a Day in Our Life


2006年07月16日(日) 7・17。


 「暑っついなぁ〜」

 手のひらを団扇がわりにぱたぱたと泳がせながら、横山が唸る。犬のように舌を出して、その姿は言葉通りにへばっていたから、余計に暑くなるから言うな、などと嗜めるのは気の毒な気がして、村上は黙った。
 「しゃ〜ないな〜。アイス買うて来るから。何がいい?」
 村上にしても多少喉が渇いていたので、何か飲み物を買いに出ようと立ち上がる。すると横山以外のその場にいるメンバーも反応して首を伸ばすから、そこで初めて村上はしまった、と後悔をした。が、もちろんそれでは遅い。
 「村上くん!俺も暑い〜」
 「横山くんばっかりズルイですよ!」
 と、口々に非難しながら自分の分も、とアピールをする安田と大倉、村上の動きに便乗して俺も行く、と立ち上がる丸山、何となく成り行きを見送った錦戸、そして若干出遅れた渋谷は、ウォークマンのイヤホンを外して何事かと視線を巡らす。
 「しゃ〜ないな〜、まとめて買うて来るわ。何がええねん?」
 但し代金は後払いな!と釘を刺した村上に、途端にエェ〜!っとブーイングの声が上がる。アイス1本くらい奢ったろーという心意気はないんですか?!との批判に胸を張った村上が、おまえらに見せる心意気はない!と言い放つのに、思わずという感じで錦戸が吹き出した。
 バニラ、抹茶、などと口々に希望の味を聞きながら、最後に村上は後ろを振り返る。そもそも彼の為の買い物だったのに、気が付けば後回しになってしまっていた。
 「ヨコは?何にする?」
 呼びかけられて目線を泳がせた横山は、ふと一瞬沈黙をする。小首を傾げて、呟くように言った。
 「チョコがええ」
 「チョコ?」
 甘いものはそれほど得意ではない横山が、甘い代名詞のアイスを頼むなんて珍しいな、と思ったであろう村上は、しかし全てを悟ったかのような一瞬の間の後に、ふわりと微笑む。優しい顔をした。
 「分かった、チョコソフトな。俺もそうしよ」
 村上の独り言を聞き留めた他のメンバーが、それでやっと、何かを感づいたかのようにびくりと身震いをした。あぁ、と口の中で呟くもの、思い出したように時計の日付を覗き込むもの、それぞれの反応の後に、声を揃えて、
 「村上くん。俺もやっぱりチョコにするー」
 その言葉にひと際にっこりと笑った村上が、
 「オッケー。ほなチョコソフト7個な!」
 大きな声で宣言するのに、いや俺は頼んでないで、と目を丸くした渋谷と、
 「持つん手伝いますよ」
 意味もなく男前に立ち上がった錦戸が、笑って続いた。



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丸1年ですね。

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