沢の螢

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女ともだち その4
2006年02月05日(日)

夕べ遅く、シャンソン歌手の友人から電話。
確か二年ほど前に、電話で話して以来である。
私の方からは、電話はあまりかけないが、突然かけてくるのは、彼女の方である。
「こんな時間、いい?」と一応訊いているが、「ダメよ」と言うはずはないのはわかってのことだ。
私の年代になると、女同士でも、深夜の長電話は珍しくない。
彼女が電話して来るのは、話したいことがあるからである。
表向きの用件は、今度、やっと自分専用のパソコンを買い、インターネットが出来る環境になったから、まず、メールアドレスを教えてくれと言うことであった。
今までは、アナログで過ごしていて、どうしても必要なときだけ、ご亭主のパソコンから、メールを送受信していたけど、やっぱり、自分のメールがないと、不便だからと言う。
彼女は、シャンソンの世界で、自分のお小遣い程度の仕事をしているが、今では、歌うこと以外の用事が増えてきて、アナログでは、追いつかない面が出てきたらしい。
5年前に、私がインターネットを始めた時、さんざん批判がましいことを言った彼女だから、ここぞとばかり、ネットのマイナス面を強調して、しゃべることになってしまった。

まず、メールを使う際の、基本的なセキュリティとか、ルールとか、マナーとか、そんなものを一通り話したあとで、「メールは、時によっては凶器にもなるから、くれぐれも気を付けた方がいいわよ」と付け加えた。
そして、私が過去に受けた、メールにまつわる、いくつかの不愉快な経験を話した。
「メールは手紙と違って、第三者の目に触れることを、前提にして、使った方がいいわよ」
たとえばメールの中では、実名を表示しない、第三者について言及しない、用件以外のことは書かない、メールで人間関係に関わることは、出来るだけ触れない、必ずほかに回るからというと、「へえ、そんなことがあるの」とビックリしている。
「メールは手紙のように、手間暇かけなくて、手軽に出来るから、人のメールをべたべた貼り付けて、都合のいいように編集して、あちこちに転送するのも、簡単に出来ちゃうの。だから、相手をよく見極めて、危ないなと思う人には、アドレスを教えない方がいいわよ」と教えた。
送信の際のCCとBCCの違い。
出来れば、標準アドレスのほかに、ネット専用のWEBメールとか、いつでも変更出来る種類のメールアドレスを持ち、使い分けするといいと言うことも、付け加えた。
「こんなことは、基本的なことだけど、インターネット歴の長い人でも、マナーの出来てない人って、結構居るの。男の人の中には、メールを武器にして、疑似恋愛みたいなことを仕掛けてくる場合もあるし」
と、まずは、ご亭主に、その辺のことをよく教えて貰ってから、はじめた方がいいと、念を押した。
一九や二十歳の小娘ではないのだから、基本さえ掴んでいれば、あとに起こることは、良い面も悪い面も、彼女自身の選択であり、責任である。
言わずもがなのアドバイスであった。

彼女の話は、ここからが本番である。
私と彼女との縁は、十数年前、シナリオ学校の研究生だったときからである。
その辺のいきさつは、今までにも書いているから繰り返さない。
私は、健康上の理由でシナリオを断念、彼女の方は、しばらく修行を積んでいたが、やがてシャンソンの道に転向し、活動を続けている。
しかし、最近になって、やはり、シナリオの形で書きたいことがあり、今、構想を練っているという。
「エライわねえ」と、私は感心した。
「私なんて、ホームページに、あのころ書いた短い作品を載せていたけど、読み返すと、未熟で恥ずかしいし、アイデアを盗まれてもイヤだから、非公開にしてしまった」というと、
「そこなのよ。私も、自分の書いたシナリオが、映像化される可能性は少ないけど、そのうちホームページを作って、せめてそこに掲載したいの」
だから、いずれ、二人で、リレーシナリオを書かないかという話である。
「面白いわね。あなたが、自分の力で、ホームページを立ち上げてからね」と、賛同した。
「ホームページを作るのは、少し技術がいるし、すぐとは行かないから、まず、手軽に出来るのはブログよ」と、アドバイス。
「あなたのブログ、見せてよ」と言ったが、それは断った。
これは、ネット上の一般読者を対象にしてるので、家族、友人、知人など、顔見知りには、見せないことにしてるのと言い、何故、そうしているかの理由を話した。
シナリオを志した彼女だから、ネットでは仮想空間に徹したいという私の気持ちは、すぐ理解してくれた。
「それでも、何が目的なのか、検索で探し出して、黙って見に来る顔見知りが居るらしいけど、ネットは、見たくない物を見るところだという人もいるから、そのたぐいかも知れないわ」と付け加えた。
「見てますよなんて、挨拶があるの」と訊く。
「そんな友好的な態度で来るならいいんだけどねえ・・・」と言うと「妨害行為なんかされたりするの」と心配している。
「そんなことも、なかったわけじゃないし、アドレスを変えても、すぐ見つけちゃうし、私の知らない場所で、何を言われてるかわからないけど、無視することにしたわ。
でも、私のところに来る、顔見知りでないお客さんは、今まで、不快な思いをさせられたこと、一度もなかった。私のブログは、面白おかしいものは何もないけど、少数でも、応援してくれる人がいるから、それで満足なの」というと、あとは、来月の、シャンソンの会への誘いの話になり、長電話が終わった。
気が付くと、すっかり気温が冷えていた。



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