そっと唇で食んだ水は 分厚く柔でひんやりとして 寄せては返す血潮に合わせ 膨れ上がっては萎んでいく
碇の付いた腕を掲げて 空気を掬って掻き分け掻き分け 少し左に傾きすぎると そのまま陸地を恋しく想う
私は服を着ているのだから 砂利の不快感を恐れず 足をびたんと踏みしめて 跳ねる雫にただ浸っていればいい
沁みないように瞼を閉じれば まばたきの音が途絶え 舌の表面を風が過ぎ去って 喉まで真っすぐ抜けていく
柔らかと温かが似て 明るいと痛いが混ざり 漸く言葉を放し飼いにする まるで孵ったばかりのように
涎がつうと垂れ 私がはみ出す まるで還っていくかのように
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