妄想日記 

2002年03月13日(水) 寝顔(バンビアニ)


「ちーっす」
久々にマスターんとこ顔出したら、珍しくマスターだけしかいなかった。

「お、バンビ。珍しいな、一人なんかよ?」
「ん〜モー子は今日バイト」
「だから一人寂しく飲もうってことか。」
「寂しくは余計!」

笑ってるマスターを睨みながらソファに近づく。
まあ、ヒマだからってのもあったけど
だけど俺がモー子とつきあってから、仲間と飲む機会も少なくなったし。
みんキレなの顔見てないなあって思ったから、今日はきたんだけど。
今日に限って誰もいないし。
タイミング悪いの〜。
なんて思いながらソファに座ろうとしたら、そこには先客がいた。

「なに、どうしたの」

キイに染まった金髪の頭が、ソファに転がっていた。

「春の大会、優勝しただろ?」
「うん」
「それでアニの監督っぷりが認められたらしくてさ。ドラ猫が戻ってきたってのにアニ続投させられてるらしい」
「マジ?」

そういえば、春の試合終ったってのに姿見ないなあと思ってた。
マスターんとこくりゃ必ず揃ってたのに、アニの姿だけ見えなくて。
なんでだろうって思ってた。

「センコーは期待してくるは、純はうるうさいわで遊びにも行けないわでとうとうキレたらしい」
「そんで、逃げてきたってわけ?」
「そ。しっかしここじゃすぐ純にでも見つかるのにな〜」


ただでさえ「アニセンサー投入」なんて言われてる純だ。
こんな、誰でもアニの行き先の1番に思い浮かぶであろう場所に隠れても無駄だろう?




「つーことで、アニのお守頼むな」
「はあ?」
「買いだし行きたいんだけど、アニがこれじゃん?だからさ」
「まあ、別にいいけど」
「そうか!?じゃ、頼むな〜。」

マスターはいそいそと出て行った。
残ったのは、俺とアニだけ。
二人きりになった。
二人だけって、結構久々な気がする。
いつもぶっさんとかうっちーがいたから・・・・それにマスターは必ずいたし。
それもいない、本当に二人だけの空間なんて、高校んとき以来じゃねえ?
なんか、そう思ったら落ちつかなくなった。
アニと、二人きり。
しかも、相手は寝てる。
据え膳食わずは男の恥ていうし・・・・って据え膳ってなんだよ!?
わ〜!!今のなし!




「ん・・・・」

ふいに聞こえてきたアニの声に、びくっと肩を竦ませる。
起きた・・・・?
顔を覗きこむと、アニはまだ眠っている。
すやすやとした寝息を聞いて、ホっとした。
別に起きてもいんだけど・・・・
だけど、勿体無いような・・・・

「あ〜・・・コイツまだ目冷めないのかよ〜。」

不意に思い浮かんだ気持ちを書き消すように、他のことを考えようとする。  
だけどそれは余計アニのことを意識してしまうようで。
なんとはないしに覗いた寝顔に目を奪われてしまった。
まつげ長いよなあとか思い始めて、
段々と下へ下っていって、そして目についたのは、キレイな赤。

「相変わらず、唇赤いよなあ」

唇にリップをつけたわけじゃなく、口紅を塗ったわけじゃないのに。
アニの唇はきれいな赤に染まってて。
それが女の子みたいで、ドキっとしたりしたけど。
今思えば、あれは唇ってだけじゃなく、「アニの唇」だからドキっとしたんだろうって思う。
だって、他の人がどんなに魅惑的な唇の色してたって。
アニを見たときの思いには叶わないだろうって思った。
それはつまり。
唇の色うんぬんじゃなく。
アニだから、なんだと思う。
アニが関係してるなら、どんなものでも愛しいし。
大事にしたいって思う。


「あ〜あ。なんか末期って感じだよな」

寝顔を見れて嬉しいなんて思うんだから。
かなり重症だと思う。

そのまましばらくアニを観察してたけど。
不意に聞こえてきた寝言に、ショックを受けた。


「ぶっさん・・・ダメだよぉ・・・」
 
はあ!?
ぶっさんって・・・ダメって何がだよ!?
どんな夢みたんだよぉ!


アニの呟きに、一気にテンションが下がった。


そばにいるの俺なのに。
なんで、ぶっさんの夢なんだよ!
夢でさえ、ぶっさんに負けんのかよ、俺!


「おい、アニ!!」
今すぐ起こして真相を聞きたかった俺は、アニをゆすって起こした。
すると、何度か瞬きしたあと、ゆっくりと顔を上げた。
「ん・・・・なに・・・・」
「今なんの夢見てたんだよ!」
「は・・・夢?・・・・見てた・・・?」
「見てた!寝言言ってた!」
「寝言・・夢・・・なんだっけ・・・・」
まだ寝ぼけてるのか、ぽやんとした顔を浮かべながら答えるアニ。


あ〜かわいい・・・かも・・・・


なんてんじゃなく!
夢見たのにまったく覚えてないのかよ!!
そりゃ、夢って忘れること多いけど・・・
だけど、今さっきまで見てたものなのにさ。

「なんでそんな気になってんの?」
「え・・・別に」
ぶっさんの名前呼んだからなんて、言えるわけないし。
仕方なしに、曖昧に答える。



「つか、喉渇いた〜ビール!」
「今マスターいないから、飲みたい放題だよ」
「マジで!?」
アニは飛び起きると、急いでビールをグラスに注ぐ。
俺も一緒にカラになったグラスにビ―ルを注ぐ。

「じゃ、かんぱ〜い!」
「何にだよ!」
「う〜ん・・・・童貞に?」
「もう違うっつーの!」
「じゃ・・・・脱・童貞にかんぱ〜い」
「なんだよ、それ!」

俺が怒ると「まあいいじゃん」なんて笑いながら言う。
納得いかないけど。
童貞うんぬんは置いといて。
こうやってアニを独占出来るなんて滅多にないから。
まあ、いいかな〜なんて思った。


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薫 [MAIL]

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