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2003年11月08日(土) 『欲望という名の電車』at青山円形劇場

演出:鈴木勝秀
<出演>
ブランチ:篠井英介、スタンリー:古田新太、ステラ:久世星佳
ミッチ:田中哲司、ユーニス・ハベル:花山佳子、
スティーブ・ハベル:石橋祐、集金人:吉守京太、
ゴンザレス:山崎康一、物売りの男:永島克、医師:鈴木慶一

前回が『欲望と〜』初体験でした。
でも、大竹ブランチがあまりに強くて哀しさをあまり感じず、
堤スタンリーが かっこ良すぎて うっとりしてしまい、
気づけば、ブランチの嫌悪や恐怖、ステラの複雑な思いなどに
感情移入しそびれてしまったところがありました。
ただ、2階まできっちり作り込んで一目で分かるセットや
上手の張出し舞台の上下で洗濯女風の女が歌う転換の間など、
入門者に優しい舞台で、とても有り難かった覚えがあります。

対して今回は、青山円形劇場。
下手にハケれば外に出かけたということだけれど、
上手にハケれば2階に上がったということだったりする。
周囲300°くらいは観客に囲まれた何もない舞台に、
唐突にフランス語をしゃべる人が現れて長くしゃべり、
続けて役者さんたちが家具や荷物を持ってきてセットを作る。
奥側の高くなった、舞台のベッドのある部屋は ともかく、
どこからでも見える丸い舞台の部分に、オープンカフェのような
椅子や机、タンスやお酒のケースなんかを転がされても、
室内だという実感がわくまでには少し時間がかかる感じ。
分かってくると逆に、生暖かい湿った風を感じたりし始めて
照明の強さが非常にリアルに風景を見せるようになるけれど。
そういった点では、ちょっと難易度アップ?と思ったりも。

そして、演者は絶対的に良かった。とても満足。
何よりも、スタンリーが非常に自然だったのが嬉しかった。
特に粗暴なわけでもなく、かっこ良いわけでもなく、ごく普通。
ブランチにとっては耐えがたい彼の行動も、彼にとっては、
地に足の着いた当たり前の生活と当たり前の発言だと感じる。
ステラの中のベルリーブのような世界も含めて全部まとめて好き。
互いの違うところも そのままに大切にし合って生きていける。
ステラの方も、スタンリーの中にある耐えがたさも含めて、
みんな好きなんだろうなという感じが出ていて、非常に
バランスの取れた人間関係が出来ていると思って。
(今回、バランスはとても良いと思われた部分だけれど、
外見的にも、久世さんと篠井さんが並んだ時、身長や体型が、
姉妹だと感じられるバランスだったのも好みでした)

ブランチが、繕いようもなく弱いのも良かった。
もちろん、何を特別な事を求めたわけでもないのだけれど、
自分にとって唯一最大の望みが どうしてもかなわなかった時、
自身を変えるよりも、世界を自分のために変えてしまった彼女。
それを許容するステラやユーニスたちと、叩き壊して
目覚めさせようとするのと、どちらがいいのかは分からない。
でも、すがっていける見知らぬ人の手が差し出された最後は、
彼女にとって極楽なのかもしれないし、良かったと思えた。
(実は前回、絶対に違うと思いながらも「台風が去ってめでたし」
みたいな感想のエンディングだったんですよね(^^;ヤバすぎ)
今回は、ブランチが去っていく時、テーブルに突っ伏したままの
ミッチの背中も焼きつきました。



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