a Day in Our Life
「暑っついなぁ〜」
手のひらを団扇がわりにぱたぱたと泳がせながら、横山が唸る。犬のように舌を出して、その姿は言葉通りにへばっていたから、余計に暑くなるから言うな、などと嗜めるのは気の毒な気がして、村上は黙った。 「しゃ〜ないな〜。アイス買うて来るから。何がいい?」 村上にしても多少喉が渇いていたので、何か飲み物を買いに出ようと立ち上がる。すると横山以外のその場にいるメンバーも反応して首を伸ばすから、そこで初めて村上はしまった、と後悔をした。が、もちろんそれでは遅い。 「村上くん!俺も暑い〜」 「横山くんばっかりズルイですよ!」 と、口々に非難しながら自分の分も、とアピールをする安田と大倉、村上の動きに便乗して俺も行く、と立ち上がる丸山、何となく成り行きを見送った錦戸、そして若干出遅れた渋谷は、ウォークマンのイヤホンを外して何事かと視線を巡らす。 「しゃ〜ないな〜、まとめて買うて来るわ。何がええねん?」 但し代金は後払いな!と釘を刺した村上に、途端にエェ〜!っとブーイングの声が上がる。アイス1本くらい奢ったろーという心意気はないんですか?!との批判に胸を張った村上が、おまえらに見せる心意気はない!と言い放つのに、思わずという感じで錦戸が吹き出した。 バニラ、抹茶、などと口々に希望の味を聞きながら、最後に村上は後ろを振り返る。そもそも彼の為の買い物だったのに、気が付けば後回しになってしまっていた。 「ヨコは?何にする?」 呼びかけられて目線を泳がせた横山は、ふと一瞬沈黙をする。小首を傾げて、呟くように言った。 「チョコがええ」 「チョコ?」 甘いものはそれほど得意ではない横山が、甘い代名詞のアイスを頼むなんて珍しいな、と思ったであろう村上は、しかし全てを悟ったかのような一瞬の間の後に、ふわりと微笑む。優しい顔をした。 「分かった、チョコソフトな。俺もそうしよ」 村上の独り言を聞き留めた他のメンバーが、それでやっと、何かを感づいたかのようにびくりと身震いをした。あぁ、と口の中で呟くもの、思い出したように時計の日付を覗き込むもの、それぞれの反応の後に、声を揃えて、 「村上くん。俺もやっぱりチョコにするー」 その言葉にひと際にっこりと笑った村上が、 「オッケー。ほなチョコソフト7個な!」 大きな声で宣言するのに、いや俺は頼んでないで、と目を丸くした渋谷と、 「持つん手伝いますよ」 意味もなく男前に立ち上がった錦戸が、笑って続いた。
***** 丸1年ですね。
|