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なじみの酒屋に入るとビートが声をかけてきた。 「兄貴だぁ。お姉さん語部様になられたとかでおめでとうございます。」 「あぁ、、、」 「今夜の集まりにはこられるんですか?」 「たぶんな、、仕事しろよ無駄口たたいてると怒られるぜ。」 「はい、じゃ夜にまた。」 いぬっころみたいに走って仕事にもどるビートを見送りながら、ため息が出た 「みんながビートみたいなら簡単なんだけどな。」 「何が簡単なんだい?」 振り返ると酒屋の若女将が立っていた。 「つぎはソルトか・・・珍しいな、ここにいるの」 「そりゃ、ばぁばに頼まれた店だからね。仕事はするさ。」 「で、今日はばぁばは?」 「ああ、奥でいつもの仕事してるよ」 「占いか・・・流行ってるんだな」 「この辺で占いできるのはばぁばだけだからね。なにか飲むかい?」 「ああ、ビールでいいや」 「けち臭いねぇ。もっといいの飲みなよ。語部様の助手なんだからさぁ」 「関係ねぇよ。」 ドン!という音とともにジョッキがカウンターに置かれる。 今日は一気に飲める気分じゃないからと思ってちびちび飲んでいたらソルトとの会話を聞いていたのか、印刷屋が酔ってきた。 「あなたがアーク様の弟様ですか?」 「あぁ」 「どちらへお話を集めにいかれますか?」 「決まってねぇよ。仲間も見つかってねぇし。それどころじゃねぇし。」 「・・・・なるほど、そのビールはおごらせてください。私はジョルレと申します。もしできれば旅の際はお連れください。」 「・・・・・できねぇよ。語部様に伝える前に全部おまえが印刷しちまったら困るだろうが。」 「ははは・・・確かに。でも必ずついていきますからね。では」 旅に出れるかどうかもわかんねぇよとつぶやきながらまたちびちび飲みだした。
ようやく飲み干したころにソルトが声をかけてきた 「みんな集まったよ」 「そうか」 酒屋のカウンターを越え、裏口から外に出るといつも集まっている地下への扉がある。 3度扉をたたき声をかける「酒屋だ」 「誰の紹介だ?」「ソルト」「入れ」扉が開く。 「今変わったんですぜ。アルクさん。アルクさんの声じゃなきゃあけねぇところだ」しわくちゃな顔で笑いながらアンツィじいさんが言う。 「悪いな。じいさんの耳が達者なうちでよかったよ。今夜限りでもうここにはこないと思うがな。」 「大丈夫です。アルクさんは、また戻ってきますぜ。あんたにまだ血の匂いはしてねぇ。」 「ははは、ありがとう。その言葉信じるよ。」
階段の途中にウルフが待っていた。 「別れの言葉考えてきたか?」 「なんていえばいいかわかんねぇな。」 「まぁ、遺言きかねぇ、なんて野暮はしないからよ。」
やがてみなが集まっているところより一段高い所に出た。 「ウルフばんざ〜い!!」誰かがほえる。 「ぅおおおぉぉぉぉぉ!!」 みんなの騒ぎが収まったところでウルフが言う 「今夜はアルクのいや、もとウルフの処分を決めてぇ」急にざわつきが消えた。 「語部様の助手ってことで浮かれてやがるが掟は掟だ。しかもアルク本人が決めたことだ。死ぬか捕虜にならなけりゃ総領はやめれねぇ。それなりの処分が必要だと思う。どうだ、みんな」誰も答えない。 「みんなの意見を聞く前にアルクの言い分を聞く。」 こんなことしても誰かはついてくるだろう、誰かが許しを乞うだろう。そんな甘いやつらを揃えたつもりはない。ウルフが言うことはもっともだ。どんな理由を言おうとも俺の処分は決まっている。 「言い訳はねぇよ。みんなに任せる。」 「と、言うことだ。」 「別れの言葉を!!」ソルトの声だ。 「別れの言葉を!!」ビートの声だ。 やがてその場にいる全員の声になった。 「言ってやれよ」とウルフ 「・・・・・俺は国を捨てる!!1週間後戻ってこれるかわかえらねぇ旅にでる。語部様の助手なんてやつぁ生きてるっての聞いたことがねぇ。だからこの場で俺は死んだと思ってくれ。」 「それだけでいいのか?」 「ああ」 「国を捨てるって言ってるが、おめぇらそれで納得できるかぁ?」 「できないねっ!!」ソルトだ・・・女戦士だからこんなことには厳しい。 「じゃぁ、どうするんだ?」「1週間後、国を出るって日に処刑だね。」 「ほぉぉぉ。おまえがやるのか?」「あたしでよければやるよ」 「よし、それはまたあとで話し合おう。みんなはほかに意見はないか?」 「特に意見はないようだな。アルク、おまえ帰っていいぜ。あとで知らせをやるよ」 「わかった。」 短い夜は明けていった。
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