a Day in Our Life
「先に言うとくけど、」
意味ありげに口を開いた錦戸を見上げた亀梨は、黙って続きを待った。 「あの人に手ぇ出したらタダじゃおかへんで」 言われた言葉は予想の範疇だったような、それでいて晴天の霹靂くらいの唐突さで、それはそうやってあからさまに釘を刺してきた錦戸への驚きだったかも知れない。だからと言ってはい、そうですか、とあっさり頷く訳には行かない。 「何それ、それは俺個人に言ってんの?」 それとも、と亀梨は言った。もちろん、と笑った錦戸の視線が舐めるように亀梨を捕える。 「どっちもや。おまえのグループのメンバーにもよぅ言うとけよ」 「あの人はエイトのものってこと?」 「そぅや、」 そもそもあの人、と呼ばれた先輩がそんな風に二人の間で取り扱われる”モノ”ではないのだけれど、まるで流行りモノのように誰もが欲しがっている状況は、当たらずとも遠からじだと思えた。だからこそ錦戸は今、亀梨に向かい合ったのだろうと思う。だから、 「自分だってNEWSと掛け持ちしてるくせに、偉そうに言えるわけ?」 錦戸にそんなことを言われる筋合いはない、と思えたのだった。中途半端に二つのユニットを行き来する彼に、まるで上から目線で言われるのは負に落ちない。もちろんそれが彼の意思によるものでないことは分かっているけれど、そんなに大事なら、なりふり構わず四六時中、一緒にいればいいでしょう? だから、と錦戸は同じ台詞を繰り返す。だから、それが。含み笑いに似た笑い方で亀梨を見る。まるで余裕と自信に満ちた、その微笑い顔。 「だから、俺はあっちの監視も兼ねて掛け持ちをしとるってことや」 あっちはあっちで目ぇ離されへんからな。分かるやろ?と錦戸は笑う。エイトのメンバーは甘いとこあるねん。危機感として、あっちの状況を分かっとらへん。やから、俺が見張っとるんやないか。 「…そぅだったんだ」 挑戦的に向けられた視線を受け止めた亀梨は、無意識にぶるりとひとつ、身震いをした。武者震いだったかもしれない。自分たちはこれから目の前の彼と、その後ろに控える人たちを相手にしていかねばならないのだと思った。勝てる見込みがあるのかないのか、それは分からなかったけれど。だからって不戦敗はしない。 「そう、覚えとけよ」 二十歳を期に随分と変わった印象を受けた錦戸に、負けないと思った。勝とうとは思わない。けれどきっと、負けない。 「分かった、覚えておく」 今はそう返すことが、精一杯だったけれど。
***** 壮大な夢でした。
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