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2003年01月22日(水) |
『人間風車』再々演2回目 |
休憩なし150分。
永作博美(サムの姉アキラ・女優)、入江雅人(平川・売れない童話作家) 河原雅彦(サム・知能障害31歳)、橋本さとし(国尾・売れてる童話作家) 山内圭哉(TVマン・平川と国尾の友人 他)、中山祐一朗、宇梶剛士 山西惇、三鴨絵里子、宮吉康夫、岩橋道子、高木珠里、岩崎大
『人間風車』2回目。 初見は最前列センターなんて席で観ていたけれど、 総代が調理器具の鎧を鳴らして のたうってた姿とか、 橋本さとしの口からぶら下がっていた某虫ぐらいしか、 鮮明に覚えているものはなく、迫力が足りなかった印象。 記憶自体も、前にビデオで観た再演版の方が鮮明だったり。 ビデオの公演より迫力が少ないって何よ?という感じで、 どうも今一つ、盛り上がりきれなくって。
今回はC列センター。6列目の観劇絶好ポイント。 なんとなく、脚本の凄さを堪能したという感じかも。 楽しくて楽しくて、結構たくさん笑わせてもらって、 ふと気づいたら何やらグロテスクな怖さに包まれていて、 目を背けたくなって、最後はしーんと哀しく辛い童話。 『ダブリンの鐘つきカビ人間』の時は、完全に異世界に 行ってしまったけれど、今回は現世のままであるだけに 怖さ・哀しさがリアルに感じられて、不快だけど好き。
目当てでありながら一番心配していた河原サムは、 最初のうちこそまだ段取り感が見えて覚めかけたけれど、 童話でない童話に入り込んでしまってからは、驚き。 前回の阿部サダヲの、とにかく恐怖を前面に押し出して、 ほとんど邪悪といってもいいビルだったのとは全く違い、 透明で信じやすい子供である故の怖さが出ていたと思う。 自分は復讐鬼・ビルだと信じ、不死身にまでなっていながら お話を愛する子供・サムでもあり続ける彼。
迫力では正直、完全に阿部サムに軍配が上がると思う。 でも、ビルとしてアキラを殺さんと手を振り上げた時ですら、 「聞け!」と平川が翼のある少年の話を始めると、 その魅力に抵抗できず入り込んでしまう姿が本当に自然だった。 彼は、芯の部分で真っ白で染まりやすい心のサムのままだと 素直に感じられたのが嬉しい。殺人を繰り返す人でありながら、 守ってやらなければならないような気分にさせられもする。
だからこそ、その結論がサムの死であったことが辛い。 お話に導かれるままに高所から飛び降りて死んでしまうサムを、 じっと見つめ続けているアキラに共感していいのか悩んでしまう。 彼女は「サムは子供じゃない、31歳なの。」と言い続けてきた。 泣いたからってあやしてやればいいというわけではないと。 何件もの殺人を犯した大人が死という結末を迎えることは、 彼女にとっては、辛いけれど正しいことだったのかもしれない。 でも私は、知能障害といわれる人々に対してどう接するべきか、 全く立場を決められないでいるだけに、どう対応していいか悩む。 「唯一の身内がそう決断しているのなら」と、中途半端な答だけ。 普段、考えたくなくて逃げ出しがちな問題だけに、 舞台で観せられるのは辛いし、真っ直ぐに評価しづらくなる。
そんなわけで、河原@サムは、私的には満足。 永作@アキラも非常に納得のいく態度を見せてくれて、大満足。 入江@平川は、ちょっと発音などに微妙な感想はあるけれど、 河原サムとの組み合わせだと、自己主張しすぎない感じが○かな。 周りは、あまり似合っていないなと感じた人もいたけれど、 山内さんがあまりにあまりに軽くてカッコ良くていいかげんで、 とんでもなくやっぱり魅力的だったので(要するに、好み(笑))、 ま、何がどうでもいいかなと。本当にそれでいいかはともかく。 やっぱり独りで観なくて良かったなとすごく思った舞台でした。
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