初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2006年05月09日(火)
「ランキングに参加中!」

「ブログ進化論」(岡部敬史著・講談社+α新書)より。

(「ランキングサイトは面白くない?」という項より)

【面白いブログの探し方は、この「好きなブログのお気に入りを見る」というのが、王道の正解だと思うのだが、「ブログのランキングサイトに面白いブログを探しに行けばいいのでは?」と思う人も多いだろう。
 ブログのランキングサイトには、ブログプロバイダが提示しているようなアクセス数によって序列を決めるものだけではなく、各自のブログからそのランキングサイトへ誘導した数によって序列を決めるものがある。
「ランキングに参加中! 面白いと思ったらクリックしてください!」
 こういった表示を見たことがあると思うが、これがこのタイプのブログランキングに参加しているブログである。ここで指定のアイコンが何回クリックされたかによってランキングが決定されるわけだ。
 このランキングサイトでは、文字通り多くのブログが順位付けされているので、上から順番に見ていけば面白いものが見つかりそうに思える。
 しかし、こういったタイプのブログランキングでも、それほど面白いブログに出会えないのが現状だ。もちろん、なかには興味深いブログも数多くあるのだが、全体的に見るとその総体的な質は決して高いとは思えない。
 それは、「ランキングに参加中! 面白いと思ったらクリックしてください」というちょっと主張の強い掲示をしなくてはならないことに起因していると思う。
 僕は編集の仕事をしている関係で多くの人の原稿を読むのだが、ライターとして原稿の上手い、下手を判定する基準のひとつに”自分の話をどう書くか”ということがある。
 つまり、書き手のポジショニングをどうとるのか、ということだ。
 基本的に読む側というのは、書き手のことなどにあまり関心がない。そこに書かれている情報(これは笑わせるなエンターテインメント感覚も含む)が欲しいわけだ。
 上手いライターというのは、自分の存在を読者に気づかせず、情報のみをピックアップすることができる。また、自分を出すときにでも、道化役にするなどそのポジショニングが巧みである。下手なライターというのは、書き手の存在を感じさせすぎて少々鬱陶しいケースが多い。
 しかしモノを書こうとする人は、往々にして自分が前面に出てしまう。
 それはブログのような個人発信の何の制約もないメディア上なら尚更だ。
 もちろん、私的発信メディアであるブログにおいて、適度な主張は必要だ。新聞のような無味乾燥なブログなど、よっぽど情報に価値がないと読みたいと思わない。
 しかし、主張が強すぎるのも考えものだ。知りたい情報になかなかアクセスできず、発信者の主張ばかりが目立つブログは読んでいて疲れる。
 あくまで私的な意見だが、「ランキングに参加中!」といった掲示を行っているブログは、こういった書き手の主張が強いケースが多いように思える。「面白かったらクリックしてね!」という掲示が行える人は、やはりどこか自己主張が強いのだ。
 面白いブログ、多くの読者を獲得するブログというのは、自己主張と情報のバランスがよくとれているものが多い。
 ブログに何かを書く場合、往々にして「主張」と「情報」の両者が入っているわけだが、主張ばかりが多くても、読んでいる人はつまらない。かといって、情報ばかりでは、書いていてつまらない(だからブログの更新が続かない)。また、適度な書き手の主張や個性がないとファンが付かない。
 有益な情報を提供しつつも、自分の主張をどう伝えるか、自分のポジショニングをどうとるか。
 この点が、人気ブログを作る上での大きなポイントであるだろう。】

〜〜〜〜〜〜〜

 まあ、それはさておき、「このブログがすごい!」という本を毎年出しておられる岡部さんの「編集者としての視点」には、非常に興味深いものがありました。
 もちろん、「ランキングサイトの上位がみんなつまらない」というわけではないですし、「アクセスの多さ」というのは、サイトへの客観的な評価を行う際の重要な要素であることは間違いないのですが。

 岡部さんはここで、「書き手のポジショニング」について書かれています。確かに僕たちは、雑誌の記事を読むときに「誰がこれを書いているのか?」ということには、あまり興味を持ちませんよね。エッセイとか小説なら別だとしても、「情報としての記事」を読んでいるときに大事なのは、「そこに書かれていること」ではなくて、「何が書いてあるか」のはずです。そして、ある雑誌などに、自分好みの記事をたくさん書いているライターがいる、ということに気づいてはじめて、「この記事は、どんな人が書いているのか?」ということを知りたがるのです。
 有名人ブログならともかく、市井の無名の書き手が、自分のエントリを充実させる前に、「ランキングサイトをクリックしてね!」なんて書いてみても、読み手としては、「そんなのお前の都合だろ…」としか思えないのですよね。
 そりゃあね、有名アーティストなら、コンサートも「前売り券」でSOLD OUTになってしまうのでしょうが、無名の大道芸人が、芸をやる前に「面白いからお金くれ!」なんて言っているのって、どう考えてもヘンですよね。「見て面白かったらオヒネリ出してもいいな」と思っている人だって、そんなこと言われたら、その場を黙って立ち去ってしまうことがほとんどのはずです。もちろん、「そんなに自信があるのなら観てやろう」という好事家だっているでしょうが。
 僕がかねがね疑問なのは、自分のサイトやブログに宣伝とかランキングのバナーばっかり貼っている人っていうのは、他の人が同じようにしているのを見て、不愉快に感じたことはないのだろうか?ということなのです。いやまあ、人間というのは、自分のことに関しては、甘く見てしまいがちだから、「自分のサイトはこのくらい貼っても…」という感覚なのかもしれませんけどね。
 しかしながら、「自分のサイト」っていうのは、自分以外のすべての人間にとっては、「他人のサイト」なのですよ。

 岡部さんは、【面白いブログ、多くの読者を獲得するブログというのは、自己主張と情報のバランスがよくとれているものが多い】と書かれています。自己主張や目立ちたいという気持ちが皆無であれば、ブログを書くというのは、なかなか難しい行為だと思います。「書く」というのは、ある意味「自己主張」そのものですから。
 でも、その一方で、「自分を客観視する」もっとひらたく言えば「状況によっては、自分の存在を消してしまう」ことができなければ、有名人ブログでもないかぎり、「面白いブログ」を書くことは難しいのかもしれません。
 まあ、僕の個人的見解としては、プロ志向でもない人が、「人気ブログ」を作るために自分が書きたくないことを書くことに意味があるのかな、とは思ますし、そもそも、みんなが「人気ブログ」を志向する必要はないと思うのですけどね。
 だいたい、そんなふうに「現世利益」にこだわらなくていいところが、こうしてネットに書くことの大きなメリットのひとつなのでは……