2002年02月28日(木) |
最後の時(サクツカ) |
「もうすぐだね」 隣で高史が呟いた。
今日は金曜日。 俺達が出演してるドラマの最終回の放映日だった。 キャッツのメンバーが映る、最後の日。 とうとう、この日がきた。
あっと言う間の三ヶ月だった。 12月に始まった撮り。ほとんど毎日木更津に通って、いつものメンバーにあって。 そんな繰り返しだったから、いつのまにか忘れてた。
始まりもあれば、終りがくることを。
クランクアップの時になってやっと気づいたこと。 毎日当たり前のように逢ってた高史とも、これで最後。 また明日から出会う前の生活に戻る。 俺は嵐のメンバーとしてアイドルとして、高史は俳優として別々の道を進む。 偶然逢えるとか番組で一緒になるなんて早々ないことだ。 もう、約束なしで逢えることは二度とない。
怖かった。 携帯もメルアドも聞いた。 毎日メールのやりとりしてる。 けど、これもドラマで一緒にやってるからじゃないか。 終ったら、自然となくなってしまうんじゃないかって、思った。 高校の時の友達と連絡取り合わなくなったように、高史とも繋がりがなくなってしまうんじゃないかって。 そう思ったら、すごく怖くなった。 だから最後の日、最終回を一緒にみようと約束した。 小さなことでも約束してれば、高史との繋がりは消えないって、思った。
「終っちゃうんだよなあ」 「・・・うん、そうだね」
終っちゃう。 その言葉が胸に突き刺さる。 あと少しで始まる。 これで本当に終ってしまう。 バンビとアニの、物語が。 俺と高史が出会ったキッカケになったものが、終ってしまう。 夢のようだった楽しい三ヶ月が、形もなく消えてしまう。
「でも、俺達はこれからだよね」
高史が俺の手をぎゅっと握りながら言う。 それに俺もぎゅっと握り返す。
そうだ。 バンビとアニの物語は終ってしまうけど、俺と高史の物語はこれからもずっと続いていく。 まだ始まったばかり。 まだ、三ヶ月しか一緒にいてないんだから。 これからもずっと、一緒にいるのだから。 だから、寂しいなんて思わなくていい。 不安になんてならなくていいんだ。 逢いたい時には逢えるんだから。 隣にはいつでも高史がいる。 これからも、ずっと・・・・・・
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