?
この映画のラストで隆之は恋人に優しく語り掛ける。
彼は「解夏」を迎え、心静かになった・・・実際はどうなんだろう?自分が視力を失ったらどうなんだろう?

この映画に限っては、こういうラストで正解だったと思うけど。
この手のセンチメンタルなご当地映画に、生々し過ぎるラストはやっぱり不似合いだと思うしね・・・





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2004年01月07日(水) ミスティック・リバー

監督:クリント・イーストウッド
出演:ショーン・ペン
    ティム・ロビンス
    ケビン・ベーコン、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
ジミー、デイブ、ショーンの3人はボストン郊外で少年時代を過ごした幼馴染みだった。3人の無邪気な少年時代は辛く悲しい事件によって終わりを告げる・・・11歳のある日、デイブが誘拐されたのだ・・・しかもジミーとショーンの目の前で。4日後に自力で逃げ出したデイブは心と体に一生残る深い傷を残し、残る2人も自分達の無力さに苦悩する事となった。
25年後、疎遠になっていた3人は再び忌わしい事件によって結び付けられるのだ。ジミーの娘が殺害され、事件を担当する事になったのが刑事になったショーン、そして最重要容疑者があのデイブだったのだ。


【感想】
全米でベストセラーになったデニス・ルヘインの同名小説の映画化。監督は名優クリント・イーストウッド。TVや雑誌等でも今年度のアカデミー賞大本命だと大騒ぎの一作だぞー!

娘のケイティを惨殺されて血迷う父親・ジミーを演じるショーン・ペンがうまい!彼はこの映画でオスカー主演男優賞のノミネートは確実だと言われていますが、さもありなんの巧みな演技で観客をぐいぐい引っ張って行きます。
ショーン・ペンだけでなく、この映画に出演している俳優はどいつもこいつも芸達者揃いで、よくこれだけ粒揃いの名優を集められたもんだと感心しちゃいますね。

話の伏線の張り方、小道具の見せ方、展開、演出、脚本、どれを取っても文句なしの実にウマイ作りになってます。
しかしながら、ミステリーとしても非常に巧みな作りになっているとは思うものの・・・
(以下超ネタバレ?につき、未見の方は決してドラッグしないで下さい!)
映画前半のとあるシーンに気付いて「あれ?」と思った方】は、かなり早い段階で犯人が誰だか判ってしまうでしょう。
(実はぴよもその1人です。はいぃ〜。苦笑)

犯人が誰であるか、なんてこの映画ではどーでもいい事なのです。(ホントか?)
この映画の1番のキモは、心に深い傷を負った3人の少年が大人になり、そしてその心の闇と対峙しなければいけない時に、3人の心はどのように動くのか・・・そういう心理描写の側面。

少年が大人になる時――そこには苦悩や葛藤があり、そして人に語れないような秘密やトラウマを心に作る。トラウマを抱えて大人になったかつての少年達は、自分の心の闇にどう対処して行くのか・・・
ジミーが警察でショーンに語る一節は含蓄が深い。
「もしあの車に乗っていたのがデイブじゃなくて自分だったら・・・」

そしてジミーの告白に答える妻のセリフ
「あなたは王様だから。あなたは愛する人の為ならどんな事でもするのよ」
・・・何か薄ら寒い気持ちになってしまったのはぴよだけでしょうか。


ハッピーエンドは有り得ないと判っていても、見ていてあまりに切ないラストシーンには胸が重たくなってしまう。
映画の作りとしては非常に評価出来るものの、ぴよは正直言ってあまり好きな映画じゃないですネ(苦笑)







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2004年01月06日(火) バティニョールおじさん

監督:ジェラール・ジュニョ
出演:ジェラール・ジュニョ
    ジュール・シュトリック
    ミシェル・ガルシア、他
オススメ度:☆☆☆☆+


【あらすじ】
1942年夏、パリは独軍の手に落ちていたる所でユダヤ人狩りが行われていた。精肉惣菜店を営む「バティニョールおじさん」の家の上階には裕福なユダヤ人一家が住んでいたが、ある朝バティニョールは自らの手で一家を独軍に引き渡してしまう。同居していた娘の婚約者が独軍に密告をして、自分は彼に騙される形でその手助けをしてしまったのだ。
密告者として独軍に重用されるようになったバティニョールの元へ、ある日上階に住んでいたユダヤ人一家の息子「シモン」が収容所を逃げ出して戻って来た。バティニョールは悩んだ末、シモンをスイスに逃亡させようと決心するのだが・・・


