いい映画を見た。 フランス映画「約束」である。 小児ガンで入院中の少年がいる。元気に見えるが、実は、病状はあまりよくないらしい。 老人病棟には、脳梗塞で、体の自由が利かなくなった老人がいて、耳は聞こえるが、喋ることが出来ない。 目の動きで、かすかにイエスノーを伝えるくらいである。 映画では、心の声を音声で表していて、この老人が、まだ頭はしっかりしていることがわかる。 時々妻が見舞いに来て、そばで編み物をしたり、話しかけたりする。 10歳の少年は、病院内でもなかなか活発に動き回り、医者や看護婦の目を盗んで、患者の部屋から物をかすめたり、動けない老人に悪さを仕掛けたりする。 しかし大変利発で、病院内の子どもたちを集めてサッカーをしたり、すぐれたリーダーシップも発揮する。 この少年が、老人の部屋に忍び込んだのがきっかけで、二人の間に妙な交流が生まれる。 少年は老人の部屋に寝泊まりして、ゲームをしたり、車椅子を押してやったりする。 老人の妻が急病で亡くなり、残された老人の手をそっと撫でてやる。 絵に描いたようないい子ではないが、本当は、この少年が優しい心の持ち主であることがわかる。 そのうちに、少年の姿が急に病室から消える。 心配しながら、老人にはどうすることも出来ない。 それを察した看護婦が、老人を少年の処に連れて行く。 廊下から垣間見えたのは、白衣で、点滴を受けている少年の姿だった。 実は、少年の母は、医者から絶望的な宣告を受けていたのである。 それから何日かした日、元の元気な様子をした少年が現れる。 少年は、老人に外出の支度をさせて、車椅子に乗せ、病院から外に連れ出す。 行った先は、老人のかつての仕事仲間が、集まっている酒場だった。 海が見たいという老人の心を汲んで、砂浜に車椅子を押してやる少年。 その少年に向かって、老人は心の中で語りかける。 「いつまでも生きるんだよ。約束だよ」 日没の砂浜で、車椅子の老人と、それに寄り添う少年のシルエット。 映画はそこで終わっている。 暗くなりがちなテーマを、さらっと描き、老人の目の表情を、少年のよく動く表情と対比させて、丁寧な映像を作っている。 そして、ラストシーン。 しばらく席を立てなかった。
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