偶然見たテレビ。 7年前に亡くなった三浦綾子さんの、生前の談話の中で、こんな言葉があった。 「私という人間は、この世が始まってから終わるまで、私ひとりだけなんです。 同じ人間は、いないのです。 たった一つのもの、たったひとつの人生なんですよね。 それに気づいたら、今、病気で苦しんでいることも、神様が私だけにくださった、かけがえのないものなのだ思えるようになりました」。 若いときから病苦に悩まされた彼女だったが、後に夫となった三浦氏と巡り会って、クリスチャンになった。 小さな商店を営みながら、初めて書いた小説「氷点」が、朝日新聞の懸賞小説に入選、作家の道に入った。 信仰や罪をテーマにした小説や、いくつかの、キリスト教に関する書物も出版している。 夫の三浦光世氏は、病気がちの妻をよく助け、その死を見送ったが、その結婚生活を振り返って、「すばらしい人生でした。私の方が、いつも彼女に助けてもらっていました」と語った。 深い信頼感と、愛情に包まれた日々だったのだろう。 光世氏にとっても、綾子さんとの結婚生活は、たったひとつのものだったに違いない。
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