a Day in Our Life


2002年04月12日(金) 痴話喧嘩。(翔潤翔)


 「なにそれ!ひどい!」

 楽屋中に響く大声で、松潤が叫んだ。
 絶対そうくると思ったんだよなあ…だけど後から知ったら余計うるさいし。先に言っておいた方がいくらかマシだろうと判断してのことだったんだけど、言うんじゃなかった、と早くも後悔する。
 「聞いてるの?翔くん!」
 …あー…うぜー…。
 「んな大声出さなくても聞いてるっつーの。だからあ、おまえはロケがあるし、こっちもメンバー全員合う日が明日しかないんだから、しょうがねえじゃん?」
 「メンバーって、よくゆうよ!俺入ってねえじゃん!」
 「バッカおまえは連日のロケだろーが。おまえに合わせてたらいつまで経っても行けねーじゃんよ」
 「それがひどいってゆーの!頑張ってる俺に合わせてやるくらいの心意気はないわけ?」
 「自分でゆうな、自分で!つか、もうチケットも押さえて貰ってるし、トニセンの3人にも明日行きますって伝えてるんだよ。今さら変更出来ないだろ?子供みたいなこと言ってんなよ。おまえはマネージャーさんと見に行きな」
 最後は諭すような口調になっていた。松潤があからさまに口を尖らす。
 「…俺、子供だもん。少なくとも翔くんよりは子供だもん」
 松潤の言葉にため息をついた。これじゃあまるで駄々っ子だ。
 「おまえな…」
 
 「そうじゃなくて。松潤はさ、翔くんと行けないことに拗ねてるだけなんだよ」

 不意に背中からニノの声がした。痴話喧嘩に口出しするのも悪いと思ったんだけど終わりそうにないからさ、と余計な一言を付け加える。
 「なんだったら明日、俺ら3人だけで行くけど」
 「バカ、なんでコイツのわがままに付き合わなきゃなんないんだよ。予定通り俺らは明日見に行く。それでいいな、松本」
 自分の意志以上に強い口調になったかも知れなかった。俺の言葉に松潤は俯いたまま、かすかに頷いた。





 翔くんは冷たい。

 わがままだって分かってた。子供みたいに駄々をこねたって、困らせるだけだと分かってた。だけど、それでも言ってみたかったんだ。それでなくともドラマの撮影続きでゆっくり顔も見れなくて、そりゃあ嵐としての仕事で顔は合わすけど、仕事が終ったらそのままロケにとんぼ帰り、とかで。 
 仕事は楽しいし、久々のドラマだし、やり甲斐はある。
 自分で決めた仕事だから、それはもちろん頑張る。だけどそれとは違うところで、本当はもっと翔くんといたいって、そう思う自分も確かにいるんだ。
 それは俺のわがままに違いない。そんなことだって分かってる。だけどあんな風に、なんでもないことみたいにおまえはひとりで行けだなんて。
 「ちょっと、ひどくない?」
 「なにがひどいんだよ」
 つい、声に出していたらしい。俺の呟きに後ろから声がした。軽く振り返るとドラマの共演者である成宮くんが、不審そうな表情を浮べていた。
 「冷たい人がいるの」
 「ふ〜ん…」
 あまり感心がないらしい成宮くんはそれ以上、特に込み入って聞いて来ようとはしなかった。説明するだけで気が滅入りそうだったので、彼のそういう反応にいくらかほっとする。
 「明日越えちゃうかな、これは」
 ぽつりと呟く。今日のロケはトラブルが重なって、いまの時点でかなり押していた。このまま行くと今日中には終りそうになかった。
 「かもね〜。まあ、なんでもいいけど」
 「お前さ、なんかなげやりじゃない?」
 「そうかな?そんなことないよ。ただ、明日の仕事は午後からだし、だから長引いたところで困ることもないなーと思ってさ」
 「早く会いに行きたい人もいないってこと?」
 成宮くんはへんなところで鋭い。
 会いたい人はいるけど、今日は会えないんだよ。思ったけど、言わなかった。拗ねてるんだと思う。いいよ、もう。今は与えられた仕事を頑張るだけだ。
 「さあね。あ、撮影再開だって」
 あからさまに誤魔化して、立ち上がった。





