真夜中の風に 古い緑の屋敷が見える まるで夢のような 灰色の優しい夜 強い風に森は狂う 世界にはもう誰も居ない 風と、屋敷と、森だけがある。 感情は心細く、その裏には深い安堵。 | |
「この頃 思うんだ 言わないけど きっと」
少年は満月に呟く
世界はこの屋根から見渡しても広すぎて全ては見えない それでも少年は少しばかりの見えない未来を予感する力を持っていた
街路を大人が歩く そして彼は考える
「この頃 思うことがある 揺ぎ無い確かなものを感じていたのに それなのに」
満月を雲が覆う 風が柳の木を揺らしその姿を見せる 月光を受けた窓枠を見つめながら病気の少女は考える
「この頃 思うことがある 私はその時 きっと笑うわ 世界を知る瞬間を」 | |
幸せなこと。
それは 物やお金に対する強い欲のない心。 余計なもののない小さな家と、小さな庭。 そこで大好きな人達と一緒に暮らし お互いを思いやり、愛し合い、笑って、一緒に働き、美味しい手料理を作って、眠ること。 そして大きくなった子供達に、彼らの道を選ばせる自由を与えること。
大きな家、余計な庭、守るものはお金と土地、自分のことばかり考え、一緒に居る人を疑う呪われた居場所など、それは居場所ではない。 それは不幸だ。 そしてそこで打ち勝てずに束縛されゆく人間も悲しい。
仕方ないよ。と歳をとっていきたくない。 私はシアワセになりたい。 | |
僕はここに戻ってくる
私は君を待つ
どれだけ複雑に考えても シンプルなことだ そして複雑に考えるだけ 余計な力が生まれ繋がる強さに亀裂が入るだけ 無意味なんだ | |
曇り空に 吸い込まれてゆく 朝の夢は 夕方近くになって
ぽつり ぽつり、
降りだした
(淡く土に沁み込む音は優しすぎてやがて糧になることを予感させる)
この街に降った雨のわけを 知る人はいないけれど その額に落ちる雨に 気付く誰かは いるのかもしれない
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その日君は 何を思うだろう
その日私は きっとこう思うだろう
初めからわかっていた
新しいページを 開く前に知っていた
それでも 私たちは手を繋ぐことのほうが良かった 夢をみていた僕らの明日はまだ遠かったから | |
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