ハルは誰にでも優しい いわゆる博愛主義者の如く 美しさを鼻にかけることなく 儚げな香りをまとってほほえみ 気紛れな手でいともたやすく 別れの切なさに震える乙女の頬を撫で 新たな門出に向かう若人の背を押す
ゆえに誰もが凍えながら君を待ち侘び 君が去るのを惜しむのだろう
どれだけ皆に愛されようと 決してひとところに留まろうとせず 飄々とした足取りで音もなく通り過ぎ 後には痕跡さえ残さないから 苛烈な日差しにつむじを焼かれた者は 果たしてあれは幻ではなかったのかと 自らの記憶を疑う羽目になる
ゆえに人々はあらん限りの言葉を尽くして 君との思い出を記録するのだろう
寄り添うように温かな雫を降らせ いっとう華麗に散る花弁を贄に 人の涙を美しい過去に変えてしまう 優しく残酷な季節にこの詩を捧ぐ
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