a Day in Our Life
「久し振り」 「おう、」
挨拶をしながら交わった目線を、珍しく横山は逸らさなかった。いつもなら言葉だけ交わしても目線は合わさない。人の顔を見るのが苦手らしい横山の、それは照れとか性質の問題で、悪気がないと知っているので、そんなことを気にしたこともない。 けれど今、じっと自分の顔を見つめてくる横山に、珍しいな、と思った。 「何?」 問えばいや、とは言ったものの、いまだ追いかけてくる視線は逸れることがない。受け手である村上も、それに物怖じするタイプではなかったので、黙って二人、見つめ合ったままだった。 個人仕事やその他ちょこちょこした要因で、二人にしては珍しく、顔を合わせない日が続いた。もう4年だか5年だかになる週に一回のラジオがあったから、今までは少なくとも一週間に一度、会ってきたのだった。今思えばそれも結構な話だと思うのだが、今回、その週に一度のラジオに村上は来れず、そして重なった互いの仕事はすれ違いばかりで、とうとう丸々一週間、顔を合わすことがなかったのだった。 だからかな、と村上は思った。寂しいだとかそういうことは絶対に言わないタイプだけれど、一週間も会わないということに驚いたのはお互いで、たった一週間、されど一週間。その間に変わったことと言えば、横山の鼻声が少しましになった(ような気がする)ことだとか、村上の肌荒れが悪化した(ような気がする)ことだとか。 一週間振りの顔を、その分を取り戻すかのようにじっと見る横山が、不意に体を揺らした。かと思う間に思いのほか素早く手を引かれて、ベタな言い方になるけれども、気がつけばその腕の中。 「…どないしたん?」 顔を見ることに満足をしたなら、今度はその感触を確かめようと思ったのか。それは村上には分からなかったけれど。横山にしてみても、よく分からなかった。分からなかったけれど、何となく今、無性に村上を抱きしめたくなって。その体をぎゅっと抱きながら。
それは今までだって、違ったことはないのだけれど。 もう二度と離さない。そう思った。
***** SPITZ JAMBOREE TOUR”あまったれ2005”
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