a Day in Our Life
「何でやろなぁ、桜見てるとめっちゃ切ななんねん」
ぽつり、と呟いた村上を振り返った錦戸は、その唇にほんの僅か、笑みを浮かべた。 「そう言って村上くんは、紅葉を見ても切ななるんでしょ?」 心持ち顎を上げて、遥か見上げる村上の目線の先には、今は見えない桜の花びらが見えているのだろうか。分からなかったけれど今、その先にはほんのりと色づいた紅葉が、控えめに季節の移り変わりを知らせていた。そういえば最近は急に冷え込んで、さっそく渋谷と横山は風邪を引いていたっけ。 「そうやって季節に敏感なのはええことやと思いますよ」 「柄やないねんけどな、」 珍しく、でも最近はないのだろうが、茶化すこともなく肯定をされて、村上は少しばかり照れたのかも知れない。自分でフォローした言葉に僅かに小首を傾げた錦戸は、ただ微笑っただけだった。 「そぅでもない思いますけどね。村上くんは寂しがり屋やし、変なところ繊細なんやろな」 変なところ、と言った錦戸に悪気はなかったに違いない。村上も改めて突っ込んだりはしなかった。タフでポジティブなだけではない自分を見透かされたようで、僅かばかり恥ずかしい気持ちにはなったけれど。 「秋は好きですか?」 ぽつ、と錦戸は問うた。なんとなく聞いてみた、そんな気安さで村上の答えを待つ。 「好きやで?食いもんは美味いし、季節はええし、自然は綺麗し、…それに、」 ふと思いついた村上は、一旦言葉を切る。それも含め好きだと思ったことに嘘はない、たぶん。 「亮の誕生日もあるしな」
言えばやや目を丸くした錦戸は、すぐに笑い顔になった。
***** 兄貴プレ誕生日。
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