妄想日記 

2002年03月02日(土) キミといた季節。(ぶっさんアニ)(ラブラブですご注意)

春の甲子園も無事終わり、夏の大会に向けて毎日練習に明け暮れていた。
そんなある日、校庭の隅で知ってる人影をみつけた。

「ぶっさん!」

俺が叫ぶとぶっさんも気づいたのか、手を振ってくれた。
ここしばらくいろんなことがあってぶっさんと会ってなかったから、久しぶりに会えて嬉しかった。
それに、こうやって会いにきてくれたのが、すっげ嬉しかった。

「ぶっさん、どうしたの?」
「ん〜ちょっとな。練習何時に終る?」
「もうそろそろ終るよ。何、どっか行くの?」
「どっか行くっていうか、ちょっと付き合ってほしいとこあってさ」

少し照れくさそうに言うぶっさん。
なんだろ?どこに行くつもりだろ?
ぶっさんの態度が気になったけど、わざわざ俺を誘いにきてくれたことがすっげ嬉しくて、残りあと少しだった練習をその時点で切り上げてしまった。
純がすっげえ目で睨んでたけど。
だって、この頃真面目に練習つきあってたし。たまにはいいじゃねーか。
せっかくぶっさんが来てくれたんだ。練習してる間も勿体無いっつーの。





「相変わらずだな、不良監督」

二人で歩いてたら、ぶっさんが笑いながら言ってきた。

「その呼び方やめろよな〜!これでも最近は真面目にやってんだぜ?」
「そうかぁ?」
「そうなの!」

俺が強く言うと、ぶっさんはニヤニヤ笑ってる。
ああもう!全然信じてねえって顔だよ〜。
ホント、マジでちゃんと練習参加してるのに。
朝練なんてもんにも参加してるし。
・・・・・まあ、同じ屋根の下に野球部のエース様がいるからなんだけど。
朝は純が起こしにくるし出掛けようとするとチェック入るし。
帰ったら帰ったで「明日も早いんだから寝ろよ」って無理やり寝かされるし。 
つーか猫田が戻ってきたんだから俺は用なしなはずなんだよ。
それをみんなが頼むから仕方なしに続投してるってのにさ。
それなのにぶっさんには不良とか言われるし・・・・・

「おい、拗ねるなよ」
「拗ねてねーよ!・・・・で、どこ行くんだよ」
「あ〜もう少しで着くはず・・・・・あ、あれ見ろよ」

ぶっさんが指差したほうを見ると、そこは一面ピンク色をしていた。

「あ、桜・・・・・」

桜が満開に咲いていた。
いつも通ってる道なのに、今まで気づかなかった。


そこは桜の木がずらっと立っている公園で、毎年そこで花見してた。
まあ、花見っていっても、それを理由に飲んでるだけだけど。
学校帰りによく通るとこだから、毎年満開になると気づいてたのに。
だけど、今年は全然気づかなかった。
辺り一面咲いてるのに、気づかなかった。
桜が咲くことさえ、気づかなかったくらい忙しかった?
・・・・・いや、違う。




桜が咲く季節になってほしくなかったから?




なんでだか、そう思った。
理由はわかんないけど、ずっとそう思ってた。






「なんか、さ」
「ん〜?」

しばらく二人で桜を見上げてたら、ぶっさんが呟いた。

「オマエとこうやってまた桜見れるとは思わなかったと思ってさ」
「ぶっさん・・・?」

いつもより少し落ちついた物言いに、珍しくぶっさんがシリアスにしてるんだってわかった。
桜見てシリアスになるなんて、ぶっさんらしくねえじゃん?
そう言ってからかってやろうとしたげど、振り向いた先にあった顔があまりにも真剣で、俺は何も言えずに黙ってしまった。

「余命半年だったしな。もう桜拝めないだろうって思ってたし」
「ぶっさん・・・・」
「だから、またオマエと桜見れて嬉しいとか思っちゃってるわけよ」

ああ、そうか。
俺も、ぶっさんと同じ気持ちだったんだ。
余命半年と言われたぶっさんは、桜が咲く季節にはきっといないんだろうって思って。
だから、その季節になるのが怖かったんだ。
怖くて、春になるのを・・・・桜が咲くのを無意識に考えないようにしてたんだ。
ぶっさんが、消えちゃうから・・・・・・


「あ〜あ〜すぐ泣く」

言われて初めて気づいた。
何時の間にか泣いてたんだ、俺。
泣いた理由が理由だから、なんか恥ずかしくてぶっさんの顔まともに見れない。
けど、ぶっさんが困ったように笑うから、俺は慌てて涙を止めようとした。

「オマエ、ホントよく泣くよな」
「だって、仕方ねーじゃん!ぶっさんが変なこというからさ!」
「変なことってなんだよ!だいたいなあ、男は泣くのを堪えるのもんなんだよ!」
「なんだよ!ぶっさんだって翔さんの映画見ていっつも泣いてるじゃんか!」
「馬鹿、それはしょーがねえだろ?翔さんの映画見て感動してんだから」

なんだよ、その理屈!
だいたい俺を泣かしたのはぶっさんじゃん!



そう言ってやろうかと思ったけど、止めた。
せっかく楽しい気分なんだし。
それに、今年もぶっさんが隣にいてくれたから、いいや。
満開の桜を、ぶっさんと見れたから、それだけでいいや。






ねえ、ぶっさん。
こうやって、来年の桜も一緒にみたいよ。


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薫 [MAIL]

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