泡とガラス玉


2005年11月21日(月)      トワ


言葉など要らない

世界が終わるまで

ここで待つ

朝を待ち
影がゆっくりと位置をかえてゆくのを見送り
そうして、
闇を迎えよう


大地を見つめ
闇の中に淡い影が生まれる時

僕は振り返って

君を

君を抱くだろう
そして二度と離れはしないだろう



2005年11月20日(日)      ゲッコウ


僕は この暗い夜道を 月の光と一緒に歩いてきた

いつか光は消えるだろう、とか
永遠にこの光は僕を照らし続けてくれるだろう、とか

そんな風に考えたこともなく

ただ、

ひろくて、おおきくて、真っ暗な夜空に
ぽっかりと浮かんでいることが
この広がる闇と同様に
この僕が生きている事と同様に
当たり前のことだと
感じていた


踏み潰す草の音を聞きながら
自分の影だけを見て
とうとう湖まで歩いてきたとき
僕の後ろをついてきた月は
いつの間にか目の前の湖の向こうの山の上にいて
今にも隠れてしまうようなそぶりを見せていた

僕は

ただその時
湖が、黒く透明な生き物のように、滑らかだな、と思いながら

山の稜線に隠れてしまいそうな月の
光を真正面から見つめた


月光を失う僕はかつて居ない。
あと僅かな時間のうちに
世界がすっかり声を失うということにも
実感がわかず
ただ、何も出来ずに

こうやって

ここで見ている



僕は。


この僅かな時間のうちに、できることすら思いつかない

ただ
こうやってぼんやりと立ち止まりながら
世界はかつて闇だったときがあって
僕はそこで眩しすぎる光の鬱陶しさに憤りながら
世界を知り尽くしたかのように
駆け抜けているかのように
立ち止まっていた、ということを一つ思い出した


生まれて初めて
こんなにも長い間を淡い光の中で過ごし
記憶を喪失しながら
歩き続けた


こんな大きな湖に足止めされることも無かったし
月光が山に隠れてしまうことも無かった


(僕はここに来て初めて体中の血が騒ぎ出す)


そうして
涙が溢れて
黒い泉に広がる


昔、僕には永遠などないと悟った時のように
その現実が雨になって降ってくるようだ。
平穏な世界などないのだろうか。

世界は

元々、闇で、
人はその世界で僅かな光をみつけるために生き続けている。
しかしどうしてその光が姿を消そうとするのか?

神さまが笑ってる。
天使が笑ってる。
悪魔が笑ってる。
あちこちで。声が聞こえる。
世界がざわつく。
とびきり意地悪な声で。



そして間もなく


月は


稜線に隠れて


世界は沈黙した




僕の耳には
肉厚のたぷたぷとした波の
岸を打つ音だけが
聞こえるだけだ



2005年11月09日(水)      ラブレター


午前4時の記憶


遠く離れても大丈夫

だって私は君のことが好きなのだ
かけがえの無い確かなもの
自分を犠牲にしてでも守りたい人

きっと、多分、それはいつか君になるんだ



2005年11月08日(火)      トアルヨル


待ち侘びて

砂になる

青い稜線をなぞりながら

朝を探す



2005年11月07日(月)      シアホー


冬のコートの襟を立て横断歩道を渡りながら海のことを考えていた

キラキラと 
ずっと心の中で
海は広がる

まるで世界の終りのようだ

美しくて
孤独で
暖かい

私の届かない何かは
いつもここにあるのだと
知る


次の赤信号の手前で少し涙がでた


お元気ですか
ここは現実です



2005年11月05日(土)      サイセイ


傷つき
自問し
永遠の答えが分からないまま
時間が切れた


それで

僕らは抜け殻になったかい?


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