昨日は母の誕生日。 一日遅れで、ケーキを持ってお祝いに行く。 93歳になった。 4年前からケアハウスで、父と共に暮らしている。 父の方は、私の顔と名前がもうわからない状態だが、年なりの健康状態を保っている。 母は、耳が遠く、補聴器も気休め程度にしか機能せず、会話も一方通行になるが、頭はかなりしっかりしていて、記憶力もいい。 3人の娘をうまく使い分けて、未だにゴッドマザーをやっている。 両親が私の家で生活した3年の間に、私と二人の妹とは、断絶状態になったが、それには、母の権謀術数めいたやり方が、原因している。 人には言われぬいろいろな思いをし、連れ合いにも、心労をかけたが、6年経った今では、母に対しては、恨みがましい気持ちは持っていない。 ただ、妹たちに対しては、まだ許せぬ気持ちが消えたわけではないので、母も、それを感じ取っていて、私と妹がかち合わないように、気を使う。 顔を合わせれば、普通に、話はするが、私の心の中には、わだかまりがあるので、何処かよそよそしい雰囲気になってしまう。 だから私も、母の前で、あまりそう言う状態を作りたくないのである。 昨日電話した時、「誕生日だから行くわよ」と言ったら、「今日はちょっと都合が悪いから、あした来て頂戴」と言った。 多分、妹のうちのどちらかが行く予定になっていたのだろう。 そんなわけで今日になった。 90を過ぎた老人に、こんな気を使わせるのは、実に親不孝だと思うが、母がしっかりしている証拠でもあるし、家族とその周辺のことのみで人生を送ってきた人だから、しなくていい身内の間の気遣いも、大事な日常ではあるのだ。 父も母も、同世代の友人知人は、大半彼岸に行ってしまい、一人であちこち出歩くには、無理なので、私たちが、代わる代わる顔を見せて、世間話の相手になってやるのが、母にとっては、わずかな楽しみなのである。 私の妹の息子が、来月結婚することになり、それに出席するのを楽しみにしている。 はじめは、とても出られないと思いこんでいたが、「今は、結婚式場などは、ちゃんと対応出来るようになってるから、大丈夫よ」というと、その気になったらしい。 父の方は無理なので、当日はハウスのケアに委ね、夫の車で母を迎えに行き、一緒に式場に行き、終わってからその夜は、私の家で泊まり、翌日ハウスに送り届けるという算段をした。 「これが最後かも知れないから」といいながら、母は、久しぶりに晴れやかな席に出るのを楽しみに、足を鍛えているという。 行った時、ちょうどテレビで、永田議員の記者会見をやっていて、それを見ているところだった。「民主党は、これからどうなるのかしら」という。 母は私と違い、政治大好き人間である。 テレビの音も、聞こえにくいようだが、今は、文字情報が出るので、内容はよくわかるらしい。 新聞と併せて、結構世の中の動きは、把握している。 夕方、母の作ったお総菜を貰って、ハウスを後にした。 寒さがぶり返した一日だった。
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