a Day in Our Life
「いくらでもシバいてえぇよ。痛いけど、それが村上くんに与えられた痛みなら」
真顔で大真面目に呟いた安田に、心底気味悪がった村上は、引き攣った顔を向けた。 「手加減はしとるつもりやけど、痛かったんなら、悪かったって。いくらでもシバけとか、そんなん言いなや。アイドルやねんで?俺ら」 「アイドルやから人を好きになったらアカンとか、そんなん違うでしょ?好きやからえぇ、言うとるんです」 「って。話摩り替わっとるがな…」 「ヒナちゃん。」 やっぱり真顔で、しかも思いのほか意思のつよい声で呼ばれて、はい、と思わず敬語で答えた村上は、真っ直ぐに背筋を伸ばして安田を見た。いつも真面目な安田が、いつも以上に大真面目に見据えてくるのを真正面から捕えて、それでも視線を逸らさない、そういうところがたぶん、安田は好きなのだと、気が付いているのか、いないのか。 「大好きなんです。ホンマに」 「それは…」 もぅ分かったって。と、ため息混じりになった村上の声が、安田に届くか届かないかの間に、そっと近づいた安田に、ぎゅぅ、と抱き締められた。 小さな体には不釣合いな、逞しい腕を大きく広げて、それはもぅ、暑苦しくぎゅぅぎゅぅと抱き締められて、ひと思いに殴り飛ばしてやろうかと村上は思案する。叩かれたいらしい安田にとっても、喜ばしいことなんちゃうの、と。 けれど結局、村上がしたことは。 だらりと腕を垂れたまま、されるがままに抱き締められることだった。最近また、香水を変えたらしい安田が思いのほかイイ匂いがしたことや、抱き締める腕が思いのほか一途だったことや、何より、安田の直球的な一生懸命さがかわいく思えたので。 「結局、甘いねんなぁ…」 あまつさえ、片手を伸ばして先ほどツッコミと称して殴ってしまった頭を優しく撫でる。村上の呟きは安田には聞こえているようで、聞こえてはいなかったようだけれど。
「やからそれが結局、アメとムチや言うねん。分かってへんのは、おまえもや」 一部始終を見ていた渋谷は、呆れたような深いため息を吐いた。
***** レイニーの安田さんのシャカリキさに触発されました。
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