おちょこの日記
DiaryINDEX|past|will
葬儀の最中も泣いてばかりで声をかけてくれる人の顔も分からなかった。 ただ、頭を下げ続けた。
普通、葬儀では喪主と施主が前に出るが母は違った。 本当の家族だけで、つまり母と兄二人とアタシで前に出た。 兄のお嫁さんたちには申し訳ないが、母にとっては家族はこの形なのだ。 立ちながら足元が揺れていたが必死で立っていた。
何でこんな事になってるんだろう? 父が癌と判ってからまだ半年だ。 東京の病院から戻って2週間しか経ってない。 体力の回復のためって言って入院してわずか6日だったのに。
何故、アタシは此処に立っているの? 何故、なぜ、何故!
思いっきり泣いていた。 出し惜しむことなく、心から泣いていた。 目から血が出そうだった。
ようやく通夜が終わった。 アタシはかけてくれた声をほとんど覚えていない、今も。
お通夜の後、式場に泊まり込む遺族関係者たち総勢40人余り。 さすが、おちょこ親族、酒豪溢れるといった感じ。 早々に色んな種類の酒が足りなくなり、下戸の従兄が使いっ走っていた(笑)
父の親友が遠方から来てくれていた。 お通夜の後も泊まって父と酒を飲むと言った。 酒もすすみ酔いも回ってきた頃、大きな声で親友が言った。
おい!飲んでるか!俺はお前の分も飲んでるぞ! お前、電話で大丈夫だって言ってたのに、あと10年は生きるぞって言ったのによ! 寂しいなぁ、嘘みたいだなぁ!聞こえてるか!何か言ってくれたらなぁ・・・。
すごく寂しい事だ。 人が死ぬって事は大きい。 家族じゃなくても、親しければなおさら。
お父さん、たくさんの人が来てくれたよ? 見てたよね? すごいね、嬉しいね・・・。
少しだけ涙がおさまったのでカズに電話した。 大丈夫か?って言われた。 大丈夫じゃないけど大丈夫。 カズは笑った。 泣きながらでも頑張れ!と言われた。 今日が最後だろう?とも言われた(!) 少し意識が戻った気がした(笑)
側に居てやれたらいいけど、明日当直だ。電話してもいいからな、いつでも。 嬉しかった。 不器用な感じの優しさに安心した。
いてくれてありがとう。
その夜は結局、眠れなかった。 棺の中の父をずっと見ていた。 やっぱり笑ってる。 顔のところの窓は厚い透明のフィルムがあってもう触れない。 それでもそのフィルムに手を当ててずっと見ていた。
だいぶ酔っていたおじさんがそんなアタシを見て号泣した。 寝ていたおばさんがうるさい!と怒鳴った(笑)
結局、兄弟3人で朝まで起きていた。 アタシは父が亡くなった日から今日が来るのが怖かった。 起きていながらずっと夜が明けなければいいと思っていた。
それでもこの日が来るのは止められないんだ。
今日は父が肉体を失くす日。
もう、二度と父の姿を見ることができなくなる。
|