そっと唇で食んだ水は 分厚く柔でひんやりとして 寄せては返す血潮に合わせ 膨れ上がっては萎んでいく
碇の付いた腕を掲げて 空気を掬って掻き分け掻き分け 少し左に傾きすぎると そのまま地べたを恋しく想う
私は裸なのだから 砂利の不快感を恐れずに 床をびたんと踏みしめて 跳ねる雫にただ見惚れていればいい
沁みないように瞼を閉じたら まばたきの音が途絶え 舌の上を風が過ぎ去って 喉まで真っすぐ抜けていく
腹の底で燻る花が 風に煽られ大きくなって ゆらゆら花粉をまき散らす ぐらぐらと世界を覆う とうとう口から漏れ出た炎は 世界を赤い闇に染める
涎がつうと垂れ 私がはみ出す まるで生まれたてのように うしろへ、うしろへ
柔らかいと温かいの違いが分からず 明るいと痛いがまるで同じに思えて このまま文字を放し飼いにすることを 私は眠りと呼んでいる
|