沢の螢

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「邯鄲の声」
2006年08月24日(木)

日付が替わったが、一時間程前からしきりに鳴いている虫の声。
鈴虫ではないようだ。
深夜の音としては、ややウルサイ程。
邯鄲だと言うことにしておこう。

昨日午後から母の元へ。
7月のお盆は、父の新盆なので、墓石を直したり、迎え盆、送り盆に行き、その後、私たちが高原に行っていたため、ひと月以上、足を向けていなかった。
父が天寿を全うしてから、遺された母と、私ども4人のきょうだいとの間には、相続という問題があるが、墓の継承は長女の私と言うことで、すでに手続きが済んだ。

これは、相続とは違う先祖の供養ということなので、今は三親等以内の親族なら誰でもいいのである。
大家族の長男である父名義の墓には、祖父母の遺骨、未婚のまま亡くなった叔母の骨も入っている。
父亡きあとは、すべて私の名前で、法事を行うことになる。
父の遺産については、墓の維持や先祖の供養にかかる分以外は、母にすべて相続して貰おうと言うことで、私たち子供の考えは、一致している。
それは、母自身の希望でもあった。
ただ、相続の手続きを、老母自身がするのは無理なので、誰かがしなければならない。
それには、母が日頃から何かと頼み事をしたり、ケアハウスの身元引き受け人にもなっている上の妹が、母の希望で引き受けた。
ところが、彼女が、面倒な手続きを嫌って、弁護士に頼んでしまったために、かえってややこしくなっている。
家族の話し合いで決めたことを、そのままやればいいのだが、妹が、暑い最中、役所に行ったり、銀行に行ったりで、体調を悪くしたらしく、知らない間に、弁護士の手に渡ってしまった。
争うような要因は何もないのに、他人が入ったことで、きょうだいの間が、ギクシャクしかかっている。
後に禍根が残らないように、父の遺産の状況を、相続人全部に開示して、手続きを進めたほうがいいと、私は妹に提案したが、なぜか、母も、妹も、開示したくないらしい。
父の遺言状があり、弁護士に頼めば、そんなことはしなくても、銀行の名義変更は出来るからと言い、未だに、印鑑証明一つ、要求してこない。
銀行がそんなに簡単に、処理するのかと疑問だが、弁護士なら出来るのかも知れない。

しっかりしているようでも、90歳過ぎた母には、もはや、自分のことを考えるのが精一杯。
自分がいなくなったあと、残った子供たちが、どうしたらきょうだい仲良くやっていくかと言うことまで、配慮が及ばないのは、無理もない。
何が一番大事かという優先順位も、判断できなくなっている。
そんな老母に安心して余生を送ってもらうために、みんなで考えた後始末の仕方だったはずだが、弁護士のミスリードもあって、そんな風に進まなくなってしまったのは、残念なことだ。
耳の遠い母に、複雑な話は出来ない。
元気かどうかだけ確かめて、帰ってきた。



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