沢の螢

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存在証明
2006年05月24日(水)

父が亡くなり、葬式が済むと、今度は、墓地の名義変更とか、相続の手続きなどが待っている。
旧民法では、何もかも長男が次ぐ習いだったが、今の民法は、子どもは男女に限らず平等ということになっている。
墓地の名義も、六親等以内の親族、あるいは、三親等以内の姻族と言うことだそうだ。
母と妹たちで話し合った結果、墓地の継承は長女の私ということになり、今日手続きに行った。
まず申請人である私の現住所のある役所で、印鑑証明を取る。
それから都心の本籍地に行き、私の戸籍謄本を取る。
すでに昼の時間は過ぎていたが、そのまま電車に乗って、父の本籍のある別の区へ。
さすがに空腹を感じたが、時間がないので、滅多に入らないファーストフードの店で、コーヒーとピザを食べる。
区役所で、父の戸籍謄本と、父と私の関係が分かる原籍簿からの付票を申請。
昔の戸籍は、戸主の下に、子どもの代まで、ぞろぞろと記入してあったが、今は、夫婦単位のシンプルな物になっているので、結婚したら、子どもは除籍され、それ以前の親子関係を証明するためには、付票が必要なのである。
この付票が意外に時間が掛かり、待たされた。
父の名前の処はすでに、死亡による除籍と記入されている。
終わると3時過ぎ。
昼頃は晴れていた空が、あやしくなり、雨が降り出した。
地下鉄で、都庁に移動。
高層ビルの上の方にある霊園課に行き、名義変更手続きをする。
父の名義の霊園使用許可証、私の印鑑証明書と実印、私の戸籍謄本、父の除籍謄本、親子関係の分かる付票、私が喪主であることを証明する葬儀の費用支払い領収書、それらを付けて、申請書を記入、実印を押す。
印鑑証明書以外の書類原本は、コピーを取って、返してくれた。
名義が変更され、私が墓地の継承者であることを証明する許可証が交付されるのは、2ヶ月後だそうだ。
「それでは遺骨の埋葬に間に合いません」というと、代わりの文書を出してくれた。
午前11時半に家を出て、4つの役所を回り、すべての手続きが終わったのが、午後4時半。
雨はかなりの降りになって、気温も下がってきた。
どこにも寄らず、まっすぐ帰宅の電車に乗る。
自宅のある駅に着いて、やっとホッとした。
買い物を少々して家に帰ると、夫は、入れ違いに外出していた。
食卓に置き手紙。
何かの集まりで出かけたようだ。
そういえば、携帯が何度か鳴っていたが、移動と事務手続きに気を取られて、パスしてしまっていた。
グズグズしていたら、一日では済まなかったかも知れない手続き。
スムースに運んでよかった。
それにしても、戸籍だの、印鑑証明だの、人が死ぬと言うことは、簡単な話ではないのだなと、実感した。
相続の手続きは、妹がすることになっている。
こちらは、もっと大変。
9年前、父の妹である私の叔母が亡くなった時、やはり相続の手続きがあった。
叔母は生涯独身だったので、亡くなると、きょうだいが後始末するのである。
もう高齢で手続きが出来ない父に代わって、同居して居たわたしと夫とで、その手続きをした。
そのときは、日本のあちこちに相続人が生存していたので、手続きが煩雑になることを予想して、弁護士に頼んだ。
夫はまだ現役で、忙しかったし、私ひとりの手には負えそうもなっからである。
しかし、相続人である父の兄弟たちが、みな、徳の高い人たちだったため、何のトラブルもなく、済んだ。
弁護士がビックリするくらいだった。
そのうちのふたりは、もう他界している。
次の世代である私たちはどうか。
弁護士を頼むほどのことはなさそうだが・・。
電車と徒歩で移動した一日。
さすがに疲れた。



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