a Day in Our Life


2002年06月07日(金) ごくせんでサクツカな松本+塚本。


 初めて会った塚本くんは、翔くんと同じ髪の色をしていた。

 そんなところばかりが目についた。
 俺自身が力を入れて見ていたドラマでの、彼の演じていたキャラクターよりはややおとなしい金色の髪が、スタジオのライトに照らされていた。この髪の色には馴染みがある。翔くんの金髪もやっぱりライトに当たってよくキラキラしていた。俺はどっしりとした黒髪だから、そういうキラキラ感とは縁遠くて、だからそんな翔くんの金髪の軽さがとても好きだった。
 ドラマのゲストとして塚本くんと共演すると知ったとき、翔くんも驚いただろうけど、俺はそれ以上に驚いた。前前から一度会ってみたいとは思ってたけど、まさかこんな形で会うことになるなんて。9話の撮影に入って、スタジオ入りした塚本くんは俺を見つけてはじめまして、と言った。確かにはじめましてではあるんだけど、俺にとってはもうずっと前から知っているような気になっていたから、不思議な感じがした。短い間だけど宜しく、と差し出された手は、思ったより骨ばっていて力強かった。

 「沢田はズルイよね」

 撮影の空き時間に、台本を眺めながら塚本くんがぽつりと言った。
 「沢田」って言ったけど、それってつまり俺のことで、一瞬自分のことをズルイと言われたのかと思って焦った。俺、塚本くんになんかしたっけ。まだまだ会話だってそんなにしてないのに、ズルイなんて言われるようなことは、言ってもないししてもないと思うんだけど。
 「あ、松本くんのことじゃないよ。慎のこと」
 そんな俺の様子を察したのか、顔を上げてちょっと笑った。笑うとえくぼが出来るんだ。とても素晴らしい発見をしたような気になって、その笑い顔をまじまじと見つめてしまった。
 「…慎。ズルイかな?」
 そんなことを言われたのは初めてだったので、少し驚いた。沢田慎は口下手っていうか、誤解されやすいキャラクターではあったけれど内面は友情に厚いいいやつだったし、それはきっと3D全員が知ってるはずだった。ズルイなんて言われる筋合いはなかった…と思う。それが顔に出たのかも知れない。塚本くんはうーん、と小さく唸って台本を閉じた。
 「だってね、自分は退学を覚悟で教師に殴りかかったくせに、俺=黒崎のことは止めるでしょ」
 そういうのはズルくない?
 「そう、言われると返す言葉もないんだけど…」
 口篭もった俺に、いやいや、だから松本くんのことじゃないんだけどね、と言ってまた笑った。
 「いろんな見方があるってことだ」
 「そうそう」
 性格なんて、ひとつじゃない。不特定多数に同じ自分ばかり晒してるわけじゃないし。沢田だってヤンクミの前でひどく年相応な顔を見せたりする。それと同じように―――ふと、思い付いた。例えば。いま向かい合ってる俺と塚本くんが見てる「翔くん」も、違った形をしているのかな、と。それは当たり前のことのようで、軽く後頭部を殴られたような、少しばかりの衝撃を受ける。
 「このドラマに出ることが決まって、翔くんなんか言ってた?」
 なんとなく聞いてみた。最近は撮影ばかりであまり会う機会がなくて、このことも確かメールで知らせたんだけど、そのときには既に知ってるっぽかったから。塚本くんに聞いたのかなって思った。メンバーには言ってなかったみたいで、相葉ちゃんから即電かかってきたっけ(笑)。
 「あーどうだろ、どんな役?とかそのへんつっこんで聞いてきたくらいで」
 松本くんとかなり絡むよ、って言ったらよろしくしてやって、って笑ってた。
 笑って言う塚本くんの言葉に正直、かなり滅入った。その笑いの下で指なんかポキポキ鳴らしてる翔くんが見え隠れするようで。翔くんはあれで結構ヤキモチ妬きだし、子供っぽいんだ。次会ったときは臨戦体制で臨まないといけないかも知れない。
 「9話が放映されたら俺、翔くんに殺されるかも知れない…」
 力なく呟いた俺を見て、塚本くんはアハハ、と声に出して笑った。なんで、そんなことしないでしょ。
 「そんなことするのが翔くんなんだよー…爽やかに笑いながら刺しそう」
 「翔ってそんなキャラ?」
 さりげなく。
 塚本くんの声が「翔」って呼んだ。唇がかたちどった。なんだかドキリとして俺は思わず、顔を上げる。メンバーはみんななんでだか「くん」付けしちゃうから(それは年上の大野くんもそうだったし)、そうやって呼び捨てにされる翔くんの名前には馴染みが薄くて、なんか違う人みたいで。
 実際、違う人なのかも知れない。嵐にいるときの翔くんと、塚本くんといる翔くんは。改めて思った。不思議な感覚がする。「嵐」のときの翔くんを塚本くんは知らなくて、だから、俺の指し示した翔くん像に首を傾げてみたりする。それでいいのかも知れない。互いに少しだけ共有してる、自分だけの「櫻井翔」を持っている。
 ―――そう思っても、いいよね、少しくらいは。
 大家族の末っ子のような気持ちでそう思う。もしくは親離れ出来ない子供のように。
 お兄ちゃんの恋人に対するときって、こんな気持ちになったりするのだろうか。
 自嘲するように思う。
 俺は寂しいだけなのかも知れない。
 思って、目の前の塚本くんに気付かれないように、少しだけ笑った。





■■■お兄ちゃんのすきなひと。

痛いタイトルつけんなよみたいな(黙)。
書き始めたときはもう少し、違う話になるはずだったんですけど、よくある話で書いてるうちにどんどん違う方向に…。さすがに途中で手が止まって、放置されてたんですけどそれも勿体ない気がして(貧乏性です)続けてみた…んですけども。それにしたってなんじゃあこりゃあー。あたし本当に、そのうち松本ファンに刺される気がします。すみませんすみません。ちょっと書いてみたかっただけなんです。謝りつつ早々に退場。さようなら〜。

あ。ちなみに塚本=堀越?説はよく分からないので、なかったことにしていますご了承下さい。

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