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2003年08月27日(水) 『阿修羅城の瞳』at新橋演舞場

6日ぶりに仕事に行きました(^^;
まだ微熱はあるし、ちょっと水分摂取や薬を忘れると
痰はからむわ声は出なくなるわで辛いのですが、
1週間病欠するには医師の診断書が必要なので。
さすがに風邪ごときで診断書もらえないだろうし、
ちゃんと休んでいれば治っていた頃だろうという
気もするので、これ以上サボっていられないし。

でも出てみたら、私の翌日から休み始めた人が
やっぱりまだ出てきてないらしいという話。
今年の風邪、本気でバカにできないようです。
・・・と言いつつ、まだ劇場通いしていますが。
欠勤中に舞台4本観てコンサートまで行ったなんて、
口が裂けても会社の人には言えない(^^;

今日は、昨日観に行ってきた劇団☆新感線の舞台。
どうも疲れていると文章を短くまとめる能力が
著しく低下するようで、またしても長文感想です。


<幕>全2幕、休憩30分込み 約3時間40分
<主な出演:()内は前回キャスト>
 病葉出門(わくらばいずも):市川染五郎(同じ)
 闇の翼鬼(つばき):天海祐希(富田靖子)
 安倍邪空:伊原剛志(古田新太)
 美惨(びさん):夏木マリ(江波杏子)
 桜姫:高田聖子(森奈みはる)
 抜刀斎:橋本じゅん(渡辺いっけい)
 四世鶴屋南北:小市慢太郎(加納幸和)
 十三代目安倍晴明:近藤芳正(平田満)
 流しの滝次:Taki(同じ)

新感線の染五郎さんは割と好みなのと、
最近、天海さんがお気に入りなので観に行きました。
そして途中まで観ていて あれ?と思ったのは、
私はこの内容をどうやら知っているらしいこと。
思い返してみれば、ほぼ初新感線で前回公演を観たような。
しかも、上手端の2列目で観てしまい、あまりの大音量と、
にも関わらずセリフも歌詞も全く聞き取れないことに苛立ち、
本当に耳を塞いでいるうちに、友人ともども熟睡。
何が何やら分からなくなったという記憶が蘇ったり。
その舞台にまた1万払おうとは、私、バカかも(苦笑)
でも、2年で感覚が変わったんだな〜と思う感想でした。

以下、思いっきりネタバレ感想です。

しかも、もしや前回の方がキャスト良かったかも?
何だか設定に対してキャラクターが軽いというか弱い感じで。
これの主な登場人物たちって、みんな狂気を背負ってるんです。
鶴屋南北なら、人間としての魂を鬼に売っても本を書きたい、
邪空なら、全てを喰い尽くす飛蝗を逆に喰らって生き延び、
鬼の王たる阿修羅の力を手に入れるため鬼にもなろうとする。
晴明も、自身を含めた鬼御門(おにみかど)の部下たち全てに
蠱毒の呪をかけてまで阿修羅を倒せる力を持つ者を作ろうとする。

そういう、狂った者の色気みたいなものが感じられない。
それぞれに、かっこ良かったり優しげだったり貫禄があったり、
それなりにいいと思うんだけど、凄みという魅力がない。
だから、とんでもない話がサラサラと流れていってしまって、
観ていて辛くはないけれど、大して面白くもないというか。
鬼の頭領みたいな役柄の夏木@美惨も、思ったよりイマイチ。
雰囲気や声質は悪くないんだけど、何が軽いのかなー?
前回、目が覚めたら南北が味方側に寝返っていて、
この人にどんなドラマがあってこちらに戻ってきたのか、
それだけは気になって気になってしかたなかった。
でも、今回観たら、え〜こんなもん?って思ってしまったし。

もしかして、前回は2列目、今回は18列目からの観劇という
距離の問題もあるのかもしれないと思っていたのですが、
後半になって、そういう問題でないことがはっきり理解されて。
だって、天海@阿修羅、すごーーい良かったんですもん。
最初は少女、次に女、そして凄惨な色気を持った阿修羅。
強い感情を体験するたびに一夜にして姿を変える鬼。
出門への恐怖で翼鬼となり、次に強い恋情によって阿修羅となる。
そんな話が強烈に理解できるような業を背負った女がいました。

阿修羅城への橋のたもとで待っていた白無垢の彼女が、
「なぜお独りでいらっしゃらなかったのです。独りで来れば、
貴男と私、男と女だけの問題であったでしょうに。」と
恨み言(に聞こえたんですってば!)を言った時、ゾクゾクしました。
天守閣で2人きりになっての会話なんて、秘め事を見ているよう。
あまりにHくさくて正視できず、ドキドキしながら少し上目遣いに
なったりしながら。とてもじゃないがオペラグラスなんて覗けない。
おかげで、最後に阿修羅が出門に何をしたのか見えませんでしたが。
首筋に接吻したの?遠くてよく分からなかったんだよぉ。悔しい。

いや、天海さんも、阿修羅になる前は正直イマイチでした。
女盗賊の頭領っぽい役柄の割に、普通につまらない女だったし、
阿修羅に変貌するほどの思いを出門に持っているようには、
およそ見えなかったというのも、結構 致命的かも。
でも相方の染五郎さんも、本当に好きなのか疑いたい気がしたし、
「鬼殺し」と呼ばれた血染めの過去が見えない軽さだったから、
全体的に仕方なかったことなのかなと甘い評価をしてみる。
とりあえずこの2人は終わり良ければ全て良しモード。

でも、主演2人の後半だけ良くったって、
全体的な軽さ薄さはどうしようもなかったかなという感想です。
ある意味まとまっていて、普段の新感線のパワーを知らなければ、
それなりに満足できたのかもなと思わなくもないのですが。
でも つまんないと感じてしまうのは仕方ないんですよね。

あと別次元の問題として、高田聖子@桜姫と 橋本じゅん@抜刀斎は○。
2人とも、生粋の新感線のテンポと濃さをもって会場を沸かせて。
特に抜刀斎に関しては、舞台のノリを著しく無視した暴れっぷりで、
アドリブの応酬が続かずセリフが止まるのまで笑いにする状態。
2年前の私なら、こんなの演劇じゃないと眉をひそめたと思います。
今だって、他の舞台でこんな事されたら、むかっ腹立てていたはず。
でも、小奇麗にまとまった、新感線以外でも観られるような舞台に
「こんなもんを観に来たんじゃねーっ!!」モード入っていたので、
他のお客さんたちと一緒になって大笑いしてしまいました。

小奇麗にまとめず、演劇らしからぬダメな所はダメのままに、
八方破れなアクの強さが新感線の売りだったはず。
そのアクの強さだけなくなってしまえば、ただのつまらない芝居。
ラスト近くの天海さんのように、正当からシリアスに見せるように
方向転換するなら、ケレンに偏らず、巧さを手に入れなければ。
新感線は、何をしたいのか、どこへ行こうというのか。
2年の間にすっかり新感線好きと化していたらしい私は、
望んでいた「新感線」を観られなかった不満と、
先の不安ばかりを感じてしまったかもしれません。



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