a Day in Our Life
2005年11月17日(木) |
missing.(亮雛) |
「my Honey, I miss you」
電話口の錦戸が開口一番、そう告げるのを聞いた村上は、一瞬言葉を失った。 ぱちぱちと瞬きをしながらたっぷりと空いた間で、村上の不信感はダイレクトに伝わったのだろう。村上が何か言う前に、先回りして「ごめんなさい」と錦戸は謝ってきた。 「…切ってもエエか?」 「なんでそんな冷たいこと言うんですか」 笑いながらやっと返した言葉には、笑いながら僅かばかりの不満が返って来る。おまえが急にそんなこと言うんが悪いんやんけ、と村上が言えば、やって寂しいんはホンマやもん、と真顔になった錦戸はそう言った。 真顔になった、と言っても実際に側にいる訳ではないから、村上にとってそう思えた、という事だ。そういう声色になった錦戸が、たぶん電話の向こうで口を尖らせて、拗ねたような表情になっているのだと想像した。最近また忙しい錦戸とは比例して会う機会は減っていて、全く会わないということもないけれど、それでもゆっくりと顔を合わせる時間は確実に少なくなった。そのことを錦戸はふと「寂しい」と思ったらしい。 「アイミスユー、て言うたでしょ?寂しくて、会いたくて、切ないんです」 分かりますか?と錦戸は言った。 切ない、という気持ちが村上に理解るだろうか、錦戸は思う。こんなにも相手を想う気持ち。恋しいと思う、この感情が。 「分かるよ、…たぶん」 彼にしては珍しく、呟くようだったその声に、村上にはきっと分からない、と錦戸は思った。 だって今、側にはいないのに。 …側にいたとしても。村上の考えていることは、村上にしか分からない。村上の全てを知っている訳じゃない。分かったような気になっても、本当の事なんて、本人にしか分からないのだ。 それでもいい、と錦戸は思う。分かったような気になって、村上のことを。都合のいいように理解した彼を、こんなにも好きだと思うから。独り善がりだったとしても、この気持ちに嘘はないから。 「会いたいです」 例え届かなくてもいいと思ったけれど、村上は更に押し黙って、一人ごちるように「俺も、」と呟いた。
***** 許されることならば抱き締めていたいのさ光の午後も星の夜もbaby
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