 「翔くん?どうかした?」

 ムッツリと押し黙ったままの俺に、相葉ちゃんが声をかけてきた。
 渋谷・Bunkamura、シアターコクーン。客席に深く体を沈めて、開演を待つ舞台をじっと見つめた。
 「別に、なんにも?」
 顔は正面に固定したまま、淡白に答える。
 「そう?」
 勘付いてるのか勘付いてないのか、相葉ちゃんは軽く流してそれっきり、反対隣りのニノと話を始めた。話をしたい気分ではあまりなかったので、彼のそういう対応がありがたい、と思った。
 松潤が言いたいことは分かった。別にあいつだって子供じみたわがままだけで、置いて行かれることに拗ねてるわけじゃない。だけど、俺にどう出来た? 俺だけ日程変えて、わざわざおまえと行くほど、俺たちの関係は甘くなかったはずだ。
 軽くため息をついた。
 それでも、言った俺の方がたぶん傷ついてる。
 寂しいとかつまらないとか、そんなことをいちいち思うほど子供じゃないけど。それでもきっと俺だって、松潤も一緒に行きたかったんだ。
 いままでは俺がドラマ三昧で、俺のが終ったと思ったら今度は松潤が撮影に追われて。顔は見れてもゆっくり話をする時間はない。それを辛いとは思わないけど、それでも。
 体が座席に沈む分、思考も沈んだ。そんなことを考えているうちに、不意に客電が落ちて、舞台の幕が開けた。


 「おもしろかったね〜」

 早速、相葉ちゃんとニノが感想談義を交わしているのを尻目に、大野くんと俺は談義とも言えない通り一遍の感想を言い合いながら、とりあえずは楽屋に挨拶に向かった。挨拶と雑談を少し。楽屋を出ると、マネージャーが車を用意して待っていた。
 「どうする?これから」
 なんかおなかすかない?と言い出した相葉ちゃんに、すいた、とニノの声。じゃあなんか食べて帰る?と流れかけた会話をせき止めるように、俺は帰るよ、と言った。実際、特にハラは減ってなかったし。帰りたいような気がした。
 「そう?じゃあ俺らだけ行くね」
 「悪い。じゃあ、俺は適当に帰るわ」
 適当なところまで車を回して貰って、俺だけ先に下りた。じゃあ、明日は何時にどこどこだから、と仕事の確認をして車を見送る。
 駅に向かって歩き出しながら、ポケットの携帯を取り出した。

 「翔くんさ〜、元気なかったね」
 「元気なかったっていうか」
 「痴話喧嘩は犬も食わないっていうでしょ」
 「それは夫婦喧嘩…」
 「似たようなもんじゃん!」
 「まあ、似たようなもんだけどさ」
 車のドアが閉まった瞬間に交わされていたらしい会話を、もちろん当人である俺は知る由もなかった。興味があるんだかないんだか分からない大野くんと、井戸端みたいなノリのにのあい(この際ひとまとめだ)で、憶測が飛び交っていたらしい。
 「あ!さっそく携帯いじってる!」
 後部座席から振り返って、携帯を取り出した俺を相葉ちゃんが目ざとく見た(らしい)。
 「松潤にメールだね!」
 「素直じゃないからね〜翔くん…」

 ・・・放って置いて下さい(涙)。

 取り出した携帯をじっと見つめて、おもむろにメール作成画面を開いた。
 …特に、用事はなかったけど。(いや、あると言えば確かにあるが)
 喧嘩をしたとも思っていないので、仲直りともちょっと違う。だけど、この時間もたぶん頑張ってるであろう、あいつに一言だけ。
 慣れた操作で指を操って、送信、にカーソルを合わせる。躊躇もなしに決定ボタンを押して。二つ折りのそれを閉じた。
 「さて、」
 今度こそ、駅に向かって歩き出した。





 撮影の合い間、遅い晩御飯(と言ってもロケ弁だけど)を取っていたら、携帯が震えだした。電話かな、と思って見るとメールだった。何気なく受信フォルダを開く、手が止まる。
 『今、終った。面白かったよ。ロケ頑張れ。』
 それだけの淡白なメールだったけど。
 「・・・・・ちぇっ」
 舌打ちをした。終演時間くらい、知ってるよ。
 翔くんはズルい。それだけで嬉しくなってしまう俺のことなんか、きっとお見通しで。それに案の定顔が緩んでるであろう自分を自覚した。
 「顔、歪んでるよ」
 正面でやっぱりロケ弁を食べる成宮くんが、ニヤリと片唇を持ち上げた。ああ、この笑い方、ドラマでよく見たなあ。あれ、むしろ地だったんだ。新事実。
 「歪んでるのはもともとですから」
 憎まれ口を叩きながら、顔がほころぶのはどうしようもない。たったこれだけで、まだ続く撮影もぜんぜん頑張れそうな気がするからゲンキンだよなあ。
 「分かりやすいのって、おまえらのグループの共通事項だったんだなあ…」

 成宮くんの呟きを、俺は聞き逃した。





■■■長すぎました(黙)。

12日のトンカツロックに松潤以外の嵐メンバーが見に行ったと聞いて、単純に拗ねる松潤を連想して書きかけたポエム…が放置されたままになっていたので続けてみたら、どうしようもなく纏まらなかった(無言)。書いていてこんなに不毛な気持ちになったのはこれが最強だ…。駄文も甚だしくてすみませんね!(キレ) しかもイメージ先行で書くのは本当によくない。成宮くんのことなんて、正直どんな話し方をするのかすら知りません。どうやって勉強したらいいんだ。

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