a Day in Our Life


2002年02月18日(月) 木更津5話。特攻。(バンビ)


 「一生のお願い!」

 頭の前で両手をぴったり合わせて、きっちり45度、上半身を折り曲げた。頭を下げた先にはきょとんとしたモー子の顔。
 「え〜〜いいけど〜、バンビそれも重いよぉ?」
 うるさいほっといてくれ。





 やってやるよ、一週間でやってやる!
 その言葉に嘘はなかった。俺はやる気だった。燃えていた。
 ただし、その相手がみんなが思ってる相手じゃないだけで。
 モー子じゃないよ、言っとくけど。





 「今日…会うんだよね」
 夢見心地を装ってそう言った。案の定みんなはキョトンとした顔をしている。ふふんザマアミロ。俺だってやるときゃやるっつの。
 ちらりと隣りのアニの顔を盗み見る。アニは一瞬驚いた顔をして、それから少し顔を歪めて、それからやっと笑った。
 おっ、脈あり。
 今までさんざん童貞だの重いだのバカにされてきた俺だったけど、ぶっさんの一言で決意した。つーか目が覚めた。男なら勝負だ。それでモー子に頼んだ。


 『俺と付き合ってるふりをしてくんない?』


 モー子は一瞬意味が分からない、って顔をして(バカだからなあ)それからやっと理解してなんで?って聞いた。それを聞くか。言うか俺。
 「・・・・・。ちょっと、賭けに出ようかなと思って」
 「なんの?」
 「俺の恋路の」
 「バンビ、モー子のこと好きじゃなかったんだあー」
 モー子がさっきより驚いた顔をする。あ、マズい。
 「って、知ってたけどね?バンビアニのこと好きなんでしょ!」
 げっ。
 「バレてる?!」
 「だあってバンビ、分かりやすすぎるんだもん」
 見ててまる分かりだよぉ?アニ以外みんな知ってると思うよぉ。
 「・・・・・」
 ……そうだったのか…(汗)。
 「あーバンビバンビ、大丈夫!アニだけは気付いてないと思うから!」
 少しばかり(いや、結構多大に)ショックを受けて、ガクリと項垂れた俺を見て、フォローをしてるつもりらしい。ウン、タブンね。アニ以外はね。
 アニのあの鈍感さは、一種感動的だった。童貞なんてとっくに捨てて、経験だけは豊富なアニは、経験だけが豊富で恋愛感情にはてんで疎かった。特に、自分に対する好意というやつに。
 俺、結構好き光線出してると思うんだけどなあ。
 ぼんやりと思う。アニとの付き合いもそこそこ長いけど、アニがそれに気付いたことはただの一度もなかった(と思う)。きっとアニは今でも俺がモー子を好きなんだと信じて疑ってないんだろうな。
 いや、モー子も好きなんだけどね。それは手に届かないものを好きみたいな。モー子を好きでいることが好きなんだ。分かるかなあ。微妙なんだけど。
 だからきちんとした意味で、俺が好きなのは、いつからかアニだった。
 どこがよかったとかもう、分かんないんだけど。
 俺はこの通り童貞だし男が好きなんて余計言えなくて、だから今も童貞で、アニは俺を童貞童貞ってからかうけど、分かってないんだよ。
 この俺が21にもなってまだ童貞なのって、誰のせいだと思ってんの。
 ああもうホント俺、ヤバいなあと思うけど。
 女とやりたくないわけじゃないんだけどね。そうなんだけど。
 なんか。
 ・・・・・。


 「バンビ〜バンビってばぁ〜」

 うっかり考え込んでしまっていたらしい。呼ばれて我に帰るとモー子が俺の顔を覗き込んでいた。
 「もお〜。アニのこと考えてたんでしょぉ〜」
 ご名答です。ゴメン。
 いつでもどこでも考えてしまうのです。
 恋する男は乙女なのです。
 「…いいよ?」
 俺の目を覗き込んで、にっこりと笑った。かわいいよなあ。やっぱり。
 「いいけどバンビ、やっぱり重いよぉ?」
 うるさいだからほっといてくれ。






 モー子と付き合うことになりました。

 モー子を隣りに、照れたような表情を演出した。
 マスターとぶっさんはニヤニヤしていて、ああこりゃバレてる、なんて直感した。それともモー子がしゃべったのかも知れない。まあなんにせよ、邪魔さえしないならいいよ。俺のことは放っておいてくれ。うっちーは分かってるのか分かってないのか、とりあえず仲間が増えたーと喜んでいるようだった。それでアニは。
 アニだけ心底・驚いたような顔をしていた。本当に付き合うなんて思ってなかったんだろうなあ。その根拠は、どこから来てなにに起因してるんだろうね。
 少しでも妬いてくれてるんだろうか。
 少しでもショックだーとか思ってくれてる?
 そうだったらいいのに。
 そのために俺は、出来る限りモー子とイチャついて、バカップルぶりを演出する。
 それでアニが傷ついてくれたらいいのに。
 俺が好きだって、気付いてくれたらいいのに。


 
 この俺の捨て身の賭けの行方は、まだ分からない。





■■■「ある意味・峰不二子ってことで」

はいっ、木更津5話捏造第三弾ですー(超笑顔)。
あははもうアホだ、あたしアホだーとは自分でも思ってます。5話が面白かったけどそれなりに不満だったので、ありとあらゆるこじつけを捏造してみました。どこまで言ってもモー子がダシですみません(笑)。いやねどうなんだろう実際。とか思って。バンビはモー子のどこが好きなんだろうね。バカなところが好きなのかなあ。でも間がもたない子と一緒にいて楽しいのかなあ。とか思うにやっぱりあたしはモー子はぶっさんとお似合いだと思うのですよ。エンヤを知らないもの同士、木更津を愛して木更津に生きるもの同士、いろんなところが一番似合ってる気がするんだよなあ。バンビはいろんな意味で本当にコドモだから、欲目なしにアニがいいと思うんだけどなあ(笑)。アニは適度に優しいでしょう。バカなことをしても目を瞑る術を知ってる。見てみぬふりが出来る。そういうところで。ああ、マジメに語っちゃったな。そうゆうわけでバンビアニなのです。よく分かりませんか。

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