a Day in Our Life


2002年06月06日(木) やったもん勝ち9話予告だけで捏造した沢黒+野田。


 最初に気付いたのは内山だった。
 学校帰りの繁華街。いつものようにいつものメンバーで特に用もなく、ブラブラと通りを歩いていた。その通りの先、そんなに広くもない道いっぱいにたむろした、俺から言わせれば美的センスのかけらもない集団の中に、異彩を放つやつがいた。内山と比べると甘い印象の金色の髪が、その存在を叫ぶように目を奪う。その金髪の下で、鋭い眼差しがこちらを見ていた。目が合った、と思ったその目線は正確には俺の隣りの、慎を見ていたんだと思う。
 「…おい、慎」
 思わず見とれてしまっていた俺は、内山の堅い声で我に返った。左隣りの、頭半分高い位置にある内山の顔をちらりと見上げて、それから反対隣りの慎へと視線を転じた。促された慎の顔は真っ白で、ただ目だけが鋭く数メートル先を睨みつけていた。こんな様子の慎は珍しい。確かに慎は喧嘩っぱやいところはあったけれど、理由もなく、他人につっかかるようなことはしない。
 沈黙したまま、性急に進み出ようとした慎の肩をやんわりと内山が抑える。半歩前に出た内山の後に続いて、慎もゆっくりと歩き出した。瞬きをする間すら惜しむようにただ前だけを、そいつだけを睨みつけた慎の目の中の色に、俺はこのとき気付いていなかった。思えばこのとき気付くべきだったんだ。だけど俺はその空気の鋭さにぽかんとするだけで、ただそいつの顔と、慎の顔を交互に見つめるだけだった。

 「黒崎。なにやってんだよ」

 慎の尖った声がする。心なし責めているような、珍しい声。
 「なにって、関係ねーだろ」
 相手の男は一瞬絡んだ目線を乱暴に裂いて、そのままやりすごそうとした。その肩を、乱暴に掴む。
 「黒崎!」
 「なんだよ!ほっといてくれよ!」
 「黒…!」
 思わず声を荒げた慎の声を遮るようにして、数人が割り込んで来た。ニヤニヤ笑いながら金髪の男を庇うように体を入れる。「しつこいと嫌われるよ?」子馬鹿にしたように言われて、慎の頭に血が上るのが見える気がした。一触即発。ちょっとでも動きがあったらすぐ止めに、もしくは加勢に入れるように、ぐっと体に力を入れた。
 「どけよ…」
 「…行こう」
 同時に発せられた、慎の声と金髪の声が被る。どちらも押し殺したような低い声だった。そのまま慎と内山には見向きもせずに、男は立ち去ろうとする。その背中をやっぱり慎は睨みつけたままだった。ただ立ち尽くす慎の横顔の中に、繊細な感傷が見え隠れする。そこでやっと、俺は思った。責めているようだと思った慎の声は、相手ではなく自分に向いていて。鋭いと思った眼差しは、そうではなくて、―――むしろ慎は、傷ついたような顔をしていた。
 「黒崎!」
 男は一瞬立ち止まって、
 「もう…俺のことは放っておいてくれ」
 消え入るような声で呟いた。慎は身じろぎもしないで、その背中に神経を集中させる。男の姿が見えなくなるまで、ずっとそうしていた。
 「慎…アイツ、あんなヤツラと…何をやってるんだろうな」
 ぽつりと呟いた内山の問いには、ただ沈黙が返るだけだった。





 「で、誰だったの?さっきのアイツ」

 それから慎はフラリとどこかへ行ってしまって、心配したクマが慎について行った。南は女友達の呼び出しをくらって、残された俺と内山だけでファミレスに腰を落ち着けたばかりだった。席についたとたん、待ってましたとばかりに口を開いた俺に、内山が苦笑気味の表情を寄越してくる。
 「アイツは、黒崎って言って」
 「それはさっき聞いた」
 「元白金の生徒で」
 「ふん」
 「元バレーボール部のエースで」
 「ふん」
 「慎の元親友で」
 「…ふん」
 「それから」
 「それから?」
 「元恋人」
 「……?!」
 「………かな」
 微妙に語尾を濁したけど、それでも内山から発せられた言葉がにわかには信じがたくて、俺は目を見張る。恋人…恋人? 初耳のその話自体もショッキングだったけど、それよりも慎が誰かを特定するというのがひどく意外で―――驚いた。
 「あくまで俺の予想だけど」
 と、内山は念を押した。あいつらはそんなこと言わなかったし、そういう事実があったわけじゃないけど。なんとなくあいつらを見てて俺は思ったんだ。内山の目がそう遠くない、1年前を見ていた。なにが好きでなにが付き合うとかって俺、正直まだよく分からねんだけど、それでもあいつらは「そう」だったと思うよ。―――おそらくね。
 「ここにはお前だけだから言うんだぜ。他のやつらには言うなよ」
 慎にだって触れられたくないことのひとつやふたつあんだろ。言って内山はグラスの中のストローをかき回した。飲まれないままのアイスコーヒーはすっかり汗をかき、氷が溶けて、心持ち薄くなってる気がした。内山がなにを考えてるのかは分からなかったけど、特にそれ以上、聞き出そうとは思わなかった。

 どちらも傷ついたような顔をしていた。
 さっきのふたりの表情。金髪の下の大きめな目と、慎の漆黒の目。
 同じ目だったと思った。

 その目がなぜか、頭から離れなかった。




■■■捏造甚だしいとはこうゆうことだ。

今だから出来る捏造ポエムです。6/12PM22:00までの期間限定(笑)。
もちろんこんな展開になるなんて大真面目に思ってるわけではありません。あたしの頭はそこまで溶けちゃいません。まあでも、妄想するのは自由よね!ということで。どうもなりみ…野田は私的に片思いタイプなので(笑)こんな感じでいかがでしょうか。(いかがもクソもあるか) いやね、ごくせん開始から2ヶ月、やっと慎ちゃんでカプを書ける気になったのが嬉しくてつい、暴走しましたよ…。恋する慎ちゃんって絶対かわいいと思うんですけど。いや、それならヤンクミにしとけよと怒られそうですが、ごもっともですが、ハイ。

ちなみにこのエスエスは薫さんから貰った沢黒ポエムを勝手に続けたものです。残念ながらその沢黒ポエムはまだアップされていませんが、いつかアップされる日を待ちましょう〜♪(とか勝手に…)

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