【感想】
2002年フランス作品。日本での公開は2003年春でしたが、ぴよは劇場で予告編を見て「これ、絶対に見たーい♪」と思っていたのに、うっかりしている間に公開終了しちゃってたのね(涙)
正月明けの映画鑑賞第1弾として、DVD借りて来て自宅で鑑賞。正月ボケした体に劇場鑑賞は辛いのだ。(^_^;)

主人公はパリに住む生粋のパリっ子親父「バティニョール」
自宅は精肉惣菜店を営んでいる、どこにでも転がってるフツーの親父。聖人君子でもなければとりたてて極悪人でもない。

ある朝、この親父は自分ではそんな気はなかったのに、ユダヤ人一家を独軍に引き渡す為の時間稼ぎに一役買ってしまったのだ。自分は密告者のつもりはないのに結果的に密告者の役割を果たしてしまった親父・・・胸は少々痛むものの、日々の生活に忙しいし、何より密告の見返りに生活が断然優遇されるようになって家族が大喜びしているのを横目で見れば、そんなに悪い気はしない。親父はユダヤ人一家の事なんてすっかり忘れてしまうのだ。

実際この時代のパリ市民の感情はこんなだったんだと思う。
裕福な生活を営むユダヤ人とは住む世界が違うと思っているパリ市民。ユダヤ人とはご近所さんでも全く交流はないが、独軍のユダヤ人狩りはちょっぴり気の毒な事だと思っている。
そしてなるべく自分達はそういう戦争のゴタゴタに関わりになりたくないと思っている人が大部分だし、中には戦争特需にあやかろうと積極的に独軍に接近して、甘い汁を吸おうとしていた輩もいた事だろう。

バティニョールおじさんもそんなどこにでもいるありふれたパリ市民の1人。
ユダヤ人の子供「シモン」をスイスに逃亡させようとしたのも、「溢れ出る正義感」なんていうカッコいいもんじゃない。多少の厄介払いの気持ち、多少の同情、多少の罪悪感、そして多少の成り行き・・・そういう当たり前にある人間の感情の積み重ねが、バティニョールおじさんの心をいつしか突き動かしただけなのだ。

ユダヤ人少年「シモン」は、上流階級の子供としてきちんとした教育を受けたいかにも「利発なブルジョワの子供」として描かれているが、この手の映画にありがちな「同情を一身に集める健気で可哀相なユダヤ人」という役割はしていない。
シモン少年は、自分達家族が収容所送りになったのはバティニョール親父の密告のせいだと思って恨んでいるし、親父の事を「気持ち悪い肉をさばいて飯を食ってる胡散臭い野郎だ」くらいに思っている(笑)
でも、収容所を逃げ出した自分をかくまってくれたのもこの親父だし、ご飯を食べさせてくれた上にスイスに逃亡するのを手伝ってくれるのもこの親父・・・そんなに悪い人じゃーないんだろうなぁ、くらいにも思っている。

ここら辺りの表現って非常に微妙なサジ加減だと思うんだけど、この映画は「パリ市民だから」「ユダヤ人だから」という民俗のカテゴリで分けずに、あくまでも「人間の感情」を大切にしている所が非常に感じがいいです♪

ナチス×ユダヤ人を題材にした映画というのは、直ぐに「ナチスは悪い人達、ユダヤ人は気の毒な人達、そしてユダヤ人を助ける人は聖人君子」という安直な記号に当てはめがちだけど、実際はドイツ人だってユダヤ人だってパリ市民だっていいヤツもいれば根性のひねくれたヤツだっていたでしょう。
そんなの当たり前な事なのに、どうして既存のこの手の映画は人種でキャラクターを分けてしまっていたのでしょうか?

いつの時代でも、どこの国の人でも、人間の感情というのは概ねこんなモノなのです。
いいヤツもいれば悪いヤツもいる。人の心の中だっていい気持ちだけじゃない。
そんな当たり前の気持ちの積み重ねと交流・・・ありふれた人間のありふれた感情のありふれたドラマが、実は1番面白くて感動出来るんだというのを教えてくれる。

実に気持ちのいい、見た後に優しい気持ちになって思わず微笑んでしまう・・・そんな質の高い作品。






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