監督:リチャード・エア 出演:ジュディ・デンチ ジム・ブロードベント ケイト・ウィンスレット、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 作家で哲学者でもある「アイリス・マードック」彼女はある日、自分が同じ事を2度繰り返して話していた事に、何か不穏なモノを予感する。彼女の夫、作家であり文芸評論家の「ジョン・ベイリー」は『よくある事だ』と慰めるが、その後簡単な単語の綴りを思い出せなくなり、自分が何を話していたのかすら忘れてしまうようになる・・・アイリスはアルツハイマーに冒されて、彼女の命とも言える「言葉」を失っていくのだった。
【感想】 アイリス・マードック、彼女は「イギリスで最も素晴らしい女性」と形容される実在した作家なんだそーです。彼女の死後、夫のジョン・ベイリーが彼女について本に綴り、イギリスでベストセラーになった原作がこの映画の下地になっているそうです。 話はアイリスがアルツハイマーに冒され、そして2人が慈しみながらも静かにその生をまっとうしていく姿と、アイリスがジョンと出会い、そして愛し合うようになるまでの若き日の姿を重ね合わせるように進行して行くんだけど・・・
今の時代ならこれくらい奔放な女性というのはゴロゴロいるかもしれないけど、アイリスという女性は、生まれるのが50年早過ぎたんじゃないかと思えるくらい、当時ではずば抜けて垢抜けた・・・奔放な女性だったんだなぁと思わされましたわ。
彼女の奔放な恋愛感が、彼女独自の世界観を産み、育て、言葉になる様子が若き日のエピソードで少しずつ見せられて行くんだけど、それがアルツハイマーに冒された事で、言葉を1つずつ失い、怯え、そしてついには彼女の愛すべき人格すらも変貌させて行ってしまう様子は、見ていて絶えがたい物があったわ・・・
それでも人は愛する事が出来るのか?
その答えをこの映画は切なくも美しく表現してくれているのだけど、ぴよにはとても難しかった。 後10年、20年、いや30年ぴよが年をとってからこの映画を見たら、ジョンの気持ちを理解出来たのかもしれないけど、今のぴよにはただただ「なんて残酷な運命なんだろう」としか思えなかった。
それでも人は愛する事が出来るのか?
すっかり言葉を失い、人格すらも変貌してしまったアイリスが、ジョンに向かって「愛してる。あなたを」と語るシーンは、思わずじーんとした・・・けど、やっぱり今のぴよにはジョンのような気持ちにはきっとなれないな、としか言えないんだよね。
感動する、とかステキな夫婦愛だ、という言葉で片付ける気になれない・・・ ぴよには余りに切なく、余りに残酷な話だったとしか言いようがないんだよね。
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