私は 小学生の頃 ライダーキック!ってやらかして
失敗して 骨折して
1ヶ月半 入院したことがある。
2人部屋の隣のベッドには 中学生のお兄ちゃんが 野球の試合でスライディングに失敗し これまた 骨折して入ってきた。
英二兄ちゃんは ギターが得意で 毎日 拓郎をかき鳴らす。 丸坊主で 拓郎の‘結婚しようよ’をかき鳴らす。
クラスの人気者だったらしく、毎日 お友達がいっぱいやってきた。
お兄ちゃんの彼女はおとなしくて綺麗な人だった。 いつも 最後まで病室に残って 静かに微笑んでいた。 二人は 時々屋上に上がり 楽しげに話をする。
夕焼けが二人の顔を真っ赤に染めていく。
別れを惜しむかのように 夕日を見送りながら 二人はいつまでも見つめあっていた。
お兄ちゃんと特に仲の良かったノッポとチビというコンビがいた。
何故か私はノッポに気に入られ いつも
「お見舞いだよぉん」
と 何がしかのプレゼントを持ってきてくれていた。
ある日、1枚の紙を手渡される。 そこには 私の似顔絵がユーモラスに描かれていた。 ・・・その片隅に 「治ったら 水天宮さんに二人で行こう」と 小さく小さく書かれていた。
それまで 冗談ばっかり言い合って 笑いあっていたのに 急に意識しだし 顔を見ると恥ずかしくなって ノッポが来る時間になると 私は別の部屋に 遊びに行くようになった。
そして 何も言わないで退院する。
その1年後・・・
水天宮さんに 友達とやってきた私のすぐ横に あの3人組。 その3人組にはそれぞれ彼女が連れ添っている。
何故だか私はホッとして 「お・に・ぃ・ちゃーん!!」と 声をかけていた。
淡い淡い思い出だ。
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